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第八章 メロビクス戦争2
第151話 溶けたメロビクス軍
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「ギャハハハ! 本当にチンコ丸出しにしたのかよ!」
鹿族と狐族の族長から夜襲の報告を受けて、シメイ伯爵は笑い転げた。
狐族の族長が、酸っぱい物を口に突っ込まれたような渋い顔で答える。
「チンコ丸出しが、ご依頼であったと思いますが?」
「まあ、そうだけどさ! ギャハハ!」
「シメイ殿は笑っておられるが、男性のズボンを脱がせ、局部に蜂蜜を塗る側の気持ちも考えていただきたい!」
「プププ……。いや、ごめん! ごめん! そうだよね~。チンコ丸出しで蜂蜜か~。いや~、見たかったなあ~」
シメイ伯爵だけでなく、周りにいるシメイ伯爵の家臣も目に涙を浮かべ腹を抱えて大笑いであった。
やってられない気分の鹿族は、小声で狐族に耳打ちした。
「なあ、狐の。やっぱり人族って変だよな?」
「鹿の。人族でなく。シメイ殿が変なのだ」
「まあ、俺たちに親切だから良いけど」
「そうだな……」
獣人は、物事をあまり深く考えないし、執着しない。
鹿族も、狐族も、『シメイ伯爵が喜んでいるなら良いか……』と思うことにした。
シメイ伯爵は家臣を呼び寄せて、何事か指示を出す。
その顔には、先ほどの笑いはなく、ゾッとするほどの冷酷さを漂わせていた。
「じゃあ、敵さんにご退場いただこう……。準備にかかれよ!」
*
多数の貴族や指揮官が殺され動揺するメロビクス王大国南部貴族連合軍。
生き残ったのは数名の下級貴族と数名の平民指揮官と……。
チンコ丸出し貴族だけであった。
実はこのチンコ丸出し貴族は、今回の総大将であるのだが、あまりのショックに天幕に引きこもってしまった。
天幕の外から、下級貴族や指揮官が呼びかけても返事はない。
「閣下! 我が軍は、これからどうしますか? ご命令をお願いします!」
「……」
「閣下! 進むか、退くか、ご判断を!」
「……」
「閣下!」
「……」
総大将がこの調子なので、下級貴族や平民指揮官たちは、前進するべきか、退却するべきか、判断がつけられないでいた。
兵士たちの士気も低下し、あちこちでケンカが起きる始末だ。
ただ、救いもあった。
後方から、食料が届いたのである。
荷馬車に食料を積んだ馬車が、十台到着したのだ。
馭者を務める男が、愛想良く笑う。
「こんちはー! お届けですよー!」
「ご苦労。見ない顔だな? 商人か?」
「そうです! ギュイーズ侯爵様からご依頼を受けまして、食料を運んで参りました!」
もちろん、ウソである。
十台の荷馬車は、後方から来たメロビクス王大国軍の輸送部隊だった。
シメイ伯爵は、この輸送部隊を襲い、人員をシメイ伯爵領の男衆と入れ替えたのだ。
メロビクス風の服を着ているが、十台の馬車に乗るのは全員シメイ伯爵領の領民である。
ギュイーズ侯爵の名前をだしたのも、もっともらしい理由付けの為であった。
もし、冷静な指揮官や兵士がいれば、顔つきから彼らがメロビクス人ではない事を見抜いたであろう。
しかし、冷静な者は一人もいなかった。
皆、後方からの物資に喜び、『自分たちは見捨てられていない』と安堵したのだ。
積み荷を降ろすと、メロビクス輸送部隊に扮したシメイ伯爵領民は、さっさと引き上げていった。
下級貴族と平民指揮官は、届いた食料に喜び、相談を始めた。
「どうだろう? 兵たちも疲れていることだし、今日は休養日としては?」
「うむ。賛成だ。追加の食料が到着したことだし、たっぷりメシを食わせてやろう!」
「そうだな。満腹になれば、みんなの気力も回復するだろう!」
「おっ! ワインもあるぞ! 一人一杯だけでも配ってやろう!」
下級貴族と平民指揮官は、気前よく食料を兵に配った。
休養日になった事もあり、兵士たちは牛肉を使ったシチューを作り、仲良く頬張った。
一杯だけだが、ワインも配られたことで、昨日から続く悪夢のような出来ごとを兵士たちは紛らわすことが出来た。
だが、食事を始めてしばらくすると、兵士たちがバタバタと倒れ始めた。
輸送部隊に扮したシメイ伯爵領民が仕込んだ毒である。
オークカブトと呼ばれる赤い花の根を粉末にした毒薬で、もし、口にすれば、しばらくして呼吸困難を起こし死にいたる。
この危険な毒薬が、運び込んだ食料やワインにたっぷりと仕込んであったのだ。
一人の神官が異変に気が付き解毒の魔法を使おうとしたが、野営地の外から飛んできた矢に喉を打ち抜かれて絶命した。
やがて、野営地で息をする者はいなくなった。
――天幕に引きこもった総大将の貴族を除いて。
総大将の貴族は、天幕の中で異変に気が付いた。
外から人の声が聞こえなくなったのだ。
「オイ! 誰かある!」
返事はない。
「誰かある!」
返事はない。
「一体何が起こったのだ……」
総大将の貴族は、天幕の布をめくり上げて外に出た。
そこには、苦悶の表情のまま息絶えた兵士たちが地面に横たわっていた。
「なっ……!」
ほんの数分前までは、賑やかに笑い声が溢れていたのに……。
総大将の貴族は、目の前に広がる惨状に言葉を失った。
「よう! 生き残りがいたのか?」
「ヒッ!」
背後から急に声をかけられ、驚き、怯える貴族。
恐る恐る振り向くと、そこには貴族服を着崩した体格の良い男がいた。
シメイ伯爵である。
(はて? こんな男が、我が軍にいただろうか?)
総大将の貴族は、まさか敵の領主が目の前にいるとは夢にも思わなかった。
シメイ伯爵は、総大将の貴族に事実を告げた。
「みんな毒で死んだ」
「毒……。そんな……。死んだのか……。全滅か?」
「ああ。そうだ。あんたは?」
「私は、この軍の総大将の――」
総大将と言った瞬間、シメイ伯爵の右フックが総大将の貴族の横面にヒットした。
総大将の貴族は派手に吹っ飛び、頬を手で押さえながらシメイ伯爵に叫ぶ。
「き……! 貴様! 何をするか!」
シメイ伯爵は、『何を言っているのだ?』とばかりに、キョトンとした顔で返事をする。
「何をするって? 敵の総大将をぶちのめしているのだがなあ……」
「えっ!? 何!?」
「おお! まだ名乗ってなかったな! 俺はシメイ伯爵! このシメイ伯爵領の領主だ!」
「あっ……敵……」
総大将の貴族の表情が、怒りから絶望へと変わった。
シメイ伯爵は、獰猛な笑顔で歓迎の言葉を告げる。
「ようこそ! シメイ伯爵領へ!」
この日、シメイ伯爵領に攻め込んだ五千のメロビクス王大国南部貴族連合軍は、完全に溶けて消え去った。
死んだ者は、服や装備品を剥ぎ取られ、裸にひんむかれ数日がかりで燃やされた。
「やれやれ、薪がいくらあっても足りやしない」
「殺すのは簡単だけれど、後始末が大変だ」
「まあ、でも、こいつら鉄製装備だし、服も悪くないぞ!」
領民たちは思わぬ臨時収入に喜び、シメイ伯爵は敵撃滅の報をキャランフィールドのアンジェロ王子に伝えたのだった。
こうして人外魔境の戦いは終わり、シメイ伯爵はシメイ街道を下って、第二騎士団、コーゼン男爵たちと合流を果たした。
鹿族と狐族の族長から夜襲の報告を受けて、シメイ伯爵は笑い転げた。
狐族の族長が、酸っぱい物を口に突っ込まれたような渋い顔で答える。
「チンコ丸出しが、ご依頼であったと思いますが?」
「まあ、そうだけどさ! ギャハハ!」
「シメイ殿は笑っておられるが、男性のズボンを脱がせ、局部に蜂蜜を塗る側の気持ちも考えていただきたい!」
「プププ……。いや、ごめん! ごめん! そうだよね~。チンコ丸出しで蜂蜜か~。いや~、見たかったなあ~」
シメイ伯爵だけでなく、周りにいるシメイ伯爵の家臣も目に涙を浮かべ腹を抱えて大笑いであった。
やってられない気分の鹿族は、小声で狐族に耳打ちした。
「なあ、狐の。やっぱり人族って変だよな?」
「鹿の。人族でなく。シメイ殿が変なのだ」
「まあ、俺たちに親切だから良いけど」
「そうだな……」
獣人は、物事をあまり深く考えないし、執着しない。
鹿族も、狐族も、『シメイ伯爵が喜んでいるなら良いか……』と思うことにした。
シメイ伯爵は家臣を呼び寄せて、何事か指示を出す。
その顔には、先ほどの笑いはなく、ゾッとするほどの冷酷さを漂わせていた。
「じゃあ、敵さんにご退場いただこう……。準備にかかれよ!」
*
多数の貴族や指揮官が殺され動揺するメロビクス王大国南部貴族連合軍。
生き残ったのは数名の下級貴族と数名の平民指揮官と……。
チンコ丸出し貴族だけであった。
実はこのチンコ丸出し貴族は、今回の総大将であるのだが、あまりのショックに天幕に引きこもってしまった。
天幕の外から、下級貴族や指揮官が呼びかけても返事はない。
「閣下! 我が軍は、これからどうしますか? ご命令をお願いします!」
「……」
「閣下! 進むか、退くか、ご判断を!」
「……」
「閣下!」
「……」
総大将がこの調子なので、下級貴族や平民指揮官たちは、前進するべきか、退却するべきか、判断がつけられないでいた。
兵士たちの士気も低下し、あちこちでケンカが起きる始末だ。
ただ、救いもあった。
後方から、食料が届いたのである。
荷馬車に食料を積んだ馬車が、十台到着したのだ。
馭者を務める男が、愛想良く笑う。
「こんちはー! お届けですよー!」
「ご苦労。見ない顔だな? 商人か?」
「そうです! ギュイーズ侯爵様からご依頼を受けまして、食料を運んで参りました!」
もちろん、ウソである。
十台の荷馬車は、後方から来たメロビクス王大国軍の輸送部隊だった。
シメイ伯爵は、この輸送部隊を襲い、人員をシメイ伯爵領の男衆と入れ替えたのだ。
メロビクス風の服を着ているが、十台の馬車に乗るのは全員シメイ伯爵領の領民である。
ギュイーズ侯爵の名前をだしたのも、もっともらしい理由付けの為であった。
もし、冷静な指揮官や兵士がいれば、顔つきから彼らがメロビクス人ではない事を見抜いたであろう。
しかし、冷静な者は一人もいなかった。
皆、後方からの物資に喜び、『自分たちは見捨てられていない』と安堵したのだ。
積み荷を降ろすと、メロビクス輸送部隊に扮したシメイ伯爵領民は、さっさと引き上げていった。
下級貴族と平民指揮官は、届いた食料に喜び、相談を始めた。
「どうだろう? 兵たちも疲れていることだし、今日は休養日としては?」
「うむ。賛成だ。追加の食料が到着したことだし、たっぷりメシを食わせてやろう!」
「そうだな。満腹になれば、みんなの気力も回復するだろう!」
「おっ! ワインもあるぞ! 一人一杯だけでも配ってやろう!」
下級貴族と平民指揮官は、気前よく食料を兵に配った。
休養日になった事もあり、兵士たちは牛肉を使ったシチューを作り、仲良く頬張った。
一杯だけだが、ワインも配られたことで、昨日から続く悪夢のような出来ごとを兵士たちは紛らわすことが出来た。
だが、食事を始めてしばらくすると、兵士たちがバタバタと倒れ始めた。
輸送部隊に扮したシメイ伯爵領民が仕込んだ毒である。
オークカブトと呼ばれる赤い花の根を粉末にした毒薬で、もし、口にすれば、しばらくして呼吸困難を起こし死にいたる。
この危険な毒薬が、運び込んだ食料やワインにたっぷりと仕込んであったのだ。
一人の神官が異変に気が付き解毒の魔法を使おうとしたが、野営地の外から飛んできた矢に喉を打ち抜かれて絶命した。
やがて、野営地で息をする者はいなくなった。
――天幕に引きこもった総大将の貴族を除いて。
総大将の貴族は、天幕の中で異変に気が付いた。
外から人の声が聞こえなくなったのだ。
「オイ! 誰かある!」
返事はない。
「誰かある!」
返事はない。
「一体何が起こったのだ……」
総大将の貴族は、天幕の布をめくり上げて外に出た。
そこには、苦悶の表情のまま息絶えた兵士たちが地面に横たわっていた。
「なっ……!」
ほんの数分前までは、賑やかに笑い声が溢れていたのに……。
総大将の貴族は、目の前に広がる惨状に言葉を失った。
「よう! 生き残りがいたのか?」
「ヒッ!」
背後から急に声をかけられ、驚き、怯える貴族。
恐る恐る振り向くと、そこには貴族服を着崩した体格の良い男がいた。
シメイ伯爵である。
(はて? こんな男が、我が軍にいただろうか?)
総大将の貴族は、まさか敵の領主が目の前にいるとは夢にも思わなかった。
シメイ伯爵は、総大将の貴族に事実を告げた。
「みんな毒で死んだ」
「毒……。そんな……。死んだのか……。全滅か?」
「ああ。そうだ。あんたは?」
「私は、この軍の総大将の――」
総大将と言った瞬間、シメイ伯爵の右フックが総大将の貴族の横面にヒットした。
総大将の貴族は派手に吹っ飛び、頬を手で押さえながらシメイ伯爵に叫ぶ。
「き……! 貴様! 何をするか!」
シメイ伯爵は、『何を言っているのだ?』とばかりに、キョトンとした顔で返事をする。
「何をするって? 敵の総大将をぶちのめしているのだがなあ……」
「えっ!? 何!?」
「おお! まだ名乗ってなかったな! 俺はシメイ伯爵! このシメイ伯爵領の領主だ!」
「あっ……敵……」
総大将の貴族の表情が、怒りから絶望へと変わった。
シメイ伯爵は、獰猛な笑顔で歓迎の言葉を告げる。
「ようこそ! シメイ伯爵領へ!」
この日、シメイ伯爵領に攻め込んだ五千のメロビクス王大国南部貴族連合軍は、完全に溶けて消え去った。
死んだ者は、服や装備品を剥ぎ取られ、裸にひんむかれ数日がかりで燃やされた。
「やれやれ、薪がいくらあっても足りやしない」
「殺すのは簡単だけれど、後始末が大変だ」
「まあ、でも、こいつら鉄製装備だし、服も悪くないぞ!」
領民たちは思わぬ臨時収入に喜び、シメイ伯爵は敵撃滅の報をキャランフィールドのアンジェロ王子に伝えたのだった。
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