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3章
17話
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3度目の9月11日。少女は以前読んだことがあるという本の話をし始めた。
「いくつの頃かは忘れましたが、父の本棚にあった本を試しに読んでみたことがあるんですよ。なんとか最後まで読みきりましたが、内容が難しくてほとんど理解できませんでした。ですがある一文だけは感銘を受けて、今でもはっきり覚えています」
「へー。どんな内容なの?」
「『答えを知るのは簡単だが、大事なのはそれに辿り着く過程にある。与えられた答えと、考え、悩み、気づいた答えとでは重みがまるで違う。もしその導き出した答えが間違えだったとしても、また考えればいい。その間違いは決して無駄にはならない。だから考えるのだ。人に与えられた”思考”という力を存分に発揮せよ』
これは今の私を作っている一部と言っても過言ではありません」
……なるほど。いつか機密事項と言っていたやつの正体か。というか小学生が感銘を受ける文ではない気がする。どれだけませてるの?
「なんだ、てっきりすぐに答えを教えてくれないのは、神様のお告げか何かだと思ってた」
「何言ってるんですか。そんなファンタジーなことそう易々と起こるわけないじゃないですか」
「僕のタイムリープもよほどと思うけど」
「これは一本取られました。座布団一枚差し上げます」
「僕は正座している前提かい?」
「口ごたえは良くないですね。二枚没収です」
「まさかのマイナス⁉僕を地面に埋めるつもり⁉」
お互いに冗談を言い合う。この時間がたまらなく愛おしい。
ずっとこの時間を迎えることができる。それだけでこの一日を生きるに値するものだった。
「でも何でそんな難しい本を読もうとしたの?」
僕は特に意味もなく聞いてみる。
少女もなんてことないといった様子で答えてくれる。
「さあどうでしょうね……きっと早く大人になりたかったんじゃないですか」
「大人に……ね」
「大人の景色はどうなんでしょうね?」
「んーどうだろ。大人も子どもの時代があったわけだし。案外子どもが大きくなってるだけかも。僕も君ぐらいのとき、高校生は大人だと思ってた。だけどいざ高校生になると、全然そんなことなくて、僕はまだまだ幼いままだよ」
「そういうもんですかね」
「僕よりも君の方がよっぽど大人びているよ。羨ましいぐらい」
「私はあなたが羨ましいですよ。少なくとも私にはあなたがすごく大人に見えましたから」
「……結局『隣の芝生は青く見える』ってことだね」
「そうですねぇ」
「僕らって……年はとらないのかな?」
「同じ日にいる限り、年はとらないと思いますよ」
「なんだか不老不死みたいでかっこいいね」
「私は不死鳥を手懐けてますから」
「文鳥ぐらいにしときなよ」
「あなたは鳩で満足しそうですね」
「鳩は平和の象徴だぞ?」
「失礼。あなたが飼われる側でしたね」
「もう鳩を追い掛け回せなくなるじゃないか」
「いい高校生がなに心配しているんですか」
僕らは熟年夫婦のような雰囲気で会話をする。
夕日が沈み、街灯が夜の道を照らしていく。
僕は何度も振り返り、手を振る少女を確認しながら、公園を後にする。
「いくつの頃かは忘れましたが、父の本棚にあった本を試しに読んでみたことがあるんですよ。なんとか最後まで読みきりましたが、内容が難しくてほとんど理解できませんでした。ですがある一文だけは感銘を受けて、今でもはっきり覚えています」
「へー。どんな内容なの?」
「『答えを知るのは簡単だが、大事なのはそれに辿り着く過程にある。与えられた答えと、考え、悩み、気づいた答えとでは重みがまるで違う。もしその導き出した答えが間違えだったとしても、また考えればいい。その間違いは決して無駄にはならない。だから考えるのだ。人に与えられた”思考”という力を存分に発揮せよ』
これは今の私を作っている一部と言っても過言ではありません」
……なるほど。いつか機密事項と言っていたやつの正体か。というか小学生が感銘を受ける文ではない気がする。どれだけませてるの?
「なんだ、てっきりすぐに答えを教えてくれないのは、神様のお告げか何かだと思ってた」
「何言ってるんですか。そんなファンタジーなことそう易々と起こるわけないじゃないですか」
「僕のタイムリープもよほどと思うけど」
「これは一本取られました。座布団一枚差し上げます」
「僕は正座している前提かい?」
「口ごたえは良くないですね。二枚没収です」
「まさかのマイナス⁉僕を地面に埋めるつもり⁉」
お互いに冗談を言い合う。この時間がたまらなく愛おしい。
ずっとこの時間を迎えることができる。それだけでこの一日を生きるに値するものだった。
「でも何でそんな難しい本を読もうとしたの?」
僕は特に意味もなく聞いてみる。
少女もなんてことないといった様子で答えてくれる。
「さあどうでしょうね……きっと早く大人になりたかったんじゃないですか」
「大人に……ね」
「大人の景色はどうなんでしょうね?」
「んーどうだろ。大人も子どもの時代があったわけだし。案外子どもが大きくなってるだけかも。僕も君ぐらいのとき、高校生は大人だと思ってた。だけどいざ高校生になると、全然そんなことなくて、僕はまだまだ幼いままだよ」
「そういうもんですかね」
「僕よりも君の方がよっぽど大人びているよ。羨ましいぐらい」
「私はあなたが羨ましいですよ。少なくとも私にはあなたがすごく大人に見えましたから」
「……結局『隣の芝生は青く見える』ってことだね」
「そうですねぇ」
「僕らって……年はとらないのかな?」
「同じ日にいる限り、年はとらないと思いますよ」
「なんだか不老不死みたいでかっこいいね」
「私は不死鳥を手懐けてますから」
「文鳥ぐらいにしときなよ」
「あなたは鳩で満足しそうですね」
「鳩は平和の象徴だぞ?」
「失礼。あなたが飼われる側でしたね」
「もう鳩を追い掛け回せなくなるじゃないか」
「いい高校生がなに心配しているんですか」
僕らは熟年夫婦のような雰囲気で会話をする。
夕日が沈み、街灯が夜の道を照らしていく。
僕は何度も振り返り、手を振る少女を確認しながら、公園を後にする。
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