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涼太ではなかった──じゃあ弦なの?

自分の気持ちなんて二の次だと思っていたけれど、いざ涼太と別れると寂しいし、弦の二人になった事に緊張している。
今まで──散々、弦と二人なんて沢山あったし、弦はあまり性や色事が強くなさそうだ。
そういう対象に雫を見れない気もする。
──そうなら──誰が他の人はいないのか頼んでみよう。
お金がいるなら借金してでもどうにかしてみせる。

「雫ちゃん。起きたの?」

近寄る弦からタバコが香る──涼太だ。
さっきのキスからもタバコの味がした。

「タバコ臭いよね。シャワー浴びる?」

思っていたことを当てられてドキリとする。

「ううん。違うの──涼太が反魂香を焚いたのは自分じゃ無いって──」

「そうみたいだね」

「じゃあ誰なの──弦、貴方なの?」

「そうだよ。だけど雫ちゃんは戻って来なかったから、やっぱり反魂香なんて偽物なんだと思ったよ。神も仏もいないと思ったけれど──いたね」

弦が雫を嫌っていないのは分かる。
寧ろ好かれているとも思っている。
けれど反魂香を使うほど雫を特別に思っていたようには思えない。
弦のことだ。
何も考えず、試してみたかったのかもしれない。

「弦、ありがとう。今、私が生きているのは弦のお陰だよ。だから弦が私の所為で死ぬのは嫌だよ。だから──弦の好きな女性はいない?まずはその人に頼めそうなら頼んでみるよ」

「好きな女性いるよ。それに頼んだら赤ちゃん一緒に作ってくれるかもしれない」

その答えに光明が差す。
──よかった。答えは分からないし、結果も出ていないけれど、雫の心が軽くなる。

「──じゃあ雫ちゃん、お願い。僕と子作りしてね」

雫の指先にキスをする。
ちゅっと音を立ててわざとらしく。

「えっ?」

さっき、いるって言わなかった?

「好きだよ雫ちゃん」

手首にキスをする。
弦が好きだと言ったのは──雫?

「弦待って──本当に?ちょ…待っててば」

「だって雫ちゃん。雫ちゃんが生理になっちゃったら実質ひと月ないんだよ?」

──そうだ。それまでに子供が出来ないと弦が死んじゃう。でも──人工授精とかなんか別にあるんじゃないかな。他にも方法があるかもしれない。

「弦。私より頭いいんだからちょっと考えよう?」

もしかしたら夫人に相談したら別の方法を教えてくれるかも知れない。

「ねっ?」

そう宥めると弦が微笑む。
分かってくれた事に感謝する。

「雫ちゃんが嫌ならしないよ。けれど僕は雫ちゃん以外とセックスしたいと思わないし、別の方法があってもそれは選ばないと思うよ?」

──弦はマイペースで人の意見に左右されたりしない。

「──続き──していい?」

言葉に出来ず──目を瞑った──
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