追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第十章 レッドアラート!

第266話 許せない攻撃

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 俺は、ソ連との国境沿――旧ミスル王国との境に築いた防壁の上へ転移した。
 防壁の上に出ると、ルーナ先生が防壁の内側を指さす。

「アンジェロ! 見ろ!」

 ルーナ先生が指さした先は、沢山の人が倒れていた。
 恐らく、ここで爆発があったのだろう。
 地面がえぐれ、あちこちで火が上がっている。

 すぐに飛行魔法を発動し、ルーナ先生と二人で地面に降り立つ。
 爆発の中心に近くに倒れている人は、既に息がない。

 少し離れた所で、ブンゴ隊長が血まみれで倒れているのを見つけた。
 手と足が、あさっての方角に向いている。

「ブンゴ隊長!」

「ッス……」

 良かった!
 まだ、息がある。

 とにかく出血を止めてダメージを回復させないと。
 俺は、ブンゴ隊長のお腹に手をあてて、回復魔法を発動した。

「ヒール!」

「うっ……。少し楽になったッス……。ありがとうッス……」

 よほどの重傷なのだろう。
 一回のヒールでは、完全回復には、ほど遠い。

 追加でヒールをかけようとすると、ブンゴ隊長は、回復よりも状況報告を優先させろと言う。

「亡命者が来たッス……。家族で……、子供も連れて……。防壁の中に入れたッス……」

「そうしたら爆発したのか?」

「昼間から松明を持って……変だなと……。松明を……馬車に……」

「亡命すると言った人間が、馬車に松明を放り込んだら爆発したのか?」

「そうッス……」

 亡命者を装った爆弾テロか!
 タチが悪い!

「それで、犯人の亡命者は?」

「馬車の近くにいたッス……。子供も……奥さんも……」

「……」

 それは……。
 爆発の中心近くに息のある人はいなかった。
 亡命者を装った家族は、恐らく爆発に巻き込まて……。

 やるか?
 普通?

 いくら敵を油断させるためとはいえ、家族ごと自爆テロなんて……。

 腹から嫌なモノがこみ上げてきたが、何とか耐えた。
 あまりのショックに、俺は、しばらく考えることが出来ずにいた。

「アンジェロ! 代わる!」

「ルーナ先生……」

「アンジェロは、この場の指揮を! 混乱している!」

 ルーナ先生が、ブンゴ隊長を俺から奪い取るようにして、回復魔法をかけ始めた。
 立ち上がりあたりを見ると、兵士たちがどうして良いかわからず右往左往している。

 ここは、ついこの間まで、火薬がなかった世界だ。
 兵士たちは、大きな爆発に冷静さを失っているのだろう。

 俺は立ち上がると、大声で叫んだ。

「回復魔法をかける! 負傷者をここへ運べ!」

 何回か同じことを叫ぶと、ようやく兵士たちが動き出した。

 俺は、状況把握に努めることにした。
 見回すと、防壁の出入り口に設置した大きな木製ゲートが吹き飛んでいた。

 恐らく、一回目の爆発は、防壁の中で警備兵を吹き飛ばした。
 そして、二回目の爆発は、木製ゲートを破壊したのだろう。

 破壊されたゲートに近づくと、爆発の威力がわかった。
 木製のゲートだけでなく、ゲート近くの防壁も大きくえぐり取られている。

 ブンゴ隊長の証言によれば、『亡命者を装った人物が馬車に松明を投げ込んだら爆発した』らしい。

 馬車に火薬を満載していたとしたら……。
 なるほど、魔法で生成した石壁でも、大きく破壊可能なのか……。

 印術を施した魔石を防壁に埋め込んであるが、あくまでも対魔法の処理だ。
 物理的に防壁を破壊されては、どうしようもない。

 木製のゲートがあった箇所をくぐって、防壁の外へ出る。

「!」

 すると、馬車がもう一台あった!
 馬車のそばには、松明を持った男性と女性、それに小さな男の子と女の子が立っている。

 四人とも真っ青な顔でブルブルと震えていて、男性が松明をどうするのか……。

「落ち着いて! 大丈夫だから! 松明を地面に置いて!」

「あっ……あの……」

「爆発を見たでしょ? あなたたちも吹き飛ぶ……。やる必要はない! やる必要はないんだ!」

「えっ……その……」

 松明を持った男性は、俺の言葉にかろうじて反応するが……。
 爆発のショックなのだろう。
 何も考えられないようだ。

 俺は両手を広げて、ゆっくりと男性に近づいた。

「大丈夫! 何もしないから!」

「はっ……はっ……」

 男性の息が荒い。

 水魔法を放つか?
 だが……、万一外れたら?

 ダメだ!
 魔法が外れるリスクは取れない。

 確実に近づいて、男性から松明を取り上げ……。
 男性の後ろの馬車……。
 たぶん火薬を積んである馬車を、俺のアイテムボックスに収納しよう。

 あと……五メートル……。

「落ち着いて! そう、深呼吸をしよう!」

「えっと……あ……」

 あと……四メートル……。

「深呼吸だ! ゆっくり息を吸って……。吐いて……」

「む……無理だ……」

 男性から反応があった!
 説得できるか?

 あと……三メートル……。

「無理なことはしなくていい! そう、無理ならやらなくて――」

「インターナショナルばんざーい!」

「!」

 男性が涙を流しながら叫び、松明を馬車に向かって放り投げた。
 松明が馬車に向かって、放物線を描く。

「ウォーターボール!」

 俺は、すぐに水魔法を発動した。
 俺の指先から放たれた水球が高速で飛び、松明が馬車に触れる直前に着弾した。

 ジュッと火が消える音がして、火の消えた松明が地面に落ちた。

「あっ……」

 男性の顔に、安堵と落胆の表情が交差する。
 俺は男性の横を一気に駆け抜けて、馬車に駆け寄った。

 荷台をのぞき込むと、案の定だ!
 荷台に火薬の入った木箱が、山と積まれていた。
 これが爆発していたらと思うとゾッとする。

 松明を持っていた男性、家族と思われる女性に子供二人、そして俺も吹き飛んでいただろう。

 馬車は、すぐにアイテムボックスに収納した。

「アンジェロ少年!」

 黒丸師匠だ。
 黒丸師匠には、ウーラの街で見回りをお願いしていたが、駆けつけてくれた。

「どうしたのであるか? 大きな音がしたのである。火薬の爆発であるか?」

「ええ。それで――」

 俺は黒丸師匠に、ここで起きたことをかいつまんで説明した。

「家族ごとであるか……、それは……」

 戦歴が豊富な黒丸師匠だが、絶句してしまった。

 無理もない。
 亡命者を装った爆弾テロ、それも善良そうな家族にカモフラージュしているのだ。

 この異世界の人たちは、テロについて知識がまったくない。
 黒丸師匠でも、引っかかってしまっただろう。

 俺は兵士を呼んで、亡命者に偽装したテロ犯四人を確保することにした。
 じいに引き渡せば、情報部が上手く情報を聞き出すだろう。

 去り際に、女性が俺にすがってきた。

「あの! 赤ん坊を! 私の赤ちゃんを!」

 俺は女性の言葉にピンときた。

「ひょっとして、赤ちゃんを人質にとられたのですか?」

「そ、そうです!」

「赤ちゃんを返して欲しかったら、言うことを聞けと?」

「は、はい!」

 やり取りを聞いていた黒丸師匠の機嫌がみるみる悪くなっていくのがわかった。
 俺も非常に気分が悪い。

 この人たちは、赤ちゃんを人質にとられて、自爆テロを強制させられたのだ!
 ソ連の上の連中は、何を考えているのだ!

 四人が防壁の内側に連れて行かれると、黒丸師匠が怒りの声を上げた。

「アンジェロ少年。クソ過ぎるのである!」

「ええ。許せないですね!」

 本当にヒドイ!

 それに、あの男性の口ぶり……。
 最後に『インターナショナル万歳!』と叫んだから、強烈な共産主義者――。

 いや……、待てよ……。
 洗脳されているのかもしれない。

 いずれにしろ、このやり口は許せん!

 黒丸師匠が、視線をソ連側に向けて低い声でつぶやいた。

「では、手加減無用であるな……」

「手加減? 何がですか?」

「アンジェロ少年……。お客さんである……」

 ソ連側に目をこらすと、遠くに沢山の土埃が見えた。
 爆弾テロの後は、赤軍のお出ましって訳か!
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