4 / 10
序章
004 序章Ⅳ
しおりを挟む
「誰が助けたのか。そして、その二人が今何をしているのかをこちらからは話してはならないんだ」
追及する春佳に信之が言う。
「とにかく、春佳もそうならないように当主の命は絶対に従うこと。それに違反するのならたとえ、妹であったとしてもこれを罰さなければならないからね。僕は嫌だよ。愛する妹に手をかけるのは……」
「…………」
春佳は黙ったまま聞く。
「世界がおかしくなってから七十年間。現在の我々、世界の理を守るものとして手が足りないのです。三千世界を統一すれば、すなわち、世界を制する。これらの霊気を元に戻すことができればいいのです」
「三千世界……」
「だが、その霊気もまた、これ以上乱すことがあるとするならば、そこを中心に徐々にそれは広まり、やがて人類は支配されるだろう」
「そして、その霊気を除霊する方法はどうすればいいのですか?」
春佳が退治方法を訊き出す。どうすればいいのか、まだ、知らない。
「ああ。それは霊獣化して現れる。それを倒せばいい」
「霊獣化とは?」
「霊気が合わさって作り出された獣ことです。我々はそう呼んでいます」
「それを戦闘で倒せばいいんですね」
「そうだけど、霊獣にも弱いのから強いのまでうじゃうじゃといる。霊獣を倒し、一条家の名に恥じぬように行って参れ……」
信之は扇子を広げ、力強く言い放った。
「本当に私でいいのですね……」
「もちろん。僕が苦悩と戦い続けた結果がこれだからね。それに他の本家と遭遇した場合は、共闘すること」
「は、はぁ……。共闘ですか」
気が乗らなさそうに小さく頷く。
今まで戦闘訓練は積んでおり、実際に兄の仕事で何度か実践をしたことがあるが、自分たち以外の名家の者と交流をしたことがない。だが、知っている人物は数えるほどしかいない。彼らがどう接触してくるのか。見当がつかない。
「一応、餞別として向こうの学校に転校の手続きも取ってある。それに今まで木刀だったが自分の刀を持って行きなさい。生半可な相手じゃないからね」
そして、後ろに置いて木箱から通帳、印鑑。そして、新品の銃とマガジンを春佳の前に出した。その隣には封印のお札が備えてある。
「このお札は何ですか?」
「これはお守り代わりに持って行きなさい。いつか、きっと役に立つはずだから……」
これはたぶん、信之が自分の霊力を込めて作りだしたお札。
それに新品の銃とマガジンは、これは対霊獣用のマガジンと普通の実弾用のマガジンに分けられている。霊力の籠った弾は、発砲した後に発動するように術が組み込まれている。そして、通帳と印鑑は、生活に必要な物だ。
これだけあれば生活に困らないと考えているのだろう。だが、弾が切れたら補充用の箱を春佳は持っていない。
「分かりました。ありがたく頂戴します」
箱の蓋を閉じ、紐を結び直すと春佳に渡した。
この高級そうな木箱は、現代の匠が作ったにしては出来がいい。
「それと、予備の弾は毎月送るから心配しなくてもいいよ。今は、これだけあれば十分だから。後は、自分の荷物をまとめて部屋の前に置いておきなさい」
「それで神代町のどこに私は住めばいいのでしょうか?」
春佳は困りながら言った。
「それはこの住所に書いてある。まあ、一応一軒家だから一人じゃ広すぎると思うけど、自由に使っていいから」
「兄様。さすがに一軒家は広すぎますよ。アパートかマンションぐらいでいいです」
「いや、ここには結界を張っているから心配はない。それに不憫な事もあるだろうし……」
「まさかとは思いますが、私に男が出来るとでも思いですか? そんなことは一切ありません」
察した春佳は、溜息をついた。
「僕はそんなこと一言も言ってないよ。別に春佳が男を連れてこようとどうでもいいけどね」
「…………」
顔が赤く染まり、恥じらい。そして、顔をうつむく。
彼女は立ち上がり、そして、一礼して、信之の部屋から姿を消した。
春佳が姿を消した後、信之は笑いながら腹を抑えて、扇子を仰いだ。
彼はこれが運命の定めだと感じた。星占いは、すべてを有耶無耶にしており、見えない道がある。
だが、彼と出会えばまだ分からないとそれだけしか思っていなかった。そう、彼が覚醒すればという話――――
追及する春佳に信之が言う。
「とにかく、春佳もそうならないように当主の命は絶対に従うこと。それに違反するのならたとえ、妹であったとしてもこれを罰さなければならないからね。僕は嫌だよ。愛する妹に手をかけるのは……」
「…………」
春佳は黙ったまま聞く。
「世界がおかしくなってから七十年間。現在の我々、世界の理を守るものとして手が足りないのです。三千世界を統一すれば、すなわち、世界を制する。これらの霊気を元に戻すことができればいいのです」
「三千世界……」
「だが、その霊気もまた、これ以上乱すことがあるとするならば、そこを中心に徐々にそれは広まり、やがて人類は支配されるだろう」
「そして、その霊気を除霊する方法はどうすればいいのですか?」
春佳が退治方法を訊き出す。どうすればいいのか、まだ、知らない。
「ああ。それは霊獣化して現れる。それを倒せばいい」
「霊獣化とは?」
「霊気が合わさって作り出された獣ことです。我々はそう呼んでいます」
「それを戦闘で倒せばいいんですね」
「そうだけど、霊獣にも弱いのから強いのまでうじゃうじゃといる。霊獣を倒し、一条家の名に恥じぬように行って参れ……」
信之は扇子を広げ、力強く言い放った。
「本当に私でいいのですね……」
「もちろん。僕が苦悩と戦い続けた結果がこれだからね。それに他の本家と遭遇した場合は、共闘すること」
「は、はぁ……。共闘ですか」
気が乗らなさそうに小さく頷く。
今まで戦闘訓練は積んでおり、実際に兄の仕事で何度か実践をしたことがあるが、自分たち以外の名家の者と交流をしたことがない。だが、知っている人物は数えるほどしかいない。彼らがどう接触してくるのか。見当がつかない。
「一応、餞別として向こうの学校に転校の手続きも取ってある。それに今まで木刀だったが自分の刀を持って行きなさい。生半可な相手じゃないからね」
そして、後ろに置いて木箱から通帳、印鑑。そして、新品の銃とマガジンを春佳の前に出した。その隣には封印のお札が備えてある。
「このお札は何ですか?」
「これはお守り代わりに持って行きなさい。いつか、きっと役に立つはずだから……」
これはたぶん、信之が自分の霊力を込めて作りだしたお札。
それに新品の銃とマガジンは、これは対霊獣用のマガジンと普通の実弾用のマガジンに分けられている。霊力の籠った弾は、発砲した後に発動するように術が組み込まれている。そして、通帳と印鑑は、生活に必要な物だ。
これだけあれば生活に困らないと考えているのだろう。だが、弾が切れたら補充用の箱を春佳は持っていない。
「分かりました。ありがたく頂戴します」
箱の蓋を閉じ、紐を結び直すと春佳に渡した。
この高級そうな木箱は、現代の匠が作ったにしては出来がいい。
「それと、予備の弾は毎月送るから心配しなくてもいいよ。今は、これだけあれば十分だから。後は、自分の荷物をまとめて部屋の前に置いておきなさい」
「それで神代町のどこに私は住めばいいのでしょうか?」
春佳は困りながら言った。
「それはこの住所に書いてある。まあ、一応一軒家だから一人じゃ広すぎると思うけど、自由に使っていいから」
「兄様。さすがに一軒家は広すぎますよ。アパートかマンションぐらいでいいです」
「いや、ここには結界を張っているから心配はない。それに不憫な事もあるだろうし……」
「まさかとは思いますが、私に男が出来るとでも思いですか? そんなことは一切ありません」
察した春佳は、溜息をついた。
「僕はそんなこと一言も言ってないよ。別に春佳が男を連れてこようとどうでもいいけどね」
「…………」
顔が赤く染まり、恥じらい。そして、顔をうつむく。
彼女は立ち上がり、そして、一礼して、信之の部屋から姿を消した。
春佳が姿を消した後、信之は笑いながら腹を抑えて、扇子を仰いだ。
彼はこれが運命の定めだと感じた。星占いは、すべてを有耶無耶にしており、見えない道がある。
だが、彼と出会えばまだ分からないとそれだけしか思っていなかった。そう、彼が覚醒すればという話――――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる