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一葉知秋の比おい
x78_ジーノ_
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『今どこですか?』
侑梨からのメールに驚く。
正直、彼女の方から連絡が来るとは思っていなかった。
しかも時計は夜の9時を過ぎている。
メールではなく電話してみる。
「どうしたの?三島とケンカしたのかい?」
本当にどうしたんだ?ホテルにいると伝える。
「……話があるの。今から行っても大丈夫?」
迎えに行くと伝えたが彼女は近くまで来ていると返す。
専用フロントにパス指定をし
彼女を待つ間にワインを飲む。
──最低な夜になりそうだ──
扉を叩く音がする。
彼女の硬い表情に疑惑が確信に変わる。
「バカな子だな」
扉を閉め後ろから付いてくる彼女に笑えない。
こんな展開。
「……どうしたの?」
飲み物を勧めながらソファに座る。
「僕に何をして欲しいの?」
彼女と目が合わない。
「謝罪?それとも償い?」
その言葉に身体がビクリと震える。
「──女性は同性同士だと、途端に口が軽くなる」
悪態を吐くが、いつかは来る未来だった。
それが想像より早かっただけだ。
「聞いたんだろう?凛子のこと」
侑梨は小さく頷く。
問題は侑梨に話した相手が夫人だと言うことだ。
夫人は無駄な手は打たない。
そして侑梨は凛子と同じ顔つきで扉の前に立っていた。
夫人が侑梨の螺子を巻いた。
「母と貴方の関係を聞いたけれど、貴方の言葉で聞きたいの」
「──大学を出て父の会社で働く僕に任された仕事は日本での新規開拓事業だった。義兄の嫌がらせさ。知識もなく、はじめての日本でノウハウもない状態は厳しかった。そこに現れた夫人は女神に見えたよ。彼女は仕事と快楽どちらも与えてくれた。そして夫人は僕を使って遊ばれる女性たちを見て楽しんだ。
25歳の時、ある女性が僕の部屋を訪れた。
夫人からの取引で僕に一晩だけ抱かれたいと。
こんなことは僕にとっては多々ある。けれど凛子は夫より僕を愛した。最初は楽しんでいた僕も凛子の愛が呪いの様に思えた。夫人の手の内で弄ばれ動かされる凛子の言葉は僕にとって愛の言葉よりも呪詛に聞こえた」
『私は貴方のものよ』
『貴方の子供が欲しいの』
『夫人より貴方の力になれば私を愛してくれる?』
「──凛子が亡くなるまでの5年間、彼女は僕の愛をひたすら欲した。そしてそれを得る為に夫の極秘プロジェクトを僕に話した。彼女は事故で亡くなってしまったけれど彼女のもたらした情報漏洩は当時の澤城企画を一変させた……僕は正直、凛子が亡くなって安堵した」
凛子が哀れだった。夫人の遊びで人生を狂わされた人。
夫を愛し、子どもを愛した彼女は夫人の壊れた玩具になった。
「僕は彼女よりマウロ家が大事だった」
「父は母が情報を渡したことをどうやって知ったの?」
「当時の僕はレストラン事業が主で澤村修司にとっては思いもよらないライバル企業だっただろう。彼は直接、僕のオフィスに乗り込んで僕に掴みかかった」
「そこで話したの?」
「話さなかった」
「けれど彼は気づいた。愛する妻の裏切りは知っていたが、相手を特定出来るほど彼は強くなかった」
「どうして気づいたの?」
「──香水だ。凛子は僕に会えない時は僕と同じ香水を使用していたらしい。そこから疑念は確信に変わり、ケータイの暗証番号が僕の誕生日で開き、僕たちの関係を澤城修司の知ることになった。以前君のケータイを奪って僕の番号を登録したことがあるだろう?……どうして女性は好きな男に関連した暗証番号にしたがるのかな」
侑梨の顔が後ろめたさで染まる。
「澤城修司は妻の赤裸々なケータイ内容と会社への莫大な被害に耐えられなかった」
「だから父は自殺した」
「──恐らく」
侑梨の表情から察するに、驚きも憎悪も見れない。
夫人の情報との照合だろう。
「……僕が憎いかい?」
その為にここに来たんだろう?
「ええ。私から父を奪っただけでなく、母まで奪ったのが貴方だったなんて」
「僕にどうして欲しいの?」
きっと侑梨は自分に有利な状況を持ってくる為に、
僕に話をさせた。
「私の大事なものを奪った貴方も、貴方の大事なマウロ家を捨てて欲しいの」
「流石に代償が大きいね。僕に父や妻や子供たちを見捨てろと言うのかい?」
侑梨が立ち上がるので僕も立ち上がる。
「櫂の澤城企画の為に邪魔な僕を追い落としたい為?」
「…そうね…けど、確かに代償が大きいわ。ジーノは私の事を好きと言った。なら私の一晩を貴方にあげるから
お願い。マウロ家を捨てて私を選んで」
彼女が僕の腰に手を回し身体を密着させた。
侑梨からのメールに驚く。
正直、彼女の方から連絡が来るとは思っていなかった。
しかも時計は夜の9時を過ぎている。
メールではなく電話してみる。
「どうしたの?三島とケンカしたのかい?」
本当にどうしたんだ?ホテルにいると伝える。
「……話があるの。今から行っても大丈夫?」
迎えに行くと伝えたが彼女は近くまで来ていると返す。
専用フロントにパス指定をし
彼女を待つ間にワインを飲む。
──最低な夜になりそうだ──
扉を叩く音がする。
彼女の硬い表情に疑惑が確信に変わる。
「バカな子だな」
扉を閉め後ろから付いてくる彼女に笑えない。
こんな展開。
「……どうしたの?」
飲み物を勧めながらソファに座る。
「僕に何をして欲しいの?」
彼女と目が合わない。
「謝罪?それとも償い?」
その言葉に身体がビクリと震える。
「──女性は同性同士だと、途端に口が軽くなる」
悪態を吐くが、いつかは来る未来だった。
それが想像より早かっただけだ。
「聞いたんだろう?凛子のこと」
侑梨は小さく頷く。
問題は侑梨に話した相手が夫人だと言うことだ。
夫人は無駄な手は打たない。
そして侑梨は凛子と同じ顔つきで扉の前に立っていた。
夫人が侑梨の螺子を巻いた。
「母と貴方の関係を聞いたけれど、貴方の言葉で聞きたいの」
「──大学を出て父の会社で働く僕に任された仕事は日本での新規開拓事業だった。義兄の嫌がらせさ。知識もなく、はじめての日本でノウハウもない状態は厳しかった。そこに現れた夫人は女神に見えたよ。彼女は仕事と快楽どちらも与えてくれた。そして夫人は僕を使って遊ばれる女性たちを見て楽しんだ。
25歳の時、ある女性が僕の部屋を訪れた。
夫人からの取引で僕に一晩だけ抱かれたいと。
こんなことは僕にとっては多々ある。けれど凛子は夫より僕を愛した。最初は楽しんでいた僕も凛子の愛が呪いの様に思えた。夫人の手の内で弄ばれ動かされる凛子の言葉は僕にとって愛の言葉よりも呪詛に聞こえた」
『私は貴方のものよ』
『貴方の子供が欲しいの』
『夫人より貴方の力になれば私を愛してくれる?』
「──凛子が亡くなるまでの5年間、彼女は僕の愛をひたすら欲した。そしてそれを得る為に夫の極秘プロジェクトを僕に話した。彼女は事故で亡くなってしまったけれど彼女のもたらした情報漏洩は当時の澤城企画を一変させた……僕は正直、凛子が亡くなって安堵した」
凛子が哀れだった。夫人の遊びで人生を狂わされた人。
夫を愛し、子どもを愛した彼女は夫人の壊れた玩具になった。
「僕は彼女よりマウロ家が大事だった」
「父は母が情報を渡したことをどうやって知ったの?」
「当時の僕はレストラン事業が主で澤村修司にとっては思いもよらないライバル企業だっただろう。彼は直接、僕のオフィスに乗り込んで僕に掴みかかった」
「そこで話したの?」
「話さなかった」
「けれど彼は気づいた。愛する妻の裏切りは知っていたが、相手を特定出来るほど彼は強くなかった」
「どうして気づいたの?」
「──香水だ。凛子は僕に会えない時は僕と同じ香水を使用していたらしい。そこから疑念は確信に変わり、ケータイの暗証番号が僕の誕生日で開き、僕たちの関係を澤城修司の知ることになった。以前君のケータイを奪って僕の番号を登録したことがあるだろう?……どうして女性は好きな男に関連した暗証番号にしたがるのかな」
侑梨の顔が後ろめたさで染まる。
「澤城修司は妻の赤裸々なケータイ内容と会社への莫大な被害に耐えられなかった」
「だから父は自殺した」
「──恐らく」
侑梨の表情から察するに、驚きも憎悪も見れない。
夫人の情報との照合だろう。
「……僕が憎いかい?」
その為にここに来たんだろう?
「ええ。私から父を奪っただけでなく、母まで奪ったのが貴方だったなんて」
「僕にどうして欲しいの?」
きっと侑梨は自分に有利な状況を持ってくる為に、
僕に話をさせた。
「私の大事なものを奪った貴方も、貴方の大事なマウロ家を捨てて欲しいの」
「流石に代償が大きいね。僕に父や妻や子供たちを見捨てろと言うのかい?」
侑梨が立ち上がるので僕も立ち上がる。
「櫂の澤城企画の為に邪魔な僕を追い落としたい為?」
「…そうね…けど、確かに代償が大きいわ。ジーノは私の事を好きと言った。なら私の一晩を貴方にあげるから
お願い。マウロ家を捨てて私を選んで」
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