【完結】婚約破棄を言い渡した王子は悪役令嬢の兄に執着される

白(しろ)

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第五章

びやく

「ファタルの実はこんな形になるんだな」

 形は丸く、赤と茶色が混ざったような硬そうな皮がある。実自体は大ききはないが、一箇所にたくさん生っているのを見ると大きいものだと一瞬錯覚する。

「フィル様、あんたこれについてどこまで聞いた?」

 ゴードンの問いに言われたことを思い出しながら口を開いた。

「加工さえ施せば特産品になるものだと聞いた。そのまま食べたり、果汁を飲むと毒性があるんだろう?」
「そうだな、間違ってねえ」

 相槌を打ちながら聞いていたゴードンの返答に少し含みを感じて首を傾げた。それにエルダーがゴードンを諌める声がしたが「知る権利だってあるでしょ」とエルダーを説得する。

「これはなフィル様、生で食えば媚薬になる果物だ」
「びやく……?」

 そう言われて一瞬思考が停止する。
 もちろんその言葉の意味がわからないわけではない。むしろ毒の効果としては最も広く知られているものかもしれない。

「け、けどあれは媚薬なんて症状じゃ」
「一個でも強力な作用があるんだよ。それを何個も使った上に濃縮させたやつをフィル様は口にしたんだ。……ちなみにどんな症状だったか聞いてもいいか?」
「、ああ」

 狼狽えながら頷き、あの日のことを思い出す。

「体温の急激な上昇と、あと動悸が激しかった。全身の筋肉が動かなくなった感覚がして、一番苦しかったのは息ができなかったことだな。舌も動かなかった」

 それなのに楽になった瞬間があった。
 何かを飲まされたなと思い出した途端、リュシアンの顔が浮かんで一気に顔に熱が集まった。それまで俺の話を真剣に聞いていたゴードンが口をぽかんと開け、そのあと何かを察したようにエルダーを見る。

「詮索は野暮です」
「はー……まあそうだよなぁ。あの時走ってったのリュシアン様だもんなぁ」
「?」

 ゴードンの言葉に首を傾げると、彼は俺を見たあとに悩ましそうに髪を乱した。言うか言わないか迷っているような素振りだったが、やがて観念したように口を開く。

「まずなフィル様、あんたが毒を飲んだって気付いたのは俺だ。下げられた食器に見慣れねえもんが入ってたからな。それで匂いで毒だって気付いた」

 それからゴードンは服のポケットを探り、小さな瓶を俺に見せた。中には透明な液体が入っている。

「それをリュシアン様に伝えたら俺からこれを奪って血相変えて走ってったってのが俺の知るところなんだが……。あ、ちなみにこれ解毒剤な」

 ゴードンの話は気になる箇所が多すぎる。聞きたいところがたくさんあるのに、リュシアンが俺のところに駆け付けてくれたという事実が、こんな状況なのに嬉しく感じてしまった。
 あまりに不謹慎すぎると何度も深呼吸をしていると、ゴードンがなんとも言えない顔で俺を見ていた。その視線が居た堪れなくて思わず謝ると、特に何も言われずにただ見守られ続けた。

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