わたしたち、いまさら恋ができますか?

樹沙都

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§ 蓼食う虫も好き?好き。

02

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「波瑠さん、携帯鳴ってますけど?」
「誰から?」
「妹さんです」
「出る。貸して」

 栞里さん、良いタイミングで電話してくるではありませんか。ありがとう、おかげで携帯を取り返せました、と、通話ボタンを押しながら、心の中で礼を言った。

「栞里、どうしたの? 珍しいじゃない? あんたが電話してくるなんて」
「お姉ちゃん。どうしたのじゃないよ。ねえ、いったい何があったの? お母さんが泣いてるって言えって言ってるよ?」
「はぁ?」

 ちょっと栞里あんたなに言ってるのそうじゃないでしょうと叫ぶ母の声が、電話の向こうから聞こえる。

「まったくさ、何があったか知らないけど、私を間に挟むのやめてよね」
「お母さんがあんたに電話しろって言ったの?」
「そうだよ。あんたをどうにかしろって煩くてさ、私、すっごく迷惑なんだけど……」
「こっちだってお母さんのおかげですごい迷惑してんの! 文句があるならお母さんに言って。そうだ。あのお坊ちゃんに二度とメールさせるなってお母さんに言っといて」
「お坊ちゃん? 誰それ?」
「誰でもいいのよ。あんたに関係無いんだから」
「だったらさ、なんで関係無い私が言わなきゃなんないのよ? あんたとお母さんのことなんだから、あんたが直接言えばいいでしょ?」
「わざわざ言わなくたって、どうせ聞こえてんでしょ? とにかくね、これ以上煩わせるんだったら、こっちにだって考えがあるんだからね! って言っといて!」
「もうっ! 聞こえたでしょ、お母さん。 私はもう知らないからね。あとはふたりで勝手にやって!」

 母と栞里が電話の向こうで喧嘩を始めたので、これ幸いと電話を切った。携帯をジャージのポケットにしまい、何食わぬ顔で仕事に戻ろうとしたが、ふたりがそれを見過ごすはずはない。

「波瑠さん、携帯返してください」
「晶ちゃん、もういいでしょ? お遊びはおしまい」
「えー!」
「せっかく面白かったのに……」
「こんな変態メール毎日見たくないし、もう着拒否するから」
「……波瑠、それ、危険かもよ?」
「なんで?」
「だってさ、波瑠のお母さん絡んでるんでしょう? そしたら、ここだって知られてるんじゃない? もしも着拒否なんかしたら、直接訪ねてくるかも知れないよ?」
「うわー、そうしたら、ナマお坊っちゃん拝めるんですか?」
「晶ちゃん……」
「晶ちゃん、気持ちはわかるけど、本当に訪ねてきたら拝むだけじゃすまなくなるから……」
「……そうですね。波瑠さんですものね。血、見ますね」

 このふたりはいったい私をなんだと思っているのだろうか。


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