俺のユニバーサルライフは要するにあまりいいものではなく青春的な展開などあり得ない

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ

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第3章  時には夢を見たいと思うことがある

014  時には夢を見たいと思うことがあるⅥ

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「何故か、確実に決めに来ているのが少しイラつくわ」
 冬月は上から俺を見下ろして、冷たい視線で俺を見た。
「これは戦術だから。誰でもやっていることだからな」
 お前が上から見下ろしていると悪の女王に見える気もするが……。
 そして、ゲームは続いて行き、3—3スリーオールのイーブンが続いた第七ゲーム目。夏目はどんどんファーストサーブの入る確率が低くなってきた。俺は手を抜かずにどんどんポイントを重ねていく。第八ゲーム目は余裕でゲームを取り、3—5スリーファイブの第九ゲーム目。夏目は又もやミスが連続で起き、最後のマッチポイントではダブルフォルトであっけなく勝ってしまった。
「そこまでのようね。3—6スリーシックスで天道君の勝利ということでまずは休憩にしましょうか」
 冬月は審判台から降りて、早歩きで自分の荷物の場所に行ってしまった。
 冬月は荷物の置いている場所に行くと水筒を取り出し、コップにお茶を注いだ。
 俺も一旦コートを出て、タオルの交換をして新しいタオルで体を拭いた。
「それじゃあ、夏目さんの問題点について意見を出し合いましょうか」
「まず、俺からいいか。第七ゲーム目以降の夏目なつめの動きが鈍くなっていた。それまでは普通に良かったんだけどな」
「なるほどね。私もあの辺からあなたの動きがおかしくなっていっていると思っていたわ」
「なんか、二人が揃って同じ意見を言うとそれしかないと思ってくる」
「終盤になるほどミスが多くなっているからな」
「これって単なる体力の限界と考えた方がいいわね。それ以外考えられないもの」
「そんな簡単なものだったの!」
 驚いて聞いている夏目に冬月は肩に手を乗せた。
「大丈夫。体力トレーニングをすれば大丈夫だわ」
「それって、一人でもできるよね!」
 三人の話を聞いていた藤原先生は溜息をついた。
「ちょっと、三人ともいいか。俺が思うに夏目は終盤戦になるほど勝ちにこだわりすぎてミスが多くなるんじゃないか」
「……なるほど。それで先生の意見はどう言いたいんですか」
 冬月は先生の言葉に耳を傾けながら質問をする。
「ああ、勝つという気持ちが高くなっていくほど人間はそれ以上の力を出してしまうんだ。それはどのスポーツでも同じことで、力が入りすぎると体が言うことを聞かないって聞くだろあれは勝ちを意識しているからだ。つまり、夏目の場合、あまりにも勝ちにこだわりすぎてプレーに集中できていないと俺は思ったんだ」
 よく見ているな—。この人……。
「確かに言われてみればその点も視野に入れないといけないわね」
「それでこれからの対策はどうする?課題は見つかったんだ。後はそれをどうするかだろ」
 そう言いながら、冬月に聞いてみる。
「一つ一つの個別の練習ね」
「個別練習ね……」
 俺はどう考えても力身を取らないといけないからこれが最善かと思った。
 時間がないし、彼女の依頼は完璧にしないといけない。それは諸刃もろはの剣のようで使いこなせなければ一瞬にして崩れてしまう恐れがある。もしかすると、彼女のこれからの人生に大きく影響してしまうのかもしれない。正しいやり方で尚且つ、慎重にやらなければただの時間の無駄である。
「早速だけど、夏目さん。サーブの練習でもしましょうか」
「あ、はい」
「天道君。そのボールかごをサーブの打つときの後ろに置いてもらえるかしら。それと逆コートにこの小さなコーンを四つサービスコート置いておいて」
「俺は雑用かよ」
 冬月は色々と指示をしながら俺に言ってくるのだが、それを当然のように動いて作業をする俺……。
「で、でも今からサーブを打ってどうなるの」
「まずは集中力を高めるのよ。条件付きでね。体に入る力をほぐすためにやるものよ。やるの?それともやらないの?」
 冬月の発言にびくびくしながら夏目は今にも泣きだしそうであった。
「よ、よろしくお願いします……」
 夏目は小さく答えながら、おびえた表情で言う。両手の人差し指を何回もくっつけながら冬月の顔を見ないようにしている。
「分かったわ。でも、弱音よわねを吐いた時点でどうなるか分かっているわよね」
「は、はい――」
 これはたぶんスパルタな練習が待っているんだろうな。
「優しく教えてやれよ。同じ女子とはいえお前と全く別のタイプの女子なんだからな」
「それくらい……分かっているわよ」
 冬月は少し頬を赤く染めながら頷く。彼女もそれくらいは分かっていっているのだろう。
「それじゃあ、準備もできたことだし始めましょうか」
 そう言いながら腕を組んで立ち上がり、冬月はコートに出てきた。
 先に出て、コートで黙々と準備を続けながら待っている俺にとっては早めに始めてほしいと思っていた。夏目は冬月の後に続いて、コートに出てきて準備を始める。
「サービスコートに置かれた四つのコーンをそれぞれ五球以内で一つずつ当ててもらいましょうか」
 冬月は向こう側のコートに置いてあるコーンを指さした。
 え、え、と夏目は驚いた様子で冬月の方を見る。
「マジかよ。その条件はプロでも難しいと思うぞ。それにしても一つにつき五球は流石にきつすぎだな」
 俺も驚いて正直に言う。
 ここからだったら四つすべて当てるのに俺だったら百球以上は余裕で超すな。それに夏目がこれに挑戦するとなればいくら何でも無謀むぼうな挑戦だ。一体、冬月の頭の中では何を考えているのだろうか。
「ほ、本当にこれに挑戦するんですか?」
 そう言うと俺の方をちらちらと見てくる。こっちを向いてもどうすることもできないんだが……。それに冬月が人に協力することは意外と珍しいからちゃんとした理由があると思うぞ。たぶん……。
「何はともあれ、さっさと始めなさい」
 冬月に言われながら、夏目はきびきびと行動をしてサーブの練習に入る。
 夏目は合計二十球を打つとき、深呼吸をスーハ―、スーハ―と何回も繰り返しながら時間をかけて打っていく。速い球や遅い球、コントロールが良ければ悪い時もありバランスが不安定であった。
「どうして、全然当たらないのかしら」
 と、額に手を当てながら溜息をつく冬月はがっくりしていた。夏目のサーブはせいぜい一つしか倒すことが出来なかったのだ。
「まだ力んでいるんじゃないのか。夏目、肩の力を抜け。イメージしろ」
「天道君。次はあなたが打ってみて。夏目さんと同じ二十球で……」
「それは俺にやれるもんならやってみろと言っているのか?」
「ええそうよ。お手本を見せてほしいの。出来るわよね」
 冬月は微笑みながら首を少し曲げて俺にそう言う。
「分かった。一回だけやってみる」
 でも、こうやって見てみると意外と遠いもんだな。それにネットが邪魔で少し醜いがそこは微調整で大丈夫だろう。それよりも風だ。今日の風は少し北から吹いており、トスを上げる時高すぎると不安定になる可能性は十分にある。この場合はクイックサーブがいいが威力が上がるだけでコントロールの方が心配だ。
 少し中途半端な高さにトスを上げ、ラケットを外側に向かって投げるようなイメージでスピンサーブを打つ。一球目は少し外れてサービスコートから外れた。
 なるほど……。これくらいがベストか。後は体勢を変えてコースを変えればそれなりにいいところまではいくだろう。
 俺は次々とサーブを打っていく。二球、三球、四球と球数を増やすたびに的に近づいて行く。
「本当にすごい……天道君って私よりうまい」
 当たり前だ。俺は女子よりもうまい自信はあるぞ。
「流石ね。でも惜しかったわね。あと一つだったのに……」
 冬月はにっこりと嫌味を感じさせない言いぐせで微笑みながら言う。
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