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一四章
ジャックvs.ケニー
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ケニーはその日、『新・大砲クラブ』の会合から帰宅するところでした。その途中、見たくもない顔を見せられるはめになったのです。霧と怪奇の都警察署長、暴れん坊ジャックことジャック・ロウの顔を。
「いよう、伯爵ケニー閣下」
見た目ばかりはにこやかに、片手などあげて挨拶しながらジャックはケニーに近づきました。ケニーは露骨に嫌悪感を示したそうでございます。
『あの嫌がられ振りにはさすがにおれもちょっとへこんだな』
と、後にジャックは苦笑しつつ語っております。
ケニーはジャックに言いました。
「生きている化石が、今度はなんの用だ?」
「なにね。ちょっと確かめたいことがあってね」
「確かめたいこと?」
「ああ、つまり……」
いきなりのことでございます。いきなりジャックの右脚が大気を裂いて旋回し、鋭いローキックがケニーの足を蹴りあげたのです。ケニーはさすがに驚いたものの、すぐに姿勢をたてなおし、飛びのきました。彼は単に優秀な科学者というのみならず、意外なほどに身体能力に長けた人物でもあったのです。
「何のつもりだ!」
ケニーは怒りに目を釣り上げて叫びました。
ジャックはにやにやと笑いながら答えます。
「どうやら、その脚は本物のようだな」
「なんだと?」
「なにね。実は昨日、近ごろ都を騒がす連続殺人犯らしいやつを見かけたのさ」
「なに?」
「そいつは身長一七〇センチ程度。対するあんたは一八〇センチ以上だ。そして、その長い脚も本物。つまり、これであんたは連続殺人の犯人じゃないことがわかったわけだ」
「……それで、自分の非礼を謝りにきたのか?」
「あいにくそういうわけじゃない。あんたに聞きにきたのさ」
「なにをだ?」
ぎらり、とジャックの目が光りました。口元が引き締まり、獰猛な気配が全身をおおったのです。
「昨日みたそいつは身長一六〇~一七〇、濃い口髭に顎髭、シャツに色の濃いジャケット、ベストにズボン、黒いスカーフに黒いフェルト帽、そして……空高く跳んだ。バネ足ジャックみたいにな」
「………」
「あの跳躍力。もちろん、人間のはずがない。機械仕掛けか、それとも、ときどき噂に聞く生体強化人間ってやつか。どうだ。あんた、なにか心当たりはないか?」
「ないね」
「本当に?」
「もちろん」
ケニーはきっぱりと答えました。ジャックは両肩をすくめてみせました。見た目のにこやかさが少しばかり戻ってきていました。
「そうですか。いや、お時間をとらせて申し訳ない。警察へのご協力、感謝しますよ」
わざとらしく敬礼などして見せたそうです。
ケニーはそんなジャックに唾を吐きたそうな顔をしていました。実際に吐かなかったのは『伯爵』としての気品でございましょう。
唾を吐き捨てる代わりに苦虫を一〇〇万匹ほどまとめて噛み潰し、ケニーはその場を立ち去っていきました。そんなケニーをジャックは指先で帽子をくるくるまわしながら見送っておりました。ビリーが近づいてきました。
「これで納得したか、署長?」
「まあな。あいつはたしかに切り裂きジャックではなさそうだ。だが……」
「だが?」
「バネ足ジャックでもないとは言えないな」
その態度にビリーはため息をつきました。
「存外、しつこい男だな、君は。さては、彼女がいた試し、ないだろう?」
「うるせえ!」
ジャックが思わず怒鳴ってしまったのは、事実を言われたからだとのもっぱらの噂でございます。
「いよう、伯爵ケニー閣下」
見た目ばかりはにこやかに、片手などあげて挨拶しながらジャックはケニーに近づきました。ケニーは露骨に嫌悪感を示したそうでございます。
『あの嫌がられ振りにはさすがにおれもちょっとへこんだな』
と、後にジャックは苦笑しつつ語っております。
ケニーはジャックに言いました。
「生きている化石が、今度はなんの用だ?」
「なにね。ちょっと確かめたいことがあってね」
「確かめたいこと?」
「ああ、つまり……」
いきなりのことでございます。いきなりジャックの右脚が大気を裂いて旋回し、鋭いローキックがケニーの足を蹴りあげたのです。ケニーはさすがに驚いたものの、すぐに姿勢をたてなおし、飛びのきました。彼は単に優秀な科学者というのみならず、意外なほどに身体能力に長けた人物でもあったのです。
「何のつもりだ!」
ケニーは怒りに目を釣り上げて叫びました。
ジャックはにやにやと笑いながら答えます。
「どうやら、その脚は本物のようだな」
「なんだと?」
「なにね。実は昨日、近ごろ都を騒がす連続殺人犯らしいやつを見かけたのさ」
「なに?」
「そいつは身長一七〇センチ程度。対するあんたは一八〇センチ以上だ。そして、その長い脚も本物。つまり、これであんたは連続殺人の犯人じゃないことがわかったわけだ」
「……それで、自分の非礼を謝りにきたのか?」
「あいにくそういうわけじゃない。あんたに聞きにきたのさ」
「なにをだ?」
ぎらり、とジャックの目が光りました。口元が引き締まり、獰猛な気配が全身をおおったのです。
「昨日みたそいつは身長一六〇~一七〇、濃い口髭に顎髭、シャツに色の濃いジャケット、ベストにズボン、黒いスカーフに黒いフェルト帽、そして……空高く跳んだ。バネ足ジャックみたいにな」
「………」
「あの跳躍力。もちろん、人間のはずがない。機械仕掛けか、それとも、ときどき噂に聞く生体強化人間ってやつか。どうだ。あんた、なにか心当たりはないか?」
「ないね」
「本当に?」
「もちろん」
ケニーはきっぱりと答えました。ジャックは両肩をすくめてみせました。見た目のにこやかさが少しばかり戻ってきていました。
「そうですか。いや、お時間をとらせて申し訳ない。警察へのご協力、感謝しますよ」
わざとらしく敬礼などして見せたそうです。
ケニーはそんなジャックに唾を吐きたそうな顔をしていました。実際に吐かなかったのは『伯爵』としての気品でございましょう。
唾を吐き捨てる代わりに苦虫を一〇〇万匹ほどまとめて噛み潰し、ケニーはその場を立ち去っていきました。そんなケニーをジャックは指先で帽子をくるくるまわしながら見送っておりました。ビリーが近づいてきました。
「これで納得したか、署長?」
「まあな。あいつはたしかに切り裂きジャックではなさそうだ。だが……」
「だが?」
「バネ足ジャックでもないとは言えないな」
その態度にビリーはため息をつきました。
「存外、しつこい男だな、君は。さては、彼女がいた試し、ないだろう?」
「うるせえ!」
ジャックが思わず怒鳴ってしまったのは、事実を言われたからだとのもっぱらの噂でございます。
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