ネクスト・ステージ~チートなニートが迷宮探索。スキル【ドロップ★5】は、武器防具が装備不可!?

武蔵野純平

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第三章 嵐の冒険者

第35話 御手洗さんへの嫌がらせ

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 御手洗さんの話は続いた。

 まだ、聞かなくちゃならないのかと思う一方で、何が起きたのか知りたいとも思った。
 御手洗さんへの同情の気持ちが強くなると同時に、若山拓也に対して不気味さを感じる。

「若山拓也に、上司と人事部長が注意してくれました」

 御手洗さんの上司と人事部長は、若山拓也にかなり強く注意したらしい。
 だが、若山拓也は、『御手洗さんと交際していて婚約中である』と言い張って、上司や人事部長の言うことを聞かない。

『なぜ、自分が注意されるのか! プライベートに干渉しないで欲しい!』

 若山拓也は、御手洗さんの上司と人事部長に反発した。
 上司と人事部長は、やむを得ず強硬な態度をとった。

『これ以上、御手洗さんに関わるなら解雇する! 君の行いは、セクハラや迷惑行為に該当するので、解雇事由になるぞ! 御手洗さんも迷惑している!』

 すると若山拓也は、『御手洗さんに裏切られた』、『浮気をしている』と勝手に思い込み、職場に怒鳴り込んできたそうだ。

『この浮気者!』
『俺を裏切った!』
『誰か好きな男が出来たのか!』
『誰と寝た!』

 同僚がいる前で、御手洗さんを罵倒し続けた。
 見かねた男性の同僚が止めに入るが、止めに入った男性を突き飛ばし怪我をさせた。
 会社は大騒ぎになり、男性社員数名が若山拓也を抑え付けて、無理矢理騒動を収めた。
 若山拓也は、即日解雇になった。

「解雇になって、つきまといが始まりました。私を逆恨みしたのです」

 若山拓也は、御手洗さんの跡をつけ、職場や自宅近くで待ち伏せし始めた。
 あまりにも迷惑で、あまりにも気味が悪い為、御手洗さんは警察に相談をした。

 警察から若山拓也に警告の電話が入った翌日、御手洗さんの職場に怪文章がばらまかれた。

「怪文章?」

「私がいかがわしいお店で働いているとか、いかがわしい写真の顔を私の顔に差し替えたビラとか……」

「ヒドイ嫌がらせだね……」

 会社も見過ごせなくなり、警察に被害届を出したが、証拠不十分で警察は動かなかった。
 そして、会社内で御手洗さんの悪い噂が立ち、御手洗さんは会社に居づらくなったそうだ。
 結局、御手洗さんは、退職を選ばざるを得なかった。

「そうか……。その後、俺のパーティーメンバー募集に応募したんだ……」

「はい。若山拓也に気が付かれないように、引っ越ししたかったのもありますし、身を守るために強くなりたかったんです」

 俺、沢本さん、ダンジョン省の片山さんは、腕を組んで考え込んでしまった。
 御手洗さんの境遇には同情するし、ストーカー若山拓也には怒りしかない。

 だが、これからのことを考えると、御手洗さんと一緒に活動して良いのだろうか?

 俺個人としては、御手洗さんを守ってあげたいが、祖母もいるし、パーティーメンバーの沢本さんには娘の優里亜ちゃんがいる。
 今回の騒動に巻き込まれてしまったのだ。

 俺個人の感情、御手洗さんへの好意だけで、判断して良いのかどうか……。

 一瞬、ひどく物騒なことを考えてしまった。

 若山拓也をダンジョンへおびき出す。
 そして、弱らせた所で、魔物の前に放り投げる。
 若山拓也は、魔物に殺されるだろう。

 ダンジョンで人が死ぬとどうなるか?

 魔物と同じように光の粒子になって消えるのだ。
 つまり、若山拓也の死体は残らない。
 証拠隠滅が容易いのだ。

 だから、ダンジョンの入り口にはゲートがあり入退場のチェックを行い、監視カメラも設置されているダンジョンが多いのだ。
 ダンジョンを悪用されない為の処置なのだろう。

 俺がグズグズと迷っていると、祖母がキッチンに入ってきた。
 祖母は、今まで見たことのない厳しい顔をしている。

「カケルちゃん! 女の子が困っているんだよ! 俺に任せろくらいお言いよ!」

「ばあちゃん……」

 聞こえていたのか!
 キッチンと居間はカーテンで区切られているだけなので、聞こえてしまっても仕方がない。

「変な男につきまとわれて、静香ちゃんがかわいそうだろうに! カケルちゃんが助けないで、誰が助けるの!」

 そう言われると……。
 ここで俺が御手洗さんを助けなければ、御手洗さんはどうなってしまうのだろう?

 ストーカー若山拓也に殺されるかもしれない。
 もし、ストーカー若山拓也が逮捕されたとしても、幸せになれないかもしれない。

(御手洗さんが、不幸になるのは嫌だな……。好きな女を助けるのは、男の使命……かな……)

 俺は沢本さんを見た。
 沢本さんは、腕を組み、眉間にシワを寄せ、難しい顔をしている。

「沢本さん。俺は御手洗さんを助けようと思う」

「へっ……! 言うと思ったぜ!」

 沢本さんは、嬉しそうな顔をした。
 沢本さんと御手洗さんは、仲が良い。
 やはり気になっていたのだろう。

 だが、沢本さんには、娘の優里亜ちゃんがいる。
 無闇に危険にさらすわけにはいかない。

「沢本さんは、優里亜ちゃんのそばにいてくれ」

「良いのか?」

「ああ。俺が対応する。沢本さんは、この家の守りを頼みたい」

 俺と沢本さんは、無言でにらみ合った。
 俺としても、譲る気は無い。
 やがて、沢本さんが折れた。

「わかった。気をつけろよ」

 ダンジョン省の片山さんが、渋い顔で警告する。

「駆さん。警察に任せては?」

「もちろん、警察が若山拓也を逮捕してくれれば良いとは思っています。けれど、逮捕できなければ、御手洗さんが怯えて暮らすことになるでしょう?」

「それはそうですが……」

「なら、先手を打ちます! 主導権をこっちが取ります」

 今度は、俺と片山さんがにらみ合う。
 片山さんとしては、鉱山ダンジョンのオーナー代行をしている俺が危険にさらされるのは、好ましくないのだろう。

 沢本さんの時と同じで、しばらくしたら片山さんが折れてくれた。

「わかりました。警察や関係各所への調整は私がやりましょう」

「助かります!」

 俺は最後に御手洗さんに向き直った。
 御手洗さんの目が潤んでいる。
 俺はしっかりとした口調で御手洗さんに話しかけた。

「御手洗さん。俺は若山拓也と対峙するよ」

「天地さん……」

「御手洗さんに手出しはさせないから!」

「はい……。わかりました。私もご一緒します」

 御手洗さんが、キッと引き締まった表情を見せる。
 御手洗さんも一緒に?
 大丈夫だろうか?

「無理はしなくて良いよ。俺一人でも大丈夫だから」

「いえ。これは私の問題です。泣き寝入りはしたくないです」

 御手洗さんの、目元がキリッとつり上がった。
 俺は御手洗さんの決意を感じ取り、二人で一緒にストーカー若山拓也に対峙することを選んだ。

「わかった! 二人でやろう!」

 俺と御手洗さんの腹は決まった。
 あとは、どうやるか……。
 ストーカー若山拓也と対峙するにしても、どこで、どう対峙するかだ。

 普通の人が相手なら、喫茶店にでも呼び出して話し合いだが、ストーカー若山拓也は既に暴力沙汰に及んでいる。
 まともな話し合いなど期待できないだろう。

 殺さないまでも、ボコボコにして警察に突き出すくらいはやるつもりだ。
 一応、プランがある。

 俺は片山さんに、質問した。

「片山さん。一つ教えて下さい。若山拓也は、冒険者登録をしていますか?」

 片山さんは、ニッと笑ってからうなずき、楽しそうに答えを返した。

「個人情報なので、教えられません」

 教えられないと片山さんは言うが、笑顔でうなずいたリアクションを考えると、若山拓也は冒険者登録をしていないのだろう。

 となれば、勝負をかける場所はダンジョンだ!

 ダンジョンは俺たち冒険者にとっては、毎日通う勝手知ったる愛しの職場なのだ。
 冒険者登録していないストーカー若山拓也には、万に一つの勝ち目もない。

 俺は、ストーカー若山拓也を鉱山ダンジョンにおびき出そうと決めた。
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