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第5部3章 悪意と敵意
04 お疲れ様◆
しおりを挟む一週間はあっという間に過ぎていく。
「なんだか、この一週間は疲れたな」
「だね。俺も妃教育が始まったし、毎日一定の量祝福の花に魔力を上げているせいかな? セシルは、公務の量増えたんだったよね。別に、これまでサボってたわけじゃないだろうけど、ここに来てって感じ」
「ああ、そうだな。そのせいで、ニルとの時間が取れなくて寂しい」
この間、セシルと深夜に庭を歩いてからそれほどたっていないはずなのに、あれが随分と昔のことに感じてしまう。
妃教育は、学校が終わった夕方から夜に行われることが多く、学園から転移魔法で皇宮のほうに移動してそこから指導を受けてという感じでとてもハードだ。もちろん、そのときだされる課題と学校から出される課題は別物で、俺は多くの課題を抱え込みながら期日までに出す生活をしている。課題は溜めいない人間だったのに、溜めざるを得ない状況になっているのだ。
そのせいで、好きな剣もそのせいで握れていない。といっても、今剣を握っても、満足に力を発揮できないだろう。俺の身体は剣を自由自在に触れるほど回復しなかった。まあ、手練れじゃない刺客ぐらいなら体術と剣術ありで倒せはするだろうけど、複数人を一人で相手するとなると話は変わってくる。
寮に戻り、俺たちは倒れ込むように俺のベッドに上半身を沈めた。何だかこのまま眠れそうなくらい疲労がたまっている。
セシルも、俺とは別の場所で別の公務を行っている。
これまでも忙しかったが、さらに仕事量を増やされているらしく、短かった睡眠がさらに短くなっているようにも見えた。このままでは体を壊しかねない。
セシルは、俺のベッドに沈んだまま起き上がらなかった。寝たかな? と思って静かに立ち上がろうとすると腕を掴まれてしまう。
「どこに行く?」
「寝たのかと思って、起こさないようにって思ったんだけど」
「寝ていない。少なくともお前より先には寝ない」
「ど、どういうことそれ……」
「お前の寝顔を見て、キスをして寝る。これが俺のルーティンだ」
「何それ!? 初耳なんだけど!?」
確かに、セシルのほうが寝つきが悪いし、遅いけど。
(いや、前にも同じようなこと言っていた気がする……あれって、付き合う前だよね?)
ファーストキスを寝ている間に奪われた俺の気持ち。あれも衝撃的だったが、結局まだ続けているのかとも思ってしまった。それだけ、愛されていることと言えばそれまでだが……
俺が寝た後にまたそんなことやっているのかと俺は驚いて聞き返してしまった。だが、セシルは眠そうな目で俺を見て「寝ない」と再度言って口を尖らせる。
セシルは、変なところで意地を張るから困ったものだ。
でも、明らかに寝たほうがいいような様子なので、どうにかして寝かせつけなければと思考が回る。
「キ、キスは、眠っているお姫様を起こすためのものなんだよ? それしたら、俺起きちゃうよ?」
「安心しろ、ニル。お前が寝ている間にキスをして起きたことはない」
「なにも安心できない……」
それってつまり、セシルだけいい思いをしているということだろう。俺だって、セシルのキスは意識があるときにしたいし、セシルからキスしてくれるって嬉しいことだし。
なのに、俺とのキスを独り占めして! というか、セシルは俺が意識なくてもキスして嬉しいのだろうか。
(ああ、いいよ。もう……セシルってキス魔だし)
彼の性癖備考欄を思い出して、俺はあきらめることにした。それで、セシルが安眠できるなら唇をいくらでも差し出そう。どうせ、セシルにしか差し出さないセシル専用の唇なのだから。
俺も疲労のせいでおかしくなっているのかもしれない。
思考が回らない時でも、その思考の中心にセシルがいる。でも、歯車は完全に狂っているのでついついおかしな行動をとってしまうのだ。
俺は体を起こして、前ボタンをプチプチと外す。その様子をセシルはじっと見つめていた。今にも落ちそうな重い瞼を開いて、俺の行動を不思議そうに見つめている。
俺はすべてのボタンを外した後、ぱさりと床に服を落とし、板のようにない胸を両側から軽く押し上げてセシルに見えるように前に突き出した。俺も、相当疲労がたまっていて正常な思考回路をしていない。
「セシル、おっぱい揉む?」
「な……………………な、な、な、な、な、ニル――――――――――ッ!?」
わかりやすくあご先から耳の先まで顔を真っ赤にし、セシルは起立した。あまりにもきれいに立ち上がるもので、俺は驚いて胸から手を退けようかと思った。
こんなに焦っているセシルを今までに見たことがあるだろうか。
命を落としそうな緊迫した状況での焦りではなく、恥かしさや興奮からの焦り。俺の胸なんて何度も見ているだろう、とどこか冷静な頭がツッコミを入れてくる。でも思えばあまりにも大胆な行動をしているのだ。
俺は何か間違えただろうか。
そう思っていると、セシルは「ニル、ダメだ、ニル……」と二つの単語を交互に言って、両手で顔を塞ぐ。だが、その指の隙間から俺をちらちらとみていた。
「セ、セシル?」
「ニル、しまえ……いや、しまわなくていい!」
「う、うん……」
だんだんと自分の頭から血が引いていくのを感じた。俺はなんてことをしてしまったんだと後悔もしている。
こんな破廉恥な……痴女みたいなことをして。許されるのは同人誌の中だけだろう。こんな疲れている人に対して「おっぱい揉む」なんて、やっぱり俺はどうかしている。
ただ、唯一の救いはその行動をして惹かれていないことだろうか。
セシルは、もう一ミリの隙間もなく指をそろえて両手で顔を覆い、大きく深呼吸をした。そして、たらんと垂れるように腕を横に下したのち、俺のほうに近づいてきた。
「ニル、先ほどの言葉は本当か?」
「え、えーっと、おっ、おお、おっぱ、胸、揉むって話?」
「ああ」
「うぅ……別に、ダメじゃないけど」
セシルに詰め寄られ、衣類をまとわぬ肩にセシルの熱い手が置かれる。それだけでも身体がビクンと反応してしまい、今度はこっちが顔が赤くなる。
言うんじゃなかった、と思ったと同時に、もしかしてこのままめちゃくちゃされるかもしれないという興奮もあった。
最近、二人の時間はめっきり減って、一緒に寝るといっても本当に就寝だけで体をつなげることはなかった。これは、期待していいのだろうか、と俺はドクンドクンとなる心臓を押さえながらセシルを見た。彼の夜色の瞳には俺を焼き焦がすほどの熱が宿っており、今すぐ抱きたいというような意思表示にも見えた。
俺はおずっともう一度胸を揉み上げセシルに主張する。
「い、よ……その、セシル、この頃頑張ってるから、ご、ご褒美に俺の胸揉んでも」
「揉むだけか?」
「え、え……あ、吸う?」
「ああ」
なんで、そんな短文で返してくるのだろうか。
いや、眼がキまっている。どうしよう、何されるんだろう。
こんなことを思ってしまう俺は相当彼に毒されているなと思いつつも、期待するのがやめられなかった。
セシルは俺を抱き上げ、ベッドの際に座らせると、俺の前で膝をつき俺の胸と向き合った。ちょうどセシルの顔が俺の胸の先端くらいの位置にあり、彼の熱い吐息がかかってくすぐったい。
早くそのきれいな唇を当てて吸って欲しい。なのに、セシルはその場で制止したままだった。これは焦らされているということでいいのだろうか。
「セシル?」
「……ご褒美か、堪能する」
「う、うん……んあっ」
そういったかと思うと、セシルはちゅぅっと俺の胸に吸い付いた。当初は揉まれるだけのつもりが、吸うなんていうオプションをつけたせいで、セシルもその気になてつぃまった。というか、多分セシルも俺の胸を吸うことしか今頭にない。
どっちも疲れている。
「あ、あっ……や、ん」
「ん……甘い、な。いくらでも吸える」
「甘いって……あっ……出ないのにぃ……」
ちゅぅっと強く吸われたかと思えば、舌で転がされるように舐めまわされる。セシルは甘党じゃないだろうから普段飴なんて舐めないだろう。でも、明らかに何かを転がすような動きで、俺の乳首を舐めまわしてくる。時々歯を立ててかじかじと噛んでくるものだからかその刺激が脳に伝わり、下半身に熱を集める。
セシルは一心不乱に俺の胸を吸っていた。赤ちゃんみたいだと思ったが、嚙むし舐めるしで、赤ちゃんがしない動きをしている。器用に動く舌は乳輪を舐め、先端部分をほじくるように舌先で刺激した。
そしてもう片方の手で、俺の胸をきゅっとつまみ、時々くにくにとねじるように弄った。
その緩急が気持ちよくて、胸の刺激だけで俺はイってしまいそうになっている。
「はぁ、あっ……せしぅ」
ちゅぱ、ぢゅっ……と、わざと音を立てて俺の胸を吸っていた。水音が鼓膜を刺激する。
セシルは、口周りが自身の涎でべたついても気にしていないようで、必死になって俺の胸を舐めていた。その姿がとんでもなく厭らしい。視覚的にも聴覚的にも侵されて、我慢の限界だった。だが、やっぱり胸だけでイクのは恥ずかしくて、我慢しようと足をすり合わせるが、余計に意識が下半身に行ってしまってダメだった。
セシルは、夢中になって俺の胸を吸い続ける。そのしぐさはたまらなく愛おしい。
「せし……もっ、だめだから……だめ」
「イってもいいぞ? イキたいのだろう?」
「……やだか、やぁあああっ!!」
かじっとセシルが俺の胸を少し強めに噛んだ瞬間、ぐるぐると行き場を失っていた熱が一気にはじけた。下着の中で暴発したそれは、ぐちょりと下半身を濡らす。ズボンにもシミができていた。
「あ、や……だ」
恥ずかしさのあまり、ズボンに手が伸びたがその手を止められる。見れば、ちゅぱっと音を立て、胸から顔をどけたセシルと目があった。そこには目が完全に据わった彼と視線がある。その鋭い視線に射抜かれた俺は、さらに背筋をぶるっと震わせる。何もされていないのに、キュンキュンと腹の奥が疼いて仕方がない。
「かわいかった」
「かわいくない……もぅ……うぅ」
「俺に付き合わせてしまったな。今度は俺がお前にご褒美を上げる番だ」
そういったかと思うと、セシルは俺の濡れたズボンと下着を剥ぎ取って、床に投げ捨てた。そして俺の膝裏に手を回し、ぐっと足を開く。
「ちょ、ちょっと待って、セシル!! な、何しようとしてる!?」
「何って……お前のココを舐めて」
「言わないで! んひぃっ」
俺がそういう前にセシルは、俺の後孔に顔を近づけていた。すでに止めるには遅く、俺よりも力が強いセシルに足を掴まれているため身動き取れない。そこをまじまじと見られていると思うと恥ずかしすぎて死にそうだ。もう何度もやっているはずなのに、こればかりは慣れない。
どうにか俺は足を閉じようとするが、やはり彼の力には勝てなかった。その間に身体を足の間に滑り込ませ、俺は足を閉じようにも閉じられなくなった。
セシルは俺の後孔をぐにっと広げると舌を伸ばし、ぺろりと舐めた。そしてそのまま舌を孔の中へと押し込む。生暖かい感触が伝わってきて、思わず声が漏れた。
「あっ……やぁあ!」
「ん……」
ぬるりと湿った舌が俺の中に入ってくる。ぬるぬるした感触が孔を出入りするから、どうしたって声があふれる。それに、濡れた音のせいでぐちゅ、じゅぶと厭らしい音が絶えず聞こえてくるから耳を塞ぎたくなった。
でも、段々と足が抵抗する意味ではなく気持ちよくて震え、脚がピンと伸びてしまう。
「んんっ……あぅう……っ」
しばらくじゅるじゅると舐めまわされた後、今度は指が一本中に入ってきた。その指はくにくにと動きながら俺の中を解していく。
「あっ……せし、そこだめっ!」
「ああ、お前の気持ちいい場所だな」
「言うな、いわないでぇ……っ」
指先が、ある一点を掠めたとき俺の体がビクンと跳ねた。
久しぶりであるとはいえ、俺の身体のことを俺よりも熟知しているセシルはいともたやすく俺の身体を暴いていく。先ほどまで固まっていた筋肉がほぐれていくように、今ではセシルの手に喜びを感じ、自分から股を開いてしまうほどに。
指の本数もいつの間にか増やされ、ぐちゅぐちゅと厭らしい音が響いていた。だが、もう抵抗する気力もなく俺はただ喘いでいた。
「あぅ……んんあっ……」
「……かわいい、かわいいな、ニル」
俺の名前を愛おしそうに呼びながらも、その指の動きはかなりえぐくて口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れる。
なんで表情と声と、行動がバラバラなんだ。
そんなセシルの猛攻に耐えていると、そろそろいいか、と指を引き抜かれた。ぽっかりと空いてしまった孔がひくついているのが自分でも分かる。
セシルは下半身を露出して、俺の膝裏を持ち上げて自身を後孔に当てた。
「いいか?」
「はあ……はぁ……焦らされるの、俺嫌い」
「そうか、覚えておこう。だが、久しぶりだからゆっくり行くぞ」
そう一言いうと、グッと腰を押し進められた。指とは比べ物にならない質量と熱が中に押し入ってくる。待ち望んだ瞬間に体は歓喜し、セシルを強く締めつけていた。すると、案の定セシルのきれいな顔が歪む。だが、どこか気持ちよさそうで、見ていて頬が緩んでしまう。
挿入するときが一番苦しいが、それさえ乗り越えてしまえばあとは――
「あっ……うっ……」
「熱いな……だが、よかった。お前のナカは俺を覚えていてくれているみたいだ。きゅうきゅうと締め付けてくる」
「言わないでって、恥かしい……から……」
「言わないと伝わらないだろう? あれか……身体は正直というやつか」
「何言って……ひゃぁああっ!?」
ずちゅんと、奥まで入れられ俺の身体はビクビクと震えた。ゆっくりすると言ったのに、いきなり奥まで。
俺は、話と違うとセシルを見るが、彼は反省の色のない顔で俺を見下ろしていた。うっとりとした表情で、頬がほんのりとピンク色に染まっている。その顔に、きゅぅうんと胸が締め付けられた。
ダメだ、好きだ。
文句はあれこれ言ってしまうが、最終的にはセシルの顔の良さに流されてしまう。もちろん、他も全部好きだ。
ベッドの上だけで見れるセシルの顔。本能むき出しに、俺を求める顔。俺はその顔が大好きだ。
「はっ……ああっ……んっ、せしぅ……」
「気持ちよさそうだな。俺も、気持ちがいい」
「んっ、うれしぃ……っ、もっと」
「ああ。しっかりとしがみついていてくれ」
セシルの声に従い、俺は彼の背中に手を回した。前よりも筋肉がついていて、抱きしめるのがやっとだ。汗で濡れた指先は、うまくセシルの身体に密着できなくて、つるりと滑る。その際に、俺は爪で彼の背中をひっかいてしまった。
「ごめ……っ」
「謝らなくていい。お前からつけられた傷なら、な?」
と、セシルは言いながら俺を揺さぶり始めた。
ぱちゅん、と奥深くまで突かれる頃には、身体の力はすっかり抜けていた。力が抜けた身体に、セシルはゆっくりと抽挿を繰り返す。
「んあっ……!!」
奥まで突かれるのが気持ちよくて堪らない。そしてセシルの口からこぼれる吐息と時折混ざる声に、知らず知らずのうちに彼のを締め付けてしまう。
久しぶりのセックス。でも、身体は覚えていてセシルの行為を受け入れている。一つに溶けあうようなこの感覚が好きだ。どちらの体液かもわからないものがまじりあって、シーツに落ちていく。
時々唇を突き出して、唾液を交換するようなキスをする。お互いの舌を絡ませあって、唇をぶつけて、呼吸さえも奪うようなキス。でも、足りないもっと欲しいと体を密着させる。
俺の貧相な胸を彼の胸に押し当てて、もっと欲しいと腰を揺らせば、セシルはそれに応えてくれる。
「積極的だな」
「いや?」
「嬉しいんだ。求められてこそ、だろう……? お前が、俺を好きだって伝わってくる」
「当たり前じゃん」
「そうだな、当たり前だ。だから、ずっと俺の腕の中にいてくれ」
セシルはそう言いながら、俺の額に張り付いた髪をよけてそこにキスをした。そしてまたゆっくりと動き始める。緩やかな動きであるが、的確に俺の気持ちい場所を探り、ツンツンと焦らすようにつついたかと思えばゴリッと一点を抉り取る。かと思えば、一旦ぎりぎりまで引き抜き、そこから一気に最奥へと貫くように動く。
その衝撃に俺はのけ反り嬌声を上げた。そして次第にその動きが早くなっていく。
肌がぶつかり合う音が厭らしい。ずんずんと奥に刺さるセシルのペニスが愛おしい。
激しく求めあえば、ベッドのスプリングが酷く軋む。だが、そんなこと気にする暇もなく、互いに求めあった。
久しぶりだった。だからこそ、求めた。互いを、自分のものだと相手に刻みつけるように。
秋なのに、熱くて仕方がなかった。頭も、身体も、腹の中も彼の熱でいっぱいだ。
熱中症にでもなったように、頭がぼーっとしてきて、その隙間に気持ちいいが入り込んで、頭の中は一色に染まっていく。セシルしか考えられない。
激しく腰を打ち付けたかと思えば、時々俺を気遣ってか腰が引き気味になる。でも、止められないとまたギリギリまで引き抜いては俺の最奥を穿つ。
与えられる快楽に俺は身を委ねていた。でも、一方的に流されてはいけないと、彼の身体に抱き着き、吸い付いて赤い印を残す。
「ニル、ナカに……っ、いいか?」
少し切羽詰まったように言う彼に、俺はこくりと頷いた。さんざん喘いでしまったため喉はからからだ。
セシルは俺の許しを得ると、さらに俺を抱き込んでラストスパートというように腰を振った。セシルが絶頂に昇っていくのを感じると同時に、俺もまた快楽の波に攫われていく。
そして、一段と強く腰を打ち付けると最奥でセシルのが弾けた。びゅ、びゅく……っ、と熱いものが俺の中へと注がれる。最後の一滴まで注ぎ込もうとする動きに、俺は身悶えた。
その快感に抗えず、俺は彼のを締め付けた。もう俺のは食ったりとしていて出ない。けれど、ナカだけでもイクことができるようになった身体は、ピクンピクンと痙攣していた。
俺は脱力したのだが、セシルは自身を抜こうとしない。それどころか、またゆっくりと腰を揺らし始めた。
「……へ? せし……っ……ん」
「まだ、足りない」
「駄々っ子だなあ……」
「これは、駄々っ子なのか?」
「甘えん坊。俺のナカから出たくない~って……」
「……無理させるつもりはない」
そうはいいつつも、腰がかすかに動いている。その微々たる刺激も、俺は感じちゃうんだけどなあ、なんて思いながら、俺は彼の背中をぽんぽんと叩いた。
「良いよ。でも、ちょっと休憩してからね」
「本当にいいのか?」
「いいよ。今日は存分に甘やかしたい気分」
なんだそれは、と言われてしまったが本当なのだ。
俺は、セシルのことを甘やかしたい。そして、俺もセシルに満たされたい。互いに甘えたい、甘やかしたい、満たされたい――そう思うならwin-winだろう。
「……ニルは俺をダメ人間にでもするつもりか?」
「セシルはこんなことでダメ人間になっちゃうの?」
「お前がいなきゃダメになってしまう。今でさえ、お前がいないとダメなのに」
セシルはそう言って俺の肩に顔を埋めた。ぼふっと優しく枕の音が鳴る。
ちょっと重いなと思いつつも、俺は彼の背中を撫でることをやめなかった。ドクンドクンと強く脈打つ心臓の音が俺に響いてくる。
セシルは、決してダメ人間なんかじゃない。
でも、俺がいなくなったらダメになるのもわかっている。
お互い、最近は頑張りすぎているのだろう。だからこそ、時々互いを求めないとやっていけない。これは、共依存に近いかもしれない。
(けど……共依存になんてさせない)
もちろん嬉しいことではあるが、それで共倒れになるのも、片方が欠けて墜落していくのも俺は見たくない。
互いに互いが必要であるが、いざというとき離れられる関係。そして、最後には大好きなその人の胸に戻って来れる関係になれたらいい。
きっとそっちのほうが素敵だ。
今は、やるべき場所でするべきことをする。それで、ガス欠になったら抱きしめてキスして、ベッドで他愛もない話をして充電する。きっと、俺たちならやっていける。
「セシルはダメじゃないよ。俺が保証する。もし、俺が離れていってもそれはちょっとの間だから。ちゃんと戻ってくるから、セシルもその間ちゃんとして?」
「ちゃんとって具体的には?」
「そ、そうだな……具体的に……ちゃんと」
俺が言葉に詰まればぷっとセシルは俺の耳元で笑った。それからも、こらえきれないというように体を小刻みにふるわせている。
「仕方ないじゃん、言葉が出てこなかったんだから」
「すまない。あまりにかわいいことを言うものだから。そうだな……ニルの言う通りだ。俺はまだ頑張れるし、また頑張れそうだ」
「そう……ならよかった。好きだよ、セシル」
俺も彼にすり寄ってしっかりと言葉にして伝える。耳元で低い声で「俺も愛してる」と伝えてくれるセシル。
俺はそんな彼を強く抱きしめた。
「ニル、共に頑張ろう。俺たちの未来のために」
「うん、頑張るよ。頑張ろうね」
言葉はいらなかった。
唇を重ね、見つめあう。そうして、セシルはゆるゆると腰を動かし始めた。その動きが激しくなるころには、頭がぼうっとしてくる。何も考えられなくなるくらい気持ちよくて。セシルに溺れていく心地だった。そして何度出したか分からなくなった頃に意識を手放したのだった。
充電はこれで満タンになっただろう。セシルを、セシルとの幸せで心を満たして。
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