追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
226 / 358
第九章 グンマー連合王国

第226話 転生者と転生者と転生者

しおりを挟む
「黒丸師匠。お疲れ様でした。ありがとうございました」

「なに、お安いご用なのである。アンジェロ少年も一緒だったら、なお良かったのである」

「現場は楽しいですからね。次の機会はぜひ!」

 ミスル王国の馬賊討伐は、無事に終了した。
 俺はキャランフィールドの執務室で、じいと黒丸師匠から報告を受けている。

 黒丸師匠とルーナ先生が逮捕した馬賊と盗賊は、三百人を超えた。
 ミスル王国のアマジク地方から悪党は一掃され、治安はグンと良くなったそうだ。

 これで隣接するサイターマ領も安心だ。

 俺としても人材の補充が出来てありがたかい。
 逮捕した馬賊たちに飛び抜けた人材はいなかったが、それなりに使える連中だった。

 これまでの経験に合わせて、騎士団、クイック製造、農地開拓に振り分けた。
 文官にも五名、元下級貴族を採用したので、内政面がほんの少し楽になる。

 黒丸師匠の話は、冒険者ギルドの人事に移った。

「ミディアムをキャランフィールドの副ギルド長。エスカルゴのミシェルをオオミーヤの副ギルド長に指名したのである」

「なるほど……良いかもしれませんね……」

 これは黒丸師匠の人事の妙だな。

 キャランフィールドの冒険者ギルドは、あちこちから冒険者が集まってきて急拡大をしている。
 ギルド長が、冒険者たちににらみをきかせないと、冒険者たちがチンピラ化してしまう。

 しかし、ギルド長の黒丸師匠は、他の支部のギルド長も兼任しているし、現役の冒険者としての仕事もある。

 キャランフィールド支部ばかり面倒を見てはいられない。

「そこで、強面のミディアムですか」

「そうである。ミディアムは、あれで胆力がある男であるから、どんな冒険者相手でもビビらないのである。ミディアムが仕切れば、上手く行くと思うのである」

「良い人事だと思いますよ。それにミディアムはキャランフィールドで顔が売れていますし」

「そうであるな。街と調整が必要になった時に、顔の広さが役立つのである。砂利石のメンバーは、副ギルド長補佐の肩書きを与えて、ミディアムの補佐をさせるのである」

 ミディアムたち『砂利石』に初めて会った時は、あまり良い印象を抱かなかったが、厳しい訓練や仲間の死を乗り越えて、彼らは大きく成長した。

 ミディアムたちの出世を素直に祝福しよう。

 それから、新設するオオミーヤの冒険者ギルドに、人当たりの良いミシェルさんをあてたのも良い。

 サイターマ領は既に魔物が駆逐され、ほぼ解放されてしまっているエリアだ。
 かつての支配者赤獅子族と青狼族が、魔物を狩り尽くしていたのだ。

 よって、オオミーヤの冒険者ギルドの仕事は、隊商の護衛がメインになるだろう。

 つまり、商人との打ち合わせが多い支部だ。

「ふむ……エスカルゴの連中は、ワシにも良くしてくれましたからな。商人の相手をさせるには良いでしょう」

 じいが、潜入活動を行ったことを思い出しながら、ミシェルさんたちに太鼓判を押した。

「それに、あの二人はメロビクス出身である。メロビクス商人のウケが良いと思うのである。オオミーヤなら里帰りもしやすいのである」

「適任ですね。これで黒丸師匠も少し楽が出来ますね」

「それがしのような長命種は、役職などない方が良いのである。二人には、さっさと『副』がとれるように頑張って欲しいのである」

 これは黒丸師匠の持論なのだ。

『長命種は、重職に就かない方が良いのである』

 なぜかというと、腐敗の温床になったり、下が育たなくなったりするからだそうだ。

 だが、単に黒丸師匠が現場大好きで、面倒クサイ仕事はやりたくないだけじゃないかと、俺は疑っている。

 続いて、じいからの報告だ。

 じいが再建中のグンマー王立情報部は、黒丸師匠とルーナ先生が捕まえてきた悪党たちを尋問した。

 途中で一回報告を受けているが、今日は最終報告だ。

「結論から言うと、新しい情報は得られませんでした。つまり、前回のご報告通り、ミスル王国が統治能力を失っているのは間違いありません」

「そうか。じゃあ、ミスル王国は――」

「早晩、荒れるでしょうな。内乱になるか、それとも他国が攻め入るか……」

「いずれにしろ我が国にとって、ありがたい話じゃないな。じい、情報収集を急いで。ミスルと戦争中のギガランドの情報も欲しい」

「急ぎ手配いたします」

 隣国は適度に安定していて欲しい。
 安定している国と貿易を行って、ウインウインな関係が、俺は理想だ。

 俺は、ミスルの国王の顔を思い出し、アイツと理想の関係を築くのは難しそうだなと思った。

 そこで、開き直ってじいに指示を出す。

「じい。ミスルから人材を引き抜く準備をしてくれ」

「引き抜きでございますか!?」

「ああ。ミスル王国が荒れるなら、貴族や軍の士官が今まで以上に死ぬだろう。それなら、我が国に来てもらいたい」

「なるほど……」

 俺の言葉を聞いて、じいが腕を組んで考え出した。
 たぶん、どうやって引き抜くか考えているのだろう。

 ミスル王国は、長年の戦争で人材が枯渇しているようだが、我が国としては読み書きが出来るだけでもありがたい人材だ。

 ゲームで言うと、政治力80の人材はいなくても、政治力60の人材はいるだろうと思う。

「ミスル王国大使のアクトゥエン子爵を、我が国で受け入れよう。彼の知り合いで、我が国に亡命したそうな人物がいれば紹介してもらう。あとは、エルハムさんの知り合いにも連絡を取ろう」

「かしこまりました。二人に面会して、調整します」

 正直、あの国は上の方が腐っている。
 だが、現場レベルならエルハムさんのように優秀な人もいるのだ。

 それなら、我が国でいただいてしまおう。
 我が国は支配領域が広大だから、頭数を揃えることも大切なのだ。

「すぐに引き抜きに応じないなら、亡命先として覚えておいてもらうのでも良い。後は……鍛冶師などの職人に声をかけて欲しい」

「現地に潜入させる工作員に申しつけますじゃ。工作費用の方は?」

「費用は気にしないで。ここでお金を使っても、人材が確保できれば、いくらでも取り返せるよ」

 一難去ってまた一難か。
 災い転じて福となすか。

 グンマー連合王国の舵取りを始めて間もないのに、難しい局面に立たされそうだ。


 *


 その頃、赤獅子族のヴィスは、ミスル王国の王都レーベにいた。

 自身の部族を失い。
 テリトリーを失い。
 体一つで、ミスルにたどり着いた。

 赤獅子族のヴィスは、腕っぷしの強さを活かして王都レーベの一角を仕切る人族の用心棒をしていた。
 いわゆる反社会的勢力、黒社会に半分足を突っ込んだ状態だ。

 用心棒の仕事が終わり、ヤサに帰ってきた。
 スラムの一角にある安宿の一室である。

 あたりに漂う、すえた臭い。
 安物のベッドに寝転がると、いつものようにギシリとベッドが抗議の声をあげる。

 転生者であるヴィスは、うんざりしていた。
 すっかり日課になった愚痴をこぼす。

「あー。日本に帰りてえ……。それが無理なら、もう少しマシな生活をしてえ……」

「マシな生活なら、心当たりがあるぞ……」

 自分しかいないはずの部屋に、突然声が響いた。
 ヴィスはベッドから飛び起きると、声がした方を見た。

 部屋の隅、暗くなった場所に、ローブ姿の男が座っていた。
 地球の神からの命をうけて、使いをしている下級神である。

「ウオッ! なんだ! オマエか!」

「探したぞ……。ホレ、いつもの……」

「おっ! 気が利くじゃねえか!」

 ヴィスは、男から焼きそばパンを受け取ると、すぐに食べ始めた。
 男は、ヴィスにこれからすべき行動を告げた。

「南部の砂漠の先にあるミスリル鉱山へ行け」

「鉱山? なんだよ。ここよりも生活が悪そうだな……」

 男はヴィスの言葉を無視して、話しを続ける。

「そのミスリル鉱山にサロットという名の男がいる。サロットに協力しろ。そうすれば良いめが見られるぞ」

「ふーん……、サロットね……。そいつ何モンだよ?」

「オマエと同じ転生者だ」

「!」

 ヴィスの目つきが変わった。
 残りの焼きそばパンを口に放り込み、一気に咀嚼する。

「お仲間ってわけか……」

「そうだ。サロットにオマエのことは告げてある。強くて頼りになる男だと」

「なんだよ。わかってるじゃねえか」

「サロットは、オマエとは逆の男で、あまり腕っ節は強くない。だが、頭が回る」

「ほう、ほう。悪くねえな……」

 ヴィスは、前回の敗戦で自分の限界を知った。
 自分は前線で体を張るのが合っている。

 政治や戦略は、向いていないと悟ったのだ。

 サロットという男は、頭が回るらしい。
 つまり、自分の欠点を補ってくれそうだ。
 ならば、合流して協力するのも良いだろう。

 ヴィスは、そんな風に考えた。

「では、南にあるミスリル鉱山へ行け。名はサロットだ。忘れるな……」

 地球神の使いである男は、霧のように消えていなくなった。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...