20 / 61
20 試し切り
しおりを挟むそれではトカマル先生、武器合成をお願いいたします。
不帰の大槍 + 血魔の霊刀 + 魔鋼の長剣+3 ―― ――
そしてトカマル君の体内から取り出されたのは、こんな武器だった。
【呪法刃の短刀】
装備中は回復不可+流血ダメージ。使用者の血液と魔力を吸収し、それに応じた刀身を生成。刀身の形状は自在。魔神エフィルア及びその眷属専用武器。
そんな感じの短刀だった。
見た目は小さいが、それに反してかなりの重量があるようだ。
呪いは見事に2種類とも健在。つまり、使っている間ずっと使用者にダメージがあり、それを回復させられないという凶悪な呪いに進化したのだ。
こんなもの、俺以外に使おうとする物好きがいるだろうか。
肝心の強度のほうはどうなのやら。これで貧弱だったら強烈なゴミである。試してみよう。
ふむふむ。手に持った感じは良さそうだ……
おお? 本気で素振りをしても大丈夫そう。
魔力をほとんど流し込まずに試し切りしてみると、木は切れるが石は無理そうか。割と普通だな。ちょっぴり魔力を流し込み、小石を切ってみる。ズッパリ余裕で切断。
よしよし、良さげな感じである。あとは強度と魔力の許容量がどれほどあるかだが……
体感的には5%も魔力をこめていないのだが、そこで限界が近そうな反応を示し始めた。キーンと鳴って震え始めたのだ。
ほんの一瞬であれば10%程度までは耐えたが、そこまでだな。
最後にもう1つ。刀身の形状は俺の意思にあわせて変化させられる事も確認できた。長くしたり短くしたり自由自在。これは便利。
なるほどなぁ…… かなり良さげなのでは?
魔力吸収5%の状態を、ステータス値で確認するとこんな具合である。
【H P】756
【M P】345158
Up 【攻撃力】611→ 17870
【防御力】712
Down【魔 力】345158→ 325700
【速 度】576
魔力が約5%減少していて、ほぼその値と同じ分だけ攻撃力が上昇している。
俺の場合もともとの【攻撃力】が【魔力】に比べて低いから、かなりの上昇効果があるように見える。
血液に関しては今どれくらいの量が刀に吸われているのかは正確には分からない。
ただ、体感としてはほとんど感じないかな? ダメージも感じないが?
おそらくだが、もともと元気で丈夫な俺の身体は自然回復速度がバケモノじみているため、損耗している量よりも自然回復している量のほうが勝っているように思える。
ちなみにこの世界のHPというのは、地球世界のゲームよりもずっとアバウトで、だいたいの感じしか分からない。最大値が表示されているだけで、ダメージを受けた状態の数値は分からないのだ。
1ポイントだけでも残っていれば元気に活動できるというような仕様でもない。
それにしても、思っていたよりもずっと素晴らしい品に出会う事が出来た。
これなら実用になるのではなかろうか?
「どうですかエフィルア様? どうですか?」
つぶらなトカゲ目が俺を見上げている。
「素晴らしいよトカマル君。今手に入る中では最高の出来だよきっと」
「良かった~~。それじゃ試し切りに行きましょうよ、エフィルア様っ」
そうだな。実践での使い勝手も見ておいた方が良いか。
おっとその前に、いくつか回復薬も買っておかなくては。
俺が使う事はあまりないかもしれないが、トカマル君には必要だろうし。
他にも鍋やフライパン、包丁と食器と、その他諸々の生活雑貨をインベントリに収納した。今までは本当に何も家財道具がなかったけれど、少しはお金も入ったからね。なにせ今晩は百合根の灰汁抜きにも再チャレンジするのだし。
俺達は大屋さんに別れを告げて、町の外へと向かう。
「エフィルア様、はやくはやくっ」
元気一杯で駆けてゆくトカマル君。
ちょっと待ってほしい。未だに俺はステータス値の上昇に慣れていなくて、それなりに慎重に動かないと転んだり事故を起こしたりしそうなのだよ。
免許取立ての自動車運転みたいなものである。それも、いきなりモンスターマシンに乗せられてしまったような。
もう少し身体を慣らす目的もかねて、今日も百合根狩りのポイントに行ってみようかな。それから早めに帰宅して、今晩こそ美味しく調理してみせよう。
百合根×4 オーク×6 魔狼×25
武器の試し切りがてら森の境界線を探索してみると、なんと今日は百合根を4つも手に入れることが出来た。
やはり、昨日のゴタゴタで習得した【魔力探知】というスキルが役立っている。
周囲にどんな魔物や人間がいるのかが大まかに分かるのだ。
おそろしく便利な技である。
そして肝心の新装備。呪法刃の短刀の使い勝手はどうかといえば、それはもう、素晴らしい切れ味だと表現する他にはないだろう。
魔狼だろうと、オークの分厚い脂肪だろうと、レッサートレントの太い幹だろうと、一刀両断に出来ない物はなかった。大きい物を切るときには意識して刀身を長く伸ばせる。手近にあるものには全て刃が通った。
大きな岩を切ってみても、まるで豆腐を切断するかのように滑らかに簡単に。
思わず豆腐が食べたくなってしまう。豆腐どころか大豆もない世界だというのに困ったものである。
トカマル君も得意満面。嬉しそうに俺の頭の上にのって、ふんふんと鼻息も荒く胸を張っている。
さて、ついでがもうひとつ。
攻撃魔法も練習してみようかなと思っている。【魔弾】というやつだ。
シンプルに魔素の塊を弾丸にして飛ばすという攻撃のようだ。
すでにスキル欄には載っているがグレイアウトしていて、まだ未修得状態の魔法である。
威力も射程も効果範囲も分からなかったので、まずは空に向けて練習開始。
これは今までの魔法の中では最も簡単だった。すぐにピコンッと閃きの感覚が湧き上がってきて、ドンっと発射。威力調整もしやすい。
射程については…… かなり遠くまで届くという事しか分からなかった。見える範囲ではどこまでも遠くに飛ばせそうだった。
そうして何度か試してから、最終的には魔物に対しての実践練習で締めくくる。
魔力値は30万以上にもなっているから、調整には苦労するかとも思ったのだけど、意外とコントロールは難しくなかったのだ。これよりは身体の動きに慣れるまでのほうがずっと苦戦した。
今は魔法のコントロールがすこぶる簡単だ。ふうむ、思い当たる理由も1つある。この常時発動スキルの効果である。
【始原の魔力】
魔力、MP、魔力操作 +54000%
これである。魔力、MPと一緒に、魔力操作という能力にもプラス補正が5.4万パーセント付いている。
たんに魔力が膨れ上がっただけでなく、同時に操作する力も上昇しているというお得さ。なんて便利なスキルだろうか。
魔弾も素晴らしく使いやすい魔法攻撃だと思う。くせのない純粋な破壊魔法だ。
ひとつ問題点を挙げれば、クリーンヒットさせると敵が木っ端微塵に爆散してしまうことだろうか。最弱で撃ってもそうなるのだ。
これでは倒すだけなら問題ないが素材の回収は不可能だ。魔石も獲れなかった。
まだまだ改善の必要がありそうだな。
10
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる