わたしたち、いまさら恋ができますか?

樹沙都

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§ あなたが好き。

06

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 スパークリングワインの栓を抜き二脚のフルートグラスにそれを注ぐ俊輔の手を、無意識に目で追っていた。サイドテーブルに置かれたグラスの中に、無数の泡がキラキラと揺らめいている。

 ワインを注ぎ終わりワインクーラーにボトルを戻した俊輔は、サイドテーブルを挟んだ反対側のソファに腰を下ろした。

「少し飲もう」

 促されてグラスの足を摘んだ指先が震える。情けない。こんなことでどうするのだ。自分を鼓舞するが如く息を吸い、泡の弾けるグラスを手にした。

 私同様、バスローブ姿の俊輔が、サイドテーブルの向こうで微笑んでいる。

「今日は、ありがとう」

 そう言って微笑んではみたが、自然に笑えていないのが自分でもよくわかる。

「満足したか?」
「……うん」
「そか。なら良かった」

 会話がぎこちない感じがするのは必ずしも気の所為ではない。もっと酔いが回れば少しは緊張が解れるだろうと思った私は、グラスのワインを一気に飲み干したが、こんなもの一杯くらい追加したところで酔えると思う方がおかしい。

「おい、そんな飲み方するなよ」
「あ、ごめ……」

 グラスを置いて立ち上がった俊輔が、私の手からグラスを取り上げた。

「もう寝るか」
「そ、そだね」

 人ひとり間に挟めそうな微妙な距離でふたり並び、ベッドに腰掛けた。

 変に意識するから気まずいのだ、仕事場の狭いベッドでいつもふたりで寝ているのだから、そのとおりにすればいいだけではないか、と、自分に言い聞かせ、ふわっと軽い布団を捲ってそそくさとその中に潜り込んだ。

 俊輔が入ってくる気配がして間もなく、ベッドサイドランプを残し、照明が落ちた。

 淡い光の中、頭からすっぽりと布団を被りじっと息を殺して俊輔の動きを伺っていたが、それきり何の気配もない。このまま寝るだけで済むのかと安堵しかけたとき、奴のくぐもった声が耳に入ってきた。

「とりあえず、脱ごう」
「脱ぐ?!」
「なに驚いてんだよ? 脱がなきゃなんにもできねえし」

 ベッドのスプリングが軋んで掛け布団が動き、かさこそと布が擦れる音がする。今、きっと奴は脱いでいる。


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