追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
339 / 358
第十一章 文明開化

第339話 工事現場の一幕

しおりを挟む
「昼メシだぞ~! 昼メシだぞ~!」

 工事現場に炊事係の声が響いた。

「やった!」
「昼メシだぞ!」
「さっきから良い匂いがしてたよな!」

 作業員の嬉しそうな声が聞こえてくる。
 みんな工具を放り出して、ワッと炊事場に向かった。
 あっという間に、順番待ちの列が出来る。

 俺、ルーナ先生、黒丸師匠も食事だ。
 他の作業員たちと一緒に列を作る。
 総長だからといって、順番を破ってはいけない。
 食べ物の恨みは恐ろしいのだ。

 今日のお昼ご飯は、オークの焼き肉、野菜スープ、ライ麦入りのパンだ。
 大きめのトレーに山盛りで出てきた。

 シンプルで量が多い。
 非常に男らしいメニューである。

「焼き肉であるな!」

「五日連続だけど美味しい」

「肉体労働ですからね。しっかり食べないと!」

 山盛りの焼き肉をゆっくりと食べていると、王都キャランフィールドから汽車が到着した。
 俺たちが昼メシ中なのを見て、ホレックのおっちゃんが混ざりに来た。

「よう!」

「ホレックのおっちゃん! お疲れ様!」

 ホレックのおっちゃんも入って四人でワイワイと地面に座って食事を取る。
 こうして気取らず、肩の力を抜いて仲間と食事を取る時間は幸せだ。

 仲の悪いドワーフとエルフだが、食事の時は休戦する。
 濃い目に味付けた焼き肉に舌鼓を打つ。

「こうやって外で食うメシはウメエな!」

「そうだね」

「アンジェロの兄ちゃんは王様なんだから、王都に戻って食った方が良くねえか?」

「いいんだよ。ここでみんなと食べた方が色々わかる」

 俺はそういうと、ワーロッタ子爵が連れて来た新人作業員たちの方を指さした。
 新人たちは、ボリュームのある昼メシに大興奮している。

「スゲエ! こんなに食べて良いのか!?」

「魔物の肉って、こんなに旨いんだ!」

「そうだな! 初めて食べたけど、牛や豚と変わらないな」

「何より肉が沢山食べられるのが嬉しいよ!」

 ホレックのおっちゃんが、得心がいったと深くうなずく。

「なるほどな。自分の耳で現場の情報を拾うってわけか!」

「そういうこと。鉄道や道路をドンドン整備するから、現場の声に耳を傾けないと」

「へー! 良い王様だな! もう、一丁前じゃねえか! ガハハ!」

 ホレックのおっちゃんが、バンバン俺の背中を叩く。

「あっ……そういえば、客がまた来たぞ……」

 ホレックのおっちゃんが、嫌そうな顔をした。
 何だろう?

「こら! そこのドワーフ!」

 貴族服を着た態度の悪い中年男が、ホレックのおっちゃんを怒鳴りつけた。
 俺、黒丸師匠、ルーナ先生は、食事をしながら横目で態度の悪い男を観察する。

 見ない顔だ。
 俺と馴染みのない、恐らく新しくグンマー連合に加入した国の貴族だろう。

 ホレックのおっちゃんは、面倒くさそうに中年貴族に返事をした。

「何だよ……。今はメシの最中だぞ!」

「食事よりも、私を案内する方が重要だぞ!」

「知らねえよ!」

「私は騎士爵だぞ!」

 何か面倒臭そうなヤツだなぁ~。
 ホレックのおっちゃんが、心底面倒臭そうに対応しているところを見ると、汽車でも何かあったのだろう。

 俺は小声で黒丸師匠と話す。

「黒丸師匠。どうしましょう?」

「面白そうだから、放っておくのである」

 ひどいなぁ。
 まあ、でもお昼休みの演し物だと思って眺めていよう。

 ホレックのおっちゃんと中年貴族がやり合うのを眺めていると、中年貴族と俺の目が合った。

「オイ! 小僧! アンジェロ陛下はどこだ?」

「えっ!?」

 中年貴族は、尊大な態度で俺をにらみつけた。

 俺の顔を知らないのか!?
 まあ、会ったことがない貴族もいるし、今日の俺は作業員と変わらない格好をしているから、アンジェロ総長と認識されなくても仕方がないが……。

 俺は食事をする手を止めて、呆れて中年貴族の顔を見た。

「プー!」

「クスクス」

 ルーナ先生と黒丸師匠が吹き出した。
 中年貴族がジロリと二人をにらんでとがめる。

「オイ! 貴様ら何がおかしい!」

「アンジェロに何か用?」

「貴様には関係ない! オイ! エルフ! アンジェロ陛下は、どこだ?」

「近くにいる」

「何!?」

 中年貴族はキョロキョロしだしたが、まだ、俺がアンジェロ陛下だと気が付かないようだ。
 ルーナ先生、黒丸師匠、ホレックのおっちゃんは、中年貴族の様子を見てニヤニヤしている。

 俺は中年貴族に声を掛けた。

「アンジェロに何の用ですか?」

「小僧! 貴様には関係ない!」

 ルーナ先生、黒丸師匠、ホレックのおっちゃんが笑い出す。
 中年貴族の顔は、怒りから困惑に変わった。

「何がおかしいのだ?」

「貴殿はアンジェロ少年に用事があるのであるな?」

「そ、そうだ! どんな用事であるか?」

「アンジェロ陛下に直接会って話す!」

「ここで話した方が良いのである」

 黒丸師匠が、盛大にヒントを出す。
 だが、中年貴族は俺の正体に気が付かない。

 食事休憩中の作業員たちも、ニヤニヤしながら中年貴族の出方を待っている。

「その方には関係なかろう!」

「アンジェロに用があるなら、言うのである」

「だから、その方には関係なかろう!」

 ルーナ先生が肩をプルプル振るわせている。
 ちょっとかわいそうだから、そろそろ正体を明かすか。

 俺は食事をする手を休めて、中年貴族に名乗った。

「俺がお探しのアンジェロですよ」

「えっ……」

「ですから、俺がグンマー連合王国総長のアンジェロです」

「ええっ!?」

 中年貴族は、驚いて後ずさりをした。
 周囲がドッと湧く。

「ダーハハハ! あのお貴族様やっちまったな!」

「アンジェロ陛下も人が悪いッスよ!」

「貴族おっさんドンマイ!」

 俺が正体を明かすと、中年貴族は、『ああああああ!』とか『ち、違うのですぞ!』とか意味不明な言葉を口にしていた。

 何が違うのだろうか?
 人は混乱すると、意味のない言葉を発するらしい。

 結局、用件は鉄道誘致だったので、一応話を聞いてお引き取りをいただいた。

 こうして鉄道敷設工事は、色々あるけど順調に進んでいる。
 俺たちの夏は充実して平和に過ぎていった。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...