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知ることの代償
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「嘘よ」
侑梨は否定した。微塵も疑えない。
「…本当だ」
絶対に嘘だと思う。だが櫂の辛そうな表情に嘘はない。
「…嘘よ。父が買収で苦しんでいた時、一番親身になって助けてくれてた貴方が殺したなんて…信じない!」
感情的になり声が大きくなる侑梨を静かに彼は見る。
「その買収される要因になったのは、当時芹沢企画が担当していた一大プロジェクトの情報流出からだ。
…俺が原因だった」
彼は続ける。
「当時、仕事が楽しくてしょうがなかった。沢城さんの仕事を見て、何がしたいのか、どう動いて欲しいか誰よりも手に取るように分かった。仕事も順調で業績は鰻登りだった。…俺の中では沢城さんは完璧だった。その彼に心酔されてる人がいた。…その人は沢城さんには無関心で彼を遠ざけていて…悔しくて、再び一緒に頑張ってほしくて沢城さんの凄さを知って欲しくて、その時のプロジェクト内容を話した。会社関係者だし問題はないと思った。けれど、その情報をマウロ社に売られた。沢城企画は信頼と当時の一大プロジェクトの損害を被った」
溜息の様に閉じられる。
「最初は知らなかったんだ。俺が流出源だなんて夢にも思わなかった。沢城さんは俺を責めなかった…寧ろ自分の所為だと。2人の関係性を見誤ったのは俺なのに…最後まで…死ぬくらいなら、俺を殺してくれればよかったのに…」
あぁ、そうなのか。父は仕事が大事だったけれど、櫂も大事だった。だから彼が気に病まないように最低ラインまででも持ち堪えようとして、駆けずり回るように奔走した。けど、ダメだった…。
…そんなにも櫂を守りたかった父が自殺なんてするだろうか?そうなればもっと気に病むことは明白だ。だが、当時の父は相当疲れていた。鬱状態になっていたのかもしれない…。
この事実を私はどう受け止めている?
自身に問い質す。
櫂が憎いか。未来を奪われたと思うか。
こんなにも苦しんで贖罪のように今も父の会社を継ごうとしている彼を。
やっぱり、愛しいとさえ感じてしまう。
私は父より好きな男性を選んだのだろうか?
わからない。けれど、これだけは言える。
きっと父も櫂を好きだっただろう。
…自分の中の過去の蟠りが溶ける気がした。
侑梨はソファに座る彼の前に膝をつき両手を優しく握りしめた。
「櫂…櫂さん。話してくれて…ありがとう。私は当時何もできなくて、父にも貴方にも何もしてあげられなかった。もし、今櫂さんが父の意思を継いでこの会社を立ち上げたのが重荷なら、父のことは…忘れていいから。貴方のこれからを生きて欲しい」
「これはもう俺の全てだ」
苦笑する。
「侑梨はさっき好きって言ってくれたけれど、やっぱり好きじゃないって…なった?」
さっきの私の言葉を使って問い質す。
「ならない」
好きよ。と心でいう。まだ言葉にするのは気恥ずかしかった。
「キスしていい?」
その艶っぽい顔で言わないで欲しい。
無言で頷くと、頭の天辺にキスをされた。
内心、これだけ?と思ってしまう。
と、おでこに。頬に。耳に。
そして唇に。
ぎゅっと抱きしめられ幸福で満たされる。
恥ずかしさで櫂の胸元に顔を埋める。
「その情報を漏らした人は今どうしているの?」
素朴な疑問だった。
「今どうしているのかは知らない」
櫂は瞳を伏せた。
侑梨は否定した。微塵も疑えない。
「…本当だ」
絶対に嘘だと思う。だが櫂の辛そうな表情に嘘はない。
「…嘘よ。父が買収で苦しんでいた時、一番親身になって助けてくれてた貴方が殺したなんて…信じない!」
感情的になり声が大きくなる侑梨を静かに彼は見る。
「その買収される要因になったのは、当時芹沢企画が担当していた一大プロジェクトの情報流出からだ。
…俺が原因だった」
彼は続ける。
「当時、仕事が楽しくてしょうがなかった。沢城さんの仕事を見て、何がしたいのか、どう動いて欲しいか誰よりも手に取るように分かった。仕事も順調で業績は鰻登りだった。…俺の中では沢城さんは完璧だった。その彼に心酔されてる人がいた。…その人は沢城さんには無関心で彼を遠ざけていて…悔しくて、再び一緒に頑張ってほしくて沢城さんの凄さを知って欲しくて、その時のプロジェクト内容を話した。会社関係者だし問題はないと思った。けれど、その情報をマウロ社に売られた。沢城企画は信頼と当時の一大プロジェクトの損害を被った」
溜息の様に閉じられる。
「最初は知らなかったんだ。俺が流出源だなんて夢にも思わなかった。沢城さんは俺を責めなかった…寧ろ自分の所為だと。2人の関係性を見誤ったのは俺なのに…最後まで…死ぬくらいなら、俺を殺してくれればよかったのに…」
あぁ、そうなのか。父は仕事が大事だったけれど、櫂も大事だった。だから彼が気に病まないように最低ラインまででも持ち堪えようとして、駆けずり回るように奔走した。けど、ダメだった…。
…そんなにも櫂を守りたかった父が自殺なんてするだろうか?そうなればもっと気に病むことは明白だ。だが、当時の父は相当疲れていた。鬱状態になっていたのかもしれない…。
この事実を私はどう受け止めている?
自身に問い質す。
櫂が憎いか。未来を奪われたと思うか。
こんなにも苦しんで贖罪のように今も父の会社を継ごうとしている彼を。
やっぱり、愛しいとさえ感じてしまう。
私は父より好きな男性を選んだのだろうか?
わからない。けれど、これだけは言える。
きっと父も櫂を好きだっただろう。
…自分の中の過去の蟠りが溶ける気がした。
侑梨はソファに座る彼の前に膝をつき両手を優しく握りしめた。
「櫂…櫂さん。話してくれて…ありがとう。私は当時何もできなくて、父にも貴方にも何もしてあげられなかった。もし、今櫂さんが父の意思を継いでこの会社を立ち上げたのが重荷なら、父のことは…忘れていいから。貴方のこれからを生きて欲しい」
「これはもう俺の全てだ」
苦笑する。
「侑梨はさっき好きって言ってくれたけれど、やっぱり好きじゃないって…なった?」
さっきの私の言葉を使って問い質す。
「ならない」
好きよ。と心でいう。まだ言葉にするのは気恥ずかしかった。
「キスしていい?」
その艶っぽい顔で言わないで欲しい。
無言で頷くと、頭の天辺にキスをされた。
内心、これだけ?と思ってしまう。
と、おでこに。頬に。耳に。
そして唇に。
ぎゅっと抱きしめられ幸福で満たされる。
恥ずかしさで櫂の胸元に顔を埋める。
「その情報を漏らした人は今どうしているの?」
素朴な疑問だった。
「今どうしているのかは知らない」
櫂は瞳を伏せた。
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