わたしたち、いまさら恋ができますか?

樹沙都

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§ 蓼食う虫も好き?好き。

07

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 ドアと俊輔の胸の間で潰された私は身動きが取れず、奴を見上げ睨みつけた。

「ちょっと! そんな大きな音立てたら近所迷惑ぅんん……」

 言葉の続きは、俊輔の唇に塞がれ飲み込まれた。驚いて目を見開き、空いている両手を振り回したが、呆気なくその腕を掴まれ、ドアに押さえつけられて以降は失敗に終わる。呼吸困難に陥り全身の力が抜け気が遠くなりかけた頃、やっと俊輔の唇が離れてくれた。

 はぁはぁと荒い呼吸をしながら目の前の瞳の色を探り、状況を把握しようと努めた。俊輔は苦しそうに眉間に皺を寄せ私を睨みつけている。突然こんなことをされて睨みつけたいのは私の方だ。まったく、わけがわからない。

 俊輔はフーッと大きく息を吐いてゆっくり目を閉じると、押さえつけていた私の両腕を離してドアに肘をつき、額をコンと音を立てて押し当てた。

「駄目だ。俺、かっこわりぃ……」

 溜め息とともに呟かれたその声音には、苛立ちと後悔が滲んでいるように聞こえた。

「俊輔?」
「……ゴメン。俺、帰るわ」
「ちょっと! いきなりなに?」

 ドアを開け出ていこうとする俊輔の腕を掴んだ。

「止めんなよ。これ以上ここにいたら、俺、おまえになにすっかわかんねぇから……」

 私の手を振り払って、顔を背けたまま俊輔は出ていった。


 なんなのだ、あのわけのわからないあいつの態度はなんなのだ。もしかして、私が何か怒らせるようなことをしたのだろうか。いったい何がいけなかったというのか。私は、さっきからの状況を思い返してみた。

 山内さんに送ってもらって話しながら歩いて、マンションの前に来たら俊輔がいて…………。

「もしかして……」

 山内さんと私の様子を見た俊輔は、自分の知らない男と私がイチャイチャしているとでも思ったとか。
 いや、それはありえないだろう。万が一、そうだったとしても、あいつがそんなことを気にするとは思えない。これまでだって私に彼氏がいたことは何度もあった。それでも、一度もそんな素振りを見せたことがないのだから。

 あいつは私を好きだと言った。キスもした。私たちの関係も以前の腐れ縁飲み友だちから一応は恋愛関係に進化しているのは事実。

 けれども……あの態度はやはり腑に落ちない。

 山内さんが気になるのであれば、あの場で訊けばよかっただけのこと。それなのに突然怒り出してあんな乱暴な態度を取るなんて。

 あいつが気まぐれに機嫌が悪くなるのはよくあることだけれど、超能力者でもあるまいし、理由も何もはっきりと言ってくれなければ、私にわかるわけがないではないか。

 帰りがけに吐き捨てたあの言葉。私に何をするかわからないとは、いったいどういう意味なのか。まさかアレやコレやと良からぬことを考えていたとか。

「…………うわっ」

 身震いをして腕をぎゅっと抱きしめた。


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