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背中を預けるには、まだ早い
18.帰還と報告
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「駆除依頼の達成受付を頼む。これ、割符。ガルドさん、タグ貸して」
「了」
牙猪を駆除した翌日。夕の鐘まではまだ間がある時間に、オレとガルドさんはヴァルノートに帰ってきた。斡旋所の達成受付でセルディアの斡旋所でもらった割符と二人のタグを出せば、受注受付窓口を立ってエンベルさんがやってきた。
「リオさん、ガルドさん。早いですね」
「向こうに着いて早々、ガルドさんが一撃で首を落としたからね。オレの出番なし」
「割符の他に、ベルハルト氏からのメモがありますね」
夜までかかって解体された牙猪の取り分を朝ギルド長の部屋で決めて、代金を受け取って向こうを出る時に渡された物があったんだ。
「迅速な事態解決に感謝すると。貴方たちの腕を随分と買っているらしい。また何かあったら頼む、だそうですよ」
「指名はありがたいけど、そうそう頼まれるような事態が起きないことを祈ってるよ。な?」
受付カウンターに片腕を置き、オレは後ろに立つガルドさんを振り返った。
昨日は向こうのギルド長の心遣いもあってか、大きな騒ぎになることなく落ち着く寝床が確保できた。旨い煮込み肉を食べて、干し肉にするための腿肉を一塊持ち帰って、他の肉や皮は全て売り払ってきたからまあまあ懐が潤っている。
「前回の依頼と今回の依頼で、ガルドさんは銅級から鉄級に昇格でしょう。ギルド内で確認しますが、このままタグをお預かりしても良いですか?」
「やったな、ガルドさん! 昇級おめでとう」
「鉄? 上がる?」
不思議そうな顔をしているガルドさんに、改めてエンベルさんが共通語で説明している。怪我人を出さず、受注したその日に依頼達成できる実力がある請負人は昇給させるべきだ。
「そうだよ。今回の仕事が早かったから、評価が良かったんだろ。だろ、エンベルさん」
「そうですね。夕の鐘にはタグをお返しします」
「じゃあ、それまでは街から出ない方が良いな。買い物でもするか」
受注時に示されていた依頼料を2人で分けて、オレ達は斡旋所を出た。
「リオ、金分ける」
「いいや、それはガルドさんの分だ。干し肉を多めに分けてくれれば、それで良い」
セルディアの斡旋所でもやったやり取りを、歩きながら繰り返す。オレ達が取り分にした腿肉以外の肉や皮、牙を売った金は銀貨数枚になった。オレは矢の一本も撃ってないんだから、この金はガルドさんが受け取るべき金だ。
きっちり血抜きされた腿の塊肉を馴染みの肉屋に持ち込んで、三分の1を買い取りに出し、残りを干し肉に加工してもらう予定だ。上手くいけば加工賃を引いても、大銅貨の1枚か2枚は手元に来るだろう。
オレの馴染の肉屋では、予想通り大銅貨が2枚手元に来た。木級なら2日分の稼ぎになるそれを、ガルドさんに差し出す。
「これもガルドさんの取り分だ」
「リオ」
「請負人として仕事をしていくなら、ちゃんと受け取れ。あの牙猪は、ガルドさんが討った。オレは付き添っただけで、その手間賃はもう依頼料で受け取ってる」
これはオレなりの線引きだ。何も手出しをしていないのに、金を受け取る訳にはいかない。
「分かったなら、その金持って買い物に行こうぜ。干し甘芋の露店、紹介するよ。あとは、武器屋と防具屋と、道具屋と」
甘芋はガルドさんも気に入ってたからたくさん買って常連になってくれりゃ、紹介するオレも嬉しいってもんだ。
「リオ」
「どうする?最初の約束じゃあ、とりあえず依頼を3つ受けてガルドさんが請負人として昇給するのを助けることになってたけど。2つ目で昇給しちまったからなあ」
肉屋を出てガルドさんと並んで歩く。
斡旋所併設の食堂で声をかけられてから、まだ日は一巡していないってのに。
もうこの人は鉄級。ここで、オレのお世話も終わり、かな。
ほんの数日だけど、こんなに腕の立つ人が一緒だったら、仕事をするのも楽だろうなという気になる。まあまだ、背中を預けられるほどには、ガルドさんを知らないけど。
「リオ。私、導く。1つ、依頼、頼む」
「ん?」
ガルドさんが立ち止まったのに気づいて、オレも足を止める。黒い小さな目が、じっとこちらを見下ろしている。
「契約、3つ」
「そうだな。3つ、だったな。じゃあ、次はどんな依頼を受けようか。良い依頼が出てくると良いな」
「了」
牙猪を駆除した翌日。夕の鐘まではまだ間がある時間に、オレとガルドさんはヴァルノートに帰ってきた。斡旋所の達成受付でセルディアの斡旋所でもらった割符と二人のタグを出せば、受注受付窓口を立ってエンベルさんがやってきた。
「リオさん、ガルドさん。早いですね」
「向こうに着いて早々、ガルドさんが一撃で首を落としたからね。オレの出番なし」
「割符の他に、ベルハルト氏からのメモがありますね」
夜までかかって解体された牙猪の取り分を朝ギルド長の部屋で決めて、代金を受け取って向こうを出る時に渡された物があったんだ。
「迅速な事態解決に感謝すると。貴方たちの腕を随分と買っているらしい。また何かあったら頼む、だそうですよ」
「指名はありがたいけど、そうそう頼まれるような事態が起きないことを祈ってるよ。な?」
受付カウンターに片腕を置き、オレは後ろに立つガルドさんを振り返った。
昨日は向こうのギルド長の心遣いもあってか、大きな騒ぎになることなく落ち着く寝床が確保できた。旨い煮込み肉を食べて、干し肉にするための腿肉を一塊持ち帰って、他の肉や皮は全て売り払ってきたからまあまあ懐が潤っている。
「前回の依頼と今回の依頼で、ガルドさんは銅級から鉄級に昇格でしょう。ギルド内で確認しますが、このままタグをお預かりしても良いですか?」
「やったな、ガルドさん! 昇級おめでとう」
「鉄? 上がる?」
不思議そうな顔をしているガルドさんに、改めてエンベルさんが共通語で説明している。怪我人を出さず、受注したその日に依頼達成できる実力がある請負人は昇給させるべきだ。
「そうだよ。今回の仕事が早かったから、評価が良かったんだろ。だろ、エンベルさん」
「そうですね。夕の鐘にはタグをお返しします」
「じゃあ、それまでは街から出ない方が良いな。買い物でもするか」
受注時に示されていた依頼料を2人で分けて、オレ達は斡旋所を出た。
「リオ、金分ける」
「いいや、それはガルドさんの分だ。干し肉を多めに分けてくれれば、それで良い」
セルディアの斡旋所でもやったやり取りを、歩きながら繰り返す。オレ達が取り分にした腿肉以外の肉や皮、牙を売った金は銀貨数枚になった。オレは矢の一本も撃ってないんだから、この金はガルドさんが受け取るべき金だ。
きっちり血抜きされた腿の塊肉を馴染みの肉屋に持ち込んで、三分の1を買い取りに出し、残りを干し肉に加工してもらう予定だ。上手くいけば加工賃を引いても、大銅貨の1枚か2枚は手元に来るだろう。
オレの馴染の肉屋では、予想通り大銅貨が2枚手元に来た。木級なら2日分の稼ぎになるそれを、ガルドさんに差し出す。
「これもガルドさんの取り分だ」
「リオ」
「請負人として仕事をしていくなら、ちゃんと受け取れ。あの牙猪は、ガルドさんが討った。オレは付き添っただけで、その手間賃はもう依頼料で受け取ってる」
これはオレなりの線引きだ。何も手出しをしていないのに、金を受け取る訳にはいかない。
「分かったなら、その金持って買い物に行こうぜ。干し甘芋の露店、紹介するよ。あとは、武器屋と防具屋と、道具屋と」
甘芋はガルドさんも気に入ってたからたくさん買って常連になってくれりゃ、紹介するオレも嬉しいってもんだ。
「リオ」
「どうする?最初の約束じゃあ、とりあえず依頼を3つ受けてガルドさんが請負人として昇給するのを助けることになってたけど。2つ目で昇給しちまったからなあ」
肉屋を出てガルドさんと並んで歩く。
斡旋所併設の食堂で声をかけられてから、まだ日は一巡していないってのに。
もうこの人は鉄級。ここで、オレのお世話も終わり、かな。
ほんの数日だけど、こんなに腕の立つ人が一緒だったら、仕事をするのも楽だろうなという気になる。まあまだ、背中を預けられるほどには、ガルドさんを知らないけど。
「リオ。私、導く。1つ、依頼、頼む」
「ん?」
ガルドさんが立ち止まったのに気づいて、オレも足を止める。黒い小さな目が、じっとこちらを見下ろしている。
「契約、3つ」
「そうだな。3つ、だったな。じゃあ、次はどんな依頼を受けようか。良い依頼が出てくると良いな」
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