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第八章 メロビクス戦争2
第154話 本命スパイ~王都に敵兵侵入
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――フリージア王国王都。
王宮の一室で風采の上がらない地味な男が、事務仕事に精を出していた。
地味な男の名はオットマー。
勤続三十年、どこにでもいる地味で目立たない事務屋である。
廊下から掃除のおばちゃんが、地味男オットマーに声をかける。
「オットマーさん。お部屋の掃除をしても良いかしら?」
「ああ、お願いしますよ。アグネスさん」
アグネスと呼ばれた恰幅の良い掃除のおばちゃんは、部屋に入り掃除を始めた。
王宮には、平民の下働きが沢山いる。
事務のオットマーも、掃除をするアグネスも、そんな平民の一人だ。
そして二人はメロビクス王大国のスパイ――スリーパーである。
スリーパーは、潜伏スパイなどとも呼ばれ、普段は一般人として生活している。
普段はスパイ活動を、まったく行わないのだ。
本国からの指令があるまで、ジッと身を潜め、目立たず、怪しまれずに敵国で生活するのである。
メロビクス王大国の調査局は、規模は大きくないが、歴史は長い。
長い歴史の中で、各国にスリーパーを配置して来たのだ。
フリージア王国に潜伏するスリーパーは二人。
アグネスとオットマーだ。
彼ら二人こそが、宰相ミトラルの本命スパイだ。
アグネスは掃除をしながら、オットマーに世間話をする。
毎日行われる日常の光景だ。
「そうそう。私の甥が遊びに来たのよ」
アグネスの『甥が遊びに来た』は、符丁である。
オットマーは、メロビクス王大国調査局から指令が発せられたと即座に理解した。
だが、いつもと変わらぬ表情で、書類仕事をこなしながら返事をする。
「へえ……甥子さんがねえ……」
アグネスも掃除をしながら会話を続ける。
「そうなの。それでね。お昼過ぎに白熊商会でお買い物をするのよ」
白熊商会など存在しない。
これも符丁。
「それは、良いですね」
「じゃあ、お邪魔したわね」
アグネスは、掃除を終えさっさと部屋を出て行った。
オットマーは、仕事を片付けると同僚に『昼食に行く』と告げて職場を出た。
それきりオットマーは、戻らなかった。
*
メロビクス王大国の宰相ミトラルは、丘の上からフリージア王国の王都を眺めていた。
彼の背後には、魔の森を抜け続々と集結するメロビクス王大国主力軍の姿があった。
主力軍の総数は、一万五千。
王都からは、丘がブラインドになってメロビクス王大国軍は見えない。
フリージア王国は、王都のすぐ側まで敵軍の侵入を許してしまった。
しかし、いまだ敵軍に気が付いていない。
駆け足の伝令が、宰相ミトラルに報告する。
「宰相閣下! 現在、八千の兵が魔の森を抜けました!」」
「八千か……十分だ! 攻撃を開始しろ! 目標はフリージア王国の王宮だ! 王宮を占拠し、フリージア国王の首をはねよ!」
宰相ミトラルは、全軍が集結するよりも、フリージア王国が気付く前に速攻を仕掛けることを選択した。
そして、その選択は、間違いではなかった。
*
王都の大通りを沢山の兵士が駆け抜ける。
宰相ミトラル率いるメロビクス王大国軍である。
装備の違い、紋章、旗を見れば、敵国メロビクス王大国の軍であることは明らかだ。
だが、王都に住む平民は、そんなことはわからない。
「演習かな?」
「いや、どこかで戦って帰ってきたのだろう」
「兵隊さん! がんばれー!」
敵国兵士に声援を送る者さえいた。
メロビクス王大国軍は、王都市街地には手を出さず一路王宮を目指した。
その為、王都を進むメロビクス王大国軍を敵と気が付く者は、なかなか現れなかった。
メロビクス王大国軍は、王宮まであと少しの所に進んでいた。
「オイ! 待て!」
見回りの兵士たちが、メロビクス王大国軍を発見し誰何した。
メロビクス兵が、見回りの兵士に無言で斬り付ける。
「あっ……なっ……」
安全と思っていた王都で、突然の凶行。
見回りの兵士たちは、叫ぶ暇もなく斬り殺された。
その光景を遠くから見ている者がいた。
王宮の門を守る兵士である。
兵士はすぐに守備隊長に敵襲を告げ、守備隊長はすぐに指示を飛ばす。
「敵襲だ! 門を閉じろ! 急げ!」
王宮の周りはしっかりとした防壁に囲まれている。
そして、敵襲の報せで、王宮に通じる門は、すぐに全て閉じられた。
――閉じられた、はずであった。
だが、メロビクス王大国調査局のスパイ――スリーパーのアグネスとオットマーが、いくつかある西側の門を一つ開け放った。
アグネスとオットマーは、迫り来るメロビクス王大国軍に合図を送ると、すぐに姿を消した。
*
防壁西側の守備隊長は、迫り来るメロビクス王大国軍を指揮櫓の上から見ていた。
「あれはメロビクス王大国軍か!? クソッ! どこから湧いて出たのだ!」
「隊長! 門が一つ開いています!」
「なんだと!」
隊長は部下が指さす方向を見た。
すると、メロビクス王大国軍が、アグネスとオットマーによって開け放たれた門から、防壁の内側に侵入し始めたところだった。
「大変だ……」
守備隊長の顔が青ざめる。
フリージア王国は、王宮に敵軍の侵入を許してしまった。
王宮の一室で風采の上がらない地味な男が、事務仕事に精を出していた。
地味な男の名はオットマー。
勤続三十年、どこにでもいる地味で目立たない事務屋である。
廊下から掃除のおばちゃんが、地味男オットマーに声をかける。
「オットマーさん。お部屋の掃除をしても良いかしら?」
「ああ、お願いしますよ。アグネスさん」
アグネスと呼ばれた恰幅の良い掃除のおばちゃんは、部屋に入り掃除を始めた。
王宮には、平民の下働きが沢山いる。
事務のオットマーも、掃除をするアグネスも、そんな平民の一人だ。
そして二人はメロビクス王大国のスパイ――スリーパーである。
スリーパーは、潜伏スパイなどとも呼ばれ、普段は一般人として生活している。
普段はスパイ活動を、まったく行わないのだ。
本国からの指令があるまで、ジッと身を潜め、目立たず、怪しまれずに敵国で生活するのである。
メロビクス王大国の調査局は、規模は大きくないが、歴史は長い。
長い歴史の中で、各国にスリーパーを配置して来たのだ。
フリージア王国に潜伏するスリーパーは二人。
アグネスとオットマーだ。
彼ら二人こそが、宰相ミトラルの本命スパイだ。
アグネスは掃除をしながら、オットマーに世間話をする。
毎日行われる日常の光景だ。
「そうそう。私の甥が遊びに来たのよ」
アグネスの『甥が遊びに来た』は、符丁である。
オットマーは、メロビクス王大国調査局から指令が発せられたと即座に理解した。
だが、いつもと変わらぬ表情で、書類仕事をこなしながら返事をする。
「へえ……甥子さんがねえ……」
アグネスも掃除をしながら会話を続ける。
「そうなの。それでね。お昼過ぎに白熊商会でお買い物をするのよ」
白熊商会など存在しない。
これも符丁。
「それは、良いですね」
「じゃあ、お邪魔したわね」
アグネスは、掃除を終えさっさと部屋を出て行った。
オットマーは、仕事を片付けると同僚に『昼食に行く』と告げて職場を出た。
それきりオットマーは、戻らなかった。
*
メロビクス王大国の宰相ミトラルは、丘の上からフリージア王国の王都を眺めていた。
彼の背後には、魔の森を抜け続々と集結するメロビクス王大国主力軍の姿があった。
主力軍の総数は、一万五千。
王都からは、丘がブラインドになってメロビクス王大国軍は見えない。
フリージア王国は、王都のすぐ側まで敵軍の侵入を許してしまった。
しかし、いまだ敵軍に気が付いていない。
駆け足の伝令が、宰相ミトラルに報告する。
「宰相閣下! 現在、八千の兵が魔の森を抜けました!」」
「八千か……十分だ! 攻撃を開始しろ! 目標はフリージア王国の王宮だ! 王宮を占拠し、フリージア国王の首をはねよ!」
宰相ミトラルは、全軍が集結するよりも、フリージア王国が気付く前に速攻を仕掛けることを選択した。
そして、その選択は、間違いではなかった。
*
王都の大通りを沢山の兵士が駆け抜ける。
宰相ミトラル率いるメロビクス王大国軍である。
装備の違い、紋章、旗を見れば、敵国メロビクス王大国の軍であることは明らかだ。
だが、王都に住む平民は、そんなことはわからない。
「演習かな?」
「いや、どこかで戦って帰ってきたのだろう」
「兵隊さん! がんばれー!」
敵国兵士に声援を送る者さえいた。
メロビクス王大国軍は、王都市街地には手を出さず一路王宮を目指した。
その為、王都を進むメロビクス王大国軍を敵と気が付く者は、なかなか現れなかった。
メロビクス王大国軍は、王宮まであと少しの所に進んでいた。
「オイ! 待て!」
見回りの兵士たちが、メロビクス王大国軍を発見し誰何した。
メロビクス兵が、見回りの兵士に無言で斬り付ける。
「あっ……なっ……」
安全と思っていた王都で、突然の凶行。
見回りの兵士たちは、叫ぶ暇もなく斬り殺された。
その光景を遠くから見ている者がいた。
王宮の門を守る兵士である。
兵士はすぐに守備隊長に敵襲を告げ、守備隊長はすぐに指示を飛ばす。
「敵襲だ! 門を閉じろ! 急げ!」
王宮の周りはしっかりとした防壁に囲まれている。
そして、敵襲の報せで、王宮に通じる門は、すぐに全て閉じられた。
――閉じられた、はずであった。
だが、メロビクス王大国調査局のスパイ――スリーパーのアグネスとオットマーが、いくつかある西側の門を一つ開け放った。
アグネスとオットマーは、迫り来るメロビクス王大国軍に合図を送ると、すぐに姿を消した。
*
防壁西側の守備隊長は、迫り来るメロビクス王大国軍を指揮櫓の上から見ていた。
「あれはメロビクス王大国軍か!? クソッ! どこから湧いて出たのだ!」
「隊長! 門が一つ開いています!」
「なんだと!」
隊長は部下が指さす方向を見た。
すると、メロビクス王大国軍が、アグネスとオットマーによって開け放たれた門から、防壁の内側に侵入し始めたところだった。
「大変だ……」
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フリージア王国は、王宮に敵軍の侵入を許してしまった。
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◇ ◇ ◇
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