追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
148 / 358
第八章 メロビクス戦争2

第148話 馬引けー! (涙目である)

しおりを挟む
「急げ! 急げ!」

 フォーワ辺境伯は、馬にまたがり街道を疾駆していた。
 後ろには家臣が十名ほど従う。

 全員、顔が必死である。

 フォーワ辺境伯は、戦争不参加のメロビクス王大国貴族だ。

 メロビクス王大国は、名前の通り面積が広い。
 それほど中央集権が進んでいるわけではなく、領地を持つ貴族は独自の判断で、今回の戦争への参加、不参加を決めている。

 今回の戦争はメロビクス王大国東部、地図でいうと右側に位置するフリージア王国との戦争だ。
 東部の貴族にとっては、新しい領地獲得のチャンスだが、地図の左側、西部の貴族にとっては旨味のない戦争である。

 南西部に領地を持つフォーワ辺境伯としては、旨味がない戦争には参加したくなかった。

 さらに、出兵するにしても、メロビクス王大国を横断しなければならない。

 さらに、さらに、フォーワ辺境伯領は西と南で、外国と国境を接している。
 軍事的な隙を作るわけにはいかない。

 そんな事情があるので王宮に支援金を贈り、出兵は行わなかったのだ。


『みんな、がんばれ~♪』


 ……と、フォーワ辺境伯が自分の領地でノンビリと過ごしていたところ、早馬が到着した。

「我が国の南部に、フリージア王国軍が現れたそうです!」

「え……?」

 フォーワ辺境伯は、地図を机に広げた。

(はて? 南部にフリージア王国軍? 南部はフリージア王国と国境を接しておらぬはずだが?)

 フォーワ辺境伯は地図を確認したが、メロビクス王大国は南部でフリージア王国と国境を接していない。

 常識的に考えれば、メロビクス王大国南部にフリージア王国軍が現れることはないのだ。

 だが、フリージア王国軍は、ケッテンクラートや六輪自動車タイレルを用いた高速移動で、赤獅子族と青狼族のテリトリーを横断し占拠した。

 実行した第二騎士団やケッテンクラートを造ったホレックたちが非常識なのである。

(多分、誤報だろう。盗賊団を敵と見間違えたのであろう)

 フォーワ辺境伯は、早馬の報告を誤報と思い込みぐっすりと眠った。


 ――それから数日後。

 また、早馬が到着した。

「我が国の南部の貴族家領地が、次々と占領されています!」

「えっ!?」

「敵はフリージア王国第二騎士団!」

 フォーワ辺境伯は、至急家臣を呼び寄せて協議を行った。

「これは……どういうことであろうか?」

 混乱するフォーワ辺境伯。
 家臣たちも混乱していた。

「やはり、何かの間違いでは?」
「いや、しかし、早馬が二回……」
「敵の欺瞞工作ではあるまいか?」

 結局、情報収集を密に行う事になった。

 フォーワ辺境伯は、なかなか寝付くことが出来なかった。


 ――それから、また、数日後。

 また、また、早馬が到着した。

「我が国の南部にフリージア王国軍の新手一万が現れました!」

「ええっ!」

 一万と聞いて、フォーワ辺境伯は顔面蒼白になった。
 家臣の一人は事態が飲み込めずに、不用意に言葉を発する。

「辺境伯様……これは一体? 我が国がフリージア王国に攻め入ったはずでは?」

「馬鹿者! これは逆侵攻だ!」

「ぎゃ、逆侵攻!?」

「どうやって来たのかは知らないが、フリージア王国の連中は南部に橋頭堡を築いたのだ! さらに、一万の軍勢ということは、本格的な侵攻であろう!」

「そ、それは、一大事!」

「馬引けー!」

 フォーワ辺境伯は、馬にまたがり城を飛び出した。
 家臣たちが慌てて後に続く。

 フォーワ辺境伯は、フリージア王国軍と一戦交える気はさらさらない。

 自分の領地や自派閥の貴族家領地にフリージア王国軍が攻め込まないように和平交渉を行おうとしたのだ。

 馬を乗り継ぎ街道を走っていると、新しい情報を抱えた早馬と出会う。
 早馬からの情報では、フリージア王国軍は北上をしているようだ。

(西には来ないか? 西に興味がないなら、交渉の余地はある!)

 フォーワ辺境伯一行は、グラント川を渡し船で渡河した所で、フリージア王国軍と出会った。
 グラント川近くにいたフリージア王国軍分隊の指揮官は、フォーワ辺境伯に告げる。

「責任者ですか? それならルシアン伯爵とコーゼン男爵ですね。かなり先へ進んでいますよ」

「どちらへ向かわれた?」

「北です。今は、シメイ街道の入り口辺りにいると思います」

 フォーワ辺境伯は、持参した地図を分隊の指揮官に見せた。
 指揮官が指さす箇所を確認して、フォーワ辺境伯は唸る。

(もう、こんなに北上しているのか!)

 フリージア王国軍の進撃速度に舌を巻いた。

 分隊の指揮官に通行許可書を書いてもらい、フォーワ辺境伯一行は先を急いだ。
 そして、シメイ街道のメロビクス王大国側の入り口で、フリージア王国軍本体に追いついた。

「この軍は一体……」

 そこには、第二騎士団とフリージア王国アンジェロ派貴族軍が野営をしていた。

 ケッテンクラートや六輪自動車タイレルが走り、異世界飛行機グースが離発着を行う光景を、フォーワ辺境伯一行は大きな衝撃を受けた。

「辺境伯様!」

「お、落ち着け! そ、そう言えば、先の戦争で空飛ぶ魔道具があったと噂が……」

「聞いたことがあります! そうか、あれが空飛ぶ魔道具ですか……。それでは、あの馬がないのに走っている馬車は?」

「私に聞くな!」

 会談を行う天幕まで案内される間に、フォーワ辺境伯一行は、フリージア王国軍をつぶさに観察していた。

(空飛ぶ魔道具だけでなく、攻撃用の魔道具も複数ある……。食料も充実しておる……)

 野営地であるにもかかわらず、スープや肉料理が兵士たちにたっぷりと振る舞われていた。

(補給も万全という訳か……。ならば、彼らの侵攻はまだ続く……)

 フォーワ辺境伯は、気合いを入れて会談に臨んだ。


 ――一時間後。

 フォーワ辺境伯とフリージア王国軍代表ルシアン伯爵、コーゼン男爵との会談は無事終了した。


 ・フォーワ辺境伯とフォーワ辺境伯派閥の貴族は、フリージア王国軍と争わない。

 ・フリージア王国軍は、フォーワ辺境伯とフォーワ辺境伯派閥の貴族領地を攻撃しない。

 ・フォーワ辺境伯は、商人を通じて食料をフリージア王国軍に秘密裏に販売する。


 合意内容にフォーワ辺境伯は満足し、領地の安全を確保しホッとしていた。

 その背中にコーゼン男爵が、冷や水を浴びせた。

「念のために申し上げます。アンジェロ王子を裏切ると、ああなりますじゃ」

 コーゼン男爵が指さす先では、メロビクス王大国貴族が処刑をされている最中だった。

 戦争になっても、貴族が処刑されることは滅多にない。
 そのタブーを破る行為に、フォーワ辺境伯の足が震えた。

「……」

「フォーワ辺境伯は、機を見るに敏なお人であろうかと……。見誤ることがないよう、この光景をゆめゆめお忘れなきよう……」

「ご……ご安心……を……」

 フォーワ辺境伯は、無事に領地に帰った。
 しかし、コーゼン男爵を思い出し、なかなか寝付けなかった。

 こうして、いくつかのメロビクス王大国貴族家が、秘密裏にフリージア王国軍と和平を結んだ。
 後背の安全を確保したフリージア王国軍は、メロビクス王大国への侵攻を深めた。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...