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18 収穫
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まず、全人類に対して非常に残念なお知らせを告げなくてはならない。
百合根の件だ。
試しに少量だけ火を通して食べてみたのだが、それはもうエグ味が凄くて美味しくなかったのだ。やはり地球の物とは違うか。一朝一夕にはいかないか。魔物だしな。
結果として、翌日になった今も俺の手元にはまだ百合根が残っていた。
調理器具もないから、昨夜はただただ火を通すだけってしまった。
もしかすると他の下処理でもすれば食べられるかもしれないと思い、今日に持ち越すことにしたのだ。
それでも昨晩の食事はリッチだった。
なにせ新たに手に入れた塩もあったし、遠慮はいるまいとビンビンに塩っ辛くしてオーク肉を食べてやった。
新しく習得できた【着火】もあって、もはや自力で焼き放題である。
食べてみるとオーク肉はほとんど豚に近かった。とはいえ野性の魔物。野性味が溢れるアグレッシブな香りもあり癖が強かった。
角兎も魔狼もそれぞれ独特な臭みはあったから、これまでに食べた3種の肉は、結局どれも臭いという事になるが…… やはりオーク肉が食べやすかったかな。可食部分も沢山あるし。
晩餐が盛り上がってきた頃には、大屋さんに貰った肉パンにも手をつけてやった。1つしかないのに食べてしまったのだ。
このティーギも肉ではあるのだが、ほんのりパンっぽい雰囲気があるのだ。蒸したササミを超絶ふんわりさせたような感じで、味は薄いし臭みもない。
これに塩っ辛いオーク肉を挟んだサンドイッチは、この夜最高の1品となった。
トカマル君も美味しそうに食べていた。
最後に一応念のため、木の魔物 の端っこもかじってみたが、これは完全なる木の味だった。ただただ木の繊維の塊だった。
寝る前には【ウォーター】と【ライト】の魔法も少しばかり練習してみて、これがすんなり習得できた。これで夜中に明かりの下で水が飲める。ついに文明人の仲間入りである。
そんなこんなの昨夜の晩餐だった。
さて、今朝はまず冒険者ギルドに行って、昨日の戦利品を売却したり、依頼達成の手続きをしておこう。
「エフィルアさんおはようございます。今日も朝から精が出ますね」
受付カウンターの前に行くと、今日も今日とて出てきてくれたのはロアさんだった。
伐採依頼の完了手続きに来たのだと伝える。ついでに丸太の原木も買い取ってもらう事に。
「え? 持ってこられたんですか?」
「ええ、ちょっとだけ」
彼女に案内されてギルド奥にある倉庫へ。かさばる品物なので直接そちらへ下ろす事になった。ギルド倉庫は外から見るよりも収納容量はずっと大きい。体積軽減の術式が施されているそうだ。
俺はインベントリから尖兵樺の原木×21を取り出した。ドズン ドズン ドズドズン。
あまり細い木々は持ち帰ってこなかったから、今あるのはどれもそれなりの大きさがある。
全部で4トントラック1~2杯分くらいだろうか。
「はいはいなるほど、そうきましたか…… 今のはインベントリじゃないですね? エフィルアさん、もしやアイテムボックスを習得したんですか?」
「ええと、まあそんな感じですかね」
俺が使っている財産目録の魔法、通常は収納魔法というよりも整頓魔法としてしか使われていないようだからな。ロアさんは収納魔法のほうだと思ったのだろう。
ロアさんも倉庫にいた他の職員も、俺の出した原木に少し驚きはしたけれど、むしろ喜んでくれているように見えた。大物を運べるような収納魔法使いは貴重な存在らしい。
ロアさんは俺と世間話をしながらも、原木を淡々と倉庫の棚に仕舞ってゆく。あの細い腕で意外と力持ちである。ギルド職員おそるべし。今度は俺のほうが驚かされた。
魔の森の境界での伐採依頼、完了報酬は合計で1.2万ロゼだった。
俺達の場合はトカマル君と2人でやったわけだから、1人あたりだと6000ロゼか。
モリモリ草の採集依頼に比べれば報酬は高いが、1日仕事でこの金額。魔物の出没地帯での肉体労働と考えると、不人気なのも頷ける。
もちろん俺の場合は原木も持ち帰って来ているわけで、その分も収入になる。買取金額は21本で1.6万ロゼだった。伐採依頼の報酬とあわせれば2.8万ロゼ。これならまあまあかな?
さて続きまして、今度は昨日倒した魔物素材を取り出した。
レッサートレント×12
オーク×17
魔狼×53
角兎×37
オークは1体だけすでに食用にしてしまったので、数は減っている。
他のは全部解体してもらってから丸ごと売却してしまう。
いくつか購入しておきたい物もあるので資金が必要なのだ。
魔物素材の数が多いので専門の解体職人さんが出てきてくれて、あっという間に処理してくれた。
「にいちゃん、若いのにやるじゃねぇか? 一体全体どうなってやがる? どんな技を使ったってんだよこれは。全ての魔物に最高の状態の魔石が入ってやがるぜ。魔物に霊薬でも飲ませてブーストさせた状態で狩りましたってんなら不思議はねぇがな。そりゃねぇかっ! んな事しても大損だわな! ダッハッハッ」
筋肉隆々な解体職人のおじさんは、大笑いしながら別の仕事に戻っていった。
魔物素材の売却額は合計で 168万と9千ロゼになってしまった。
それぞれ素材1つあたりのお値段はこんな感じ。
レッサートレントの魔石:2.5万ロゼ。 幹:7000ロゼ。
オークの魔石:1.8万ロゼ。 お肉など:4500ロゼ。
魔狼の魔石:1万ロゼ。 お肉など:250ロゼ。
角兎の魔石:1万ロゼ。 お肉など:250ロゼ
やはり魔石の売却価格がえぐい。
魔狼と角ウサギなどという最下級モンスターでも、状態の良い魔石なら1万ロゼの価値がある。昨日は狼と兎の合計90体倒しているから、それだけで90万である。
まさにチート。ズルである。
もはや一生これだけ狩っていれば済む話だ。いや、飽きるからやらないけども。いつまでも魔石が採れ続けるとも限らないし。
さてこの魔石、トカマル君の食料として少しとっておこうと思ったが、今は必要ないらしい。くっ、贅沢ものめっ。
それよりも今は圧倒的に生の鉱石が食べたいそうだ。先日、金属は摂取してもらったが、あれはあくまで代替品だったようだ。やはり加工された金属よりも。生の鉱石や宝玉が食べたいそうだ。
栄養のバランス的なことのようだが。
さて、手に入れた160万ちょっとの資金。今日はこれでお買い物をする。
もちろん欲しい物は沢山あるのだけれど、一番のお目当ては炊事道具と武器である。
特に武器はお金がかかるのだが、俺が普通に使っても壊れない丈夫な武器を買っておこうと思う。
やはり素手で魔物を殴り倒す姿というのは野蛮に思えるからだ。
なるべくなら人間っぽい雰囲気を醸し出して行きたいと思っている。
今持っている【魔鋼の長剣】は昨日手に入れたばかりの逸品なのだけれど、実はこれ、今の俺が装備すると【攻撃力】の数値が減少する。
昨日この剣を使って魔狼を切った時もそうだったのだが、俺の腕力に対して武器の強度が足りていない。簡単に折れてしまうのだ。
剣よりも俺の拳や爪のほうが遥かに硬く強靭だという状況。
それならば拳で戦えば良いのでは? もちろんそんな考え方もあるだろう。だがしかし、本当にそれで良いのだろうか? 人間として、文明人としてそれで良いのだろうか? いいや、文明人ならば道具を使うべきである。せめて硬い棒切れのひとつでも手に握るべきなのである。あるいは魔法用の武器という選択もあるではないか。
という訳で俺は、昨日一日で手に入れた資金を持って、大屋さんの商店に到着した。
百合根の件だ。
試しに少量だけ火を通して食べてみたのだが、それはもうエグ味が凄くて美味しくなかったのだ。やはり地球の物とは違うか。一朝一夕にはいかないか。魔物だしな。
結果として、翌日になった今も俺の手元にはまだ百合根が残っていた。
調理器具もないから、昨夜はただただ火を通すだけってしまった。
もしかすると他の下処理でもすれば食べられるかもしれないと思い、今日に持ち越すことにしたのだ。
それでも昨晩の食事はリッチだった。
なにせ新たに手に入れた塩もあったし、遠慮はいるまいとビンビンに塩っ辛くしてオーク肉を食べてやった。
新しく習得できた【着火】もあって、もはや自力で焼き放題である。
食べてみるとオーク肉はほとんど豚に近かった。とはいえ野性の魔物。野性味が溢れるアグレッシブな香りもあり癖が強かった。
角兎も魔狼もそれぞれ独特な臭みはあったから、これまでに食べた3種の肉は、結局どれも臭いという事になるが…… やはりオーク肉が食べやすかったかな。可食部分も沢山あるし。
晩餐が盛り上がってきた頃には、大屋さんに貰った肉パンにも手をつけてやった。1つしかないのに食べてしまったのだ。
このティーギも肉ではあるのだが、ほんのりパンっぽい雰囲気があるのだ。蒸したササミを超絶ふんわりさせたような感じで、味は薄いし臭みもない。
これに塩っ辛いオーク肉を挟んだサンドイッチは、この夜最高の1品となった。
トカマル君も美味しそうに食べていた。
最後に一応念のため、木の魔物 の端っこもかじってみたが、これは完全なる木の味だった。ただただ木の繊維の塊だった。
寝る前には【ウォーター】と【ライト】の魔法も少しばかり練習してみて、これがすんなり習得できた。これで夜中に明かりの下で水が飲める。ついに文明人の仲間入りである。
そんなこんなの昨夜の晩餐だった。
さて、今朝はまず冒険者ギルドに行って、昨日の戦利品を売却したり、依頼達成の手続きをしておこう。
「エフィルアさんおはようございます。今日も朝から精が出ますね」
受付カウンターの前に行くと、今日も今日とて出てきてくれたのはロアさんだった。
伐採依頼の完了手続きに来たのだと伝える。ついでに丸太の原木も買い取ってもらう事に。
「え? 持ってこられたんですか?」
「ええ、ちょっとだけ」
彼女に案内されてギルド奥にある倉庫へ。かさばる品物なので直接そちらへ下ろす事になった。ギルド倉庫は外から見るよりも収納容量はずっと大きい。体積軽減の術式が施されているそうだ。
俺はインベントリから尖兵樺の原木×21を取り出した。ドズン ドズン ドズドズン。
あまり細い木々は持ち帰ってこなかったから、今あるのはどれもそれなりの大きさがある。
全部で4トントラック1~2杯分くらいだろうか。
「はいはいなるほど、そうきましたか…… 今のはインベントリじゃないですね? エフィルアさん、もしやアイテムボックスを習得したんですか?」
「ええと、まあそんな感じですかね」
俺が使っている財産目録の魔法、通常は収納魔法というよりも整頓魔法としてしか使われていないようだからな。ロアさんは収納魔法のほうだと思ったのだろう。
ロアさんも倉庫にいた他の職員も、俺の出した原木に少し驚きはしたけれど、むしろ喜んでくれているように見えた。大物を運べるような収納魔法使いは貴重な存在らしい。
ロアさんは俺と世間話をしながらも、原木を淡々と倉庫の棚に仕舞ってゆく。あの細い腕で意外と力持ちである。ギルド職員おそるべし。今度は俺のほうが驚かされた。
魔の森の境界での伐採依頼、完了報酬は合計で1.2万ロゼだった。
俺達の場合はトカマル君と2人でやったわけだから、1人あたりだと6000ロゼか。
モリモリ草の採集依頼に比べれば報酬は高いが、1日仕事でこの金額。魔物の出没地帯での肉体労働と考えると、不人気なのも頷ける。
もちろん俺の場合は原木も持ち帰って来ているわけで、その分も収入になる。買取金額は21本で1.6万ロゼだった。伐採依頼の報酬とあわせれば2.8万ロゼ。これならまあまあかな?
さて続きまして、今度は昨日倒した魔物素材を取り出した。
レッサートレント×12
オーク×17
魔狼×53
角兎×37
オークは1体だけすでに食用にしてしまったので、数は減っている。
他のは全部解体してもらってから丸ごと売却してしまう。
いくつか購入しておきたい物もあるので資金が必要なのだ。
魔物素材の数が多いので専門の解体職人さんが出てきてくれて、あっという間に処理してくれた。
「にいちゃん、若いのにやるじゃねぇか? 一体全体どうなってやがる? どんな技を使ったってんだよこれは。全ての魔物に最高の状態の魔石が入ってやがるぜ。魔物に霊薬でも飲ませてブーストさせた状態で狩りましたってんなら不思議はねぇがな。そりゃねぇかっ! んな事しても大損だわな! ダッハッハッ」
筋肉隆々な解体職人のおじさんは、大笑いしながら別の仕事に戻っていった。
魔物素材の売却額は合計で 168万と9千ロゼになってしまった。
それぞれ素材1つあたりのお値段はこんな感じ。
レッサートレントの魔石:2.5万ロゼ。 幹:7000ロゼ。
オークの魔石:1.8万ロゼ。 お肉など:4500ロゼ。
魔狼の魔石:1万ロゼ。 お肉など:250ロゼ。
角兎の魔石:1万ロゼ。 お肉など:250ロゼ
やはり魔石の売却価格がえぐい。
魔狼と角ウサギなどという最下級モンスターでも、状態の良い魔石なら1万ロゼの価値がある。昨日は狼と兎の合計90体倒しているから、それだけで90万である。
まさにチート。ズルである。
もはや一生これだけ狩っていれば済む話だ。いや、飽きるからやらないけども。いつまでも魔石が採れ続けるとも限らないし。
さてこの魔石、トカマル君の食料として少しとっておこうと思ったが、今は必要ないらしい。くっ、贅沢ものめっ。
それよりも今は圧倒的に生の鉱石が食べたいそうだ。先日、金属は摂取してもらったが、あれはあくまで代替品だったようだ。やはり加工された金属よりも。生の鉱石や宝玉が食べたいそうだ。
栄養のバランス的なことのようだが。
さて、手に入れた160万ちょっとの資金。今日はこれでお買い物をする。
もちろん欲しい物は沢山あるのだけれど、一番のお目当ては炊事道具と武器である。
特に武器はお金がかかるのだが、俺が普通に使っても壊れない丈夫な武器を買っておこうと思う。
やはり素手で魔物を殴り倒す姿というのは野蛮に思えるからだ。
なるべくなら人間っぽい雰囲気を醸し出して行きたいと思っている。
今持っている【魔鋼の長剣】は昨日手に入れたばかりの逸品なのだけれど、実はこれ、今の俺が装備すると【攻撃力】の数値が減少する。
昨日この剣を使って魔狼を切った時もそうだったのだが、俺の腕力に対して武器の強度が足りていない。簡単に折れてしまうのだ。
剣よりも俺の拳や爪のほうが遥かに硬く強靭だという状況。
それならば拳で戦えば良いのでは? もちろんそんな考え方もあるだろう。だがしかし、本当にそれで良いのだろうか? 人間として、文明人としてそれで良いのだろうか? いいや、文明人ならば道具を使うべきである。せめて硬い棒切れのひとつでも手に握るべきなのである。あるいは魔法用の武器という選択もあるではないか。
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