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第三章 ノエル南部に立つ!
第51話 冒険者ギルドの誘致
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「なんだ!? これは!?」
俺の馬車に乗ったフォー辺境伯が、目と口を大きく開いた。
俺はフォー辺境伯の屋敷から外へ出て、フォー辺境伯と商人たちを馬車に乗せた。
ゴム製のタイヤがついた馬車は、揺れが少なく、高速で走ることが可能だ。
フォー辺境伯と商人は、この世界の馬車と俺が作った馬車があまりに違うのでショックを受けて固まっている。
「この馬車は私が改造しました。移動速度は今までの馬車の倍以上です。快速馬車と名付けました」
俺の隣に座るフォー辺境伯が窓の外を見やりながら腕を組んでうなる。
「うーむ……。快速馬車の名に相応しい速度だ。それに揺れが少ない。馬車の中で書き物が出来そうだな」
「そうですね。フォー辺境伯の領都デバラスは、道が整っているから、キャビンの中で書き物も可能でしょう。郊外に出るとデコボコがありますから、ちょっと厳しいですね」
「ふむ。そうなると、エトワール伯爵が話していた、道普請が重要な意味を持ってくるな」
「ですね。これから研究します。商人の皆さんはいかがですか?」
今回は試乗ということで、商人に同乗を許可している。
先ほどの商談に同席した商人が、前席と御者席に分乗していた。
四人の商人は、口々に快速馬車を褒め称えた。
年輩の商人が、目を輝かせて俺に聞く。
「エトワール伯爵様。この快速馬車を商人仕様には出来ないでしょうか?」
「出来るぞ。商人用だと幌馬車が良いか?」
「はい。こちらの馬車のような座り心地の良い椅子は必要ございません。荷物が載るように荷台はフラットにしていただいた馬車がようございます」
「作ってみよう。出来上がったら見に来ると良い」
「ははっ! よろしくお願いいたします!」
快速馬車の手応えは、非常に良い。
商品化出来そうだ。
領地へ帰ったら商人用の幌馬車を作ろう。
馬型ゴーレムの足音が誇らしげに、領都デバラスに町に響いた。
*
――翌日。
俺たちは、冒険者ギルドへ立ち寄り、前回世話になった受付のアミーさんを訪ねた。
アミーさんは相変わらずの『姉御』風で、冒険者ギルドの制服を着崩し、受付カウンターに座っていても他の職員さんとは一人だけ雰囲気が違っていた。
そして、物凄く胸がデカイ。
眼福だ。
ありがとう、アミーさん。
俺は心の中で両手を合わせる。
「あら! エトワール伯爵様!」
アミーさんが俺に気づき案内をしてくれた。
俺たちは、応接室へ通された。
前回、エリクサーを売却したからだろう。
扱いがVIPになっている。
俺が応接ソファーに座り、執事のセバスチャンと護衛のシューさんが後ろに立つ。
妹のマリーとネコネコ騎士のみーちゃんは、馬車でお留守番だ。
出されたお茶に口をつけて、俺は早速商談を開始した。
売却したい商品は、エリクサーだ。
だが、商談は冒頭で暗礁に乗り上げる。
「材料が集まらない?」
「ええ。前回、町をあげてエリクサーの材料をかき集めたでしょう? だから、この町の周囲にはエリクサーの材料がないのよ。マンドラゴラの根も満月草の花びらも、常時募集しているけれど納品がないわ」
「うーん……」
これは困った。
エリクサーを追加生産と考えていたが、なかなか上手く行かないものだ。
アミーさんは、足を組み替えながら別の提案をした。
「エリクサーの材料は無理でも、ポーションやハイポーションの材料なら集まるわ。ポーションやハイポーションをお持ちでしたら、喜んで買い取らせていただきますよ」
ポーションとハイポーションか……。
買取金額はエリクサーよりも安くなるだろう。
材料を冒険者ギルドで買って、ポーションやハイポーションを作っていては儲からない。
ポーションやハイポーションを作るなら、自分の領地の近くで集めたい。
俺は頭の中でソロバンをはじいて、アミーさんに返事をする。
「我が領地の近辺でポーションやハイポーションの材料になる薬草を探してみましょう」
「ポーションやハイポーションは消費が激しいので、いくらでも歓迎しますよ」
俺とアミーさんは、ニッコリと笑顔で見つめ合う。
『買っていけよ!』
『それじゃ、儲からないでしょ!』
そんな無言の会話が交された。
俺は、すぐに話題を変える。
「ところで、我がエトワール伯爵領には、冒険者ギルドがないのです。冒険者ギルドを開設していただけないでしょうか?」
「ギルドの支部開設ですか……」
「ええ。我がエトワール伯爵領は、魔の森に隣接しています。魔物や素材が豊富だと思います。冒険者ギルドの支部を開設するメリットは大きいのでは?」
エトワール伯爵領に冒険者ギルドが開設されれば、冒険者がエトワール伯爵領に住み着く。
そして、冒険者ギルドの売り上げから領主である俺に対して納税が行われる。
今のところ、エトワール伯爵領の産業はドライフルーツ作りと俺が生産スキルで作る商品しかない。
冒険者ギルドが出来れば、領地に新たな産業が生まれる。
冒険者ギルドの誘致は、領主として重要事項だ。
だが、アミーさんの表情は、とても渋い。
「エトワール伯爵領は、どんな様子ですか? 私の持っている情報だと、住みづらい場所で管理する役人が逃げ出したとか……」
むっ……!
アミーさんが、痛いところをついてきた。
だが、役人が逃げ出したのは過去の話だ。
俺は丁寧な口調で領地の説明を始めた。
「現在、エトワール伯爵領は安定しています。最大の問題であった水が解決したのが大きいです」
「水ですか?」
「ええ。川の水が汚れていたのですが、原因を究明し川をきれいにしました。領主屋敷も建てましたので、貴族の領地らしくなってきましたよ」
アミーさんは、俺の説明を静かに聞き少し考え込んだ。
「そうですか……。それなら調査をするように申請を出しましょう」
「調査? それはどのような調査ですか?」
「冒険者ギルドの支部を開設の事前調査です。冒険者ギルドの職員が複数名で行います」
アミーさんが、どんな調査が行われるのかを丁寧に説明をしてくれた。
調査項目は主に三点だ。
・魔物、薬草、鉱物、商人の護衛依頼など、冒険者の収入になりそうな仕事があるか?
・冒険者の宿泊が可能か?
・冒険者ギルドを開設する建物があるか?
俺はアミーさんの説明を聞きながら思った。
(調査が入る前に、宿泊施設やギルドの建物を用意しておけということだな……)
領地に帰ったら、冒険者ギルドが入居出来る建物と冒険者の宿泊施設を建てよう。
俺の馬車に乗ったフォー辺境伯が、目と口を大きく開いた。
俺はフォー辺境伯の屋敷から外へ出て、フォー辺境伯と商人たちを馬車に乗せた。
ゴム製のタイヤがついた馬車は、揺れが少なく、高速で走ることが可能だ。
フォー辺境伯と商人は、この世界の馬車と俺が作った馬車があまりに違うのでショックを受けて固まっている。
「この馬車は私が改造しました。移動速度は今までの馬車の倍以上です。快速馬車と名付けました」
俺の隣に座るフォー辺境伯が窓の外を見やりながら腕を組んでうなる。
「うーむ……。快速馬車の名に相応しい速度だ。それに揺れが少ない。馬車の中で書き物が出来そうだな」
「そうですね。フォー辺境伯の領都デバラスは、道が整っているから、キャビンの中で書き物も可能でしょう。郊外に出るとデコボコがありますから、ちょっと厳しいですね」
「ふむ。そうなると、エトワール伯爵が話していた、道普請が重要な意味を持ってくるな」
「ですね。これから研究します。商人の皆さんはいかがですか?」
今回は試乗ということで、商人に同乗を許可している。
先ほどの商談に同席した商人が、前席と御者席に分乗していた。
四人の商人は、口々に快速馬車を褒め称えた。
年輩の商人が、目を輝かせて俺に聞く。
「エトワール伯爵様。この快速馬車を商人仕様には出来ないでしょうか?」
「出来るぞ。商人用だと幌馬車が良いか?」
「はい。こちらの馬車のような座り心地の良い椅子は必要ございません。荷物が載るように荷台はフラットにしていただいた馬車がようございます」
「作ってみよう。出来上がったら見に来ると良い」
「ははっ! よろしくお願いいたします!」
快速馬車の手応えは、非常に良い。
商品化出来そうだ。
領地へ帰ったら商人用の幌馬車を作ろう。
馬型ゴーレムの足音が誇らしげに、領都デバラスに町に響いた。
*
――翌日。
俺たちは、冒険者ギルドへ立ち寄り、前回世話になった受付のアミーさんを訪ねた。
アミーさんは相変わらずの『姉御』風で、冒険者ギルドの制服を着崩し、受付カウンターに座っていても他の職員さんとは一人だけ雰囲気が違っていた。
そして、物凄く胸がデカイ。
眼福だ。
ありがとう、アミーさん。
俺は心の中で両手を合わせる。
「あら! エトワール伯爵様!」
アミーさんが俺に気づき案内をしてくれた。
俺たちは、応接室へ通された。
前回、エリクサーを売却したからだろう。
扱いがVIPになっている。
俺が応接ソファーに座り、執事のセバスチャンと護衛のシューさんが後ろに立つ。
妹のマリーとネコネコ騎士のみーちゃんは、馬車でお留守番だ。
出されたお茶に口をつけて、俺は早速商談を開始した。
売却したい商品は、エリクサーだ。
だが、商談は冒頭で暗礁に乗り上げる。
「材料が集まらない?」
「ええ。前回、町をあげてエリクサーの材料をかき集めたでしょう? だから、この町の周囲にはエリクサーの材料がないのよ。マンドラゴラの根も満月草の花びらも、常時募集しているけれど納品がないわ」
「うーん……」
これは困った。
エリクサーを追加生産と考えていたが、なかなか上手く行かないものだ。
アミーさんは、足を組み替えながら別の提案をした。
「エリクサーの材料は無理でも、ポーションやハイポーションの材料なら集まるわ。ポーションやハイポーションをお持ちでしたら、喜んで買い取らせていただきますよ」
ポーションとハイポーションか……。
買取金額はエリクサーよりも安くなるだろう。
材料を冒険者ギルドで買って、ポーションやハイポーションを作っていては儲からない。
ポーションやハイポーションを作るなら、自分の領地の近くで集めたい。
俺は頭の中でソロバンをはじいて、アミーさんに返事をする。
「我が領地の近辺でポーションやハイポーションの材料になる薬草を探してみましょう」
「ポーションやハイポーションは消費が激しいので、いくらでも歓迎しますよ」
俺とアミーさんは、ニッコリと笑顔で見つめ合う。
『買っていけよ!』
『それじゃ、儲からないでしょ!』
そんな無言の会話が交された。
俺は、すぐに話題を変える。
「ところで、我がエトワール伯爵領には、冒険者ギルドがないのです。冒険者ギルドを開設していただけないでしょうか?」
「ギルドの支部開設ですか……」
「ええ。我がエトワール伯爵領は、魔の森に隣接しています。魔物や素材が豊富だと思います。冒険者ギルドの支部を開設するメリットは大きいのでは?」
エトワール伯爵領に冒険者ギルドが開設されれば、冒険者がエトワール伯爵領に住み着く。
そして、冒険者ギルドの売り上げから領主である俺に対して納税が行われる。
今のところ、エトワール伯爵領の産業はドライフルーツ作りと俺が生産スキルで作る商品しかない。
冒険者ギルドが出来れば、領地に新たな産業が生まれる。
冒険者ギルドの誘致は、領主として重要事項だ。
だが、アミーさんの表情は、とても渋い。
「エトワール伯爵領は、どんな様子ですか? 私の持っている情報だと、住みづらい場所で管理する役人が逃げ出したとか……」
むっ……!
アミーさんが、痛いところをついてきた。
だが、役人が逃げ出したのは過去の話だ。
俺は丁寧な口調で領地の説明を始めた。
「現在、エトワール伯爵領は安定しています。最大の問題であった水が解決したのが大きいです」
「水ですか?」
「ええ。川の水が汚れていたのですが、原因を究明し川をきれいにしました。領主屋敷も建てましたので、貴族の領地らしくなってきましたよ」
アミーさんは、俺の説明を静かに聞き少し考え込んだ。
「そうですか……。それなら調査をするように申請を出しましょう」
「調査? それはどのような調査ですか?」
「冒険者ギルドの支部を開設の事前調査です。冒険者ギルドの職員が複数名で行います」
アミーさんが、どんな調査が行われるのかを丁寧に説明をしてくれた。
調査項目は主に三点だ。
・魔物、薬草、鉱物、商人の護衛依頼など、冒険者の収入になりそうな仕事があるか?
・冒険者の宿泊が可能か?
・冒険者ギルドを開設する建物があるか?
俺はアミーさんの説明を聞きながら思った。
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