上 下
44 / 57
第3章  闇の奥底

ⅩⅦ

しおりを挟む
「大丈夫です。あなたより部下達は優秀ですから」

 エルザはバルトのことを信用していない。

「それに向こうに早くいきたいのなら、私が運転したほうがいいのでは?」

「いや、それだけはやめてくれ。向こうに着く前に俺がどうなってしまう」

 バルトは、エルザの運転テクニックを知っているため、乗ると自分がどうなるのか分かっている。

「ダメです。すぐに向かいます。私の車、すぐそこに駐車していますので……」

 エルザは窓の外を指差し、ポツンと停められている車を指差す。

「乗らないといけないか?」

「いけません。さぁ、早くいきましょう」

 エルザはバルトの背中を押し、部屋を後にした。



    ×     ×     ×



 事故現場から南東に約三キロ地点––––

「あ、あちぃー。やっぱ、車内に残っておいたほうがよかったか?」

 ボーデンは、木で作られた水筒に入っている水をちびちびと飲みながら言う。

「歩いて行くと言ったのは貴方よ。私だって、疲れているんだから踏ん張りなさいよ」

 隣で歩くラミアもまた、バテている。

 二人は線路の道を歩きながら、次の駅を目指している。

「それにしてもまさか、こんなところで足止めを食らうとは……な」

「そうね。言っておくけど……」

「なんだ?」

「私、この灼熱の太陽に弱いのを忘れてた……」

 ラミアが急に倒れる。

「あ、おい‼︎  いきなり倒れるなよ!」

 ボーデンは、倒れるラミアをギリギリの位置でしっかりと受け止め、彼女を抱く。

「もう、無理。おぶって?」

「無理言うな。ただでさえ俺も体力ギリギリで歩いているんだぞ!」

「お願い、少しの間だけ休ませて……」

 ラミアが上目遣いを使い、お願いしてくる。

「うっ……」

 それを見て、ボーデンは戸惑ってしまう。

 流石にそんな目で見られると、助けないわけにはいかない。
しおりを挟む

処理中です...