追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
47 / 358
第三章 領地開発

第47話 試作蒸留酒

しおりを挟む
 ドワーフの鍛冶師、名工カマン・ホレックを見つけたが、誘いは断られてしまった。
 今日は再度カマン・ホレックを招聘する為に、俺は仕込みをしている。

「まあ、あれは俺も悪かったよ」

 アンジェロ領領主エリアのキッチンで手を動かしながら、隣のジョバンニと話す。

「アンジェロ様のどこが悪かったのでしょうか? 丁寧にお話しされていたと思いますが……」

「話し方は丁寧だったけどさ。結局のところ、カマン・ホレックの苦境に付け込んでいる感じって言うのかな……。助けてやるっていう上から目線が、どこかにあった気がする……」

「それは……、アンジェロ様がそこまで気を遣わなくても、よろしいのでは?」

「いや、相手は名工として名高いカマン・ホレックだ。あくまで対等な立場で、相手を尊重して誘わないとね」

 いわゆるリスペクトってヤツだな。
 昨日はそれが足りてなかったと俺は反省しているんだ。

 カマン・ホレックは、掛け値なしに優秀な鍛冶師だ。
 この大陸北西部なら文句なしのナンバーワン!
 ならば俺は敬意を払って迎え入れなければならない。

 あれだ。
 三国志で諸葛孔明を迎えるのに、劉備が三顧の礼を取ったのと同じだ。
 優秀な人材を集めるなら、相手を尊重するのが大事なんだろう。

「そういうモノですか……。ところで先ほどから何を作ってらっしゃるのですか?」

「蒸留酒だよ!」

「酒ですか? ワインを煮詰めているように見えますが?」

「うん。これが新しい酒の造り方だ」

「はあ……」

 俺の領地ではウイスキー、つまり蒸留酒を名産品にしたいと思っている。
 残念ながら今は、蒸留酒を製造する設備もないし、人材もいない。
 本格的なウイスキーを作るのは無理でも、蒸留酒を何とか作ってカマン・ホレックに飲ませようと思う。

 論より証拠!
 こういう強い酒を領地で作ると言えば、興味を持ってもらえるのでは? と、考えた。

 ジョバンニはピンと来ないらしい。
 そりゃそうだよな。
 蒸留酒の原理を知らないのだから。

 水は百度で沸騰して水蒸気になる。
 だがアルコールは、約八十度で蒸気になるのだ。

 ワインを八十度で煮続けて、蒸気を集めて冷却する……。
 つまり蒸気になったアルコールを集めて、冷やして液体に戻す訳だ。
 そうするとアルコール分の高い液体が出来る。
 これこそ蒸留酒だ。

「まあ、どこまでうまく行くか分からないけれど、こういう感じの酒が出来ると分かれば興味を持つはずだ。ドワーフは酒好きだしな」

「なるほど。確かに、そうですね。その鉄製の鍋蓋が重要なのですか?」

「これで蒸発したアルコール……、ええと……、蒸発した酒精を集めるのに使う」

「良くわかりませんが、難しそうな作業という事はわかりました」

 昨日商業都市ザムザの武器防具屋によって、小型の丸盾を鍋蓋に改造してもらった。
 この異世界だと鉄はちょっと高価な金属だから、鉄製の鍋蓋なんてないからね。普通、鍋蓋は木製だ。

 木製でもダメではないが、鉄製の方が冷えやすい。
 冷えやすい方が蒸気になったアルコールが液体に戻りやすいはずだ。

 鍋の片側に木片をかまして、鍋蓋を斜めにする。
 鍋蓋を傾けた先には木のコップを設置した。

 これで上手く行けば、蒸発したアルコールを集められる。

 だが、火加減が難しい。
 火加減を強くしてグツグツ煮立てると、アルコールだけでなく水分も一緒に蒸発してしまいアルコール度数の高い酒が造れない。

 アルコールが蒸発する八十度をキープすれば良いのだが、あいにくとこの異世界には温度計などない。
 火魔法で火を出し、火力を調節して、感覚で鍋の中のワインを煮立てている。

 料理の得意なルーナ先生がいてくれたらな。
 こういう時助かるけれど……。早く帰って来て欲しいな……。

「原理は知っている。間違っていないはずだ。あとは火加減……、温度調整がカギ……」

「あ! アンジェロ様! 水滴が鍋蓋からこぼれてきました!」

 おっ! 本当だ!
 傾けた鍋蓋から木のコップにポタポタと液体が垂れだした。
 液体を指ですくって舐めてみる。

「グッ……、不味い! だが……、酒精は強いぞ!」

 味は最悪だ。正直まずい!
 だが舌にピリっと来る感じ、鼻に抜ける感じは間違いなく、アルコール度数の強い酒だ。
 ちゃんと蒸留出来ている!

「ジョバンニも試してみて。不味いけど、酒精は強いから」

「では、失礼をして……。うわっ! 不味い! ひどい味です! でも、これは……、今まで体験した事のない酒精の強さです!」

「でしょ! これが蒸留酒だよ。本当は、ここから樽に入れて数年熟成させる。そうすると、もっとまろやかな味の酒になるよ」

 ワインを蒸留した酒は、ブランデーだ。
 この不味いのが熟成されると、あのトロっとした甘い味に化けるのかな?
 ちょっと想像がつかない。

「酒精が強くて、まろやかな味の酒ですか……、それは高く売れそうですね!」

「そうでしょ! でもね。蒸留酒を造るには、専用の釜というか、大きな鍋のような専用の道具が必要なのだ」

「その為の鍛冶師ですか?」

「そうそう……。よし! こんなもんかな!」

 コップ半分くらいの蒸留酒が用意できた。
 俺は手製の蒸留酒が入った木のコップをそっとアイテムボックスに収納した。

 とりあえずのお試し版としては十分だろ。
 これで蒸留酒のポテンシャルが、あのドワーフ鍛冶師にも分かるはずだ。


 *


 俺はジョバンニと黒丸師匠の三人で、再度ブルムント地方のフライベルグの町にやって来た。
 黒丸師匠は、カマン・ホレックが鍛えた大剣を背負っている。
 何か話のきっかけになれば……、と思う。

 カマン・ホレックの店のドアを開け、店内に入る。
 昨日と同じようにギイギイと蝶番が音を鳴らす。

「お邪魔しますよー!」

 俺が店の奥に声を掛けると、今日はカマン・ホレックがすんなりと出て来た。
 今日も酒臭くて、顔が真っ赤だ。
 黒丸師匠はカマン・ホレックの様子を見て悲しそうな眼をした。

「ああ? なんだ、昨日のお兄ちゃんか……、それとオマエは……、何だよ! 黒丸じゃねえか!」

「久しぶりなのであるな。しかし、かの名工ホレックが酒浸さけびたりとは悲しいのである……。諸国の強者が欲した剣を鍛える名工の腕も、そこの扉の蝶番のように錆び付いてしまったのであるか?」

「ぬかせ! 腕は錆びてねーよ! ほれ。剣を見せてみろよ!」

「酔っている鍛冶師に愛剣は渡せないのである」

「これくらいの酒で酔っちゃいねーよ! 俺の子供を見せろ!」

 俺の子供か。
 鍛冶師にとって鍛えた剣は、子供同然なのかな。

 黒丸師匠が背中からオリハルコンの大剣を抜いてカマン・ホレックに手渡した。
 カマン・ホレックの顔が一変する。
 目つきは怖いくらい鋭くなり、剣先から舐めるようにチェックしている。
 しばらくして、カマン・ホレックは剣の中ほどを指さした。

「……ここに小さな傷がある」

「何であると!?」

 みんなでカマン・ホレックが指さしたところを覗き込むと、確かに薄っすらと、余程注意して見ないと気が付かないレベルだが傷が付いている。
 良く気が付いたな!

「黒丸! テメーの方こそ腕が鈍ったんじゃねえか! オリハルコンの大剣に傷を付けられるなんてよ!」

「ぬぬ! 面目ないのである!」

 謝りつつも黒丸師匠は嬉しそうだ。
 カマン・ホレックが、名工の輝きを少し取り戻したからだろう。

「ったくよお! どんな相手と戦えば、オリハルコンの大剣に傷が付くんだよ。黒丸は今どこのパーティーに入ってるんだ?」

「『王国の牙』である」

「うぬっ! あのドラゴンばかり狙い撃ちしているパーティーか! まったく無茶しやがって! 剣が悲鳴を上げてるじゃねえか! 整備するぞ!」

 カマン・ホレックは、名工ホレックの雰囲気を漂わせながら、オリハルコンの大剣を抱えて店の奥へ消えて行った。
 黒丸師匠はペロリと長い舌を出して、いたずらっ子みたいな顔をした。

「まっ! 鍛冶師への一番の薬は、鍛冶仕事であるな! それがしたちも奥へ行くのである」

「なるほど。名工ホレックの仕事を拝見と行きますか!」
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...