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未知と既知の其間

x98_ジーノ_

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『そろそろ日本が恋しいでしょう?』
『ええ──とてもね』
彼女と教会に行こうと思っているの、と
夫人は日時を僕に教えた。
『彼女のこと、とても気に入ってますね』
『そうね。貴方もでしょう?』
『彼女も可哀想に。夫人と僕に愛されるなんて』
──なぜ、その日に?
『保険と、宝くじみたいなものね』


「あら。宝くじは外れたわ」
夫人の車に乗り込むと残念そうに微笑む。
「貴方との関係が解消された今、貴方の思惑を汲んでは動きませんから」
「貴方にも利益があるのに?」
「耐えがたい誘惑でしたがね」
「侑梨さんにとってはいつも危険日ね」
「夫人を習い、僕も少しだけ保険をかけたかな」
「今の貴方なら侑梨さんを監禁してでも溺れさすかもと期待したのに」
「貴方がこの場所を選んだんですよ」
「わたくしもまだまだね」
扉を開け車を降りる。
「貴方の願いと僕の願いは近くて遠い。協定はここまで
です。さようなら夫人」
微笑みかけると、夫人も微笑んだ。
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