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§ 魯肉飯
戀情の二
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スーパーマーケットの売り場で研究をしようと思い立ったのは、強ち間違いではない。調味料売り場の陳列棚にこれでもかと並ぶ、多種類の醤油を見て、わたしは確信した。
「これは……すごいわ」
インターネット上には、魯肉飯のレシピが、驚くほどたくさんあった。しかも、同じ魯肉飯だというのに、みんなそれぞれ受け継いだ家庭の味であったり、創意工夫を重ねていたりと、どれもが少しずつ違う。
材料も然り。
主材は、豚肉に違いないが、バラ肉であったり、肩ロースであったりと、部位もさまざま。
日本では見たこともない皮つきバラ肉の塊には驚かされたし、粗挽きであれば挽肉でもいいことも知った。
ちなみに、前回の肉は、日本で売っているのと同じ、細かい挽肉。
まな板も包丁も持っていなかったため、これでいいわと、お手軽な選択をしたのだが、なるほどあれでできるのは別物だな、と、レシピやブログを読んで理解した。
調味料も同様に、醤油ひとつをとっても、甘いものから塩気が強くて色の薄いものまである。魯肉飯に最適なのは、甘めのもの。これも覚えた。
砂糖は、これも驚いたのだが、こちらではなんと、氷砂糖を煮物に使うらしい。
氷砂糖は口寂しいときにガリガリ囓って食べるおやつだと思っていたのだが、違ったようだ。
香辛料にいたっては、もう言葉もない。八角、唐辛子いろいろ、花山椒などの単品は当たり前。
魯包と呼ばれるミックススパイスも、肉料理、魚料理、スープ、卵料理用などなど、さまざまな用途のものが並べられている。
陳列棚の前に佇んでは、ひとつひとつの商品を手に取ってじっくりと観察し、説明書きがあれば読んでいく。
月老の『基本を押さえろ』との言葉を、けっして忘れたわけではないが、これだけのものを見せられると、魯肉飯に限らず、料理への挑戦意欲がムクムクと湧いてくる。
そして最後に、道具類。
肉を切るためには包丁とまな板。これは基本中の基本。材料を入れるボールや菜箸などの細かい道具も揃えなければならない。
前回、ここを訪れたときには、電気製品売り場で電鍋を買い、食品売り場では、物珍しさに目を奪われ無関係な食品を買い漁った。
目的の物にいたっては、ろくに吟味もせず——正しくは、吟味のしようもなかったのだが、単に目についた物を適当にカゴへ放り込んだだけだった。
電鍋と適当に揃えた材料さえあれば、簡単に魯肉飯を作れると思っていた、あの日の自分の甘さを呪いたい。
「今日一日で終わりそうもないな」
素材を吟味し、道具を揃えるだけで必要となるこれだけの労力。調理の研究にかかる時間と労力は、どれほどになるだろう。気が遠くなる。
メモをバッグにしまい、ため息をついた。
月が変われば、学校は新しいクラスになる。授業も難しくなり、予習復習は必須。宿題も増えるだろう。それを考えると、月老のミッションは、今月中に決着をつけたいところだ。
「リンリン、いいかげんに寝ろよ。もう二時だぞ」
「うん。あとこれだけ」
インターネットでレシピを検索しつつ、スーパーで書き留めたメモを元に、購入予定の材料と道具を整理する。
そうそう、忘れずにご飯を先にたくさん炊いて、冷凍しておかなければ。
わたしの背で、カイくんが吠える。
「おまえ、昨日も一昨日もまともに寝てないだろ。体壊しても知らねえぞ」
「大丈夫」
振り返ってニッと笑ってみせる。
「目の下にクマ飼ってる奴に大丈夫って言われてもな……」
「フフフッ。カイくん、わたしのこと心配してくれるんだ?」
目を泳がせそっぽを向いたカイくんは、オレは先に寝るぞとベッドへ横になった。
照れている。が、それにしても。
なぜ、カイくんにわたしのベッドを占領されなければならないのか。
解せぬ。
「これは……すごいわ」
インターネット上には、魯肉飯のレシピが、驚くほどたくさんあった。しかも、同じ魯肉飯だというのに、みんなそれぞれ受け継いだ家庭の味であったり、創意工夫を重ねていたりと、どれもが少しずつ違う。
材料も然り。
主材は、豚肉に違いないが、バラ肉であったり、肩ロースであったりと、部位もさまざま。
日本では見たこともない皮つきバラ肉の塊には驚かされたし、粗挽きであれば挽肉でもいいことも知った。
ちなみに、前回の肉は、日本で売っているのと同じ、細かい挽肉。
まな板も包丁も持っていなかったため、これでいいわと、お手軽な選択をしたのだが、なるほどあれでできるのは別物だな、と、レシピやブログを読んで理解した。
調味料も同様に、醤油ひとつをとっても、甘いものから塩気が強くて色の薄いものまである。魯肉飯に最適なのは、甘めのもの。これも覚えた。
砂糖は、これも驚いたのだが、こちらではなんと、氷砂糖を煮物に使うらしい。
氷砂糖は口寂しいときにガリガリ囓って食べるおやつだと思っていたのだが、違ったようだ。
香辛料にいたっては、もう言葉もない。八角、唐辛子いろいろ、花山椒などの単品は当たり前。
魯包と呼ばれるミックススパイスも、肉料理、魚料理、スープ、卵料理用などなど、さまざまな用途のものが並べられている。
陳列棚の前に佇んでは、ひとつひとつの商品を手に取ってじっくりと観察し、説明書きがあれば読んでいく。
月老の『基本を押さえろ』との言葉を、けっして忘れたわけではないが、これだけのものを見せられると、魯肉飯に限らず、料理への挑戦意欲がムクムクと湧いてくる。
そして最後に、道具類。
肉を切るためには包丁とまな板。これは基本中の基本。材料を入れるボールや菜箸などの細かい道具も揃えなければならない。
前回、ここを訪れたときには、電気製品売り場で電鍋を買い、食品売り場では、物珍しさに目を奪われ無関係な食品を買い漁った。
目的の物にいたっては、ろくに吟味もせず——正しくは、吟味のしようもなかったのだが、単に目についた物を適当にカゴへ放り込んだだけだった。
電鍋と適当に揃えた材料さえあれば、簡単に魯肉飯を作れると思っていた、あの日の自分の甘さを呪いたい。
「今日一日で終わりそうもないな」
素材を吟味し、道具を揃えるだけで必要となるこれだけの労力。調理の研究にかかる時間と労力は、どれほどになるだろう。気が遠くなる。
メモをバッグにしまい、ため息をついた。
月が変われば、学校は新しいクラスになる。授業も難しくなり、予習復習は必須。宿題も増えるだろう。それを考えると、月老のミッションは、今月中に決着をつけたいところだ。
「リンリン、いいかげんに寝ろよ。もう二時だぞ」
「うん。あとこれだけ」
インターネットでレシピを検索しつつ、スーパーで書き留めたメモを元に、購入予定の材料と道具を整理する。
そうそう、忘れずにご飯を先にたくさん炊いて、冷凍しておかなければ。
わたしの背で、カイくんが吠える。
「おまえ、昨日も一昨日もまともに寝てないだろ。体壊しても知らねえぞ」
「大丈夫」
振り返ってニッと笑ってみせる。
「目の下にクマ飼ってる奴に大丈夫って言われてもな……」
「フフフッ。カイくん、わたしのこと心配してくれるんだ?」
目を泳がせそっぽを向いたカイくんは、オレは先に寝るぞとベッドへ横になった。
照れている。が、それにしても。
なぜ、カイくんにわたしのベッドを占領されなければならないのか。
解せぬ。
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