ガチャ転生！～異世界でＦラン冒険者ですが、ガチャを引いてチートになります（アルファ版）

ルドルのダンジョン編

第5話 初めてのスライム討伐、そして！

「ただいま！」

「ヒロトお帰り！」

　家で出迎えてくれたのは、この世界での母親チアキだ。
　チアキママは、この街では珍しく黒髪黒目の日本人っぽい顔立ちをしている。
　俺の黒髪黒目は、母親似らしい。
　チアキママは、三十才。かなり美人だ。

「母さん、これ少ないけど今日の分」

「ありがとう。悪いわね」

　俺は、稼ぎからチアキママに大銅貨一枚を渡した。
　家には、俺と母チアキママしかいない。
　チアキママも俺の父親について語ろうとしないので、父親が誰なのかを俺は知らない。
　何か事情があるのだろう。

　チアキママには一人で俺を生んで、働きながら俺を育てくれた。
　本当に感謝をしている。

　チアキママの仕事は、薬師だ。ポーションという体力回復役を作ってギルドに卸していて、それなりに収入があるらしい。
　だから、俺の稼ぎを渡さなくても良いと言ってくれる。

　とはいえ……家に稼ぎを入れないのも心苦しいので、俺はルートが終わると大銅貨一枚をチアキママに受け取ってもらっている。

　チアキママが作った夕飯を食べると、俺は日課の剣の素振りをしてから部屋に入った。
　ステータス画面を呼び出す。


　-------------------

　◆基本ステータス◆

　名前：ヒロト
　年齢：十二才
　性別：男
　種族：人族

　ＬＶ：　１
　ＨＰ：　１２／１２
　ＭＰ：　－
　パワー：－
　持久力：－
　素早さ：－
　魔力：　－
　知力：　７０
　器用：　－

　◆スキル◆
　なし

　◆装備◆
　なし

　◆アイテム◆
　なし

　-------------------


　このステータス画面の内容は、チアキママもギルド職員も知っている。

　ギルドには、ステータスボードという魔道具があり、ステータスボードに手をかざすとステータスが表示されるのだ。

　俺はステータスボードで能力チェックをされている。ギルドに登録する時に、能力確認で一回、俺が小さな時に、チアキママが俺のスキルを確認する為に一回。
　
　だが、実は、俺のステータス画面は他の人とは、かなり違う。
　裏画面があるのだ。

　ステータス画面の端に手を触れる。
　クルッと画面が反転して裏面が表示された。


　-------------------

　◆ゴールドガチャカード◆
【-カード-】【-ゴールド-】

　◆シルバーガチャカード◆
【前世記憶】【頭脳明晰（中級）】【絶倫（中級）】

　◆ブロンズガチャカード◆
【ややイケメン】【幸運（小）】

　◆悪魔からのおまけカード◆
【鑑定（上級）】

　◆寿命◆
　０年

　-------------------


　この裏画面はギルドのステータスボードには、表示されない。
　誰も知らない俺だけが知っている画面だ。

　地獄で寿命を消費して引いたガチャのカードが表示されている。
　悪魔がおまけでつけてくれたカードは、【鑑定（上級）】。
　このカードを押すと……。

『カード【鑑定（上級）】を使って、スキル【鑑定（上級）】を得ますか？
　ＹＥＳ　／　ＮＯ』

　とメッセージが出て来る。

　ここでＹＥＳを押せば、俺のスキルに【鑑定（上級）】が追加され、このスキルが使えるようになるのだろ。
　名前からすると、たぶん、スキルボードのようにステータスが見られるスキルだと思う。

　だが、俺はこのスキル追加を行っていない。保留している。
　俺が『スキルなし』だという事は、ギルドもチアキママも知っている。

　そこで理由もなしに、突然スキルが追加されたら不自然だ。
　何かしらイベントが起こった時に……、例えばダンジョンに潜って強いモンスターを倒した時に、カード【鑑定（上級）】をスキル追加しようと考えている。

「このカードは今日もダメか……」

【-カード-】【-ゴールド-】が、何なのかは相変わらず不明なままだ。
　オマケにこのカードはグレー反転して、表示が暗くなっている。
　たぶんこのカードの効果が、オフ状態なのだろう。

「何かきっかけがあれば、このカードが解放されると思うのだけれど……まあ、気長に待つか」

　他のカードは普通に表示されているし、効果を発揮している実感がある。
　前世の記憶があるし、ややイケメンだと思う。
　まあ、絶倫も……、最近は少し実感している。

「しかし、寿命だけは、本当に意味がわからない」

　一番下の寿命０年と言う表示。
　俺は今十二才。だから俺の寿命は残り十七年のはずだ。
　なのに０年？

「悪魔野郎、何を考えているんだ……」

　色々と考えているうちに、俺は眠ってしまった。

　*

　三日間の休み明けの朝だ。
　休み中は幼馴染のシンディに会ってリフレッシュしていた。

　俺は、またルート仕事に出る為にギルドに来た。
　ギルドは何か騒がしい……。
　人だかりが凄い。

「あの人が神速のダグか！」
「ルドルの誇り！」
「伝説だよな！」
「里帰りだってよ！」

　え！　神速のダグ！　俺も知っている！
　このルドルの街出身のＳランク冒険者！

　ロビー奥のテーブル席に一人の男が座っている。あの人か！
　ギルドマスターが話し相手をしているが、ペコペコと頭を下げまくっている。

　うおおお！　オーラが凄い！
　三十過ぎって感じかな。色気が凄い。
　ちょっとグレーがかった髪に、グレーの瞳、くっきりした目鼻立ち。
　周りの女冒険者が、みんな赤面しているよ。

　おっ！　神速のダグの声が聞こえる！

「冒険者は最高だ！　ダンジョンを駆け抜け、ドラゴンを倒し、お姫様から祝福のキスを受ける！　やめられないね！」

　クソー！　カッケーな！
　俺も握手してもらえないかな……。

「おい！　Ｆラン！　邪魔だよ！」
「チッ！　ダグさんのお目汚しだろうが！　消えろＦラン！」

　すいませんでした……。
　ルート行ってきます……。

　俺は騒がしいホールに背を向けて、カウンターで背負子、七日分の食料のレーション、薬草買い取り用の小銭を受け取り、さっさとギルドを出発した。
　地元の英雄の前でモメるのは嫌だしな。

　レーションは携帯食料で、小麦を水で練ってギュと固めて焼いただけの大きいビスケットだ。味付けは塩のみで、あまり旨くない。
　塩味のレーションは、五個で銅貨一枚、百ゴルドだ。

　チーズ味だともうちょっと味が良くなるのだが、五個で銅貨二枚、二百ゴルドになる。

　ギルドからの支給は、塩味レーション七日分。味よりも予算優先だ。まあ、食えるだけマシだと思うことにしている。

　そもそもルート仕事は、領主からギルドに安く依頼された仕事で利益がほとんどでないらしい。僻地、過疎地向けの福利厚生で、利益が出ないからギリギリまでケチっている訳だ。

　通貨は五種類ある。一ゴルドはだいたい一円って感じだ。

　銅貨　　百ゴルド
　大銅貨　一千ゴルド
　銀貨　　一万ゴルド
　大銀貨　十万ゴルド
　金貨　　百万ゴルド

　銅貨以下の通貨はない。
　レーション五個で銅貨一枚みたいに、銅貨一枚になるようにまとめ売りする。

　ちなみにこのお仕事は七日間で大銅貨たった三枚、三千ゴルドです。
　それではルート、行ってきます！

　*

「え、スライムが出たの？」

　今日はルート最終日、いつもの山道の先にあるハイジ村に来ている。
　いつも薬草を買い取っているおばあちゃんが、相談があると言う。
　おばあちゃんが、薬草を採りに行く途中の池にスライムが集まっているらしい。

「そうなのよ。ブヨブヨして気持ち悪くてさ。ヒロトちゃん、やっつけてよ」

「何匹くらい？」

「三匹いたよ」

　スライム三匹か。
　なら俺でも問題ない。

　ギルドからは、ルートの途中で依頼を受けても良いと言われている。
　この村から遠くなければ、引き受けても良いだろう。

「遠いの？」

「いや、そこの丘を越えた池だよ」

「じゃあ、スライム一匹あたり銅貨一枚。銅貨三枚でどう？」

「それでお願いするよ」

　タダでやってあげても良いけど、ギルドからタダ働きは禁じられている。
　銅貨三枚――三百ゴルドの安い依頼料だけど、相手がスライムじゃ高いお金はとれない。

「じゃあ、お願いするよ。はい、銅貨三枚」

「ありがとう。じゃあ、行ってくる。この荷物を預かっておいてね」

　俺は背負子をおばあちゃんに預けると、ショートソードを持って丘を登った。
　まあ、スライムが相手とは言え初めての魔物討伐依頼だから、ちょっと嬉しい。

　それにルドル周辺は、ほとんど魔物が出ない。
　実は俺も魔物を見るのは初めてだ。

　丘を登ると……、ああ、池が見えるね……、ああ、いるね、スライム。
　青くてゼリーみたいにプヨプヨしたのがいる。

　俺は丘を下りながらスライムを観察する。
　数は五匹に増えていた。

「動き遅いな……」

　俺が近づいてもスライムは逃げずに、のんびりとプヨプヨとしている。
　殺すのが可哀そうだな……。罪悪感が……。でも、これはお仕事……。

「早いとこ片づけますか……。ヨイショっと！」

　プス！

　ショートソードをスライムに刺すと、スライムはへなへなと潰れて、青い液体になってしまった。
　ああ、これが俺の初めての経験……。魔物の初討伐だな。

　と思った時、それは起こった！

「え!?　なんだこれ？」

　今倒したスライムから、カードが浮き上がって来た！

　あり得ない現象に俺は目を疑った。
　するとカードは、シュっと俺の体に吸い込まれた。

「こんな現象は聞いたことがないぞ……。いや、待てよ！　まさか！」

　俺はステータス画面を、あわてて開いた。
　表面を回転させて、裏面を表示する。

「ああ！　これか！　こう言う事だったのか！」


　-------------------
　◆裏スキル◆
【カード】

　◆ステータスカード◆
【ＨＰ上昇（微量）】×１

　◆ゴールドガチャカード◆
【-ゴールド-】

　◆シルバーガチャカード◆
【前世記憶】【頭脳明晰（中級）】【絶倫（中級）】

　◆ブロンズガチャカード◆
【ややイケメン】【幸運（小）】

　◆悪魔からのおまけカード◆
【鑑定（上級）】

　◆寿命◆
　零年

　-------------------
　
　ゴールドガチャカードの【カード】が解放されている！
　表示が明るくなっている！

　裏スキル……、【カード】は裏スキルになるのか……。
　それとその下だ。
　ステータスカードに【ＨＰ上昇（微量）】と言うカードが追加されている！

「これを押すのか？」

【ＨＰ上昇（微量）】のカードを押してみた。
　メッセージが表示された。


『カード【ＨＰ上昇（微量）】×１を消費しますか？　ＹＥＳ／ＮＯ』

　俺はドキドキしながらＹＥＳを押した。
　するとメッセージが表示された。


『ＨＰが、ごくわずかに上昇しました』


「マジか……。もう一回試してみよう……」

　スライムをショートソードで刺して倒す。
　またカードが現れて、俺の体に吸い込まれた。

　裏のステータス画面を開くと、同じように【ＨＰ上昇（微量）】カードが一枚ある。
　同じようにカードを押し、ＹＥＳを押すと……。


『ＨＰが、ごくわずかに上昇しました』


　メッセージが表示された。

「よし、残りのスライムも片付けよう！」

　俺は残り三匹のスライムも片付けたが、同じようにカードが現れ、同じようにメッセージが表示された。
　俺は確信した。これがゴールドガチャカード【カード】の効果だ。

　魔物を倒すとステータスカードがゲット出来る。
　そして、ステータスカードを消費して、ステータス強化が出来る。

　普通は魔物を倒すと経験値が手に入り、一定の経験値が貯まるとレベルアップしてステータスが上昇する。

　だが俺の場合は、魔物を倒した経験値によるレベルアップとステータスカードによるステータス上昇のダブルで効果が得られる。
　これは強力だ。

「脱け出せるかもしれない……」

　そうだ、ステータスが低い俺でも、これなら強くなれるかもしれない。
　Ｆランとバカにされ、安いルート仕事しかさせてもらえない状況から抜け出せるかもしれない。

　転生して初めて俺の人生に光が見えた！