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 しばらくして泣き止んだ後──

「落ち着いたかな」
「はい。ごめんなさい、服を汚してしまって」
「そんなことないさ。これくらい洗えば落ちる。気にするな」

 おおらかな笑顔を向けられたナンシーは彼の優しさに甘えることにした。
 アラザンが淹れてくれた温かい紅茶を飲み干すと、アラザンがそのティーカップを受け取った。

「うん、血色もよくなってきた。さっきは本当に顔色が白くて驚いたよ」
「あ、あはは、恥ずかしい」

 ナンシーは髪を直すふりをしてそっと横を向いた。
 大泣きしたところを見られたせいで妙な照れがあり、なかなか顔を見られなかった。

(そろそろ帰ろうかな。グラツィアと鉢合わせしたくないし)

 ベッドから立ち上がろうとすると、アラザンがその前に跪いた。

「ナンシー」
「え、はい」
「以前、僕が告白したこと、まだ覚えてくれてるかな」

 ドキッ、とナンシーの胸が反応した。

「この流れで告白なんてずるいかもしれないけど、僕はまだ君が好きなんだ」

 またナンシーの胸がドキッ、と反応した。体が少しずつ熱くなっていく。
 そんなナンシーを見つめるアラザンの目がわずかに潤んだ。

「僕の部屋に君がいて、こうして二人きりだなんて、もう、我慢できないよ」

 アラザンが立ち上がるや否や、ドサッ、とナンシーをベッドに押し倒した。

(えっ?)

 アラザンの大きな右手がナンシーの頬を包んでいる。

「さっきまで泣いてたから頬が紅潮して、睫毛も濡れて、今の君はとても色っぽいよ」
「えっ、そんな、私なんて、ガリガリで、あっ!」

 頬を包んでいた右手がナンシーの胸に移動していた。ナンシーはとっさに胸をかばって横を向いた。顔が熱い。
 アラザンがくすっ、と笑った。

「こんなにふくよかなのに? それに、僕は君の内面が好きなんだ。好きな相手のために尽くすところや笑い方、ちょっとしたしぐさ、トドールドを見つめる熱い眼差し──。僕も弟のように君に愛されたいとずっと思っていた」

 そう言いながらアラザンはナンシーの首筋に顔を埋めた。

「あ、だめです、アラザン様」
「なぜ。好きだ、ナンシー」
「でも、あっ、だめ」
「さっきそう言ってくれたじゃないか、ナンシー」
「でも、こんな、急に」

 イヤイヤをしている間にナンシーは服をすべて脱がされてしまった。

「だめ、だめです、アラザン様……」

 裸体を丸めて両手で胸を隠し、言葉のわりに弱々しい声しか出ないナンシーをアラザンの微笑みが見下ろしている。

「逃げないんだから、それが答えだ。ね、ナンシー?」

 ナンシーの顔がカーッと熱くなった。
 アラザンの顔が近づいてくる。

「大丈夫。何もかも忘れさせてあげる。僕にすべてをゆだねて」

 ナンシーはそっと顔だけをアラザンに向けた。

「浮気、しない……?」
「死んでもしない。君が僕を選んでくれるなら僕は一生を君に捧げる」

 それは頼もしい言葉だった。

(噂なんか信じないで最初からアラザン様を選べばよかった)

 ナンシーが微笑みながら目を閉じると、その唇にアラザンの唇が重なった。ナンシーはそっと彼の首に両手を回し、熱い口づけに身をゆだねた。








「はーっ、はーっ、はーっ、はーっ」
「ナンシー、かわいい」

 大きな二つの手がほどよい大きさの乳房をむぎゅう、むぎゅう、と握り、その柔らかさを堪能している。
 ナンシーは息も絶え絶えの状態でその手を制した。

「はーっ、はーっ、だめ、ちくび、感じちゃうからぁ」

 熱い息を吐くナンシーの全身は湯上がりのようにのぼせて汗だくで、顔は紅潮して前髪が額に、長い髪が首筋に張りついていた。
 そして、さっきまでアラザンに抱いていた新しい恋の予感、ときめきは消え、今は熱い愛欲の中に引きずり込まれて逃げられなくなっていた。

「ナンシーは乳首が感じやすいのかい? じゃあ、もっといじめてあげる」

 むぎゅう、むぎゅう、が終わり、親指と人差し指、中指がぴん、と立った乳頭をくにくにと弄んだ。

「あっ、あっ、だめ」
「だめ? じゃあ」

 アラザンが笑いながら少し下に移動し、ナンシーの右の乳首を口に含んだ。
 温かな口内に包まれただけでナンシーはふわぁ、とトロけそうになった。

(あぁ、気持ちいい、こんなことされたら何も考えられない)

 アラザンが舌でねっとりと乳首を愛撫すると、ナンシーの胸がビクビクと揺れた。

「あっあん、感じちゃう」
「ナンシーはどこも感じるんだな。かわいい」

 アラザンはナンシーの両脚を大きく開かせると、自分の体重をかけて身動きが取れないようにして、舌で右の乳首、右手で左の乳首、左手でクリを同時に攻めた。
 さっきまで何度も膣を突かれて敏感になっていたナンシーの肉体はぷるぷると震えてあっという間に達した。

「あッ!」

 ナンシーは大きく目を見開いてアラザンの肩にしがみついた。

「はッ、ああぁぁー、イク……ッ!」

 ビクン、ビクン、と全身が魚のように跳ねた。

「ふふ、ナンシー、君は本当にかわいいな」
「はーっ、はーっ、アラザン……わたし、もう、体力が……」
「大丈夫。君は何もしなくていいよ。僕が愛してあげるから」

(違う。そうじゃないのに)

 じれったい思いで荒い呼吸を繰り返していると、またアラザンが欲望を挿入してきた。
 太くて、熱くて、ビキビキに硬くて、逞しくエラを張った亀頭がナンシーの濡れた柔肉を押し広げてやすやすと奥まで届き、内壁をこすりながら何度も往復した。
 快感はすぐに高まり、ナンシーの腰がくねくねと悶えた。

「あぁ、だめぇ、はーっ、はーっ、も、もぉ、むりぃ、だってばぁ、あっ! あっ!」

 ずん、ずん、と奥まで突かれると喉奥から声が出て顔が羞恥で熱くなった。
 アラザンがナンシーの右脚を抱え上げ、ずん、と奥まで挿入してくちゅくちゅと小さく欲望を揺らした。

「ああッ、気持ちぃっ、ちが、やあぁ、だめっ、アラザン、そんな奥っ、だめぇ」
「そんな嘘ついてもナンシー、こんなかわいいトロケ顔してたら信じる人なんていないよ。誰にも見せないけど」
「はーっ、はーっ、でも、だめ、も、終わり」
「じゃあ、さっき見つけたナンシーの弱点をいじめて終わろうかな」

 ドキッ、とナンシーの胸が苦しくなった。
 それは、期待、羞恥、ほんの少しの恐怖。
 アラザンに攻められるまでナンシーも知らなかった弱点だ。

「や、やだ、そこは、しなくていい」
「どうして? さっきは悦んでたよ」
「あれは、だって……」

 言い淀んでいるとアラザンが腰を引き、亀頭でナンシーの腹部の裏側を撫でるようにぬるぬると刺激した。
 すると、ナンシーが泣き顔でのけ反った。

「ああぁん、そこだめぇ」

 自分でも恥ずかしい甘える声が出て、自然と両脚が大きく開いてアラザンを求めた。

「ああぁん、アラザン、そこ好きぃ」
「ここ?」

 亀頭が探るように動くとあまりの快感で舌が出て、変な声まで出て、頭がふわふわした。

「あぇ、アラザ、らめぇ、あっあ、きもちぃぃ」
「じゃあ、ここ、いっぱいいじめてあげる」

 ナンシーはそこをいじめられると意思よりも快楽が勝ち、自分からいいところに亀頭が当たるように腰をくねらせてしまった。

 疲れているのに、あへあへになっている顔を見られるのが恥ずかしいのに、快楽が主導権を握ると別人になったように理性が薄らいでいった。

「あうんん、へぁ、好き好き、イクイク、あッ、あッ」

 ビクビクッ、と全身で感じた後、はーっ、はーっ、と息を吐いた。

「イク時のナンシー、かわいい」

 大きな手がナンシーの頬を包む。

「声も、顔も、脚がビクビクするところも、全部かわいい」

 濡れた微笑みで見つめられ、何度もかわいいかわいいと言われると子宮がキュンキュン蠢いてアラザンのことが好きでたまらなくなった。

「かわいいから、もう一回してあげる」

(うれしい。でも、これじゃ、結局、終わらない)

 またアラザンの亀頭が腹部の裏側をぬるぬると愛撫した。そうされると意識がぼんやりして、また汗だくになっていった。
 ナンシーはビクン、と顔を上げてアラザンに手を伸ばした。

「あへぇあ、らめらめ、そこ気持ちぃからぁ、ああぁん、アラザン好きぃ」

 アラザンがナンシーの手を握り、ぬるぬる攻めを続けた。

「僕も好きだよ、ナンシー。一生離さない。君はもう僕のものだからね」
「わたしも好きぃ、はッ、はッ、そこ、らめぇ」
「かわいい、好き」
「わたしも好きぃ、だけど、らめぇ……ッ!」








 ふと気付くとナンシーはベッドにグッタリと横たわっていた。どうやら気絶していたようだ。

(ようやく終わったみたい。はぁー、死んじゃうかと思った…………)

 ふぅ、と目を閉じると、ずん、ずん、と股の間に熱い衝撃を感じてナンシーはハッとそちらを見た。
 アラザンがナンシーの左脚を抱えて腰を入れていた。熱っぽい眼差しでこちらを見ている。

(ええっ、まだつながってたの? 嘘でしょ?)

 自覚すると一気に快感が蘇ってきて全身が甘く震えた。

「あっ、あぁあー、だめだめ、アラザン、もう終わり」
「うん、でも、寝ているナンシーがかわいいから」
「そんな、あっ、あっ、ああぁぁーッ」

 その後、ナンシーが解放されたのは二時間も経ってからだった。
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