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第八章
詰め込まれた日
「ああ、必ず。どんな遊びも付き合うよ。ダンスのレッスンも」
「、その時はまたフィルが女の子の方ね」
「……頑張ろう」
「約束ね」
「ああ、約束だ」
そう声に出して、小指を立ててリオルに差し出す。
「……?」
その行為がわからないのかリオルが首を傾げたのを見て、しまったと思ったけれどすぐにまあいいかと笑みを浮かべた。
約束をする時は小指を絡めて妙な歌を歌う。畑中陽一の記憶の中にそんな場面があったから、思わず真似をしてしまった。
「同じように指を出してくれるか?」
「? うん」
小さな小指が差し出され、自分の小指を柔く絡ませる。
「これなに?」
「約束は必ず守るというおまじないだ」
「そうなの?」
「ああ。もし約束を破ったらリオルの言うことをなんでも聞く」
「本当っ⁉︎」
「ああ、本当だ。でも約束を破るつもりはないから、また会いに来てくれ」
リオルの目に滲んでいた涙が止まる。けれど寂しそうな表情は変わらず、瞳は不安で揺れていた。
けれどリオルは賢くて強いから、ふるふると首を振ってから再度俺を見た時、そこにはもう泣き虫だったリオルはいなくなっていた。
「会いに来るって約束する」
強く紡がれた言葉に口元が嬉しさで緩む。
無言で頷くと、タイミングを見計らったようにエルダーが「紅茶が冷めます」と声を掛けた。
それをきっかけに俺たちは自分の席に戻り、他愛のない話を続けた。
昼食はリオルと一緒にゴードンの料理を食べた。エルダー曰く、リオルもゴードンが画策していたことを知っているらしいが、彼のゴードンに対する態度は以前と変わっていなかった。
「またゴードンの料理食べに来るからね!」
リオルに抱き着かれてそう言われたゴードンが、一瞬泣きそうな顔をした。見間違いではないけれど、俺はそれを見なかったことにした。
……目が覚めてから目まぐるしい程に環境が変わっていく。
その日を境にリュシアンはさらに忙しくなってしまったようで、昨夜のような会話を持つ時間すらなかった。
リオルが帰ることはもちろん、色々なことが短期間に起こりすぎている。だから忙しいのは仕方がない。それでもリュシアンはどれだけ遅くても俺のところに帰ってきているらしい。
らしい、というのも全てエルダーから聞いているからだ。
リュシアンは俺が寝ている間に帰ってきて、俺が起きる前に業務に向かっているらしい。
忙殺される勢いで働いているのに、それでもリュシアンは毎日俺に手紙を残してくれる。それは相変わらず歯の浮くようなことばかりが書いてあったけれど、そのどれもが俺の宝物になる。
リュシアンから貰った手紙は全て箱に入れている。
前面に繊細な彫刻が彫られていて、蓋はガラス性の高価なものだ。この箱自体もリュシアンが俺に贈ってくれたものだ。
リュシアンから貰った手紙を本人から贈られた箱にしまうというのが少し恥ずかしくもあるけれど、それよりも嬉しさが勝る。
「私にはあなただけだ」
そう書かれた手紙を見るだけで頬が緩むのを抑えられない。
早く忙しいのが落ち着けばいいのにと思う。そうしたら二人で話せるし、何よりリオルと三人で遊べる。きっとリオルも喜ぶだろう。
だが現実というのはなかなか厳しいもので、それからまた数日リュシアンは忙しいままだった。
そろそろ本当に体調が心配になってきたなと思い始めたある日のこと、久しぶりに会うことができたリュシアンに俺はほとんど連れ去られる形で馬車に詰め込まれた。
「、その時はまたフィルが女の子の方ね」
「……頑張ろう」
「約束ね」
「ああ、約束だ」
そう声に出して、小指を立ててリオルに差し出す。
「……?」
その行為がわからないのかリオルが首を傾げたのを見て、しまったと思ったけれどすぐにまあいいかと笑みを浮かべた。
約束をする時は小指を絡めて妙な歌を歌う。畑中陽一の記憶の中にそんな場面があったから、思わず真似をしてしまった。
「同じように指を出してくれるか?」
「? うん」
小さな小指が差し出され、自分の小指を柔く絡ませる。
「これなに?」
「約束は必ず守るというおまじないだ」
「そうなの?」
「ああ。もし約束を破ったらリオルの言うことをなんでも聞く」
「本当っ⁉︎」
「ああ、本当だ。でも約束を破るつもりはないから、また会いに来てくれ」
リオルの目に滲んでいた涙が止まる。けれど寂しそうな表情は変わらず、瞳は不安で揺れていた。
けれどリオルは賢くて強いから、ふるふると首を振ってから再度俺を見た時、そこにはもう泣き虫だったリオルはいなくなっていた。
「会いに来るって約束する」
強く紡がれた言葉に口元が嬉しさで緩む。
無言で頷くと、タイミングを見計らったようにエルダーが「紅茶が冷めます」と声を掛けた。
それをきっかけに俺たちは自分の席に戻り、他愛のない話を続けた。
昼食はリオルと一緒にゴードンの料理を食べた。エルダー曰く、リオルもゴードンが画策していたことを知っているらしいが、彼のゴードンに対する態度は以前と変わっていなかった。
「またゴードンの料理食べに来るからね!」
リオルに抱き着かれてそう言われたゴードンが、一瞬泣きそうな顔をした。見間違いではないけれど、俺はそれを見なかったことにした。
……目が覚めてから目まぐるしい程に環境が変わっていく。
その日を境にリュシアンはさらに忙しくなってしまったようで、昨夜のような会話を持つ時間すらなかった。
リオルが帰ることはもちろん、色々なことが短期間に起こりすぎている。だから忙しいのは仕方がない。それでもリュシアンはどれだけ遅くても俺のところに帰ってきているらしい。
らしい、というのも全てエルダーから聞いているからだ。
リュシアンは俺が寝ている間に帰ってきて、俺が起きる前に業務に向かっているらしい。
忙殺される勢いで働いているのに、それでもリュシアンは毎日俺に手紙を残してくれる。それは相変わらず歯の浮くようなことばかりが書いてあったけれど、そのどれもが俺の宝物になる。
リュシアンから貰った手紙は全て箱に入れている。
前面に繊細な彫刻が彫られていて、蓋はガラス性の高価なものだ。この箱自体もリュシアンが俺に贈ってくれたものだ。
リュシアンから貰った手紙を本人から贈られた箱にしまうというのが少し恥ずかしくもあるけれど、それよりも嬉しさが勝る。
「私にはあなただけだ」
そう書かれた手紙を見るだけで頬が緩むのを抑えられない。
早く忙しいのが落ち着けばいいのにと思う。そうしたら二人で話せるし、何よりリオルと三人で遊べる。きっとリオルも喜ぶだろう。
だが現実というのはなかなか厳しいもので、それからまた数日リュシアンは忙しいままだった。
そろそろ本当に体調が心配になってきたなと思い始めたある日のこと、久しぶりに会うことができたリュシアンに俺はほとんど連れ去られる形で馬車に詰め込まれた。
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