転生先が婚約破棄された伯爵令嬢でしたが、私の自走式ゴミ箱が最強すぎて負ける気がしません

松本雀

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違和感が仕事をしてしまった件について

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――翌日。

朝の陽光が、ブランフォード家の食堂に優しく差し込んでいた。カーテンの隙間から漏れる光が、磨き上げられた銀器や白磁の皿を照らし、優雅な朝食の場を一層華やかに演出している。

そして、その場で私は――豪華な朝食を爆食していた。

「うっま……!」

熱々のスープを一口飲み、次にバターがたっぷりと染み込んだ焼きたてのパンにかぶりつく。外はサクッと香ばしく、中はしっとりとした層が幾重にも重なり、ほんのりとした甘みが口の中に広がる。

「……幸せ……」

至福のため息が漏れる。

目の前には豪華な料理がずらりと並んでいた。濃厚なチーズがとろけるオムレツ、ハーブが香るソーセージ、新鮮なフルーツに、ハチミツがたっぷりかかったヨーグルト。飲み物は香り高い紅茶。

貴族の朝食ってすごい……!
これが毎朝食べられるなら、一生ここに住んでもいいかもしれない。

「……やはり、あの時のお嬢様はご本人ではなかったのですね。」

向かいの席から、アルフレッドがしみじみと呟いた。その視線には、どこか確信めいたものがある。

私は口に含んでいた紅茶を吹きかけそうになり、慌てて手を口に当てる。

「ごほっ……どうしてそう思ったの?」

「実は……少し前から、屋敷の者たちの間で違和感が囁かれておりました。」

アルフレッドは静かに語り始めた。

「まず、食事の量です。お嬢様は元々少食で、朝はほとんど召し上がらなかったのに、ある日を境に『二人分』食べるようになりました。」

「……」

まあ、それはね。私は異世界転生者であり、日本で普通に食べてた量を維持してただけで……。

「それから、夜の寝室から時折聞こえてくるいびき。お嬢様は普段、寝息すら立てない方でしたが、最近は時折、驚くほど豪快な音が響いておりました。」

「……」

屋敷のふかふかベッドが気持ちよすぎたせいでは?

さらに、アルフレッドはメイドたちに目配せをする。

「そして……扉の開け方。」

「扉の開け方?」

「お嬢様は、普段お手を添えてそっと開ける方でした。しかし、最近は足で開けることが増えました。」

「……」

いやいや、だってあのドア、めっちゃ重いんだよ!?証拠探しの資料で両手がふさがってたら、普通に足で開けるでしょ!?

「……極めつけは、お嬢様が庭の小鳥を眺めながら…… 『美味しそう』 と呟かれたことです。」

「……」

しまった。

「これらの点から考えて、以前のミレイア様とは何かが違う……と、屋敷の者たちで噂しておりました。」

「え、みんな知ってたの!?」

「確証はありませんでしたが。」

「ちょっと待って! 私、めちゃくちゃ頑張って貴族令嬢らしく振る舞ってたんだけど!?」

「……………それは、どのあたりを?」

「ええと……食事のマナーとか……おしとやかに座るとか……言葉遣いとか……」

「……あの、ドッコイショーとかヨッコラショという掛け声は……」

「それはほら、日本の習慣が……ってそんなこと言ってた!? 」

メイドたちの方を見ると、彼女たちは申し訳なさそうな表情を浮かべながら、大きく頷いた。

「……」

いや、もういっそ潔く謝った方がいい気がしてきた。

「……あの、黙っていてごめんなさい。」

「とんでもございません!貴方様を責める者は、この屋敷に一人もおりません。」

アルフレッドは、静かにナプキンを畳みながら続けた。

「お嬢様が変わられた理由は、きっと何か深い事情があるのだろう、と思っていました。まさか、そのような恐ろしい陰謀があったとは…。お嬢様の命と名誉を救って頂き、屋敷の者一同を代表して感謝いたします。」

「えへへ…どういたしまして。」

うん、こんなに気づかれてたなら、もっと早く言えばよかったかもしれない。
でもまあ、もうバレちゃったし、いいよね!

「まあまあ、せっかくの朝ごはんだし、皆で美味しく食べよう!」

「異世界の方は、朝から本当にお元気ですね。」

エリオットが微笑みながらパンを口に運ぶ。
そしてミレイアは 「私の体でそんなことが……」 と、どこか遠い目をしていた。

――こうして、ついに、ブランフォード家で私の正体は白日の下に晒されたのだった。
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