追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第八章 メロビクス戦争2

第166話 マエバシ! タカサキ! イセサッキ! グンマーストリームアタックをかけるぞ!

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「アンジェロ! 黒丸! 準備は良いか!」

 ルーナ先生が、メチャクチャ張り切っている。
 なぜかというと、俺たちはルーナ先生がテイムしたグンマークロコダイルの背中にまたがっているのだ。

 グンマークロコダイルに首輪と手綱をつけて、竜騎兵よろしく、キリリと構えるルーナ先生。

 だが、俺と黒丸師匠は不安で胸がいっぱいだ。

「ルーナ先生……。あの……。大丈夫でしょうか?」

「ルーナ……。それがしも不安である。グンマークロコダイルに騎乗する……、いや、ワニ乗するなど聞いたことがないのである……」

「だから、やる! 不可能を可能にするのが、我々『王国の牙』だ!」

 フンス!
 フンス!

 ――とルーナ先生の鼻息が荒い。

 言っていることはカッコ良いが、グンマークロコダイルの上なんだよなあ。

 ルーナ先生のアジテーションに、グンマークロコダイル三匹が反応する。

「「「グアアア♪」」」

 気のせいかもしれないが、機嫌の良い鳴き声に聞こえる。

 三匹の名前は、マエバシ、タカサキ、イセサッキ。
 ルーナ先生に何か名前をつけろと言われたので、適当に前世群馬県の街の名前を挙げたら気に入られてしまった。

 俺がまたがるのは、マエバシ。
 黒丸師匠がワニ乗するのは、タカサキ。
 そして、ルーナ先生は、イセサッキに乗る。

 もう日が落ちてきて魔の森の中は薄暗い。
 三匹のグンマークロコダイルの目が、怪しく光る。

 目の前には、魔の森の間道があって、俺たちは間道の脇に待ち伏せている。

 足音が近づいてきた。
 グンマークロコダイルの目だけが、足音の方へ動く。
 十人くらいの集団かな?

「来たぞ!」

「「了解!」」

 俺たちは息を殺して待ち構える。
 すると、十人ほどのメロビクス王大国兵が来た。
 おしゃべりをしながら歩いているので、俺たちには、まったく気が付いていないようだ。

「いや、しかし、腹が減ったな……」
「そうだな」
「もうちょっとがんばれ! 魔の森を抜ければ……」
「そうだ! 俺たちの国だ!」

 何も知らないって幸せだな。
 俺の横で、ルーナ先生と黒丸師匠が、黒い笑いを浮かべているのに……。

 ルーナ先生が、手で合図を送る。
 俺たちを乗せた三匹のグンマークロコダイルが、草をかき分け間道に姿を現す。

 ルーナ先生と黒丸師匠が、楽しそうに敵兵に声をかけた。

「「グンマー!」」

「うわああああああ!」
「うお! うお! うお!」
「やべえ! 逃げろ!」

「「グンマー!」」

「あああ!」
「助けて! 助けて!」
「化け物だあ!」

 敵兵は、腰を抜かし、ちびりながら逃げていった。

 ルーナ先生と黒丸師匠は、腹を抱えて笑っている。

 いや、確かに、メチャクチャ驚いていたけどさ。
 グンマークロコダイルの巨体は、四メートル級だ。
 怖がるのも無理はない。

 俺たちは、何度も草むらに隠れては、敵に姿を見せ驚かせ、メロビクス王大国兵を散々に怖がらせた。

 ルーナ先生と黒丸師匠が、飽きだした頃。
 下草をかき分ける音がして、白狼族の特殊部隊員が現れた。

「アンジェロ殿! 全ての敵が間道に入りました!」

「報告ありがとう。街の方はどう?」

「被害はありません」

 良かった!
 メロビクス王大国軍の脱出で、王都に被害は出なかったらしい。

 これで魔の森に全てのメロビクス王大国軍が逃げ込んだ。
 脅した連中もいるし、今頃、メロビクス王大国軍は、魔の森の中の間道を必死で走っていることだろう。

 今から間道を、三匹のグンマークロコダイルに乗った俺たちが後ろから追いかける。
 そして、外で待ち構えているシメイ伯爵の方向へ追い立てるのだ。

 ルーナ先生が、グンマークロコダイルに命令する。

「行くぞ! マエバシ! タカサキ! イセサッキ!」

「「「グアアア!」」」

 何もしていないのに、グンマークロコダイルが猛スピードで走り出した!

「うおおおおお!」
「ぬあああああ!」

 俺と黒丸師匠が、悲鳴を上げる。
 陸上なのに、何て早さだ!

 グンマークロコダイルが、森の中を猛スピードで駆け抜ける。
 間道は曲がりくねっているが、グンマークロコダイルはショートカットして森の中を直進しているのだ。

「ハイヨー! ハイヨー!」

 ルーナ先生は、ノリノリだが後ろの俺たちは、グンマークロコダイルから振り落とされそうだ。

「ルーナ! 早すぎるのである!」

「猛追あるのみ! 突撃!」

「ルーナ先生! 落ちてしまいますよ!」

「アンジェロ! ニーグリップ! 腰でなく、膝で乗れ!」

 俺は必死でマエバシにしがみつく。
 三匹のグンマークロコダイルは、木々の間を、右へ左へとすり抜け、あっという間に間道へ出た。

「いた!」

 間道の前方。
 まだ距離はあるが、メロビクス王大国軍の兵士が見えた。

 ルーナ先生が、グンマークロコダイル三匹に檄を飛ばす。

「マエバシ! タカサキ! イセサッキ! アターック!」

 ガイア、マッシュ、オルデガ――黒い三連星ならぬ、緑の三連星か。
 ジェットストリームアタックならぬ、グンマーストリームアタックか。

 俺たちは、メロビクス王大国軍の後方をとらえた。

「「「グアアア!」」」

「うわあああ!」
「魔物だ! 追ってきたぞ!」
「逃げろ! 逃げろ!」

 メロビクス王大国軍兵は、俺たちを、いや、グンマークロコダイルを見ると戦意を喪失し必死で逃げ始めた。

 中には、間道から魔の森に入って逃げようとする者もいる。

「させるか!」

 ルーナ先生が手綱を引き、イセサッキを魔の森へ誘導する。
 イセサッキは、巨体からは想像できない機敏な動きで、魔の森に飛び込み敵兵を尻尾で打ち据えた。

「ああああああああ!」

 満月には、敵の悲鳴がよく似合う。
 イセサッキのホームラン性の当たりは、敵兵を天高く舞い上げた。

 これは負けてはいられない!

「マエバシ! 俺たちもやるぞ!」

「グアアア!」

 マエバシが、魔の森に突っ込む!
 低い姿勢で木の枝をかわし、下草をかき分け、ヌルヌルと滑り抜けるように、左右にスラーロームを決める。

 俺は姿勢を低く、マエバシにしがみつくようにして、右へ左へと体重移動を行う。

「グア!」

 マエバシが、何か見つけたらしい。

 魔の森の中を必死で走るメロビクス王大国兵の一団だ。

「いけー!」

「グアー!」

 マエバシが、鼻面から敵の一団に突っ込む!

「うああ!」
「ギャア!」

 敵の悲鳴があがり、一団は四方に跳ね飛ばされた。

「アターック!」

「グアアアー!」

 マエバシが尻尾をきれいに振り抜き、敵兵のお尻をジャストミートした。

「ああん♪」

 悲鳴なのか、何なのか、良く分からない声を発して、敵兵は月夜に美しいアーチを描いた。

「ぐあああ♪」

「ああん♪」

 マエバシがバックスクリーン三連発をしのぐかのごとく、次々に敵兵を打ち上げていく。

 俺たちは、メロビクス王大国軍を追い回し、時に戦い、時に蹴散らし、時にホームランし、シメイ伯爵の待ち構える魔の森の出口へ追い込んでいった。

 あとは、頼んだ!
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