幸福奇譚

安馬川 隠

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本編

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 四条 叶真は重東に心酔している。
まるで犬のように重東の話だけは必ず真面目に聞き、与えられた命令には背かない。

 極道の世界で組長に絶対的忠誠を誓うなんていうのは当たり前の常識だが、その盃よりも叶真は重東に与えられた言葉を優先しているように他人は感じた。


「………で、今井の処分は」

「組長に言われた通りバラして各々使い道がある場所に」

「…重が言ってた『治験』にはどの部位送った」

「若は今井が女を人形にする時常套手段で使っていた薬を打ち込みましたが、殆ど効かずでしたので血液に特殊な抗体でもあるのではと、血液だけは指示しました」


 極道の部屋、なんて世間一般では和室で畳の上に座布団敷いて……とか思うものもいるのだろうけれど、現代の極道ではコンクリート張りの事務所で椅子に座っている。
時代が移り変わるようにどんな存在も現代に染まることを余儀なくされている。


 奧星会直系榊組


 組自体も長く、そこそこに歴史ある組である。
暴対法で多くの組が抑えられ、奥星会内でも頭不在なんてことがある状態下で榊組は未だに一度も警察の踏み込みすら無い。
まるでハイエナのようにコソコソと水面下で証拠集めに勤しんでいるかのようにも見える境界線を踏み込む馬鹿はまだ居ない。

 そんな榊組、組長の豪我は見た目こそ重東と瓜二つではあるものの物事を処理する残虐性は重東より遥かに強い。
叶真は今井の件の報告をしに事務所に来たが豪我の圧には身震いする。


「………で、重が連れ帰った『玩具』はどうした」

「あぁ、その件でしたら若が『最愛ゆえ手出し無用』と」









 バイブレーションの音で起きる。

 挿入したままで寝てしまった為に乾いて、動かすのも痛みが生じる可能性があると感じた重東は素早くローションを手に取り手の熱で温めると接合部に流しゆっくりと貼りついた糊を剥がすように動いて抜いた。

 動いている間に眠っている宏臣が喘ぐものだから、すぐに重東の股間は反応して大きく硬くなってしまう。
不可抗力とはいえ、中々に喜べる状態ではない。

 ゆっくりと立ち上がりシャワーを浴びるついでに宏臣も綺麗にしようとお姫様だっこでお風呂場へと向かう。
温かいお湯で身体を流せば身もさっぱりする。宏臣のお尻のナカも洗えば眠る前に忘れていた後処理をしないことによって起こる弊害が減っていることを願った。


 宏臣を綺麗にしガウンを着せて、リビングにあるソファベッドに寝かせれば、重東は寝室へと戻り惨劇でもあったかのように荒れたベッドのシーツやら掛け布団やらを全部剥がして洗面所に置いてある大きな籠に詰め込んでいく。
 重東は自身の面倒くさがりな性格を見越して、シャワー後直ぐに横になってもベッドのマットレスがカビたりすることが無いように、防水シーツの上に通常シーツを重ねていた。

 宏臣を何度もイかせ続け、潮を振り撒いても良いとてもヤり甲斐のあるベッドが生まれたことを今では誇らしくさえ感じている。

 面倒くさいとは思ってもここに宏臣が眠ると考えると他者の手ではなく自分の手を介した場所にいて欲しいという感情になり積極的に動けてしまう。恋だの愛だのと理解できなかった頃の自分が見たら衝撃的なことだろう。

シーツを張り替え、宏臣が寒くならないように柔らかいフワフワとした素材の掛け布団を用意する。
ソファーベッドからベッドへと移動させ、ふわふわの掛け布団もかけてあげれば可愛らしい存在が眠る極上の場所が完成する。
 起こさないように、携帯を持ちリビングへと向かい待たせた連絡に目を通す。
送り主が叶真で油断していた重東は、何の気なしに連絡を開いた。


『組長への報告完了、若の最愛についての説明の為事務所に来るようにとの事』


 叶真の気遣いである箇条書きのように書かれた連絡に溜まった面倒くささがため息となって口から出ていく。
豪我がなんの情報も無しに来いなんて言うことはない。誰かが何かを漏らしたか。


「………まぁ、叶真だろうな。口止めしてなかったか」


 今さら重東が後悔したところで遅い。
取り敢えずさっさと終わらせよう。と手早く着替え外へと出る。宏臣が起きる前に事を終わらせて、軽食でも買って帰れば一緒に食べれる筈だと甘い考えを乗せた。
 榊組事務所にはタクシーで向かったが、向かう車内で不機嫌さは距離が近づくにつれて増していき運転手は生きた心地がしなかった。


「……若、お疲れ様です」


 事務所に入れば手前側、入り口から近いところに舎弟たちが揃う。
討ち入りに別の組織が来た時には、まずは足軽が居ないと成り立たない。城等と同じ理論。

 軽く挨拶を返して進んだ先で、久方ぶりの親子の対面があった。
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