ただいま

越知 学

文字の大きさ
18 / 23
3章

18話

しおりを挟む
 7度目の9月11日。少女は下から僕を覗くように聞いてきた。
「私と初めて会った日の事覚えてますか?
「なに、その『記念日覚えてるか』みたいな質問。僕試されてるの?」
「いいから答えてください」
「もちろん覚えてるよ。時系列で言うと昨日の出来事だよね。それがどうかした?」
「私がどんな表情してたか覚えていますか?」
「1度目の時はしっかり見なかったけど、初めて見た時は素敵な笑顔だと思ったよ。忘れられないくらいのね」
「1度目から私は笑っていましたよ」
「そういえばどうしてあんなに笑っていたの?」
「私が一通りあなたの記憶を辿った後、直接会ってみたいと思いました。するとこれもお姉ちゃんの予言通り、あなたはすぐに現れてくれました。すごく嬉しかったんです。お姉ちゃんの大切である、そして私の大切になったあなたに会えたことに」
 ……あの可憐な笑顔はそういうことだったのか。それにしてもよく恥ずかしげもなくサラッと言えるな。
「どうして聞いた僕が赤面になって、君が平気な顔してるんだよ」
「言いたいことは言える時に言っておかないと、後悔するじゃないですか?」
「あなたもその一人ですか?」
「……まあ、そうだね」
「仕方ないですね。私直々にコツをお教えしましょう」
「コツ?」
「はい、コツです。まず相手がいつまでもいてくれるとは思わないことです。永遠なんて普通はあり得ませんからね。
 次に、自分に正直になることです。自分が伝えたい言葉は、伝えるべきだから浮かんでくるんです。それがどんな言葉であっても、あなたが考えたことに変わりはないのですから。だから相手を傷つける言葉でない限り、躊躇わずに言うべきです。
 そして最後に、そういうのは初めに言ったもの勝ちです。誰かが言った後に重ねて言うのは簡単ですが、あなたが仰った通り、初めの一言は恥ずかしさが邪魔して、なかなか出しづらいものです。だからこそ、一番最初の言葉が最も光り輝き、心に残るのだと私は思っています。だから私は、伝えたいことははっきり言うようにしてるんです」
「君は本当に小学生?年齢偽ってない?」
「私は永遠の小学生です」
「アイドルの謳い文句みたいだね」
「えっ⁉私アイドルじゃなかったんですか⁉」
「握手会でもしてみる?」
「私の独壇場になっちゃいますよ」
「そりゃ一人だからね」
「あなたもするんですよ?」
「誰がこんな可愛らしい少女の横にいる冴えない男子高校生に握手求めるんだよ」
 少女は少しかおを赤くした。
「……あなたもなかなかのやり手ですね。それとも学習能力が高いのですか?」
「ん?なにがやり手なの?それと僕は何度も反復しないと覚えられないよ?」
「……天然でやってるなら相当ですね。ここに博士課程修了の宣言をいたします」
 ……わけの分からない博士号取得しちゃったよ。でも悪くないな、博士。
 僕は少女に出会ってからもらってばかりだ。まだ何一つ返せていない気がする。
 でも何もない僕に今すぐ少女の喜ぶものをあげることはできない。
 だからせめて。せめて今この時間を大切にしよう。少女が笑って過ごせるように。少女がいつまでもここに存在できるように。
 光が規則正しく並んだ道は、僕らの永遠を約束するかのようにどこまでも長く、遠く続いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...