6 / 23
1章
6話
しおりを挟む
その後も、同じような日々を何度も繰り返した。体感で言えば2週間ほど経った気がするが、9月10日から全く進まない。一言も話さずに家を出て、授業を受ける。そして帰りに公園に行き少女を見かける。それの繰り返しだった。
僕はこのループを抜け出すためにいろんな違うことを試した。
いつもより遠回りの道で学校へ登校してみる。
おかずの食べる順番を変えてみる。
学校が終わっても、少しだけ教室に残ってみる。
しかしどの方法も失敗に終わった。抜け出す手がかりさえ見出せなかった。
もっと大きなことを変えてみようと試みたが、それはできなかった。
大きな行動変化を起こそうという考えまでは思いつくが、それを実行しようとすると大きな自制が働いてしまう。その自制がなぜ働いてしまうのか、全く理解できなかった。
9月10日を繰り返して15周目、僕はある決心をする。
「あの少女に話を聞いてみよう」
親でもなく友人でもなく、少女に話を聞こうとしたのは正直自分でも分からない。ただ、吸い寄せられるように僕は公園に行き、ベンチに座らずブランコの方へ駆け寄った。
「待ってましたよ」
少女が僕に向けて発した最初の言葉である。
「はっ?」
「ここにたどり着くまでに2週間も費やすなんて。もしかしてあなたは優柔不断ですか?」
……いや間違ってはないけど。小学生にそんな風に言われるのはなんか癪だな。
「何でも知ってる風な言い草だな」
「もちろん。私は観測者ですから。何でも知ってますよ」
「何でもって……。ほんとに何でも?」
「……あなたのことは何でも知っています」
……めっちゃ限局的じゃん。それに観測者?何言ってるんだこの子。
「私はずっとここであなたが声を掛けてくれるのを待っていました。もう待ちくたびれましたよ。時間を返してください!」
……僕まだ一日も前に進んでないんだけど。
「まあでもあなたから行動を起こしてもらわないと、私は何もできませんから。とりあえずは一歩前進ですかね」
「さっきから何を言っているんだ?僕全然追いつけてないんだけど」
僕は少女のペースに飲まれまいと口を挟んだ。
しかし少女はマウントを譲らない。
「ループの現象。知りたいのではありませんか?」
「……なんでそれを知っているんだ?」
「だから言ったではありませんか。私はあなたの観測者です。同じ空間にいなくても、あなたの行動は全て把握しています」
……何を言っているのかさっぱり分からない。
「あなたは過ちを犯しませんでした。大きな行動変化を伴えば、過去改変が起こってしまいかねません。まあ私がそうならないようにあなたの自制を強めたおかげかもしれませんけどね。感謝してください」
……こんなにも小学生から舐められている感覚は初めてだ。
「あなたは今、簡単に言えば同じ空間に閉じ込められている状態です。そこから抜け出すためにはあなたの考え方を変えるしか方法はありません。そしてそれに気づけるのもあなただけです。私は助言することしかできません」
ーー考え方を変える。
頑固な僕に突き付けられたその言葉は、胸の奥に強く刺さる。
「何か思い当たる節があるようですね。それを行動に移せばいいだけですよ」
「……それをすれば僕はもとに戻れるのか?」
「本当に正しい方法をとれれば、もちろん戻れますよ」
少女の言う通り、僕には思い当たる節があった。
僕は家に帰りたくないと感じていた。酷い言葉を言ってしまった母に顔向けできないと思ったからだ。もしその思いが、今日を永遠に繰り返すトリガーになっているのならーー。
「難しい成り行きは分からないけど、ありがとう。僕やってみるよ」
「礼には及びませんよ。明日を迎えられるといいですね」
……なんか他人行儀だな。
「じゃあ」
僕はそう言って、少女に軽くお辞儀をした後、自分の家の方向に向かって歩き始める。
明日の状況がこんなにも気になるのは初めてだった。
僕はこのループを抜け出すためにいろんな違うことを試した。
いつもより遠回りの道で学校へ登校してみる。
おかずの食べる順番を変えてみる。
学校が終わっても、少しだけ教室に残ってみる。
しかしどの方法も失敗に終わった。抜け出す手がかりさえ見出せなかった。
もっと大きなことを変えてみようと試みたが、それはできなかった。
大きな行動変化を起こそうという考えまでは思いつくが、それを実行しようとすると大きな自制が働いてしまう。その自制がなぜ働いてしまうのか、全く理解できなかった。
9月10日を繰り返して15周目、僕はある決心をする。
「あの少女に話を聞いてみよう」
親でもなく友人でもなく、少女に話を聞こうとしたのは正直自分でも分からない。ただ、吸い寄せられるように僕は公園に行き、ベンチに座らずブランコの方へ駆け寄った。
「待ってましたよ」
少女が僕に向けて発した最初の言葉である。
「はっ?」
「ここにたどり着くまでに2週間も費やすなんて。もしかしてあなたは優柔不断ですか?」
……いや間違ってはないけど。小学生にそんな風に言われるのはなんか癪だな。
「何でも知ってる風な言い草だな」
「もちろん。私は観測者ですから。何でも知ってますよ」
「何でもって……。ほんとに何でも?」
「……あなたのことは何でも知っています」
……めっちゃ限局的じゃん。それに観測者?何言ってるんだこの子。
「私はずっとここであなたが声を掛けてくれるのを待っていました。もう待ちくたびれましたよ。時間を返してください!」
……僕まだ一日も前に進んでないんだけど。
「まあでもあなたから行動を起こしてもらわないと、私は何もできませんから。とりあえずは一歩前進ですかね」
「さっきから何を言っているんだ?僕全然追いつけてないんだけど」
僕は少女のペースに飲まれまいと口を挟んだ。
しかし少女はマウントを譲らない。
「ループの現象。知りたいのではありませんか?」
「……なんでそれを知っているんだ?」
「だから言ったではありませんか。私はあなたの観測者です。同じ空間にいなくても、あなたの行動は全て把握しています」
……何を言っているのかさっぱり分からない。
「あなたは過ちを犯しませんでした。大きな行動変化を伴えば、過去改変が起こってしまいかねません。まあ私がそうならないようにあなたの自制を強めたおかげかもしれませんけどね。感謝してください」
……こんなにも小学生から舐められている感覚は初めてだ。
「あなたは今、簡単に言えば同じ空間に閉じ込められている状態です。そこから抜け出すためにはあなたの考え方を変えるしか方法はありません。そしてそれに気づけるのもあなただけです。私は助言することしかできません」
ーー考え方を変える。
頑固な僕に突き付けられたその言葉は、胸の奥に強く刺さる。
「何か思い当たる節があるようですね。それを行動に移せばいいだけですよ」
「……それをすれば僕はもとに戻れるのか?」
「本当に正しい方法をとれれば、もちろん戻れますよ」
少女の言う通り、僕には思い当たる節があった。
僕は家に帰りたくないと感じていた。酷い言葉を言ってしまった母に顔向けできないと思ったからだ。もしその思いが、今日を永遠に繰り返すトリガーになっているのならーー。
「難しい成り行きは分からないけど、ありがとう。僕やってみるよ」
「礼には及びませんよ。明日を迎えられるといいですね」
……なんか他人行儀だな。
「じゃあ」
僕はそう言って、少女に軽くお辞儀をした後、自分の家の方向に向かって歩き始める。
明日の状況がこんなにも気になるのは初めてだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる