5 / 10
第1章 白銀の少年
005 白銀の少年①Ⅰ
しおりを挟む
太陽が南の空の丁度真ん中に来る前、時計の短針はまだ、十一を指していた頃。
「なあ、なんで高校生になってこんな事をしないといけないんだ?」
エアコンも起動していない蒸し暑い教室。窓を開けても入ってくるのは生暖かい風。
八嶋正寿は、目の前にあるプリントを睨みつけながら格闘していた。蒸し暑い、この教室で、ほとんどの生徒が生死の境目をさ迷っている。額から首を伝って上半身から足にかけて、汗がだらだらと流れる。目が霞んでいる。
まだ、五月のじめじめした季節。神代町の神代北高等学校二年一組。前の席の女子の制服が汗で透けて、ブラの部分がくっきりと見える。目のやり場にも困るというのはこういった状況であり、正寿は下敷きで仰ぎながら少しでも涼しくしようと頑張っていた。
そして、時間が刻々と過ぎていき、気づいた時にはもう午後十二時十分を回っていた。チャイムが鳴り、今日の授業は終了した。コンビニで買っておいた弁当をバックの中から取り出して、制服の第二ボタンまで外した。
「今日の授業終わった―」
正寿はすべての脱力感が抜け、最初に発した言葉がこれだった。正寿と一緒に彼の同級生が昼食を取っていた。
「ねぇー、今日の正寿君はコンビニの弁当なんだ……」
「ああ、うちの妹が寝坊してしまって、今日は朝からコンビニに直行して、朝食の買い出しに昼食まで買ったんだよ」
「お前、妹に頼りすぎじゃないか? いくら三人妹たちがいるからって一人が四人分毎日作っていればそう言う日もあるだろう?」
気の緩い声の持ち主が椅子を傾けながら壁により反り、パンを口にしている。正寿は溜息をついた。ご飯の上にある牛肉を一切れ割り箸で摘み取る。
「しょうがねぇーだろ? 春乃の奴が絶対に自分が作っているときは手伝わせてくれないんだから……」
「だとして、それはないな」
「いや、お前に言われたくない。だが、この後暇だよな……」
そう呟くと、正寿の友人の一人は額に手を当てて、もう一人は自分の友人と笑っていた。
今日は土曜日であり、土曜課外といった特別授業なのである。
「それよりもたった一ヶ月の間に一回は土曜課外があるのはどうよ。休みは明日しかないじゃねぇーか。それにこの梅雨の季節の間に殺されそうな暑さが来ているし、イライラだけしか残らねぇ‼」
正寿はむしゃくしゃして、弁当をものすごい勢いで食べつくしていく。正寿のグループは本来、男子三名・女子二名の五人グループだが、一人、今日は風邪で学校に来ていない。
「私だってそうよ。土曜日なのに白雪と買い物に行けないんだからお互い様よ。文句があるなら学校側に言いなさいよね」
ストローを人差し指で撫でるように回しながら、いかにも男勝りの少女は、黒色の長髪に先の方はシュシュで一つに纏めている。彼女の名は毛利楓。
「なあ、なんで高校生になってこんな事をしないといけないんだ?」
エアコンも起動していない蒸し暑い教室。窓を開けても入ってくるのは生暖かい風。
八嶋正寿は、目の前にあるプリントを睨みつけながら格闘していた。蒸し暑い、この教室で、ほとんどの生徒が生死の境目をさ迷っている。額から首を伝って上半身から足にかけて、汗がだらだらと流れる。目が霞んでいる。
まだ、五月のじめじめした季節。神代町の神代北高等学校二年一組。前の席の女子の制服が汗で透けて、ブラの部分がくっきりと見える。目のやり場にも困るというのはこういった状況であり、正寿は下敷きで仰ぎながら少しでも涼しくしようと頑張っていた。
そして、時間が刻々と過ぎていき、気づいた時にはもう午後十二時十分を回っていた。チャイムが鳴り、今日の授業は終了した。コンビニで買っておいた弁当をバックの中から取り出して、制服の第二ボタンまで外した。
「今日の授業終わった―」
正寿はすべての脱力感が抜け、最初に発した言葉がこれだった。正寿と一緒に彼の同級生が昼食を取っていた。
「ねぇー、今日の正寿君はコンビニの弁当なんだ……」
「ああ、うちの妹が寝坊してしまって、今日は朝からコンビニに直行して、朝食の買い出しに昼食まで買ったんだよ」
「お前、妹に頼りすぎじゃないか? いくら三人妹たちがいるからって一人が四人分毎日作っていればそう言う日もあるだろう?」
気の緩い声の持ち主が椅子を傾けながら壁により反り、パンを口にしている。正寿は溜息をついた。ご飯の上にある牛肉を一切れ割り箸で摘み取る。
「しょうがねぇーだろ? 春乃の奴が絶対に自分が作っているときは手伝わせてくれないんだから……」
「だとして、それはないな」
「いや、お前に言われたくない。だが、この後暇だよな……」
そう呟くと、正寿の友人の一人は額に手を当てて、もう一人は自分の友人と笑っていた。
今日は土曜日であり、土曜課外といった特別授業なのである。
「それよりもたった一ヶ月の間に一回は土曜課外があるのはどうよ。休みは明日しかないじゃねぇーか。それにこの梅雨の季節の間に殺されそうな暑さが来ているし、イライラだけしか残らねぇ‼」
正寿はむしゃくしゃして、弁当をものすごい勢いで食べつくしていく。正寿のグループは本来、男子三名・女子二名の五人グループだが、一人、今日は風邪で学校に来ていない。
「私だってそうよ。土曜日なのに白雪と買い物に行けないんだからお互い様よ。文句があるなら学校側に言いなさいよね」
ストローを人差し指で撫でるように回しながら、いかにも男勝りの少女は、黒色の長髪に先の方はシュシュで一つに纏めている。彼女の名は毛利楓。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる