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第1章 インターハイ予選

009  インターハイ予選Ⅸ

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 紀行の質問に簡単に答えながら、PCのデータに修正を入れて、ENTERキーのボタンを押した。
 皆が話している間に和弥は逆転して5—4ファイブフォーとし、そして、40—30フォーティサーティのマッチポイントになっていた。
 トスを上げて、高く上がったボールを高い打点でスイングして、センターにフラットサーブを打った。白石はフォアハンドでボールを捕らえて、リターンする。それをクロス側に返して、白石が右側に移動しようとしているのを見て、和弥がもう一度クロス側に打って、試合を決めた。
「ゲームセット。カウント6—4シックスフォー
 試合が終わる合図が聞こえ、和弥はその場で倒れた。体の負担ふたんが限界を通り過ぎ、力が抜けていく。
(やっと終わった……。勝った!勝ったぞ!)
 深呼吸をしながら数十秒後にゆっくりと立ち上がると、待っている白石の方へ行き、ネットを挟んで握手を交わした。一日目の日程はここで終わり、主審から記録用紙を預かると自分のテニス道具を直して、それを自分のチームのベンチに置いた後に、ボールと一緒に本部席に歩いて行った。
「13番コート終わりました。桜坂高校の優木が勝ちました」
 和弥は記録用紙とボール、それに掲示板に貼ってある対戦カードのマグネットを係員に渡した。本部席には他の一回戦を勝ち抜いた選手がぞろぞろといて、窮屈だった。その後、東郷に試合報告をしに行き、助言や試合の反省などを告げるとチームの観客席に戻った。

 今日の全日程が終了し、荷物を持って、近くの宿泊所に移動した。宿泊所は海が目の前で朝日あさひが昇るとき、景色が綺麗な場所である。和弥たちは試合の疲れを温泉で全部流していた。
「でも、団体、個人戦共々、全員の来れてよかったよな」
 温泉に浸かりながら、和弥が言った。
「お前はほぼアウトだっただろうが!あんな試合をして、よくもまあ言えたものだな!」
 紀行は眼鏡を外しており、視界がぼやけて誰が誰なのかはっきりとしない状態だった。温泉の湯気で周りがほとんど見えない。この隣は女湯であり、女子の声も聞こえてくる。
「ねぇ、この温泉。いい匂いがするわよ。それに効能効果があって、いいらしいわ!」
理奈りなの体ってなんでこんなにすべすべなの?」
「先輩の胸。思ったよりも大きいですね‼」
 と、壁の向こう側から女子たちの楽しそうで男心を惑わせる誘惑ゆうわくな声がなんともいやらしい。
「なあ、この向こうには花園はなぞのがあるのか?」
「ああ、あの向こうには天国……いや、それ以上のものがあるはずだ!」
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