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8. 18歳 13歳
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――オースティンは中等部から高等部に移った。
と言っても広い校舎の中にいるのは特に変わらず、オースティンとは授業の合間にたまに会うこともある。
僕は18歳、彼は13歳になっていた。
放課後の学びは続いているけれど、最近は彼の方から分厚い本を持ってきて議論と実践を行うので、これじゃまるでどちらが師なのか分からないなと苦笑する。
でも僕は深い学びがあるその時間が、とても楽しかった。
僕は相変わらず小等部の子供達の授業を行う事が多い。もうすっかり慣れたものだけれど、その年の学年によって課題の見え方が違ってくるので、それが楽しいなぁと思う。
――「イリス、この火と風の魔法に油があればエンジンとして機能するんじゃないかと思うけど、問題なのはどこだと思う?」
「……火の魔法は確かに油があればうまく行くと思うけど、風の魔法を継続するためにはどうかな……。
オースティンは何が必要だと思う?」
僕とオースティンは相変わらず魔道具開発や魔法の応用の議論と実践を続けていて、この間彼は論文を出した。
その論文は、とてもよく書けていて今後の魔道具開発に使われる様なので、オースティンの将来はとても明るいと思う。
オースティンの前にある火魔法で作られたランプを応用して、エンジンの仕組みを作る事を考えるために、僕は彼の前にあるランプを跪いて覗き込む。
「……イリス、いい匂いがする。…そろそろ発情期?」
僕はオースティンの言葉にぎくりとした。
言われて見れば、発情期が近いのかもしれない。
僕は18歳になって頸を守るためのチョーカーをつける様にした。
正直オメガだと自分から言っている様に見えるし、子どもたちに何か言われるのも嫌で、つけなくてもいいんじゃないかと思ったけれど、父に勧められたのだ。
父は相変わらず教育に熱心で、前の長期休みがある時には父と隣の国の教育視察に行ってきた。
隣国は小さな頃から熱心に宗教教育を行なっており、幼い頃から宗教教育を行う事と豊かな人間性を育む事の因果関係について考えさせられて、僕はとても興味深かった。
「……イリス、発情期って辛い?」
オースティンは僕に突然そんな質問を投げかける。
彼は一見無知な様に見えて、実はよく考えている人間だ。
なので僕は彼の心理を知ろうとした。
「……どうしてそんな事聞くの?」
「……俺、……母さんとこの間セックスしたんだ。」
――僕は息を呑んだ。
アルファとオメガの組み合わせは親子間でもある。
しかし、人体は近親相姦にならないように、神様は考えて作られていた。
近親のアルファはオメガのフェロモンに影響されない。
親族で交わる事がない様に大人になるにつれて親を異性として見る事に不快感を覚え、近親で交わればお互い不調の症状が出るはずだ。
僕はオースティンを見つめた。
「……母さん発情期にはいつも別な恋人連れて、どこかに行ったり抑制剤を飲んだりするんだけど、その日は急にヒートになったみたいで、気づいたら俺の上に跨ってた…。」
オースティンは淡々と説明する。彼の感情がそこから読み取れなかった。
「……オースティン、…それは――。」
僕はオースティンにそれは良くないと投げかけようとしたけど、どこか違和感を感じて口を噤んだ。
彼に良くない事と諭そうとしている事と、自分が父と行っている行為は、一体何が違うのだろうと思ったのだ。
「……終わった後に二人とも体調が悪くなった。母さんも体調を崩したから、もう懲りたと思う。」
そして、オースティンは僕に質問を投げかける。
「――イリス。欲望と理性を制御する事は、難しいと思う?」
――それは、僕が一番知りたかった問いだった。
僕は、オメガだ。発情期は来たくなくてもどうしても来る。発情抑制剤はあるけれど、父は人間の自然な摂理に反する事は良くないと言って、僕に抑制剤を使わせてくれた事はなかった。
あの身体が燃えたぎるように熱くなって、ひたすら誰かを求める感覚。身体を撫でられながら貫かれる度に、気持ち良くて何度もよがる感覚。
僕はそんな感覚を味わいたくて、味わっている訳ではなかった。
オースティンへ答えるのに唇が震えた。
「……オースティン、僕はオメガだ。
僕は…その問いには、……答えられない。」
頬が熱くなって涙が出そうになりながら続けた。
「僕は…発情期になりたくてなっている訳じゃない。
一番、欲望を制御したいと思っているのは…この僕だ。」
乾いた風が中庭に吹いて、オースティンの髪がサラリと流れる。
彼の金の瞳は感情の分からない目で僕を見つめる。
僕は気を抜くと涙が出てきそうで、彼の目を見ていられなかった。
と言っても広い校舎の中にいるのは特に変わらず、オースティンとは授業の合間にたまに会うこともある。
僕は18歳、彼は13歳になっていた。
放課後の学びは続いているけれど、最近は彼の方から分厚い本を持ってきて議論と実践を行うので、これじゃまるでどちらが師なのか分からないなと苦笑する。
でも僕は深い学びがあるその時間が、とても楽しかった。
僕は相変わらず小等部の子供達の授業を行う事が多い。もうすっかり慣れたものだけれど、その年の学年によって課題の見え方が違ってくるので、それが楽しいなぁと思う。
――「イリス、この火と風の魔法に油があればエンジンとして機能するんじゃないかと思うけど、問題なのはどこだと思う?」
「……火の魔法は確かに油があればうまく行くと思うけど、風の魔法を継続するためにはどうかな……。
オースティンは何が必要だと思う?」
僕とオースティンは相変わらず魔道具開発や魔法の応用の議論と実践を続けていて、この間彼は論文を出した。
その論文は、とてもよく書けていて今後の魔道具開発に使われる様なので、オースティンの将来はとても明るいと思う。
オースティンの前にある火魔法で作られたランプを応用して、エンジンの仕組みを作る事を考えるために、僕は彼の前にあるランプを跪いて覗き込む。
「……イリス、いい匂いがする。…そろそろ発情期?」
僕はオースティンの言葉にぎくりとした。
言われて見れば、発情期が近いのかもしれない。
僕は18歳になって頸を守るためのチョーカーをつける様にした。
正直オメガだと自分から言っている様に見えるし、子どもたちに何か言われるのも嫌で、つけなくてもいいんじゃないかと思ったけれど、父に勧められたのだ。
父は相変わらず教育に熱心で、前の長期休みがある時には父と隣の国の教育視察に行ってきた。
隣国は小さな頃から熱心に宗教教育を行なっており、幼い頃から宗教教育を行う事と豊かな人間性を育む事の因果関係について考えさせられて、僕はとても興味深かった。
「……イリス、発情期って辛い?」
オースティンは僕に突然そんな質問を投げかける。
彼は一見無知な様に見えて、実はよく考えている人間だ。
なので僕は彼の心理を知ろうとした。
「……どうしてそんな事聞くの?」
「……俺、……母さんとこの間セックスしたんだ。」
――僕は息を呑んだ。
アルファとオメガの組み合わせは親子間でもある。
しかし、人体は近親相姦にならないように、神様は考えて作られていた。
近親のアルファはオメガのフェロモンに影響されない。
親族で交わる事がない様に大人になるにつれて親を異性として見る事に不快感を覚え、近親で交わればお互い不調の症状が出るはずだ。
僕はオースティンを見つめた。
「……母さん発情期にはいつも別な恋人連れて、どこかに行ったり抑制剤を飲んだりするんだけど、その日は急にヒートになったみたいで、気づいたら俺の上に跨ってた…。」
オースティンは淡々と説明する。彼の感情がそこから読み取れなかった。
「……オースティン、…それは――。」
僕はオースティンにそれは良くないと投げかけようとしたけど、どこか違和感を感じて口を噤んだ。
彼に良くない事と諭そうとしている事と、自分が父と行っている行為は、一体何が違うのだろうと思ったのだ。
「……終わった後に二人とも体調が悪くなった。母さんも体調を崩したから、もう懲りたと思う。」
そして、オースティンは僕に質問を投げかける。
「――イリス。欲望と理性を制御する事は、難しいと思う?」
――それは、僕が一番知りたかった問いだった。
僕は、オメガだ。発情期は来たくなくてもどうしても来る。発情抑制剤はあるけれど、父は人間の自然な摂理に反する事は良くないと言って、僕に抑制剤を使わせてくれた事はなかった。
あの身体が燃えたぎるように熱くなって、ひたすら誰かを求める感覚。身体を撫でられながら貫かれる度に、気持ち良くて何度もよがる感覚。
僕はそんな感覚を味わいたくて、味わっている訳ではなかった。
オースティンへ答えるのに唇が震えた。
「……オースティン、僕はオメガだ。
僕は…その問いには、……答えられない。」
頬が熱くなって涙が出そうになりながら続けた。
「僕は…発情期になりたくてなっている訳じゃない。
一番、欲望を制御したいと思っているのは…この僕だ。」
乾いた風が中庭に吹いて、オースティンの髪がサラリと流れる。
彼の金の瞳は感情の分からない目で僕を見つめる。
僕は気を抜くと涙が出てきそうで、彼の目を見ていられなかった。
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