俺のユニバーサルライフは要するにあまりいいものではなく青春的な展開などあり得ない

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ

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第3章  時には夢を見たいと思うことがある

011  時には夢を見たいと思うことがあるⅢ

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 俺は夏目を睨みつけると、彼女はジト目で俺を見る。
「いやー、なんとなくむかついたから。それに天道君って女子の扱い方下手でしょ。それだと嫌われるし」
 うるせいやい。この女、だって聞いていれば……だから、体育会系の女子は嫌いなんだよ。気が強いし、我も強いからな。我一番ならなければと言う女子、高校時代、クラスに居たわ。名前は確か……杉山すぎやまだったか?ま、そんなのどうでもいいか。
「俺は他人がどう思っていようとどうでもいいんだよ。むしろ、仲良くされる方が困る」
「うわー、引くわー。何なの、ネガティブエージェントなの。私、寒気がしたんですけど……」
 夏目は嫌味いやみを言いながら引いている表情で体に腕を巻き付け、後ろに退く。こいつ、見かけによらずアホだと思っていたが毒舌だな。冬月ほどではないけど……。その隣で聞いていた冬月が口を開く。
「ネガティブエージェント……。ふふふ」
 いや、そこは俺を助けるところだろ。どうやら、冬月の頭の中にはもう一つ、余計な単語がインプットされたらしい。
「その言葉、いい表現ね。気に入ったわ」
 と、口元を手で押さえながら笑いをこらえているように見えた。ああ、腹立つ。
「それにしても、初対面の癖にその扱いはひどくないか?もう何、傷ついた的な」
「いやいや、ただ本心を言っただけだし。嘘は言ってないから」
「ま、本当のことだから否定はできないわね」
 ええ、冬月さん。あなたまでそちら側まで回られると冷たさが倍増するのでやめてもらえますかね……。
「天道。お前は女子を敵に回すと将来的にだまされるタイプだな」
 藤原先生は、はははと笑いながら大きな声で、こちらを見てくる。
「いや、女運のないあんたに言われたくねーよ」
「何か言ったか?天道」
 笑顔から急変して、その表情は笑っているように見えるがその中身は鬼の表情が浮かび上がってくる。
 ……んー。これはこれで冬月並みの怖さですね……。このまま怒らせた状態でいたら俺、死ぬな。
 やっぱり、怖い。
 汗は少しずつ額から首へと流れていき、俺は一つの決心がついた。これは本人に直接言わないといけないのだろう。
「すみませんでした」
「ま、これぐらいで許してやるとするか。天道。言葉にはとげが紙一重だから特に女子と話すときは気を付けた方がいいぞ」
 藤原先生はどこか遠い目をしていた。自分が過去に何かしらの傷を負った体験でもしたのだろう。俺でもその態度からある程度の事は想像できる。何かとんでもないことを口弾んだんだろうな。この人の事だし……。
「天道君も将来的には……。でも、その前に現実を見た方が私的にはいいと思うのだけれど。どうかしら」
 言いやがったよ。この女、なんで毎回毎回、口を開けば出てくるのは突き刺さる発言。その冷たさなんだ。俺は言いたい、お前はもう少し人に対する優しさを覚えろと……。
 主人公達がヤンキーばかりだったけど、一人の泣き虫先生で人生が変わったっていう実話を基にしたドラマ知らない?あれ絶対に冬月に見せるべきだよ。
 夏目は溜息をついて、手をあごに着けながらふて腐れた表情でこちらを見てくる。
「それで、私の相談どうなったの。何か、話が違う方向へ行っているような気がするんですけど……」
 と、俺達の会話に横からグサッと来る言葉が飛び込んできた。
「ああ、すまん。すまん。すっかり忘れていた」
 忘れていたのかよ。あんたが連れてきた奴だろ。今まで何していたんだよ。俺も今まで忘れていたけど……。
 冬月も「ああ」と、口を漏らしながら思い出したかのようにハッとする。
「私も今まで忘れていたわ。私がした事が……」
 そう言いながら、顔を下に向き、頭を抱える。冬月が意外と落ちこむところを始めてみた俺は驚いた。
「お前にも忘れることがあるんだな」
 優しい目線で俺は冬月に言う。まるで俺が冬月に口げんかで勝ったかのように喜ばしかった。
「いや、なんでみんな忘れているの。ショックなんですけど……」
 少し落ち込んだ表情で夏目は言う。俺は落ち込んでいる夏目に問いかけた。
「それでどんなスランプなんだ。具体的に言ってもらわないと俺たちもどうすることもできないからな。それにテニスでスランプと言ったら精神面が多いからな。その点に関してはあの先生に相談をしたのが正解だっただろうな」
 テニスは紳士のスポーツだし、怪我けがも多いから精神を強化しないと挫折する。
 これはどこのスポーツ界でも共通する話で、スポーツマンは紳士的に行動しないといけない。試合中、故障することも多い。でも、何歳までプロで居続けられるかは、自分の体力次第でここだけは個人差にある。例を言えば、イチロー選手なんかいつまでたっても衰えないだろ。あれは化け物だろ。ああ言う人ほどしっかりと私生活から厳しくしているからあの年までプレーをし続けられるんだろうな。
「その……サーブの入れる時とリターンをリードする確率がこの頃低くて……」
 と言いながら、あははと照れ笑いで誤魔化ごまかしながら俺たちを見る。
 いや、そんな軽い口で言うことじゃないだろ。それにそんなに恥ずかしいことではないだろ。ね、それは自分にとっての今の実力です。
「と、言うわけだ。二人とも彼女の悩みを解消することが出来るか?」
 藤原先生はそう言って、色々な種類のお菓子を皿にのせて俺たちの目の前に出す。
 そんなものいつ持ってきたんだと疑問を投げかけようと思った。俺はクッキーを手に取り、冬月はチョコレートを手に取る。夏目は食べようとしない。
「夏目、お前も少し食べたらどうだ。遠慮することはないぞ」
 先生はそう言って、夏目に遠慮するなと勧める。
「あ、ありがとうございます。それでは……」
 そう言いながら、夏目は手を伸ばして小さな筒紙に包まれている四角形のチョコレートを手に取った。
「これって……」
 手に取ったチョコレートの筒紙の表面の文字を見ると何故か驚いていた。そのままじっくりと数秒間見つめて、筒紙を丁寧に開いた。夏目はうわぁと、小さく声を出した。
「先生、これって京都の有名菓子店の……」
 口に入れ食べながら、嬉しそうに言ってくる。そうなの。このチョコレートそんなの高いものだったの。
 俺も気になって同じものを手にする。表には見たことのないロゴが書いてある。
 すると、藤原先生はニヤッと満足そうに笑みを浮かべながら言う。
「ああ、その通りだ。この前、出張で京都に行ったときにそっちの医療センターの先生からそれとまんじゅうを貰ったんだ」
 まんじゅう?まさか……。
 俺の頭の中をよぎったのはまんじゅうと言ったら絶対にセットで付いてくるアレを一番先に思い付いた。
「まさか先生。これ、貰ったんじゃないんですか」
 と、冬月は右手の親指と人差し指で輪を作り、強調してくる。
「お前も思っていたのかよ。まあ、まさかとは思っていたけど……」
 俺たちはコップを持ったままの先生の方を見る。先生は余裕な表情でニコニコと笑顔で俺たちを見る。
「そんなわけないだろ。それはドラマの中だけの話だ。先生だってそりゃあ、まんじゅうやメロンを貰いたいし、一千万円額の請求書を要求したいな」
 先生は次第にどこか遠い目をしていく。
 あんた、あの「私、失敗しないので」のドラマ見ているのかよ。あの所長、凄く儲かっているからいいよな。俺も就職するなら「くわらばくわらば」と言ってみたい。
「そうですか。俺はてっきり貰っているのかと思っていました」
「ああ、あたしも思った。あのドラマ、凄くお金の話出てくるよね」
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