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相棒が出来た日
28.山を下りて
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魔獣を倒した日から数えて3日後の夕暮れ前、オレとガルドさんはルーデンの斡旋所にいた。
解体した魔獣の皮を剥ぎ、肉を焼き、骨を砕いてバラバラにして魔素が一か所に溜まらないようにするのに、なんだかんだ2日近くかかってしまったからだ。オルン達の山小屋に泊まらせてもらって、荷車に大角山羊を乗せ犬や山羊と山を下り里を進み。ルーデンの町に入ったところで、エダが先走って斡旋所に駆けこんだもんだから、オレ達が付いた時にはちょっとした人だかりができていた。
おい、エダ。こっちを指さして大きな身振り手振りで騒いでるが、あんた何て話したんだ。
「うぉお、すんげえなぁ。初めで見る魔獣だべ」
「あれが、ソロの弓使いで銀級だっていうヤツか」
「頭だけであのデカさの魔獣を、弓で狩れるってのかよ」
請負人らしい風体の男たちだけでなく、斡旋所の近くの店の人間まで出てきて、荷車に積んだ大角山羊の、更に上に乗せた魔獣の頭を指さして勝手に盛り上がっている。
数年前まで仕事をしてた場所だから顔見知りもチラホラいるが、オレの後ろにいるガルドさんを見て顔を引き攣らせたり、後ろに下がったりするのはどうなんだ。山に登る前にオレ達は町に寄ってるんだから、ガルドさんを見てる人間もいただろうに。
獣人を初めてみる人間が多いとはいえ、露骨に怯えた表情を浮かべるのに嫌気がさして、オレはガルドさんの二の腕を叩いて行き先を変えることにした。
「まずは山羊を素材受付に持って行こう。こっちだ」
「応」
ガラガラと重い音を立てて動く荷車を引いてくれているのはガルドさんだ。オレとエダと2人かかりで動かそうと思ってたのを、一人で引き受けてくれたおかげでオレは山道を下るのも楽をさせてもらった。
斡旋所の建物を回り込み、素材受付がある入り口のドアを開け中に声をかける。カウンターの向こうに見える背中は、数年前まで世話になっていた人のものだ。変わらず元気そうな様子に思わず笑顔が浮かぶ。
「バルバのおっちゃん! 大角山羊4匹、持ってきたぜ!」
「おうリオ! なんだかヤバイ魔獣まで狩ったんだろう?! 見せろ見せろ」
「魔獣は山で解体してきたから、頭しかない。それより、山羊だよ山羊」
革の前掛けと手袋をつけたまま作業場を出てきたバルバのおっちゃんは、荷車を見て目を丸くした。濃い髭が生えた顎を撫でて、紐で荷車に括り付けた魔獣の頭を色々な角度から検分し始める。
「こいつぁ……大角山羊の魔獣か? オレも長いこと此処にいるが、これは初めて見るな。なあ、そうだろう? ドーガン」
オレ達が真っすぐ斡旋所に行かなかったからか、ルーデンのギルド長がわざわざ出てきておっちゃんの隣に並んだ。背は低いが分厚い身体に薄手の半袖シャツの素材受付の主と、きっちり服を着こんだ細身で長身のギルド長が並ぶとその差が面白い。
「ああ、初耳だ。リオ、よくやってくれた」
「今回はオレの手柄じゃない。コイツの首を落としたのは、こっちのガルドさんだ」
山に登る前、情報を仕入れるために斡旋所に立ち寄ったが、あの時は急いでいたしトップに会う必要もないからガルドさんとギルド長は初対面だった。昔は請負人だったというギルド長が足の先から頭のてっぺんまで、じっくりとガルドさんを見てから口を開く。
「噂には聞いていたが……。見掛け倒しじゃあない、確かな腕だな」
「オレ一人じゃ、こんなに早く依頼を達成できなかったよ」
「リオ、腕良い」
オレとガルドさんは防具をつけた前腕同士をガツっと当てて見せた。どっちが欠けても苦戦しただろうからな。実力があると分かっている相手と認め合ってるってのは気分が良い。
「大角山羊は全部ウチで引き取って良いのか?」
「肉はこの間牙猪を狩ったから、今回は全部置いていく」
手分けして魔獣の頭と大角山羊を素材受付に運び込み、石造りの床に並べればまあまあ見栄えのする成果だった。素早く、だがきっちりと一匹ずつ検分したおっちゃんが、カウンター前で待っていたオレ達に笑顔で頷いて見せる。
「良い型の大角だ。毛皮の傷も最小限。角も蹄も欠けがない」
「雄雌合わせて4匹。脂も乗って食うには良い時期だから、イロをつけてもらいたいね」
「それはドーガンの判断だな」
ドアを開けて素材受付を覗き込む人たちを、おっちゃんが手振りで追い払った。普段は血生臭いと敬遠されるってのに、こんな時だけ物好きが湧いて騒がしい。自分で解体して肉は肉屋、毛皮や角は別の素材屋や防具屋に持ち込めば買い取り額は上がるが、それも丁寧に解体できればこその話だ。ガルドさんと相談して、今回は4頭解体して別々の店で商談をする時間をかけるより、時間も手間もかけずに斡旋所で一括買取をしてもらうことにした。
「魔獣の頭は?」
「それはヴァルノートに持って帰る」
「ここでも買い取れるが、その先を考えたらヴァルノートに持って行く方が賢明か。まあいい、オルンとエダも来ていて一緒に割符を確認してもらいたいらしい。向こうに来てくれ」
魔獣素材は珍しく、色々な使い道があるから買い取りたいと粘る人間もいるが、ルーデンのギルド長はあっさり引き下がってくれた。オレやガルドさんに少しでも恩を売っておいて、先々の覚えを良くしておきたいのかもしれない。
「頭持ってくなら、盥貸すぞ」
血抜きも終わって断面は乾いてるが、さすがにそのままカウンターに置くのもまずいだろう。オレはありがたく盥を借り、ガルドさんに持ってもらってギルド長と斡旋所に続くドアを開けた。
解体した魔獣の皮を剥ぎ、肉を焼き、骨を砕いてバラバラにして魔素が一か所に溜まらないようにするのに、なんだかんだ2日近くかかってしまったからだ。オルン達の山小屋に泊まらせてもらって、荷車に大角山羊を乗せ犬や山羊と山を下り里を進み。ルーデンの町に入ったところで、エダが先走って斡旋所に駆けこんだもんだから、オレ達が付いた時にはちょっとした人だかりができていた。
おい、エダ。こっちを指さして大きな身振り手振りで騒いでるが、あんた何て話したんだ。
「うぉお、すんげえなぁ。初めで見る魔獣だべ」
「あれが、ソロの弓使いで銀級だっていうヤツか」
「頭だけであのデカさの魔獣を、弓で狩れるってのかよ」
請負人らしい風体の男たちだけでなく、斡旋所の近くの店の人間まで出てきて、荷車に積んだ大角山羊の、更に上に乗せた魔獣の頭を指さして勝手に盛り上がっている。
数年前まで仕事をしてた場所だから顔見知りもチラホラいるが、オレの後ろにいるガルドさんを見て顔を引き攣らせたり、後ろに下がったりするのはどうなんだ。山に登る前にオレ達は町に寄ってるんだから、ガルドさんを見てる人間もいただろうに。
獣人を初めてみる人間が多いとはいえ、露骨に怯えた表情を浮かべるのに嫌気がさして、オレはガルドさんの二の腕を叩いて行き先を変えることにした。
「まずは山羊を素材受付に持って行こう。こっちだ」
「応」
ガラガラと重い音を立てて動く荷車を引いてくれているのはガルドさんだ。オレとエダと2人かかりで動かそうと思ってたのを、一人で引き受けてくれたおかげでオレは山道を下るのも楽をさせてもらった。
斡旋所の建物を回り込み、素材受付がある入り口のドアを開け中に声をかける。カウンターの向こうに見える背中は、数年前まで世話になっていた人のものだ。変わらず元気そうな様子に思わず笑顔が浮かぶ。
「バルバのおっちゃん! 大角山羊4匹、持ってきたぜ!」
「おうリオ! なんだかヤバイ魔獣まで狩ったんだろう?! 見せろ見せろ」
「魔獣は山で解体してきたから、頭しかない。それより、山羊だよ山羊」
革の前掛けと手袋をつけたまま作業場を出てきたバルバのおっちゃんは、荷車を見て目を丸くした。濃い髭が生えた顎を撫でて、紐で荷車に括り付けた魔獣の頭を色々な角度から検分し始める。
「こいつぁ……大角山羊の魔獣か? オレも長いこと此処にいるが、これは初めて見るな。なあ、そうだろう? ドーガン」
オレ達が真っすぐ斡旋所に行かなかったからか、ルーデンのギルド長がわざわざ出てきておっちゃんの隣に並んだ。背は低いが分厚い身体に薄手の半袖シャツの素材受付の主と、きっちり服を着こんだ細身で長身のギルド長が並ぶとその差が面白い。
「ああ、初耳だ。リオ、よくやってくれた」
「今回はオレの手柄じゃない。コイツの首を落としたのは、こっちのガルドさんだ」
山に登る前、情報を仕入れるために斡旋所に立ち寄ったが、あの時は急いでいたしトップに会う必要もないからガルドさんとギルド長は初対面だった。昔は請負人だったというギルド長が足の先から頭のてっぺんまで、じっくりとガルドさんを見てから口を開く。
「噂には聞いていたが……。見掛け倒しじゃあない、確かな腕だな」
「オレ一人じゃ、こんなに早く依頼を達成できなかったよ」
「リオ、腕良い」
オレとガルドさんは防具をつけた前腕同士をガツっと当てて見せた。どっちが欠けても苦戦しただろうからな。実力があると分かっている相手と認め合ってるってのは気分が良い。
「大角山羊は全部ウチで引き取って良いのか?」
「肉はこの間牙猪を狩ったから、今回は全部置いていく」
手分けして魔獣の頭と大角山羊を素材受付に運び込み、石造りの床に並べればまあまあ見栄えのする成果だった。素早く、だがきっちりと一匹ずつ検分したおっちゃんが、カウンター前で待っていたオレ達に笑顔で頷いて見せる。
「良い型の大角だ。毛皮の傷も最小限。角も蹄も欠けがない」
「雄雌合わせて4匹。脂も乗って食うには良い時期だから、イロをつけてもらいたいね」
「それはドーガンの判断だな」
ドアを開けて素材受付を覗き込む人たちを、おっちゃんが手振りで追い払った。普段は血生臭いと敬遠されるってのに、こんな時だけ物好きが湧いて騒がしい。自分で解体して肉は肉屋、毛皮や角は別の素材屋や防具屋に持ち込めば買い取り額は上がるが、それも丁寧に解体できればこその話だ。ガルドさんと相談して、今回は4頭解体して別々の店で商談をする時間をかけるより、時間も手間もかけずに斡旋所で一括買取をしてもらうことにした。
「魔獣の頭は?」
「それはヴァルノートに持って帰る」
「ここでも買い取れるが、その先を考えたらヴァルノートに持って行く方が賢明か。まあいい、オルンとエダも来ていて一緒に割符を確認してもらいたいらしい。向こうに来てくれ」
魔獣素材は珍しく、色々な使い道があるから買い取りたいと粘る人間もいるが、ルーデンのギルド長はあっさり引き下がってくれた。オレやガルドさんに少しでも恩を売っておいて、先々の覚えを良くしておきたいのかもしれない。
「頭持ってくなら、盥貸すぞ」
血抜きも終わって断面は乾いてるが、さすがにそのままカウンターに置くのもまずいだろう。オレはありがたく盥を借り、ガルドさんに持ってもらってギルド長と斡旋所に続くドアを開けた。
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