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蚕起食桑 カイコオキテクワヲハム 5/21-5/25
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「鈴音さんの誕生日は何したい?と言っても平日だから本格的には週末になると思うけど」
その穏やかな声に鈴音の哀しさが増す。
だって鈴音の願いは叶わない。
きっと高価な夕食や旅行とかには連れて行ってくれるのだろう。
けれど──ショッピング中に服を眺めれば僕は疎いからと一緒には見てくれない。
好きなのを買っていいよと言ってくれるのだけれど選んではくれない。
要はお金の問題ではなく、私には形あるモノを渡したくないのだ。
──なぜなんだろう──
榊さんは36歳で私は27歳。
来週で28歳になる。
──結婚とか──考えてないのかな?
今まで結婚したいと思った人はいるのだろうか?
それとも独身でいたい人なのかな?
鈴音のこと?どう思っているのだろう?
──私は考えてるよ。
でも……寂しいの。
とても寂しい。
寂しさを紛らわしても追いかけられる。
好きな分だけ強く。
もう──限界だった。
昼間見てしまった。
部下の長谷部さんが愛用していたペンを紛失したようだった。
午後から社内会議の進行を任せられていた彼女は糸が切れたように不安になって泣きそうだった。
そこへ榊さんが長谷部さんにペンを渡したのだ。
「僕も同じの持っているからあげるよ」
正直──耳を疑った。
丁度死角で私には気づかなかったのだろう。
それとも気付いても渡したのだろうか?
頭が真っ白で考えられない。
「課長……いいんですか?」
長谷部さんの声が鈴音を傷つける。
「このペンひとつで会議に集中出来るなら光栄だよ」
榊さんの優しい言葉が鈴音を引き裂く。
なんで⁈
私にはペンひとつ渡さないように神経を研ぎ澄ましているの知ってる。
「課長…ありがとございます!」
声から長谷部さんの感謝が感じられる。
彼女は最近結婚したばかりの新婚で愛嬌のある自慢の後輩だ。
今日は社内会議の進行で緊張した彼女を心配して旦那さんがお弁当を作ってくれたと幸せそうに話していた。
それなのに……今の鈴音は長谷部さんに嫉妬している。
彼女と話せば榊さんがあげたペンに意識がいきそうで鈴音は極力長谷部さんとの時間をずらした。
「鈴音さん?」
榊さんの心配そうな声に我に帰る。
──言ってしまおうか。
心の中はずっと思っている。
今日言えなくても、明日も、明後日も──鈴音は考えてしまうのだから。
「ねぇ……我儘言っていい?」
「良いよ」
嬉しそうに微笑む。
その微笑みがずっと続いて欲しいと思う。
「指輪が──欲しいの」
榊さんは表情を隠したが明らかに拒否感ある表情をしたのを鈴音は見逃さなかった。
「鈴音さ──」
「他は何もいらない─安物でも玩具でもいいの」
榊さんの言葉を遮り訴える。
彼を困らせているのが分かる。
「ごめん──無理だ」
彼の言葉に府に落ちる。
そうか……やっぱり私との恋愛は本気では無かった。
「……僕は……」
彼の言い訳を聞きたかった。
何か訳があるなら話して欲しい。
だから彼の言葉の続きを待った。
けれど──最後まで榊さんから納得のいく言葉は貰えなかった。
次第に居た堪れなくなり席を立つ。
私も彼も何か言いたいけれど言葉が出ない。
「誕生日まで待ってる──」
言えたのはこれだけだった。
その穏やかな声に鈴音の哀しさが増す。
だって鈴音の願いは叶わない。
きっと高価な夕食や旅行とかには連れて行ってくれるのだろう。
けれど──ショッピング中に服を眺めれば僕は疎いからと一緒には見てくれない。
好きなのを買っていいよと言ってくれるのだけれど選んではくれない。
要はお金の問題ではなく、私には形あるモノを渡したくないのだ。
──なぜなんだろう──
榊さんは36歳で私は27歳。
来週で28歳になる。
──結婚とか──考えてないのかな?
今まで結婚したいと思った人はいるのだろうか?
それとも独身でいたい人なのかな?
鈴音のこと?どう思っているのだろう?
──私は考えてるよ。
でも……寂しいの。
とても寂しい。
寂しさを紛らわしても追いかけられる。
好きな分だけ強く。
もう──限界だった。
昼間見てしまった。
部下の長谷部さんが愛用していたペンを紛失したようだった。
午後から社内会議の進行を任せられていた彼女は糸が切れたように不安になって泣きそうだった。
そこへ榊さんが長谷部さんにペンを渡したのだ。
「僕も同じの持っているからあげるよ」
正直──耳を疑った。
丁度死角で私には気づかなかったのだろう。
それとも気付いても渡したのだろうか?
頭が真っ白で考えられない。
「課長……いいんですか?」
長谷部さんの声が鈴音を傷つける。
「このペンひとつで会議に集中出来るなら光栄だよ」
榊さんの優しい言葉が鈴音を引き裂く。
なんで⁈
私にはペンひとつ渡さないように神経を研ぎ澄ましているの知ってる。
「課長…ありがとございます!」
声から長谷部さんの感謝が感じられる。
彼女は最近結婚したばかりの新婚で愛嬌のある自慢の後輩だ。
今日は社内会議の進行で緊張した彼女を心配して旦那さんがお弁当を作ってくれたと幸せそうに話していた。
それなのに……今の鈴音は長谷部さんに嫉妬している。
彼女と話せば榊さんがあげたペンに意識がいきそうで鈴音は極力長谷部さんとの時間をずらした。
「鈴音さん?」
榊さんの心配そうな声に我に帰る。
──言ってしまおうか。
心の中はずっと思っている。
今日言えなくても、明日も、明後日も──鈴音は考えてしまうのだから。
「ねぇ……我儘言っていい?」
「良いよ」
嬉しそうに微笑む。
その微笑みがずっと続いて欲しいと思う。
「指輪が──欲しいの」
榊さんは表情を隠したが明らかに拒否感ある表情をしたのを鈴音は見逃さなかった。
「鈴音さ──」
「他は何もいらない─安物でも玩具でもいいの」
榊さんの言葉を遮り訴える。
彼を困らせているのが分かる。
「ごめん──無理だ」
彼の言葉に府に落ちる。
そうか……やっぱり私との恋愛は本気では無かった。
「……僕は……」
彼の言い訳を聞きたかった。
何か訳があるなら話して欲しい。
だから彼の言葉の続きを待った。
けれど──最後まで榊さんから納得のいく言葉は貰えなかった。
次第に居た堪れなくなり席を立つ。
私も彼も何か言いたいけれど言葉が出ない。
「誕生日まで待ってる──」
言えたのはこれだけだった。
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