追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第三章 領地開発

第51話 ギガランド国の首都タランティ

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 四日後、俺たちはギガランド国の首都タランティへ到着した。
 飛行魔法と転移魔法を組み合わせて長距離移動をする。移動時間がかからないのは、俺たちの強みだ。



 ギガランド国は、大陸中央部の大国だ。
 岩場が多く街の建物も石造りが多い。

 ギガランド人は、小柄で肌の色が濃い。
 地球だとメキシコとか、中南米の人に近い印象だ。

 長らく戦争が続いているにもかかわらず、首都タランティは活気がある。
 市場を覗くとフルーツが甘い香りを漂わせ、屋台には人が集まっている。
 小麦を薄く焼いて肉を挟んだちょっとタコスっぽい料理が美味そうだ。

 今回の出張は大人数で来ている。
 俺の護衛役として、黒丸師匠、白狼族のサラ、熊族のボイチェフが同行し、奴隷買い取りの交渉役として商人のジョバンニとジョバンニの勧めで奴隷商人のベルントも連れて来た。

 そして、久しぶりにじいと合流した。
 久しぶりに会ったじいは、日に焼けて精悍なナイスミドルになっていた。

「アンジェロ様、長らくお側を離れ大変申し訳ございません。じいと致しましては、クドクドクドクド……」

「ああ! 積もる話もあるが、それは後にしよう!」

 じいは相変わらずだった。
 ちっともナイスミドルではなかった。

 ギガランド国は、大陸中央部にあるので暑い。とにかく暑い。
 体感で三十度を超えている。
 獣人の白狼族のサラと熊族のボイチェフは、早くもバテバテだ。

「なあ、アンジェロ。このギガランド国というのは暑いぞ!」

「暑いな~、おらは死んでしまう……。なあんまら暑いだぁ~」

「だから、ギガランド国は暑いと思うよって言っただろ!」

 そりゃ全身毛皮のボイチェフには、キツイ暑さだろう……。
 サラだって北国育ちだから、この暑さは堪えるだろう。

 だけど付いて来たいと言ったのは二人の方だからね。
 がんばれ~!


 商業ギルドで奴隷商を紹介して貰い早速訪問だ。
 ギガランド奴隷商人との交渉は、ジョバンニとベルントに丸投げした。
 応接室でよく冷えた水にレモンと蜂蜜を溶いた飲み物を頂きながら待っていると、ジョバンニとベルントが戻って来た。

「アンジェロ様、ギガランドの奴隷商人から頼まれ事がありまして……」

「うん? 頼まれ事?」

「それがちょっと特殊な話でして……、捕虜になったミスル国貴族がここにいるらしいのです」

「貴族が? 戦争で捕虜になった貴族は、親族が身代金を払って解放されるだろう? 何で奴隷商にいるの?」

 戦時捕虜の取り扱いには、慣習がある。
 貴族は捕虜でも、それなりに大事に扱われる。
 戦後に身代金が取れるからだ。

 身内が身代金を支払い解放される。
 貴族が戦後に奴隷落ちした事例は聞いた事がない。

「はあ。それが、その貴族の親族は身代金の支払いを拒否したそうです。そこでギガランド軍から、この奴隷商にその貴族が払い下げられたのですが……」

「貴族って奴隷にして良いのか?」

「どうでしょう……聞いた事がありませんね。それで、ここの奴隷商も持て余してしまっているのだそうです」

 なるほど。大まかな事情はわかった。
 その捕虜になったミスル国貴族も気の毒と言うか……。

 何だろうね?
 親戚に嫌われているのかな?

「事情はわかった。それで俺にどうして欲しいのだろ?」

「ここの奴隷商人としては、アンジェロ様にお買い上げ頂きたいと」

「ええ!? 外国の貴族を奴隷にするって、後で揉めないか!?」

「奴隷にしたら絶対に揉めると思いますよ! そこでですね。名目上は奴隷ではなくて、アンジェロ様の部下になるという形にして紹介料を支払ってくれないか? というご相談です」

「ああ、なるほどね……」

 そういう事か……。どうなのだろうな……。
 ちょっと判断が出来ないな。他の人の意見を聞いてみよう。

「じいは、どう思う?」

「私は宜しいと存じます。貴族でしたら、読み書きが出来ます。読み書きが出来る人材は貴重です」

「確かに」

 この異世界では、義務教育がないからな。読み書きが出来るのは、貴族と商人だけだ。
 そうだな。読み書きが出来る人間が増えるのは、悪くないか。

「ジョバンニはどう思う?」

「人物次第ですね。威張り散らして、あまり働かないような方では困ります」

「ああ、そういう困った貴族だとご遠慮願いたいな。まあ、とりあえず会ってみよう」

 とりあえず会ってみる旨を伝えるとギガランド奴隷商人が金属鎧を身に着けた髪の長い人物を連れて来た。

 あれ? 女性だ!
 鎧に身を包んだ女性は、俺の目の前に立つと礼法に則り挨拶をした。

「アンジェロ王子、初めてお目にかかる。私はエルハム・メネヒブクカウラ。ミスル国貴族メネヒブクカウラ家の者だ」

 メ……、メネヒ……、やばい舌を噛みそうな家名だ。
 お国柄だろうけど、呼びにくい名前だな。

「丁寧なご挨拶感謝します。フリージア王国第三王子、アンジェロ・フリージアです」

 エルハム・メネヒブクカウラの第一印象は、『気の強そうな美人』だ。
 少し茶色いストレートのロングヘア、彫の深い顔立ちに太い眉に黒い瞳。
 背は高くスラリとしていて、白い金属製の軽鎧が良く似合っている。

 あんまり俺の好みの女性ではないけれど……。

 まあ、それはそれとして。
 奴隷商の元にいるとはいえ、とにかく他国の貴族な訳だから丁寧な対応を心がけよう。

「エルハム殿の事情はお聞きいたしました。先の戦いで奮戦され、捕虜になられたという事ですが……」

「はい。私は自分の部隊と共に殿しんがりを勤めました」

 殿しんがりか。
 軍が撤退する時に、最後尾で敵の追撃を防ぐ役割だ。
 全滅する事もある危険な役目だ。

「それは大変なお役目を果たされたのですね。それで……、その……、伺いにくい事なのですが……。普通貴族が捕虜になると本国にいる身内が身代金を払って解放されると思うのですが……。エルハム殿はなぜここに?」

 エルハムさんは、唇をかみ悔しそうな顔をした。

「私の叔父が支払いを拒否したのです」

「叔父が? それはなぜ?」

「私がいなければ、メネヒブクカウラ家の当主は叔父で確定するからです」

 なるほど。貴族家の跡目争いか。

「すると現在の当主は?」

「私の父が当主でしたが、この戦の前に亡くなりました。私は当主の代行として従軍したのです」

「当主は決まってない状態なのですね?」

「はい。ミスル国では女性の貴族家当主も数は少ないですがいるのです。叔父としては、跡目争いのライバルになる私には帰国して欲しくないのでしょう」

 なんとまあ、気の毒な話だ。エルハムさんは目に涙を浮かべている。
 どんなに気が強い人でも、身内から切り捨てられたら悲しいよな。

「それは大変お気の毒です。その……、私は何も力にはなれないのですが……」

「アンジェロ王子が気に病む必要はありません。これはメネヒブクカウラ家の問題です。それよりも奴隷をお探しと伺いましたが?」

「ええ、そうです」

「どのような奴隷をお探しですか?」

 何だろうね。
 エルハムさんは、急に張り切りだした。

 ジョバンニに合図して、探している人材のリストをエルハムさんに渡す。
 エルハムさんは、リストを一読するとテキパキと話し出した。

「私の部隊の者で、エール造りが出来る者が三名おります。それと樽作りが出来る者は二名、この二人は簡単な鍛冶仕事も出来ますので、樽の鉄枠は自分たちで拵えられますよ!」

「おお! そんなにいますか!」

 さすがミスル国はエール発祥の地だ。
 これでウイスキー造りが前へ進む。

「アンジェロ王子! 私の部隊で生き残った者は、十五名です。全員捕虜となりました。この者たち全員をお買い上げ頂けないでしょうか?」

「えっ!? 部隊を丸ごとですか? いや、そんなに人数は必要ないのですが……」

「エール造りをするなら、人手が必要ですよ。材料を煮て発酵させて、エールが出来たら普通の樽に小分けにして運ぶ。かなりの重労働です。量を作るなら人数がいなくては作業出来ないです」

「そういうモノですか……」

 知らなかった。
 仕込みが出来る人間がいれば良いと思っていたが……。
 そうか、確かに色々作業をするのに人数がいなけりゃ困るよな。現代日本のように機械化、自動化されていないのだ。

「それに、我が部隊は実戦経験のある兵士が揃っています。もしもの時は、兵士として従軍出来ますよ」

「ああ、なるほど」

 なんかグイグイ来るな。

「エルハム殿としては、自分の部隊をバラバラにしたくないのですか?」

「はい。今回は私たち指揮官が無能で負け戦となり、多くの部下たちが死にました。生き残った者も奴隷落ちです。ならばせめて部隊がまとまり助け合って生きていけるようにしてやりたいと……」

 責任感がある真面目な人だな。こういう人が一人は欲しい!
 頭の回転も速そうだし……。

「わかりました。色々参考になりました。お申し出のあったエルハム殿の部隊を丸ごと買い取る件も検討しましょう」

「ぜひ! よしなに!」

 エルハムさんは奴隷商人に連れられ、応接室から出て行った。
 俺の気持ちは、もう決まっていた。

「欲しい! エルハムさんと部隊丸ごと買おう!」

「しかし、貴族の娘ですからね……。どういう待遇にすれば良いか……」

 ジョバンニは慎重意見だな。
 対してじいが積極派だ。

「私も買うのに賛成です。エルハム殿は、アンジェロ領の騎士爵に任命されてはいかがでしょうか? 騎士爵でしたら領主の権限で任命が可能です」

「へえ。そんな事が出来るのか?」

「はい。騎士爵は下級貴族ではありますが、一応貴族ですのでエルハム殿の面子も最低限保たれますし、部隊に対する指示命令系統もこれまで通り守られるかと」

「なるほど。買い取った部隊の面倒はエルハムさんに見て貰うか?」

「それがよろしいでしょう。彼らの母国ミスル国もここギガランド国と同じく暑い国と聞きます。北のアンジェロ領では、色々と住みにくい点もあるでしょう。その辺りはエルハム殿に対応して貰った方がこちらの負担も少なくて済みます」

「そうだな。エルハムさんにお任せした方が良いな」

 反対意見も出ないので、部隊丸ごと買取りエルハムさんも引き取る事をギガランド奴隷商人に伝えた。
 価格交渉はジョバンニと奴隷商人ベルントにお任せだ。

 成り行きを見ていた、黒丸師匠がポツリとつぶやいた。

「それにしても、ミスル国王は甲斐性なしであるな。殿しんがりを務めた貴族の為に、国王が身代金を払えば良いのである。ケツの穴が小さいのであるな」

「ホントですよね!」

 俺と黒丸師匠は憤慨し、エルハムさんへの同情を深めた。
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