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三二章
そして、人生再始動!
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ぎらぎらした八月の太陽が照りつけ、たっぷりと湿気を含んだ重苦しい風が流れるなか、森山鴻志は自宅の庭で色とりどりのコニファーに囲まれながら、粘土細工に精を出していた。
丸木造りのテーブルの上に大きな粘土の固まりを三つ置き、例によって歌いながら、指とヘラとを使って細かく人の顔を削り出していく。
神さまたちがやってきた
宇宙の果てからやってきた
地球の最後の瞬間に
神さまたちがやってきた
かつては生命にあふれてた
宇宙のなかの青い石
無数の声に満ちみちて
かつては生命にあふれてた
やがてやつらがやってきた
正義を背負ってやってきた
殺せば平和になるんだと
平和の使者たちやってきた
やがて時が流れて
そして平和がやってきた
すべての生命が死に絶えて
地球に平和かやってきた
神さまたちが帰っていく
宇宙の果てへと帰っていく
地球の葬式出し終えた
神さまたちが帰っていく
やたらと挑発的で皮肉の聞いた物騒な歌詞なのに、曲のテンポだけはやけに軽快でノリがいい。知らずしらずのうちに口ずさんでしまいそうな歌だった。
その歌詞と曲のギャップが森山鴻志という人間を象徴しているようで、やってきたばかりで唯一の観客となる幸運に恵まれた真梨子は噴き出してしまった。
その笑い声に鴻志はやっと側に他人がいることに気がついた。歌と手をとめ、振り返る。そこにいまや共犯関係とも言える女弁護士の姿を見出して顔をしかめた。
「……またお前か」
「そんな露骨にいやそうな顔しないでよ」
真梨子は気にした風でもなくころころと笑った。
――以前だったら、気を使って遠慮したはずなのにかわいげなくなりやがって。
と思う鴻志であった。
そんな鴻志を真梨子はじろじろと眺めた。これで何度目だろう。真梨子はまたも鴻志に驚かされていた。いまの鴻志はナチュラルな服装の芸術家タイプでも、スカイグレーのスーツで身を固めたきらわれ者の教授でもない。
長めの髪を昔の侍のように頭頂部でまとめ、丸いメガネをラフにかけ、くり色のTシャツに紺のパンツという出で立ち。その武家風の色使いと、何よりも髪型のせいで、時代劇のお白州の場にいても違和感のないような真面目でお固い印象となっていた。
これほど親しくなっていなければやはり別人かと疑ったろう。それほど、雰囲気がちがっている。
真梨子はそんな鴻志を見つめた後、つくづくと呟いた。
「あなたも男のくせにころころ、ころころ、よくイメチェンするわねえ」
「森山鴻志バージョン1だ」
「バージョン2は?」
「例の『仕事着』」
「バージョン3」
「メガネなしの普段着」
「何で普段着がバージョン3なの?」
「『ユーモラスなのは三番目』と昔から決まってる」
その答えに真梨子はころころと笑った。
「じゃあ、いまは熱血野郎なわけね」
「……お前なんかきらいだ」
言いたいことを先に言われたので鴻志はすねた。
「それより、いつきたんだよ?」
鴻志はまわりをうかがった。門のすぐ前に白いオープンカーがとめてある。そう言えばさっき、車のエンジン音が聞いたような気がしなくもない。
ただでさえ外の世界に対する興味の薄い鴻志である。それが作業中ともなればますます自身の内面世界に没頭し、外の世界の出来事には注意が向かなくなる。おかげで邪魔くさい弁護士がやってきたことにも気がつかなかったというわけだ。
もう少し、外の世界とのチャンネルを継続する訓練をしたほうがよさそうだ。いまのままではすぐ側を通って泥棒が家に侵入しても気づきそうにない。それぐらいならまあ、いいとして、とち狂ったおせっかいやきに接近され、引きずりまわされてはたまったものではない。
鴻志は内心を示す露骨なじと目で真梨子を見た。低く押さえた声でいう。
「……今度は何の用だ?」
真梨子は鴻志の警戒心など無視して車によると、グラビアアイドル気分でボンネットに手をかけ、足を交差させてポーズなどをとってみせた。明るい笑顔でいう。
「どう? いい車でしょ? 新しく買ったのよ」
「それで?」
「そっけないわねえ。狭い車内はきらいだって言うから、わざわざ気を使ってオープンカーにしたのに」
「廃棄ガスたっぷりの空気をもろに顔面に受ける気なんてないぞ」
真梨子はわざとらしくため息をついた。
「あなたってほんと、わがままねえ」
「きれいな空気を欲しがることの何がわがままだ!」
叫びながら鴻志は、真梨子の言葉に込められた恐るべき意味に気づいた。
「ちょっと待て。すると何か? またおれを乗せる気か?」
「もちろん。家にこもってばかりじゃ、たまには気晴らしのドライブも必要でしょ?」
「人を殺しかけといでまだ懲りないのか、お前は!」
「だいじょうぶよ。もうあんなバカはしないから。柄じゃないものね。あたしはやっぱり、派手な人生より、おちついた人生のほうが性にあってるわ」
悟ったように言う真梨子を、鴻志は胡散くさそうににらんだ。
真梨子は鴻志に近づいた。丸木のテーブルの上の粘土細工をまじまじと見つめた。
「これなに?」
「粘土の像だ。これを写真に撮って、文章を付けて、絵本にするんだ」
「本当に何でも作るのねえ」
真梨子は感心してそう答えた。
「それで? 本当にいったい、何の用なんだ?」
「ああ、実はね……」
真梨子が言いかけたそのときだ。重々しいエンジン音が近づいてきた。真梨子の表情が輝いた。
「あっ、来た!」
小さく叫んで道路に飛び出す。大きく手を振る。
「来たって、何が?」
真梨子の後につづいた鴻志の目に飛び込んできたのは大きな引っ越しセンターのトラックだった。トラックは真梨子の前でとまった。運転席から引っ越しセンターの制服に身を包んだ若い男が降りてきた。帽子をとって真梨子に挨拶した。
「お待たせしましたっ! こちらでよろしいんですね?」
「ええ。あっ、ちょっと待っててね」
真梨子は男を待たせて鴻志の家のなかに駆け込んでいった。鴻志は何が起きているのかわからず、無表情にパニックに陥っている。そんな鴻志に引っ越しセンターの男はにこやかに笑いかけた。
真梨子が小走りに戻ってきた。男に明るく声をかける。
「いいわ。こっちに運んで。二階だから気をつけてね」
「はい!」
男は威勢よく返事をすると、他の社員たちと一緒にトラックからあれやこれやの荷物を降ろし、家のなかへと運びはじめた。森山鴻志の家のなかへと。
パニックを起こしたまま、思考も表情も停止してしまった鴻志の前で引っ越しセンターの男たちが家具を抱えて列をなした。いくつもの家具がどんどん家のなかへと運ばれていく。
「わあー、すごい。やっぱり、若い男性ってたくましくていいわねえ」
と、いつの間にか鴻志の横に戻ってきていた真梨子が男日照りの中年女みたいなことを言う。
その声に鴻志はようやく我に帰った。真梨子を見下ろし、にらみつけ、怒鳴りつけた。
「何だ、これは⁉ どういうことだ!」
鴻志の怒鳴り声に真梨子はけろりとして答えた。
「見ての通り。今日からこの家で暮らすことにしたの」
「聞いてないぞ、そんなこと!」
「だからいま、聞いたでしょ?」
と、わざとらしく微笑む。
鴻志は頭のてっぺんが破裂したと思った。
「何でそんなこと……勝手に……お前……!」
さすがの鴻志が怒りのあまり顔がひきつり、言葉が出てこない。言葉のプロにあるまじき失態である。
真梨子はあくまでもけろりとした様子で説明した。
「あなたの計画に噛ませてもらおうと思ってね」
「なに?」
「復讐のほうじゃないわよ。『世界を変える』ってやつ。あたしも少しでも関わりたくなったのよ」
「それはおれの楽しみだ! 勝手に入ってくるな」
「何言ってんの。自分から依頼してきたくせに」
「それは……!」
「それに、もう遅いの。何しろ、事務所やめてきちゃったんだから」
「それが……」
『どうした⁉』と叫ぼうとした鴻志の機先を制して真梨子はつづけた。
「自分の事務所を開いて独立しようと思ってね。今度こそ、弁護士になろうとしたときの思い通り、本当に困っている人たちの助けになるつもり。でも、やっぱり、そういう人たちってお金、ないじゃない? きちんと商売として成り立つかどうか不安があるし、節約できるものは節約したいわけ。この家に住まわせてもらえれば家賃、浮くじゃない」
言いたいことを言って居間の反対側、庭に面した西側の部屋に近づく。フローリングのその部屋は、広いけれど家具ひとつないがらんどう。真梨子は大きな窓ガラスを開け、靴のままなかに入った。まわりを見渡し、満足気にうなずく。
「うん。これだけ広ければ充分、オフィスとして使えるわね。ええと、必要な備品はとりあえずはレンタルでいいか。それと電話は……まあ、携帯があればわざわざ別に引かなくてもいいか」
「ちょっと待てえ!」
ひとりで勝手にどんどん計画を進める真梨子にようやく追いついた鴻志が叫んだ。
「勝手に話を進めるな! 何でおれがお前を住まわせなけりゃならんのだ!」
「いいじゃない。部屋はいっぱいあるんだし。使ってあげたほうが部屋のためってもんでしょ。それに、あたしをおいておいたほうが何かと便利よ」
「なにが!」
「家賃は払えないけど、そのかわり、ただで弁護士してあげるわ。世界的作家ともなれば顧問弁護士だって必要でしょ? 身近にいたほうがいいじゃない。それに、あたしがいれば依頼人の人生を間近に見ることができるわ。『人生経験が乏しいから少しでも他人を観察しておく必要がある』って言ってたじゃない。これって絶好の観察機会でしょ?」
真梨子の言葉に鴻志はたしかに虚をつかれた。あっけにとられた表情になった。灰色の脳細胞が所有者の意志とは関係なくすばやく動き、計算する。
「……なるほど。それはいいな」
言ってしまってから『しまった!』と思い、口を押さえた。しかし、遅い。真梨子はしてやったりとばかりに鴻志の肩を叩いた。
「はい、決まり! これからよろしくね」
地面がひび割れ、砕けちり、奈落の底に転落する気になった鴻志であった。
△ ▽
鴻志と真梨子は裁判所の前にやってきていた。
真梨子はおちついたブラウンのスーツ。鴻志は例の『仕事着』――つまり、スカイグレーのエルネメジルト・ゼニアのスーツ、シルバースカイのタイ・ユア・タイのシャツ、淡いブラウンのメローラのネクタイ、茶色のタニノ・クリスチーの靴という高級ブランドに身を固め、髪はかっきりとセットし、ひげも隙なくそり、メガネをかけている、という出で立ち。しかし、今回ばかりは緊張のためか、森山鴻志バージョン2らしいクールでメカニックな雰囲気、ともすれば、人間ではなく、アンドロイドに見えてしまいそうな無機的な印象がない。かわりに、何か居心地の悪そうな、不安そうな雰囲気が見てとれる。
「何緊張してるのよ。あなたの望んだことでしょ!」
と、こちらはすっかり元気いっぱいになった真梨子が鴻志の背を威勢よく叩いた。鴻志はそんな真梨子をじっとりとにらんだ。
結局、鴻志は真梨子を家に同居させるはめになっていた。押しかけ女房ならぬ押しかけ弁護士など御免こうむりたいところなのだが、『貯金も全部使っちゃったから追い出されたらホームレスになるしかない』とまで言われて放っぽり出せるような人間ではしょせん、ない。
――……それにまあ、顧問弁護士がいたほうが便利なのはたしかだし、いろいろな人生を間近に見られるってのは魅力だからなあ。
と、無理やり納得――と言うか、自分に言い訳するようにしてその状況を受け入れた。相当に割り切れない、いまいましいものを感じながら、のことではあったが。
一方、真梨子のほうは『これから本当の人生をはじめるのだ』との喜びをまき散らして元気いっぱい。鴻志の困惑などお構いなしに猛烈に行動を開始した。依頼人捜して東奔西走したかと思えば、一方では鴻志の計画を遂行するための手続きに駆けまわり、裁判に持ち込んだ。そして、今日は記念すべき公判の一回目、というわけだ。
鴻志はいまだに割り切れない口調で真梨子にいった。
「……お前、本当にやるつもりなのか?」
「いまさら、何言ってるのよ。あなたが持ち込んできたことじゃない」
「それはそうだが……手続きだけしてくれればよかったんだよ。法廷での活動は全部、自分でやるつもりで……」
「そういう事は弁護士に任せておけばいいの。そのためにいるんだから。第一、あなたの戦いはあなたひとりのものじゃないでしょ。あたしだって、『世界を変える』ための行動はぜひともしたいわ」
関東大震災クラスの巨大地震が足もとに集中しようが、空から突然、一ダースの原爆が降ってこようが、揺るぎそうにない真梨子の決意を前に鴻志はため息をついた。うなだれてぶちぶちと愚痴をこぼしはじめた。
「……何でこんなことになったんだ? ひとりで世の中全部敵にまわして一匹狼の快感にひたるつもりでいたのに、こんな出しゃばり女が出てきやがって。孤高の英雄の美学が台無しだ。どうしてくれる、まったく……」
放っておいたら地面にしゃがみ込んで指先で『の』の字を書きはじめかねない鴻志を真梨子は力ずくでひっぱった。
「いつまでも愚痴ってないで! ほら、行くわよ。何か、こういうときにぴったりの景気づけの歌ってないの?」
「歌……ねえ」
鴻志は頬をぽりぽりとかいた。
「こんなんでどうだ?」
死んじゃいないさ
生きているさ
まだ何かできるさ
負け犬だって意地は残ってる
戦うための牙はまだ折れちゃいない
静かな、しかし、力強い歌声に真梨子はうなずいた。
「いいんじゃない。ずっと歌ってて」
夢見る力はあるさ
創りたい未来があるさ
やる気を集めて
声をそろえて
この世の地獄を減らして
今を生きてるおれたちだけにできること
ウルトラマンにもできないことおれたちにはできる
絶望超えて
屈辱踏みつけ
誇りたかき生涯を
鴻志の歌声に乗ってふたりは手を組んだまま裁判所へ一歩、また一歩と近づいていく。これからはじまる永い、永い、戦いの舞台へと。
死んじゃいないさ
生きているさ
まだ何かできるさ
負け犬だって意地は残ってる
戦うための牙はまだ折れちゃいない
戦うための牙はまだ折れちゃいない
戦うための牙はまだ折れちゃいない……。
終
丸木造りのテーブルの上に大きな粘土の固まりを三つ置き、例によって歌いながら、指とヘラとを使って細かく人の顔を削り出していく。
神さまたちがやってきた
宇宙の果てからやってきた
地球の最後の瞬間に
神さまたちがやってきた
かつては生命にあふれてた
宇宙のなかの青い石
無数の声に満ちみちて
かつては生命にあふれてた
やがてやつらがやってきた
正義を背負ってやってきた
殺せば平和になるんだと
平和の使者たちやってきた
やがて時が流れて
そして平和がやってきた
すべての生命が死に絶えて
地球に平和かやってきた
神さまたちが帰っていく
宇宙の果てへと帰っていく
地球の葬式出し終えた
神さまたちが帰っていく
やたらと挑発的で皮肉の聞いた物騒な歌詞なのに、曲のテンポだけはやけに軽快でノリがいい。知らずしらずのうちに口ずさんでしまいそうな歌だった。
その歌詞と曲のギャップが森山鴻志という人間を象徴しているようで、やってきたばかりで唯一の観客となる幸運に恵まれた真梨子は噴き出してしまった。
その笑い声に鴻志はやっと側に他人がいることに気がついた。歌と手をとめ、振り返る。そこにいまや共犯関係とも言える女弁護士の姿を見出して顔をしかめた。
「……またお前か」
「そんな露骨にいやそうな顔しないでよ」
真梨子は気にした風でもなくころころと笑った。
――以前だったら、気を使って遠慮したはずなのにかわいげなくなりやがって。
と思う鴻志であった。
そんな鴻志を真梨子はじろじろと眺めた。これで何度目だろう。真梨子はまたも鴻志に驚かされていた。いまの鴻志はナチュラルな服装の芸術家タイプでも、スカイグレーのスーツで身を固めたきらわれ者の教授でもない。
長めの髪を昔の侍のように頭頂部でまとめ、丸いメガネをラフにかけ、くり色のTシャツに紺のパンツという出で立ち。その武家風の色使いと、何よりも髪型のせいで、時代劇のお白州の場にいても違和感のないような真面目でお固い印象となっていた。
これほど親しくなっていなければやはり別人かと疑ったろう。それほど、雰囲気がちがっている。
真梨子はそんな鴻志を見つめた後、つくづくと呟いた。
「あなたも男のくせにころころ、ころころ、よくイメチェンするわねえ」
「森山鴻志バージョン1だ」
「バージョン2は?」
「例の『仕事着』」
「バージョン3」
「メガネなしの普段着」
「何で普段着がバージョン3なの?」
「『ユーモラスなのは三番目』と昔から決まってる」
その答えに真梨子はころころと笑った。
「じゃあ、いまは熱血野郎なわけね」
「……お前なんかきらいだ」
言いたいことを先に言われたので鴻志はすねた。
「それより、いつきたんだよ?」
鴻志はまわりをうかがった。門のすぐ前に白いオープンカーがとめてある。そう言えばさっき、車のエンジン音が聞いたような気がしなくもない。
ただでさえ外の世界に対する興味の薄い鴻志である。それが作業中ともなればますます自身の内面世界に没頭し、外の世界の出来事には注意が向かなくなる。おかげで邪魔くさい弁護士がやってきたことにも気がつかなかったというわけだ。
もう少し、外の世界とのチャンネルを継続する訓練をしたほうがよさそうだ。いまのままではすぐ側を通って泥棒が家に侵入しても気づきそうにない。それぐらいならまあ、いいとして、とち狂ったおせっかいやきに接近され、引きずりまわされてはたまったものではない。
鴻志は内心を示す露骨なじと目で真梨子を見た。低く押さえた声でいう。
「……今度は何の用だ?」
真梨子は鴻志の警戒心など無視して車によると、グラビアアイドル気分でボンネットに手をかけ、足を交差させてポーズなどをとってみせた。明るい笑顔でいう。
「どう? いい車でしょ? 新しく買ったのよ」
「それで?」
「そっけないわねえ。狭い車内はきらいだって言うから、わざわざ気を使ってオープンカーにしたのに」
「廃棄ガスたっぷりの空気をもろに顔面に受ける気なんてないぞ」
真梨子はわざとらしくため息をついた。
「あなたってほんと、わがままねえ」
「きれいな空気を欲しがることの何がわがままだ!」
叫びながら鴻志は、真梨子の言葉に込められた恐るべき意味に気づいた。
「ちょっと待て。すると何か? またおれを乗せる気か?」
「もちろん。家にこもってばかりじゃ、たまには気晴らしのドライブも必要でしょ?」
「人を殺しかけといでまだ懲りないのか、お前は!」
「だいじょうぶよ。もうあんなバカはしないから。柄じゃないものね。あたしはやっぱり、派手な人生より、おちついた人生のほうが性にあってるわ」
悟ったように言う真梨子を、鴻志は胡散くさそうににらんだ。
真梨子は鴻志に近づいた。丸木のテーブルの上の粘土細工をまじまじと見つめた。
「これなに?」
「粘土の像だ。これを写真に撮って、文章を付けて、絵本にするんだ」
「本当に何でも作るのねえ」
真梨子は感心してそう答えた。
「それで? 本当にいったい、何の用なんだ?」
「ああ、実はね……」
真梨子が言いかけたそのときだ。重々しいエンジン音が近づいてきた。真梨子の表情が輝いた。
「あっ、来た!」
小さく叫んで道路に飛び出す。大きく手を振る。
「来たって、何が?」
真梨子の後につづいた鴻志の目に飛び込んできたのは大きな引っ越しセンターのトラックだった。トラックは真梨子の前でとまった。運転席から引っ越しセンターの制服に身を包んだ若い男が降りてきた。帽子をとって真梨子に挨拶した。
「お待たせしましたっ! こちらでよろしいんですね?」
「ええ。あっ、ちょっと待っててね」
真梨子は男を待たせて鴻志の家のなかに駆け込んでいった。鴻志は何が起きているのかわからず、無表情にパニックに陥っている。そんな鴻志に引っ越しセンターの男はにこやかに笑いかけた。
真梨子が小走りに戻ってきた。男に明るく声をかける。
「いいわ。こっちに運んで。二階だから気をつけてね」
「はい!」
男は威勢よく返事をすると、他の社員たちと一緒にトラックからあれやこれやの荷物を降ろし、家のなかへと運びはじめた。森山鴻志の家のなかへと。
パニックを起こしたまま、思考も表情も停止してしまった鴻志の前で引っ越しセンターの男たちが家具を抱えて列をなした。いくつもの家具がどんどん家のなかへと運ばれていく。
「わあー、すごい。やっぱり、若い男性ってたくましくていいわねえ」
と、いつの間にか鴻志の横に戻ってきていた真梨子が男日照りの中年女みたいなことを言う。
その声に鴻志はようやく我に帰った。真梨子を見下ろし、にらみつけ、怒鳴りつけた。
「何だ、これは⁉ どういうことだ!」
鴻志の怒鳴り声に真梨子はけろりとして答えた。
「見ての通り。今日からこの家で暮らすことにしたの」
「聞いてないぞ、そんなこと!」
「だからいま、聞いたでしょ?」
と、わざとらしく微笑む。
鴻志は頭のてっぺんが破裂したと思った。
「何でそんなこと……勝手に……お前……!」
さすがの鴻志が怒りのあまり顔がひきつり、言葉が出てこない。言葉のプロにあるまじき失態である。
真梨子はあくまでもけろりとした様子で説明した。
「あなたの計画に噛ませてもらおうと思ってね」
「なに?」
「復讐のほうじゃないわよ。『世界を変える』ってやつ。あたしも少しでも関わりたくなったのよ」
「それはおれの楽しみだ! 勝手に入ってくるな」
「何言ってんの。自分から依頼してきたくせに」
「それは……!」
「それに、もう遅いの。何しろ、事務所やめてきちゃったんだから」
「それが……」
『どうした⁉』と叫ぼうとした鴻志の機先を制して真梨子はつづけた。
「自分の事務所を開いて独立しようと思ってね。今度こそ、弁護士になろうとしたときの思い通り、本当に困っている人たちの助けになるつもり。でも、やっぱり、そういう人たちってお金、ないじゃない? きちんと商売として成り立つかどうか不安があるし、節約できるものは節約したいわけ。この家に住まわせてもらえれば家賃、浮くじゃない」
言いたいことを言って居間の反対側、庭に面した西側の部屋に近づく。フローリングのその部屋は、広いけれど家具ひとつないがらんどう。真梨子は大きな窓ガラスを開け、靴のままなかに入った。まわりを見渡し、満足気にうなずく。
「うん。これだけ広ければ充分、オフィスとして使えるわね。ええと、必要な備品はとりあえずはレンタルでいいか。それと電話は……まあ、携帯があればわざわざ別に引かなくてもいいか」
「ちょっと待てえ!」
ひとりで勝手にどんどん計画を進める真梨子にようやく追いついた鴻志が叫んだ。
「勝手に話を進めるな! 何でおれがお前を住まわせなけりゃならんのだ!」
「いいじゃない。部屋はいっぱいあるんだし。使ってあげたほうが部屋のためってもんでしょ。それに、あたしをおいておいたほうが何かと便利よ」
「なにが!」
「家賃は払えないけど、そのかわり、ただで弁護士してあげるわ。世界的作家ともなれば顧問弁護士だって必要でしょ? 身近にいたほうがいいじゃない。それに、あたしがいれば依頼人の人生を間近に見ることができるわ。『人生経験が乏しいから少しでも他人を観察しておく必要がある』って言ってたじゃない。これって絶好の観察機会でしょ?」
真梨子の言葉に鴻志はたしかに虚をつかれた。あっけにとられた表情になった。灰色の脳細胞が所有者の意志とは関係なくすばやく動き、計算する。
「……なるほど。それはいいな」
言ってしまってから『しまった!』と思い、口を押さえた。しかし、遅い。真梨子はしてやったりとばかりに鴻志の肩を叩いた。
「はい、決まり! これからよろしくね」
地面がひび割れ、砕けちり、奈落の底に転落する気になった鴻志であった。
△ ▽
鴻志と真梨子は裁判所の前にやってきていた。
真梨子はおちついたブラウンのスーツ。鴻志は例の『仕事着』――つまり、スカイグレーのエルネメジルト・ゼニアのスーツ、シルバースカイのタイ・ユア・タイのシャツ、淡いブラウンのメローラのネクタイ、茶色のタニノ・クリスチーの靴という高級ブランドに身を固め、髪はかっきりとセットし、ひげも隙なくそり、メガネをかけている、という出で立ち。しかし、今回ばかりは緊張のためか、森山鴻志バージョン2らしいクールでメカニックな雰囲気、ともすれば、人間ではなく、アンドロイドに見えてしまいそうな無機的な印象がない。かわりに、何か居心地の悪そうな、不安そうな雰囲気が見てとれる。
「何緊張してるのよ。あなたの望んだことでしょ!」
と、こちらはすっかり元気いっぱいになった真梨子が鴻志の背を威勢よく叩いた。鴻志はそんな真梨子をじっとりとにらんだ。
結局、鴻志は真梨子を家に同居させるはめになっていた。押しかけ女房ならぬ押しかけ弁護士など御免こうむりたいところなのだが、『貯金も全部使っちゃったから追い出されたらホームレスになるしかない』とまで言われて放っぽり出せるような人間ではしょせん、ない。
――……それにまあ、顧問弁護士がいたほうが便利なのはたしかだし、いろいろな人生を間近に見られるってのは魅力だからなあ。
と、無理やり納得――と言うか、自分に言い訳するようにしてその状況を受け入れた。相当に割り切れない、いまいましいものを感じながら、のことではあったが。
一方、真梨子のほうは『これから本当の人生をはじめるのだ』との喜びをまき散らして元気いっぱい。鴻志の困惑などお構いなしに猛烈に行動を開始した。依頼人捜して東奔西走したかと思えば、一方では鴻志の計画を遂行するための手続きに駆けまわり、裁判に持ち込んだ。そして、今日は記念すべき公判の一回目、というわけだ。
鴻志はいまだに割り切れない口調で真梨子にいった。
「……お前、本当にやるつもりなのか?」
「いまさら、何言ってるのよ。あなたが持ち込んできたことじゃない」
「それはそうだが……手続きだけしてくれればよかったんだよ。法廷での活動は全部、自分でやるつもりで……」
「そういう事は弁護士に任せておけばいいの。そのためにいるんだから。第一、あなたの戦いはあなたひとりのものじゃないでしょ。あたしだって、『世界を変える』ための行動はぜひともしたいわ」
関東大震災クラスの巨大地震が足もとに集中しようが、空から突然、一ダースの原爆が降ってこようが、揺るぎそうにない真梨子の決意を前に鴻志はため息をついた。うなだれてぶちぶちと愚痴をこぼしはじめた。
「……何でこんなことになったんだ? ひとりで世の中全部敵にまわして一匹狼の快感にひたるつもりでいたのに、こんな出しゃばり女が出てきやがって。孤高の英雄の美学が台無しだ。どうしてくれる、まったく……」
放っておいたら地面にしゃがみ込んで指先で『の』の字を書きはじめかねない鴻志を真梨子は力ずくでひっぱった。
「いつまでも愚痴ってないで! ほら、行くわよ。何か、こういうときにぴったりの景気づけの歌ってないの?」
「歌……ねえ」
鴻志は頬をぽりぽりとかいた。
「こんなんでどうだ?」
死んじゃいないさ
生きているさ
まだ何かできるさ
負け犬だって意地は残ってる
戦うための牙はまだ折れちゃいない
静かな、しかし、力強い歌声に真梨子はうなずいた。
「いいんじゃない。ずっと歌ってて」
夢見る力はあるさ
創りたい未来があるさ
やる気を集めて
声をそろえて
この世の地獄を減らして
今を生きてるおれたちだけにできること
ウルトラマンにもできないことおれたちにはできる
絶望超えて
屈辱踏みつけ
誇りたかき生涯を
鴻志の歌声に乗ってふたりは手を組んだまま裁判所へ一歩、また一歩と近づいていく。これからはじまる永い、永い、戦いの舞台へと。
死んじゃいないさ
生きているさ
まだ何かできるさ
負け犬だって意地は残ってる
戦うための牙はまだ折れちゃいない
戦うための牙はまだ折れちゃいない
戦うための牙はまだ折れちゃいない……。
終
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