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§ 誘惑 *
四
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密着した素肌。直に感じる互いの温度が、これは現実だと教えてくれる。
亜弥の両頬を、克巳は大きな手で包み込んだ。言葉も無くどちらともなく唇を合わせれば、熱い舌を絡め合う。目を閉じ、互いの匂いをひとつに混ぜ合えば、唇から伝う水音だけが、脳裏に響く。
「夢、じゃない……よね?」
「ああ」
こんなに幸せな夜に、巡り会えるなんて。
離れ離れになって十年。恋い焦がれ、二度と会えない絶望に打ち拉がれ、薄らぐことのない胸の痛みに耐え続ける日々。諦め、忘れる努力だって積み重ねた。
そんな辛い時間も、いまこうしているだけで報われた気がする。
息を継ぐ隙間もないほどの深く長い口づけが、身体の奥に暖かな火を灯す。亜弥の心も満たされていく。
口腔を舐られ、搦め捕られた舌をきつく吸い上げられ。痛みは亜弥の頭の芯を痺れさせた。
明日なんて知らない。たとえ儚い夢だとしても、溺れていたい。
節くれ立った指に髪を梳かれ、亜弥はうっとりと目を細める。その指が耳朶をなぞれば、首筋がゾクゾクと粟立った。
首筋から肩、腕へと、産毛を撫でるように這う指が、亜弥の指を搦め捕り、腕を頭上へと導く。
絡めた指を解いた克巳の手のひらが、腕の裏側の柔肌を、ゆっくりと撫で下り脇へと戻せば、身体の奥に積もっていくもどかしさに身を捩る。甘く苦しい口づけからようやく解放された亜弥の吐息には、甘い呻きが混ざっていた。
「ん、はぁ……」
克巳の唇が首筋をたどり、胸元へと下りていく。脇から救うように包まれた膨らみは、克巳の手によって形を歪ませ、もう一方の膨らみには熱い舌が這う。
ビクビクと身体を震わせる亜弥は、与えられる刺激に耐えるばかり。ほんのりと頬を染めて唇を噛むその表情を確かめながら、克巳は頂の周囲を舐ったあと、それを口へと含ませた。
「ん、ん、んっ」
コリコリと歯で扱かれ、追い打ちをかけるように舌で転がされ、もう一方はといえば、感触を愉しむように揉みしだかれ、頂を摘まんだり引っ掻いたりと、無骨な指先に弄ばれている。
「こっちもかわいがってやらないとな」
亜弥がそ意味を理解するより先に、入れ替わりにもう一方の蕾が、きつく吸い上げられた。
「んあうっ」
嬌声を上げてしならせた背は克巳の腕に抱えられ、強い刺激から逃れたい亜弥の欲求に反して、胸元を克巳の口元へと押し付けた。
容赦なく立てられる歯に甚振られ舐られて、硬く痼った赤い実から全身へと甘い毒が染み込んでいく。
「いまも左が弱いんだな」
変わっていない、と、嗤われ、目を開いた亜弥の頬が、瞬時に紅く染まった。
「なっ……なんでそんなっ」
「好きな女のいいところを、忘れる男なんていないだろう?」
「……そんな、大昔の……こ、と」
「そう、こっちもだったな」
亜弥の言葉を遮るように、克巳の手は秘所へと伸びる。指先が薄い茂みをかき分けて秘裂を割り、内側へと沈み込んだ。
「あっ、やだそこっ! んっ……」
「もう濡れてる……で、ここをこうやって?」
溢れる蜜を纏わせた指先が、尖りの周囲を探る。時に強く、時に弱く。ぬるぬると撫で回され溜まっていく熱。広がる甘い痺れが、亜弥の脳を弛緩させる。
「足。閉じちゃだめだよ」
筋肉質な足が、亜弥の太腿に絡みつき、自由を奪った。
「気持ちいいんだろう? ちゃんと言ってごらん」
「あうっ!」
言わなきゃ許さない、とばかりに、耳朶を甘噛みされて亜弥は悲鳴を上げる。耳介を這い回り耳孔にまで入り込む舌。水音が、首を竦める亜弥の脳裏に響いた。
「あ、ん……みみ、ぃやぁ……だめ、気持ち、い、い……から、もう……」
「亜弥、ここをこうすると気持ちいいのを教えたのは誰だっけ。ちゃんと憶えてる?」
「んああっ!」」
会館で膨らんだ尖りから顔を出した芯を、爪の先で引っ掻かれた。突然襲いかかる焼け付くような感覚。亜弥の目の奥で、次々と小さな光が弾けて消える。
あの夜。未知への期待だけが先走る亜弥の身体は、克巳によって開かれた。
耳元で囁かれる艶めいた声。しっとりと密着する素肌の温もりは、亜弥の羞恥を剥ぎ取り、繊細な指で、柔らかな唇と熱い舌で、身体の隅々まで探られて、乱れることを教えられた。
その手に導かれて絶頂を知り、大好きな人に抱かれる痛みも悦びも味わった。
たった一晩だけだったけれど、克巳との初めての夜を忘れるなんて、亜弥にできるわけがない。
「う、ん……うぅっ」
「ちゃんと憶えてたな」
亜弥の肩に腕を回し、上体を包み込むように抱きしめた克巳が、亜弥の唇を塞ぎ口腔を貪る。逃げても追い詰められて搦め捕られる舌。混ざり合う唾液は
蜜のように甘い。
飲み込めずに口角から溢れ出たそれは、首筋を伝いシーツへと吸い込まれる。敏感になった亜弥の肌は、その僅かな感触にすら泡立ってしまう。
きつく舌を吸い上げられて、呼吸も奪われ苦しみにもがく。秘所へと沈み込んだ指先は、執拗なまでに亜弥を甘く責め立て、翻弄する。
すべてを委ねてしまった亜弥に唯一残されている自由は、喉の奥で呻くだけ。
「んっ、うううぅ」
それすらもほんの束の間。身体の芯から迫り上がってくる苦痛にも似た不可思議な感覚が止まらない。
極度に圧縮されたそれは、破裂した白い光。キラキラと輝きながら亜弥の全身を駆け巡り、身体ばかりではなく思考も感情までをも奪っていく。
全身を弛緩させて恍惚とした表情を浮かべる亜弥を、克巳は慈しむように抱き締めた。
「好きだ。亜弥。前もいまもずっと……好きだよ」
克巳の掠れ声が、亜弥の脳を溶かしていった。
亜弥の両頬を、克巳は大きな手で包み込んだ。言葉も無くどちらともなく唇を合わせれば、熱い舌を絡め合う。目を閉じ、互いの匂いをひとつに混ぜ合えば、唇から伝う水音だけが、脳裏に響く。
「夢、じゃない……よね?」
「ああ」
こんなに幸せな夜に、巡り会えるなんて。
離れ離れになって十年。恋い焦がれ、二度と会えない絶望に打ち拉がれ、薄らぐことのない胸の痛みに耐え続ける日々。諦め、忘れる努力だって積み重ねた。
そんな辛い時間も、いまこうしているだけで報われた気がする。
息を継ぐ隙間もないほどの深く長い口づけが、身体の奥に暖かな火を灯す。亜弥の心も満たされていく。
口腔を舐られ、搦め捕られた舌をきつく吸い上げられ。痛みは亜弥の頭の芯を痺れさせた。
明日なんて知らない。たとえ儚い夢だとしても、溺れていたい。
節くれ立った指に髪を梳かれ、亜弥はうっとりと目を細める。その指が耳朶をなぞれば、首筋がゾクゾクと粟立った。
首筋から肩、腕へと、産毛を撫でるように這う指が、亜弥の指を搦め捕り、腕を頭上へと導く。
絡めた指を解いた克巳の手のひらが、腕の裏側の柔肌を、ゆっくりと撫で下り脇へと戻せば、身体の奥に積もっていくもどかしさに身を捩る。甘く苦しい口づけからようやく解放された亜弥の吐息には、甘い呻きが混ざっていた。
「ん、はぁ……」
克巳の唇が首筋をたどり、胸元へと下りていく。脇から救うように包まれた膨らみは、克巳の手によって形を歪ませ、もう一方の膨らみには熱い舌が這う。
ビクビクと身体を震わせる亜弥は、与えられる刺激に耐えるばかり。ほんのりと頬を染めて唇を噛むその表情を確かめながら、克巳は頂の周囲を舐ったあと、それを口へと含ませた。
「ん、ん、んっ」
コリコリと歯で扱かれ、追い打ちをかけるように舌で転がされ、もう一方はといえば、感触を愉しむように揉みしだかれ、頂を摘まんだり引っ掻いたりと、無骨な指先に弄ばれている。
「こっちもかわいがってやらないとな」
亜弥がそ意味を理解するより先に、入れ替わりにもう一方の蕾が、きつく吸い上げられた。
「んあうっ」
嬌声を上げてしならせた背は克巳の腕に抱えられ、強い刺激から逃れたい亜弥の欲求に反して、胸元を克巳の口元へと押し付けた。
容赦なく立てられる歯に甚振られ舐られて、硬く痼った赤い実から全身へと甘い毒が染み込んでいく。
「いまも左が弱いんだな」
変わっていない、と、嗤われ、目を開いた亜弥の頬が、瞬時に紅く染まった。
「なっ……なんでそんなっ」
「好きな女のいいところを、忘れる男なんていないだろう?」
「……そんな、大昔の……こ、と」
「そう、こっちもだったな」
亜弥の言葉を遮るように、克巳の手は秘所へと伸びる。指先が薄い茂みをかき分けて秘裂を割り、内側へと沈み込んだ。
「あっ、やだそこっ! んっ……」
「もう濡れてる……で、ここをこうやって?」
溢れる蜜を纏わせた指先が、尖りの周囲を探る。時に強く、時に弱く。ぬるぬると撫で回され溜まっていく熱。広がる甘い痺れが、亜弥の脳を弛緩させる。
「足。閉じちゃだめだよ」
筋肉質な足が、亜弥の太腿に絡みつき、自由を奪った。
「気持ちいいんだろう? ちゃんと言ってごらん」
「あうっ!」
言わなきゃ許さない、とばかりに、耳朶を甘噛みされて亜弥は悲鳴を上げる。耳介を這い回り耳孔にまで入り込む舌。水音が、首を竦める亜弥の脳裏に響いた。
「あ、ん……みみ、ぃやぁ……だめ、気持ち、い、い……から、もう……」
「亜弥、ここをこうすると気持ちいいのを教えたのは誰だっけ。ちゃんと憶えてる?」
「んああっ!」」
会館で膨らんだ尖りから顔を出した芯を、爪の先で引っ掻かれた。突然襲いかかる焼け付くような感覚。亜弥の目の奥で、次々と小さな光が弾けて消える。
あの夜。未知への期待だけが先走る亜弥の身体は、克巳によって開かれた。
耳元で囁かれる艶めいた声。しっとりと密着する素肌の温もりは、亜弥の羞恥を剥ぎ取り、繊細な指で、柔らかな唇と熱い舌で、身体の隅々まで探られて、乱れることを教えられた。
その手に導かれて絶頂を知り、大好きな人に抱かれる痛みも悦びも味わった。
たった一晩だけだったけれど、克巳との初めての夜を忘れるなんて、亜弥にできるわけがない。
「う、ん……うぅっ」
「ちゃんと憶えてたな」
亜弥の肩に腕を回し、上体を包み込むように抱きしめた克巳が、亜弥の唇を塞ぎ口腔を貪る。逃げても追い詰められて搦め捕られる舌。混ざり合う唾液は
蜜のように甘い。
飲み込めずに口角から溢れ出たそれは、首筋を伝いシーツへと吸い込まれる。敏感になった亜弥の肌は、その僅かな感触にすら泡立ってしまう。
きつく舌を吸い上げられて、呼吸も奪われ苦しみにもがく。秘所へと沈み込んだ指先は、執拗なまでに亜弥を甘く責め立て、翻弄する。
すべてを委ねてしまった亜弥に唯一残されている自由は、喉の奥で呻くだけ。
「んっ、うううぅ」
それすらもほんの束の間。身体の芯から迫り上がってくる苦痛にも似た不可思議な感覚が止まらない。
極度に圧縮されたそれは、破裂した白い光。キラキラと輝きながら亜弥の全身を駆け巡り、身体ばかりではなく思考も感情までをも奪っていく。
全身を弛緩させて恍惚とした表情を浮かべる亜弥を、克巳は慈しむように抱き締めた。
「好きだ。亜弥。前もいまもずっと……好きだよ」
克巳の掠れ声が、亜弥の脳を溶かしていった。
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