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本編
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しおりを挟む宏臣の大胆な行動は重東にとって、予測できないサプライズとなった。
羞恥に耐えながら重東を包み込むように抱き締めている宏臣の顔を確認することは残念ながら叶わなかったが、トクトクと早く打つ脈が宏臣の精一杯を伝えていて胸が温かく感じる。
豪我の言葉が今も耳の奥を反芻している。
正論を叩きつけられて、宏臣を連れ出すことも簡単なのだぞと見せつけられて、若頭として他人に舐められて来なかった自惚れがこうも自分を傷付けるのかと。
「………本当に怖い思いさせて、ごめん……なさい」
囁くように小さい声で重東の口から漏れた言葉を、宏臣は包み込むように抱き締める腕を強めることで応えた。
今、逃げたい。自由にしてと言えば重東はきっと良いよと言ってしまいそうなほどに脆い。宏臣は何故かもう離れられない自覚がある。
自由を与えるから逃げないでくれ。重東が放った言葉の矛盾を指摘する余裕もない。ただ、その空間には二人の落ち着きたいのに落ち着くことが出来ないもどかしい呼吸が鳴るだけだった。
抱き締めながら宏臣が話し始めた頃には重東のパニックに近い状態はだいぶ落ち着きを取り戻して来た頃であった。
「……僕は貴方が怖いです。初めて会った時から優しく笑う瞳の奥が笑ってなかったり、言葉の一つ一つが僕を見透かしているようで。
でも、重東さんも人間なんだなってわかったのでおあいこにします。
もう僕は貴方が飽きるまで離れられないんだろうし、職場や家族のことだって知ってて既に手を回した後だろうし。
良いですよ、重東さんが言ってたようにある程度の自由と危険から守ってくれるのなら僕から逃げたりしないとお約束します」
宏臣の言葉を全て聴いた上で重東は小さくありがとう。と呟くと「本当はここでヒロを抱いて幸せを確認するべきなんだろうけど、ここには防犯と上へ渡す証拠の為に隠しカメラがあるから撮られたくないんだ」と宏臣からしたら衝撃的なカミングアウトをさもついでのように告げた。
宏臣の重東に掴まれていた部分は鬱血し痣になる痕として残った。
重東はごめんね、と湿布やら冷やすか温めるかと慌てた様子であれやこれやと準備する頃には二人の中で張り詰めていた緊張や恐怖の糸は相当緩んでいた。
緩めることが出来るほどに安心が出来る空間になったと喜ぶ重東であったが、隠しカメラのいくつかは無線で繋がり豪我に筒抜けであることを理解していたので表情に出さないように尽力した。
「……重東さんのお父さんってビッグダディなんですね」
「ん?どういうこと?」
「え、あぁいや、あの場所に連れていかれる時や重東さんも居た所とかで『オヤジ』って言ってたじゃないですか」
宏臣の突然の疑問は重東の中のツボにぴったりハマった。まさか組長をオヤジと呼ぶ風習を本当の親子なのではと疑う人間が居るなんて誰が想像していたか。
捻れそうな程に震える筋肉に鞭を打ち重東は親子盃の説明も交えて説明した。
確かにあのオヤジは重東にとっては本当の息子でも、盃を交わしたら義理にはなるが親が出来る。
親の下につくもの全てが兄弟となり、ガチガチに決められた上下関係など親子や家族とは縁遠いようにも重東としては感じてしまうが、代紋背負う者達の当たり前はカタギと呼ばれるような一般人には理解できないものだろう。
どう説明したら良いものかと眉間に皺寄せて悩む重東を見つめながら宏臣はそんなに複雑な親子関係なのかと違う視点で解釈を始める。
「…うーん、本物の親子ではないけれど血よりも強い縁で結ばれてるかな。親子盃って言ってね、同じ酒を盃に入れて飲むの。そうすると紙とかそういう形式的なものに似てるけど親子のようにオヤジと呼ぶことを許されるんだよ。
ただオヤジって言っててもね、振り仮名で見たら組長って漢字の上にオヤジって出るだろうし親子の父さんとかとは意味合いが全然違うかな」
重東の説明にほうほうと相槌を打ちながら、じゃあ僕が重東さんと盃を交わしたら親子になれるんですか。と問う。
それは無理だねと即答した重東の答えが意外だったのか表情からして、驚く宏臣に重東は優しく答えた。
「ヒロが思う以上に盃には種類があってね。さっき話した親子盃だけじゃなく兄弟盃やらあるし、交わしてしまえば簡単には反古出来なくなる。俺は少なくとも気軽に意味も理解しきれずに盃を交わそうとしている馬鹿を沢山見てきているからね。オススメはしないし出来ないよ。
それに、ヒロが盃を交わしたいなら俺と夫婦盃を交わせば良いよ。離してあげる気ないからさ」
『夫婦』の言葉に宏臣の心臓が跳ねる。
「……重東さんの不安がなくなるのなら、盃…良いですよ」
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