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第2章  二人の旅人

ⅩⅢ

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「もう一つだと?」

 ボーデンは嫌な顔をする。

 さっきの一つでも、面倒だと思っていた矢先に追加の依頼をされると、イラっときてしまう。

「ああ。そこの遺跡にヴィルヘム国の国家魔法師である人物に会って来て欲しい。もしかすると、貴様の手助けになるかもしれん。訪ねてみてはどうか?」

 バルトは、ボーデンの為を思っての提案だった。

「俺の手助けだと? そんなに凄い国家魔法師なのか?」

 半信半疑に聞いていたボーデンは、バルトの言葉を鵜呑みにせず、まず、その国家魔法師の話を疑った。

 自分よりすごい魔法使いがそう簡単にいるとは思えないボーデン。

「ま、信じないのはそうだろうな。だが、その国家魔法師は、長年、あそこの遺跡を研究し続けている人物だ。国家魔法師で留まっているが、本来の力であれば、国際魔法師であってもおかしく無いしとだ」

「つまり、力はあるのにそれを勿体ぶった魔法使いって事か……」

「そう言う事だ」

 バルトの話を聞いて、少し考え込んでしまうボーデン。

「私もその魔法使いに会ってみたいものね。もしかすると、面白い事が分かるかも……」

 ラミアは話に乗っかる。

「その魔法使いは、課題魔法に近い原理げんりの研究を非公開で半ば完成させていると言っている。俺も魔法使いとしては、見てみたいものだが、未だに一度も見た事がない。でも、貴様だったら……いや、言わないほうがいいだろう。一度、会ってみた方がすぐに分かる」

 勿体ぶって、それ以上は話そうとしなかった。

 エルザは、空になったコーヒーカップに追加で二杯目を入れ、バルトの分も一緒にいれる。
 話はそれから1時間ほど長続きをし、気付いた頃には夕方になっていた。

「さて、話す事は全て話したが……君達は、この後、どうするつもりかね? 手紙は明日、エルザに持って行かせるつもりだ」

 バルトは、自分の手紙を彼女に持って行かせると言った。

 彼は明日、軍の会議に出席しなければならないのだ。

 外には、子供達の姿は消え、夜の大人たちが徐々に姿を現す。まだ、この街に泊まる宿の予約を取っていなければ、夕食すら食べていない。

「取っているわけがないでしょ」

 ボーデンは額に手を当てる。

「そうか。だったら俺とエルザが住んでいる寮に泊まればいい。我々の客人と言っておけば、少しの滞在は可能だしな……」
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