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第九章 グンマー連合王国
第216話 崩れつつあるミスル王国
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ミスル王国大使を帰すと、俺はすぐにミスル王国対策で会議を開いた。
俺、じい、ルーナ先生、黒丸師匠、そして元ミスル貴族のエルハムさんで、会議室の机を囲む。
今回の会議は、外交、軍事寄りの人選だ。
会議冒頭、俺はこれまでの状況を説明した。
サイターマに馬賊が現れ、追跡するとミスル王国内にアジトがある。
ミスル王国大使を呼んで、馬賊討伐をお願いしたが、国境を越えて勝手に討伐してくれと言われ、あげくにミスル王国は、既に統治能力がないとまで言い切った。
「――と言うわけだ。正直、俺もじいも困惑している。どう対処したものだろうか?」
俺が話し終わると、黒丸師匠が冒険者ギルドの情報を提供してくれた。
「ミスルの冒険者ギルドは、とくに変わらず経営しているのである。悪い噂は、聞かないのである」
「そうですか。盗賊からの護衛案件が増えたとかは?」
「うーん、特に聞かないのである。そもそも、ミスルは隣国ギガランドと千年戦争などというバカバカしい争いをしているので、フリージアよりも治安が悪いのであるよ」
「そうか……。元々護衛案件が多い土地柄なのですね?」
「その通りである。だから、馬賊がいると聞いても、さもありなんである。じい殿は、何か情報を持ってないのであるか?」
黒丸師匠に話を振られたじいは、苦い顔をした。
「ミスル王国内の情報網は、構築中です。申し訳ありません」
じいは詫びたが、仕方がない。
これまでは、主に戦争相手のメロビクス王大国とニアランド王国の情報入手を優先してきた。
ミスル王国なんて、国境を接していなかったのだから、当然、後回しだった。
現在、じいは、人員の減った情報部を立て直しつつ、新しく国境を接した国に現地諜報員となるエルキュール族を送り込んでいる。
そんな訳で、情報部はミスル王国の情報を持っていない。
俺は、元ミスル王国貴族のエルハムさんに発言を求めた。
「エルハムさん。ミスル王国大使はアクトゥエン子爵だが、何か知らないですか?」
「アクトゥエン子爵……?」
エルハムさんは心当たりがないのか、腕を組み、首をひねっている。
俺がアクトゥエン子爵の外見を教えると、ようやく思い当たったらしい。
「ああ! あの人ですか! アクトゥエン子爵は、実直な内政家ですね。派手な功績はないですが、かといって大きな失敗もない。正直で裏表のないお人柄が取り柄の貴族です」
ふむ。
どうやら、『特徴のない無難な人』であるらしい。
「なるほど、わかった。ちょっと気になったのは……。アクトゥエン子爵は、内政家なのか? 外交じゃなくて?」
「ええ、そうです。ですので、大使といわれても、すぐには思いつかなかったのです」
「意外な人選ということか……。何か裏があるのか?」
俺は、かつて訪れたミスル王宮を思い出す。
しかし、ミスル王や大臣たちは、外交トラップを仕掛けてくるような謀略家には見えなかった。
内政畑の人物を、外交の要職である大使にあてる。
一体、何の意味があるのか?
みんなが考え込むと、ルーナ先生が別角度の意見を提示した。
「みんな考えすぎ。多分、人材不足で、アクトゥエン子爵にお鉢が回ってきただけ」
ルーナ先生は断言するが、人材不足とは?
「ルーナ先生。もうちょっと詳しく」
「ミスル王国は、長らく戦争をしている。戦死する貴族も多いし、捕虜になり身代金が払われない貴族もいる。当然、国の政治を担う貴族が減る」
「なるほど……それで、内政畑のアクトゥエン子爵が、外交に回らざるを得なくなったと?」
「そう。そもそも、私たちグンマー連合王国は、大陸北西部で最大勢力。軍事、経済ともに重要な国。そこの大使に子爵では、爵位が足りない」
そんなものだろうか?
俺は、その辺りの事情に疎い。
「じい、どう思う?」
「エルフ殿のご指摘はもっともですじゃ。伯爵クラスを送り込むか、傍系王族と外交実務に長けた子爵とか……。そうでなければ、我が国の国力と外交官の爵位が釣り合いません」
「じゃあ、ミスル王国は人材が枯渇していて、重要な外交相手に、畑違いの子爵を送り込むしか出来ないのか……」
「恐らく。実直な人柄を買われたのでしょう。得点は稼げなくても、失点をしなければ良いと」
「ふむ……エルハムさんはどう思う?」
「お二人のおっしゃる通りかと。さらに言えば、アクトゥエン大使がおっしゃった『ミスル王国が統治能力を失っている』というのも、あながちウソとは……」
「そうなのか!?」
エルハムさんがミスル王国にいた頃の話をしてくれたが、大きな街の近くは治安が良く問題ないが、地方になると盗賊が出るし、徴税が出来ていない地域もあるそうだ。
「少なくとも『統治能力を失いつつある』とは思います」
「じゃあ、国境を越えて馬賊を討伐してくれと大使が言ったのは……」
「本音だと思いますよ。たぶん、国境近くに兵を回す余裕はないでしょう。かといって、冒険者ギルドに頼むと、かなりの数の冒険者が必要でしょうから、お金がかかります」
「あの王様ケチそうだったからな!」
だんだんとミスル王国の様子が想像できてきた。
歴史のある地域大国だが、長い戦争で疲弊しきっている。
やっぱり、平和にシコシコ内政に力を入れるのが正解だ。
「わかった。俺たちで馬賊を討伐しよう。じい、大使経由で『馬賊討伐の為に国境を通過し、戦闘を行う』とミスル王国に通告を出して」
「かしこまりました」
「それから討伐は――」
俺が、どうしようかと一瞬考えると、黒丸師匠とルーナ先生が立ち上がった。
「それがしが行くのである!」
「私も行こう! 不測の事態に備えて、全力出撃を提案する!」
二人とも、やる気満々だ。
戦闘大好きコンビだからな。
本当は第二騎士団に任せたいのだけれど、第二騎士団は開拓で忙しい。
それに、国境を越えてミスル王国内で戦闘するとなると、不測の事態が起こるかもしれない。
ルーナ先生の言う通り、ここは全力出撃が良いだろう。
「よし! わかりました! 王国の牙! 出撃です!」
「了解!」
「了解である!」
俺、じい、ルーナ先生、黒丸師匠、そして元ミスル貴族のエルハムさんで、会議室の机を囲む。
今回の会議は、外交、軍事寄りの人選だ。
会議冒頭、俺はこれまでの状況を説明した。
サイターマに馬賊が現れ、追跡するとミスル王国内にアジトがある。
ミスル王国大使を呼んで、馬賊討伐をお願いしたが、国境を越えて勝手に討伐してくれと言われ、あげくにミスル王国は、既に統治能力がないとまで言い切った。
「――と言うわけだ。正直、俺もじいも困惑している。どう対処したものだろうか?」
俺が話し終わると、黒丸師匠が冒険者ギルドの情報を提供してくれた。
「ミスルの冒険者ギルドは、とくに変わらず経営しているのである。悪い噂は、聞かないのである」
「そうですか。盗賊からの護衛案件が増えたとかは?」
「うーん、特に聞かないのである。そもそも、ミスルは隣国ギガランドと千年戦争などというバカバカしい争いをしているので、フリージアよりも治安が悪いのであるよ」
「そうか……。元々護衛案件が多い土地柄なのですね?」
「その通りである。だから、馬賊がいると聞いても、さもありなんである。じい殿は、何か情報を持ってないのであるか?」
黒丸師匠に話を振られたじいは、苦い顔をした。
「ミスル王国内の情報網は、構築中です。申し訳ありません」
じいは詫びたが、仕方がない。
これまでは、主に戦争相手のメロビクス王大国とニアランド王国の情報入手を優先してきた。
ミスル王国なんて、国境を接していなかったのだから、当然、後回しだった。
現在、じいは、人員の減った情報部を立て直しつつ、新しく国境を接した国に現地諜報員となるエルキュール族を送り込んでいる。
そんな訳で、情報部はミスル王国の情報を持っていない。
俺は、元ミスル王国貴族のエルハムさんに発言を求めた。
「エルハムさん。ミスル王国大使はアクトゥエン子爵だが、何か知らないですか?」
「アクトゥエン子爵……?」
エルハムさんは心当たりがないのか、腕を組み、首をひねっている。
俺がアクトゥエン子爵の外見を教えると、ようやく思い当たったらしい。
「ああ! あの人ですか! アクトゥエン子爵は、実直な内政家ですね。派手な功績はないですが、かといって大きな失敗もない。正直で裏表のないお人柄が取り柄の貴族です」
ふむ。
どうやら、『特徴のない無難な人』であるらしい。
「なるほど、わかった。ちょっと気になったのは……。アクトゥエン子爵は、内政家なのか? 外交じゃなくて?」
「ええ、そうです。ですので、大使といわれても、すぐには思いつかなかったのです」
「意外な人選ということか……。何か裏があるのか?」
俺は、かつて訪れたミスル王宮を思い出す。
しかし、ミスル王や大臣たちは、外交トラップを仕掛けてくるような謀略家には見えなかった。
内政畑の人物を、外交の要職である大使にあてる。
一体、何の意味があるのか?
みんなが考え込むと、ルーナ先生が別角度の意見を提示した。
「みんな考えすぎ。多分、人材不足で、アクトゥエン子爵にお鉢が回ってきただけ」
ルーナ先生は断言するが、人材不足とは?
「ルーナ先生。もうちょっと詳しく」
「ミスル王国は、長らく戦争をしている。戦死する貴族も多いし、捕虜になり身代金が払われない貴族もいる。当然、国の政治を担う貴族が減る」
「なるほど……それで、内政畑のアクトゥエン子爵が、外交に回らざるを得なくなったと?」
「そう。そもそも、私たちグンマー連合王国は、大陸北西部で最大勢力。軍事、経済ともに重要な国。そこの大使に子爵では、爵位が足りない」
そんなものだろうか?
俺は、その辺りの事情に疎い。
「じい、どう思う?」
「エルフ殿のご指摘はもっともですじゃ。伯爵クラスを送り込むか、傍系王族と外交実務に長けた子爵とか……。そうでなければ、我が国の国力と外交官の爵位が釣り合いません」
「じゃあ、ミスル王国は人材が枯渇していて、重要な外交相手に、畑違いの子爵を送り込むしか出来ないのか……」
「恐らく。実直な人柄を買われたのでしょう。得点は稼げなくても、失点をしなければ良いと」
「ふむ……エルハムさんはどう思う?」
「お二人のおっしゃる通りかと。さらに言えば、アクトゥエン大使がおっしゃった『ミスル王国が統治能力を失っている』というのも、あながちウソとは……」
「そうなのか!?」
エルハムさんがミスル王国にいた頃の話をしてくれたが、大きな街の近くは治安が良く問題ないが、地方になると盗賊が出るし、徴税が出来ていない地域もあるそうだ。
「少なくとも『統治能力を失いつつある』とは思います」
「じゃあ、国境を越えて馬賊を討伐してくれと大使が言ったのは……」
「本音だと思いますよ。たぶん、国境近くに兵を回す余裕はないでしょう。かといって、冒険者ギルドに頼むと、かなりの数の冒険者が必要でしょうから、お金がかかります」
「あの王様ケチそうだったからな!」
だんだんとミスル王国の様子が想像できてきた。
歴史のある地域大国だが、長い戦争で疲弊しきっている。
やっぱり、平和にシコシコ内政に力を入れるのが正解だ。
「わかった。俺たちで馬賊を討伐しよう。じい、大使経由で『馬賊討伐の為に国境を通過し、戦闘を行う』とミスル王国に通告を出して」
「かしこまりました」
「それから討伐は――」
俺が、どうしようかと一瞬考えると、黒丸師匠とルーナ先生が立ち上がった。
「それがしが行くのである!」
「私も行こう! 不測の事態に備えて、全力出撃を提案する!」
二人とも、やる気満々だ。
戦闘大好きコンビだからな。
本当は第二騎士団に任せたいのだけれど、第二騎士団は開拓で忙しい。
それに、国境を越えてミスル王国内で戦闘するとなると、不測の事態が起こるかもしれない。
ルーナ先生の言う通り、ここは全力出撃が良いだろう。
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「了解!」
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