俺のユニバーサルライフは要するにあまりいいものではなく青春的な展開などあり得ない

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ

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第3章  時には夢を見たいと思うことがある

012  時には夢を見たいと思うことがあるⅣ

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 夏目も続けて言う。
「それでは夏目さんの解決をしましょうか」
「ああ、それでどうするの?何か策でもあるのか?」
「ええ、でも、これはあなた。天道君が一番協力しないといけないわ」
「何で俺が?」
 いやいや、俺みたいな女子の事なんか分からない男が何をするって言うんだ。あれか、二人で何か共同作業でもするのか。それはそれで何か起きそうで怖い気がするし、男女三日合わせればみたいな事だろうか。
「あなた、高校時代。テニスで県のベスト4まで行ったことあるでしょ。それに日本選手権では惜しくも決勝で敗退。だからよ」
 怖い。この女。何で俺の過去まで知っているの?やばいよ、ストーカーだよ。そんなに調べてどうするの?本当に寒気がしてきた。
 ふふんと自慢げに言う冬月に俺は断固抗議だんここうぎをした。
「なんで、お前が俺の黒歴史の過去を知っているの。俺のファンなの?」
「いいえ、ネットであなたの名前を探したら載っていたからよ。そう、偶々よ」
 力強く圧力をかけて冬月はさらりとスルーしながら言う。
 うわー!夏目の言葉を借りるとするなら引くわーと言いたい。
「そうなの。天道君ってそんなに凄い選手だったの。でも、なんで……」
「ああ、それは俺にもいろいろとあるんだよ。それ以上、詮索したらぶっ殺すぞ」
「天道君、いいわね」
 俺が夏目に言うと、冬月は微笑んで何の説明もなしに俺の方を見てくる。
 この微笑み、結構腹立つ……。
「それで協力はいいけどさ。何すんの?」
「天道君には夏目さんの試合相手になってもらうわ。元々、男子のテニスは女子よりも激しく、威力がある。そこをつくのよ」
 冬月が俺の質問に分かりやすく簡潔に説明してくれた。
「なるほど。それはいい案だがそれで解決になるのか?もっと精神面を鍛えるならお灸をすえるとか、座禅ざぜん瞑想めいそうなど色々あるだろ。それにこの事に関してはそこにプロの先生がいるしわざわざ、試合をしなくても……。夏目はそこ、どうなんだ?」
「……天道君の意見もいいと思うよ。でも……それは私にとってはあまり意味がないと思うし、それに時間がかかるじゃん。それに比べて……冬月さんの意見はなんとなくだけど、何か掴めそうな気がするの……」
 夏目は真剣な目で俺と冬月を交互に見ながら答える。
 ま、俺の意見は集中力がアップするのには持て来いの内容だけど、これはまた次の機会に回せばいいか。
 テニスはセンスも差があるから別に今更どうこうしようと小さい頃からの積み重ねでカバーできるから本当に勝負の世界って怖いよね。俺も散々いやって言うほど地獄を見せられたからな。
「ふっ。でも、俺と試合したところでは何もつかめないぞ」
 少し笑った後、俺は夏目に睨みつけるように見た。
「え、え……?」
 夏目は少し驚いて言葉を失う。首を傾げながらズボンを握り、冬月の方を向いて上目遣いで見ている。
「ちょ、夏目さん。顔が近い。少し離れてもらえるかしら」
「あ、ごめん。でも、そんなこと言われたらつい……ね。それは何か欠点があるの?何か、険しいそうに私を見てくるし」
「そうなの。なら、早く話しなさい。早期発見は修正が聞くのよ。ほら、早く……」
 そんなに茶化ちゃかすなよ。俺は患者かよ。どこも悪くないし、医療言葉使うな。ややこしくなるから……。
「いや、ただ何となくそう思っただけだから。本当にそれだけだから……すまん、何も考えてなかった」
 そう言って俺は冬月たちを見た。冬月は呆れている表情、夏目も同じ表情だった。そして、冬月は俺が謝った数十秒後に口を開く。
「何もないなら間際まぎらしいこと言わないで欲しかったわ。何か、重要なことだと思っていたからびっくりしたじゃない」
「う、うん」
 冬月につられて、夏目は頷くだけで少し苦笑いをしながら見てくる。二人同時にそんな風に俺の方を見てくる。
 そこまで俺の事を変な目で見るなよ……。モチベーションが下がるじゃん。
「ま、そんなわけだが話はそれくらいでいいか。三人とも」
 今まで空気のように存在していた藤原先生が後ろから声をかけてきた。まるで座敷童ざしきわらしのように隅っこで一人ぽつんと自分のイスに座っている。
 て、まだいたのかよ……。心細いならこっちに来ればいいのに。小学生の子供が皆の輪の中に入れずに一人隅っこにいる感じみたいなことになっているような。
「まぁ、大体は……」
「そうか。よろしい。では、この案件については明日、西運動公園のテニスコートを手配しよう。それで冬月、何時間あれば十分か?」
 先生が眼鏡を人差し指で整え直す。
「そうですね。では大体、三時間ほどでよろしくお願いします。先生の自腹で……」
 冬月は平然と微笑んだまま、さらりとおごらせる気でいた。普通の男だったら一発で何でもおごっていそうだ。だって、こんな美少女がおごってくれと頼まれたらおごらない奴はいないだろう。
「分かった。三時間な。大人四名で千二百六十円か。ま、安い方だな」
 どうやら、先生が支払いをしているようだ。元々、その気でいるようだった。
 ……千円越え、たった三時間で高そうな値段だな。


 土曜日の朝は、雲がかかっていた。今日は一日中曇りだと天気予報で言っていた。
 テニスコートには、冬月、夏目、藤原先生が集まっていた。女子二人は半袖の運動服に短い半ズボンを履いて、帽子をかぶっていた。先生はいつもの服に上から白衣を着たまま荷物を持たされていた。
 ラケットを取り出し、ボールを持って軽く二人で、ショートラリーを始めた。
 俺の事は待っててはくれないようだ。さぞかし楽しそうで……。
 すぐにバックを肩から降ろして、準備を始める。テニスウェアを脱いでラケットを取り出し、靴を履き替える。
 先生が俺の方に近づいてスポーツドリンクを渡した。
「夏目の相談、どうにかなりそうか」
「今のところは分かりませんがベストな回答ですね」
「そうか。ま、お前の事だ。何か策があるんだろう。存分にやってこい」
「そんなに期待しないでくださいよ。それに何の策もありませんがね……」
「お前はそういう奴だよ。天道。何を考えているのかさとらせない。まさしく、テニス向きのプレイヤーだよ」
「また、冗談を……」
 俺は貰ったスポーツドリンクを飲みながら、テニスコートでアップを開始している二人を眺めていた。
 向こうでは楽しそうにラリーをしているのが少し聞こえる。冬月がまあまあ打つことが出来るとは思っていなかった。どこかでひっそりと練習していたのだろうか。
 すると、アップを中断して冬月が俺を呼び出す。
「ねぇ、いつまで待たせるの?早くこっちに来なさい。始めるわよ」
 むすーとしながら、冬月はイラつきながら俺の方を読んでくる。
「ああ、分かった」
 俺は手を膝に置いてゆっくりと立ち上がり、冬月と夏目を交互に見た。先生はポケットに手を入れたまま缶コーヒーを飲んでいる。
「早く、行って来い」
 と、後押しする。
「いつまで待たせるの?」
 フェンス越しにイライラ感の増した冬月が睨みつけてくる。その冷たい視線で俺を見てくるの、すごく怖いんですけど……。
「ひっ!」
 思わず声が出てしまった。自分でも驚いている。睨みつけられたくらいでこれだけの迫力があるものだと……。
「もう、アップはいいのか?」
「ええ、体は温まって来たからもうすぐ練習を始めようかと思っているところよ」
 帽子を取ってベンチに置き、少し息を切らせながらタオルで汗を拭く。
 大丈夫かよ。少しアップしたくらいで普通、息が切れるか?それを平然とした表情で立っていやがるし……。
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