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第十章 レッドアラート!
第262話 ロ、ロ、ロ、ロシ、ロシアン💓
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――十二月十日。
共産主義革命発生から二月、ソビエト連邦成立から一月がたった。
「アンジェロ様! ソビエト連邦の使節がドクロザワにやって参りました!」
じいからの報せを受けて、俺はドクロザワに転移した。
ルーナ先生と黒丸師匠が護衛だ。
「ソビエット!」
「ルーナ先生! 変なところで喜ばないでください!」
ルーナ先生の『ソビエットブーム』は、まだ続いている。
変な所でツボに入るのだ。
「アンジェロ少年。ソビエト連邦の使節団を、なぜキャランフィールドに招かないのであるか?」
「あまりこちらの情報を、与えたくないからです」
キャランフィールドは、工房や研究施設が多数あり、我が国の機密が沢山詰まっている都市だ。
交戦する可能性のあるソ連の使節団を、キャランフィールドに招くのは、情報保全の観点からよろしくない。
「なるほどであるな。手の内は明かしたくないということであるか」
黒丸師匠の言う通りだ。
キャランフィールドへソ連の使節団は入れない。
ドクロザワの町は、グンマー連合王国と旧ミスル王国(現ソ連)を南北に結ぶ街道沿いにある。
新しく作った町だが、新しい建物が増えている。
対ソ連最前線の町だから、軍関係者の姿が目立つ。
それ以上に、ソ連から亡命してきたミスル人の姿が多い。
町の雰囲気は良い。
人が多くて、活気がある。
ドクロザワの治安は良く保たれているようだ。
亡命ミスル人の栄養状態は、良く見える。
子供たちが、笑顔で駆け回っている姿もある。
「ふむ……。ミスル人たちは、それなりに幸せのようである」
「ええ。安心しました」
ドクロザワの領主館に入ると、第二騎士団のポニャトフスキ男爵が迎えてくれた。
ポニャトフスキ男爵は、女魔法使いミオさんと結婚した。
来年には、子供が生まれる予定だ。
ポニャトフスキ男爵の案内で向かったのは、町の外だった。
「ポニャトフスキ男爵。なぜ、町の外に?」
「亡命ミスル人の感情に配慮いたしました。暴動でも起これば、ことですから」
なるほど。
亡命ミスル人たちからすれば、ソ連の使節団は自分たちが母国から逃げることになった原因、憎き敵ってことか。
ドクロザワの町から、二百メートルほど離れた野原に多数の天幕が張られていた。
俺、じい、ポニャトフスキ男爵、ルーナ先生、黒丸師匠の五人で、大天幕に入った。
大天幕の中には、野営用の折りたたみテーブルが一つ、野戦用の簡易な椅子が二つ。
その椅子の一つに、神経質そうな男が座っていた。
嫌な目つきだ……。
だが、使者をないがしろにするわけにもいかない。
俺は空いている椅子に座り、挨拶を始めた。
「使者殿。ご苦労である。私が、アンジェロ・フリージアだ。このような場所で会談することを許されよ。さて、貴国は――」
「通告!」
俺の挨拶の途中で、使者が席を立ち大声を出した。
ルーナ先生が魔法障壁を展開し、黒丸師匠がさりげない動きで、使者を一刀で斬り伏せられる位置へ動く。
じいが、使者の無礼をとがめた。
「使者殿! 無礼でしょう! アンジェロ陛下が、お話になっているのですぞ!」
あいさつも、自己紹介もせずに、俺の話を遮ったのだ。
じいが怒るのも当然だ。
だが、使者は俺たちの気持ちなどお構いなしだ。
懐から巻紙を取り出し、大声で読み上げ始めた。
「通告! グンマー連合王国は、王政を廃止せよ! 貴族制を廃止せよ! 労働者の代表に政治を委ね、ソビエト連邦に参加せよ! インターナショナル万歳!」
「「「「「……」」」」」
大天幕の中、俺たちグンマー連合王国の人間は、言葉を失った。
ポニャトフスキ男爵が、小さくつぶやくのが聞こえた。
「正気か……?」
いや、ホント、コイツは正気か?
王政を廃止しろとか、ソ連に参加しろとか……。
出来るわけがない。
そもそも、何でそんなことをオマエに命令されなきゃならない!
この国を作るのに、俺たちがどれだけ苦労したか、どれだけ血を流したか……。
フツフツと怒りが湧いてきた。
だが、俺は感情を抑えて、よそ行きの口調で使者に話した。
「使者殿……。そのような無理な要求は応じかねる……」
「インターナショナル万歳!」
「私は、色々な政治形態があって良いと思っている。王政もあれば、イタロスのように商人が相談して政治を行う国もある。貴国のように労働者の代表が政治の舵取りをする国があっても良いだろう」
「インターナショナル万歳!」
「だから、内政干渉は止めて欲しい。内政干渉はわかるか?」
「インターナショナル万歳!」
「……」
だめだな。
使者は、俺が何を言っても『インターナショナル万歳!』しか言わない。
壊れた機械を相手にしているようだ。
直立不動の使者は、巻紙を懐にしまい。
そのままの姿勢で、言葉を続けた。
「同志スターリンは――」
「待て! 誰だって?」
「同志スターリンだ! 同志サロットは、ヨシフ・スターリンと名前を変えた!」
「ヨシッフ! ノータリン!」
「ルーナ先生! 黙って!」
また、ルーナ先生が、どうでもいいことで喜びだしたのを抑えた。
そのサロットってヤツは、頭がおかしいのか?
ヨシフ・スターリンって……死のヒゲダンスおじさんだよな?
たぶん、転生者だろう。
スターリン信者なのだろうか?
「そのスターリン殿が、君たちのリーダーか?」
「共産党中央委員会書記長であり、我々の指導者である! インターナショナル万歳! 同志スターリン万歳!」
「ノータリン万歳!」
「ルーナ先生!」
なかなか話が進まないが、ソ連のリーダーは確定した。
サロットと名乗っていたが、ヨシフ・スターリンと名前を変えた。
何だろう?
このロシアロマンは?
そのウチ赤軍が大挙して襲いかかってくるのだろうか?
「同志スターリンは、回答を欲している! 期限は十二月末日である! それまでに回答がない場合は、グンマー連合王国を『人民の敵』とみなし、我々は人民のために立ち上がる! インターナショナル万歳!」
「おい! ちょっと待て! 普通、使者は色々交渉するだろう? 君は、交渉をしないのか!?」
「我々ソビエト連邦は、人民の国である! 支配階級と交渉は行わない! インターナショナル万歳!」
言いたいことだけ言って、使者はソ連に帰っていった。
回答期限は、十二月末日。
それまでに――
『王政をやめます』
『貴族制をやめます』
『人民の代表に政治を委ねます』
『ソ連に加わります』
――と回答しないと、俺たちは『人民の敵』認定されるらしい。
つまりは……。
「来年は戦争か……」
共産主義革命発生から二月、ソビエト連邦成立から一月がたった。
「アンジェロ様! ソビエト連邦の使節がドクロザワにやって参りました!」
じいからの報せを受けて、俺はドクロザワに転移した。
ルーナ先生と黒丸師匠が護衛だ。
「ソビエット!」
「ルーナ先生! 変なところで喜ばないでください!」
ルーナ先生の『ソビエットブーム』は、まだ続いている。
変な所でツボに入るのだ。
「アンジェロ少年。ソビエト連邦の使節団を、なぜキャランフィールドに招かないのであるか?」
「あまりこちらの情報を、与えたくないからです」
キャランフィールドは、工房や研究施設が多数あり、我が国の機密が沢山詰まっている都市だ。
交戦する可能性のあるソ連の使節団を、キャランフィールドに招くのは、情報保全の観点からよろしくない。
「なるほどであるな。手の内は明かしたくないということであるか」
黒丸師匠の言う通りだ。
キャランフィールドへソ連の使節団は入れない。
ドクロザワの町は、グンマー連合王国と旧ミスル王国(現ソ連)を南北に結ぶ街道沿いにある。
新しく作った町だが、新しい建物が増えている。
対ソ連最前線の町だから、軍関係者の姿が目立つ。
それ以上に、ソ連から亡命してきたミスル人の姿が多い。
町の雰囲気は良い。
人が多くて、活気がある。
ドクロザワの治安は良く保たれているようだ。
亡命ミスル人の栄養状態は、良く見える。
子供たちが、笑顔で駆け回っている姿もある。
「ふむ……。ミスル人たちは、それなりに幸せのようである」
「ええ。安心しました」
ドクロザワの領主館に入ると、第二騎士団のポニャトフスキ男爵が迎えてくれた。
ポニャトフスキ男爵は、女魔法使いミオさんと結婚した。
来年には、子供が生まれる予定だ。
ポニャトフスキ男爵の案内で向かったのは、町の外だった。
「ポニャトフスキ男爵。なぜ、町の外に?」
「亡命ミスル人の感情に配慮いたしました。暴動でも起これば、ことですから」
なるほど。
亡命ミスル人たちからすれば、ソ連の使節団は自分たちが母国から逃げることになった原因、憎き敵ってことか。
ドクロザワの町から、二百メートルほど離れた野原に多数の天幕が張られていた。
俺、じい、ポニャトフスキ男爵、ルーナ先生、黒丸師匠の五人で、大天幕に入った。
大天幕の中には、野営用の折りたたみテーブルが一つ、野戦用の簡易な椅子が二つ。
その椅子の一つに、神経質そうな男が座っていた。
嫌な目つきだ……。
だが、使者をないがしろにするわけにもいかない。
俺は空いている椅子に座り、挨拶を始めた。
「使者殿。ご苦労である。私が、アンジェロ・フリージアだ。このような場所で会談することを許されよ。さて、貴国は――」
「通告!」
俺の挨拶の途中で、使者が席を立ち大声を出した。
ルーナ先生が魔法障壁を展開し、黒丸師匠がさりげない動きで、使者を一刀で斬り伏せられる位置へ動く。
じいが、使者の無礼をとがめた。
「使者殿! 無礼でしょう! アンジェロ陛下が、お話になっているのですぞ!」
あいさつも、自己紹介もせずに、俺の話を遮ったのだ。
じいが怒るのも当然だ。
だが、使者は俺たちの気持ちなどお構いなしだ。
懐から巻紙を取り出し、大声で読み上げ始めた。
「通告! グンマー連合王国は、王政を廃止せよ! 貴族制を廃止せよ! 労働者の代表に政治を委ね、ソビエト連邦に参加せよ! インターナショナル万歳!」
「「「「「……」」」」」
大天幕の中、俺たちグンマー連合王国の人間は、言葉を失った。
ポニャトフスキ男爵が、小さくつぶやくのが聞こえた。
「正気か……?」
いや、ホント、コイツは正気か?
王政を廃止しろとか、ソ連に参加しろとか……。
出来るわけがない。
そもそも、何でそんなことをオマエに命令されなきゃならない!
この国を作るのに、俺たちがどれだけ苦労したか、どれだけ血を流したか……。
フツフツと怒りが湧いてきた。
だが、俺は感情を抑えて、よそ行きの口調で使者に話した。
「使者殿……。そのような無理な要求は応じかねる……」
「インターナショナル万歳!」
「私は、色々な政治形態があって良いと思っている。王政もあれば、イタロスのように商人が相談して政治を行う国もある。貴国のように労働者の代表が政治の舵取りをする国があっても良いだろう」
「インターナショナル万歳!」
「だから、内政干渉は止めて欲しい。内政干渉はわかるか?」
「インターナショナル万歳!」
「……」
だめだな。
使者は、俺が何を言っても『インターナショナル万歳!』しか言わない。
壊れた機械を相手にしているようだ。
直立不動の使者は、巻紙を懐にしまい。
そのままの姿勢で、言葉を続けた。
「同志スターリンは――」
「待て! 誰だって?」
「同志スターリンだ! 同志サロットは、ヨシフ・スターリンと名前を変えた!」
「ヨシッフ! ノータリン!」
「ルーナ先生! 黙って!」
また、ルーナ先生が、どうでもいいことで喜びだしたのを抑えた。
そのサロットってヤツは、頭がおかしいのか?
ヨシフ・スターリンって……死のヒゲダンスおじさんだよな?
たぶん、転生者だろう。
スターリン信者なのだろうか?
「そのスターリン殿が、君たちのリーダーか?」
「共産党中央委員会書記長であり、我々の指導者である! インターナショナル万歳! 同志スターリン万歳!」
「ノータリン万歳!」
「ルーナ先生!」
なかなか話が進まないが、ソ連のリーダーは確定した。
サロットと名乗っていたが、ヨシフ・スターリンと名前を変えた。
何だろう?
このロシアロマンは?
そのウチ赤軍が大挙して襲いかかってくるのだろうか?
「同志スターリンは、回答を欲している! 期限は十二月末日である! それまでに回答がない場合は、グンマー連合王国を『人民の敵』とみなし、我々は人民のために立ち上がる! インターナショナル万歳!」
「おい! ちょっと待て! 普通、使者は色々交渉するだろう? 君は、交渉をしないのか!?」
「我々ソビエト連邦は、人民の国である! 支配階級と交渉は行わない! インターナショナル万歳!」
言いたいことだけ言って、使者はソ連に帰っていった。
回答期限は、十二月末日。
それまでに――
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