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第五章 領地の拡大
第71話 新住民ラッシュ!
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我がエトワール伯爵領は、拡大を続けている。
王国各地から国王に追い出された少数部族がやってくる!
冒険者ギルドが出来たので、一攫千金を夢見て冒険者もやってくる!
そして――。
「ジロンド子爵が人を送ってきた?」
「左様でございます。代表者がこちらの手紙をお持ちになりました」
俺は領主屋敷の執務室で仕事をしていた。
すると執事のセバスチャンがやって来たのだ。
俺はセバスチャンから手紙を受け取りさっと目を通す。
「なるほど……」
俺は執事のセバスチャンにジロンド子爵からの手紙を渡す。
手紙はセバスチャンが読み終わると、秘書のシフォンさんの手に渡る。
横から護衛のシューさんが、のぞき見しているぞ!
手紙には領地で余っている人を送ると書いてあった。
農民を中心とした平民が五十人。
まとめ役の貴族の息子が五人。
合計五十五人だ。
俺は執事のセバスチャンに問いかける。
「平民五十人は働いてもらうとして、貴族の息子はどうしようか?」
貴族の息子に農作業をさせるわけにはいかない。
まして今回やってきた五人はジロンド子爵に仕える騎士爵の息子だ。
扱いが悪いとジロンド子爵との関係が悪くなる。
俺はふと前世日本のことを思い出した。
これはいわゆる『コネ入社』と似た感じなのだろう。
どこどこの社長の息子を預かるみたいな。
前世で『コネ入社』といえば、悪いイメージだが、この世界ではそうでもない。
貴族階級は教育を受けているので貴重な人材だ。
読み書きや貴族としての常識、領民の扱い方、税の知識、戦闘技術や戦闘指揮のノウハウなど、平民では得られない知識を身につけている。
ジロンド子爵からの手紙によれば、貴族子弟五人は騎士爵の次男以降で、家督相続は出来ない。
そこで、エトワール伯爵領で一旗揚げようと意気込んでいるらしい。
業務遂行に必要な知識があって、やる気がある。
ありがたい人材だ。
逃さないぞ!
執事のセバスチャンは、少し考えてから答えた。
「準騎士爵として召し上げなさいませ」
準騎士爵は、一代限りの貴族位だ。
各貴族家が任じることが出来る。
一代限りだから、騎士爵と違い爵位を世襲できない。
それでも、いきなり爵位を与えるのだから、かなりの厚遇といえるだろう。
「良いのか?」
「ジロンド子爵様のご紹介ですから信用してよろしいでしょう。ただ、お人柄や適性を見極めるために、一旦準騎士爵で様子を見てから騎士爵に陞爵されるとよろしいでしょう。ジロンド子爵様の顔も立ちます」
「うん。そうだね。シフォンさんは、どう?」
俺は秘書のシフォンさんにも確認を取る。
こういうのは、ちゃんと周りの意見を聞くことが大事だ。
シフォンさんは、豊かな胸を包むように腕を組み考えながら答えた。
「将来的には騎士爵にして、領地を持たせると良いですね。農民も一緒に来ているみたいですし」
「なるほど。俺の直轄領と騎士爵に任せる領地を分けるのか……」
「エトワール伯爵家が直接経営に関わる領地を増やすのも大事ですが、手の掛からない領地を増やすのも良いですよ」
「わかった。しばらく様子を見て判断します」
本社に置いて活用する人材。
支店に送り込んで自由にやらせる人材。
そんなイメージで、今回来た五人を分ければ良いだろう。
また、生産魔法を使って魔の森から魔力を抜かなければ……。
いつやろうかなと俺がスケジュールを考えていると、玄関の方から大きな声が聞こえてきた。
「オーイ! エトワール伯爵! いるかー!」
「「「「えっ!?」」」」
この声はフォー辺境伯では!?
俺、執事のセバスチャン、秘書のシフォンさん、護衛のシューさんは、大急ぎで玄関に向かった。
玄関には騎竜に乗ったフォー辺境伯と執事のウエストラルさんがいた。
後ろには、なかなかの面構えをした男たちがズラズラっと並んでいる。
「えっ!? フォー辺境伯!? 何事ですか!?」
フォー辺境伯は、我がエトワール伯爵領の北側に領地を構える南部の有力貴族だ。
俺たちエトワール伯爵家が移転してきた時は、世話になった。
ただ、フォー辺境伯の爵位は『辺境伯』。辺境伯は上級貴族で、伯爵と同じかチョイ上くらいの爵位である。
気軽に『オーイ! 磯野! 野球しようぜ!』みたいに遊びにくるような立場ではないのだが……。
フォー辺境伯のニマッとした健康的な笑顔を見ると、悪気は百パーないとわかる。
南部流なのだろうが、フットワークが良すぎだろ!
フォー辺境伯は、ヒラリと騎竜から下りると俺をハグした。
バンバンと背中を叩く。
嬉しいけど、痛いから!
「いやな。ジロンドのヤツが、エトワール伯爵に人を送ると聞いたから、俺も連れてきたんだよ!」
ジロンド子爵と張り合ってるのか!?
ま、まあ、人が増えるのはありがたいからな。
俺はフォー辺境伯の後ろに立つ人たちを改めて観察した。
スキンヘッド。
ヒゲもじゃ。
顔に傷。
体に傷。
目がギラギラ。
荒くれ感が凄いな……。
ヤバイ!
後ろの方では、小突き合いが始まっている。
「どうだ! イイ面構えだろう! 厳選したぞ!」
フォー辺境伯は得意げに胸を反らす。
ああ……、ガラの悪いのを厳選したんですね……。
「あの、彼らをウチの住人に?」
「そうだ! 百人いるぞ!」
「……」
思いっきりガラの悪いのが百人かよ!
頭がキーンと痛くなってきた。
「それとこいつら八人は、手下として使ってくれ。貴族家を継げない、次男坊や三男坊だ!」
「「「「「「「「お世話になりやす!」」」」」」」」
「お、おう!」
荒くれに輪をかけた感じの極め道風の八人が俺に頭を下げる。
合計百八人……日本の除夜の鐘かよ! 煩悩の数と同じじゃないか!
フォー辺境伯家執事のウエストラルさんが、小声で俺に教えてくれる。
「突然で驚かれたでしょう? 当主が『ジロンド子爵には負けぬ!』と張り切ったのですよ」
やはりか!
いい年して何やってんだよ!
いかにもフォー辺境伯領らしい荒くれ者が百八人か……。
後ろの方では、フォー辺境伯領の荒くれとジロンド子爵領の若いのがモメている。
「テメー! どこのモンだ!」
「ジロンド子爵家の者だ!」
「ウチはフォーだ! この野郎!」
「ケンカなら買うぞ!」
「おお! イキるじゃねえか!」
俺は頭を抱えたくなった。
だが、住民が増えるのはありがたい。
来る者拒まず。
来た人間は使ってみせてナンボ。
領主の腕の見せどころだ。
俺は新住民たちに何をさせるか考えた。
パンパンと手を叩いて、全員の注目を集める。
「私がエトワール伯爵だ! みんな、よく来てくれた! 歓迎する! そして、早速、みんなに仕事があるぞ!」
全員の目が俺に注がれたのを確認して、俺は大きな声で伝える。
「最初の仕事は道路整備だ!」
王国各地から国王に追い出された少数部族がやってくる!
冒険者ギルドが出来たので、一攫千金を夢見て冒険者もやってくる!
そして――。
「ジロンド子爵が人を送ってきた?」
「左様でございます。代表者がこちらの手紙をお持ちになりました」
俺は領主屋敷の執務室で仕事をしていた。
すると執事のセバスチャンがやって来たのだ。
俺はセバスチャンから手紙を受け取りさっと目を通す。
「なるほど……」
俺は執事のセバスチャンにジロンド子爵からの手紙を渡す。
手紙はセバスチャンが読み終わると、秘書のシフォンさんの手に渡る。
横から護衛のシューさんが、のぞき見しているぞ!
手紙には領地で余っている人を送ると書いてあった。
農民を中心とした平民が五十人。
まとめ役の貴族の息子が五人。
合計五十五人だ。
俺は執事のセバスチャンに問いかける。
「平民五十人は働いてもらうとして、貴族の息子はどうしようか?」
貴族の息子に農作業をさせるわけにはいかない。
まして今回やってきた五人はジロンド子爵に仕える騎士爵の息子だ。
扱いが悪いとジロンド子爵との関係が悪くなる。
俺はふと前世日本のことを思い出した。
これはいわゆる『コネ入社』と似た感じなのだろう。
どこどこの社長の息子を預かるみたいな。
前世で『コネ入社』といえば、悪いイメージだが、この世界ではそうでもない。
貴族階級は教育を受けているので貴重な人材だ。
読み書きや貴族としての常識、領民の扱い方、税の知識、戦闘技術や戦闘指揮のノウハウなど、平民では得られない知識を身につけている。
ジロンド子爵からの手紙によれば、貴族子弟五人は騎士爵の次男以降で、家督相続は出来ない。
そこで、エトワール伯爵領で一旗揚げようと意気込んでいるらしい。
業務遂行に必要な知識があって、やる気がある。
ありがたい人材だ。
逃さないぞ!
執事のセバスチャンは、少し考えてから答えた。
「準騎士爵として召し上げなさいませ」
準騎士爵は、一代限りの貴族位だ。
各貴族家が任じることが出来る。
一代限りだから、騎士爵と違い爵位を世襲できない。
それでも、いきなり爵位を与えるのだから、かなりの厚遇といえるだろう。
「良いのか?」
「ジロンド子爵様のご紹介ですから信用してよろしいでしょう。ただ、お人柄や適性を見極めるために、一旦準騎士爵で様子を見てから騎士爵に陞爵されるとよろしいでしょう。ジロンド子爵様の顔も立ちます」
「うん。そうだね。シフォンさんは、どう?」
俺は秘書のシフォンさんにも確認を取る。
こういうのは、ちゃんと周りの意見を聞くことが大事だ。
シフォンさんは、豊かな胸を包むように腕を組み考えながら答えた。
「将来的には騎士爵にして、領地を持たせると良いですね。農民も一緒に来ているみたいですし」
「なるほど。俺の直轄領と騎士爵に任せる領地を分けるのか……」
「エトワール伯爵家が直接経営に関わる領地を増やすのも大事ですが、手の掛からない領地を増やすのも良いですよ」
「わかった。しばらく様子を見て判断します」
本社に置いて活用する人材。
支店に送り込んで自由にやらせる人材。
そんなイメージで、今回来た五人を分ければ良いだろう。
また、生産魔法を使って魔の森から魔力を抜かなければ……。
いつやろうかなと俺がスケジュールを考えていると、玄関の方から大きな声が聞こえてきた。
「オーイ! エトワール伯爵! いるかー!」
「「「「えっ!?」」」」
この声はフォー辺境伯では!?
俺、執事のセバスチャン、秘書のシフォンさん、護衛のシューさんは、大急ぎで玄関に向かった。
玄関には騎竜に乗ったフォー辺境伯と執事のウエストラルさんがいた。
後ろには、なかなかの面構えをした男たちがズラズラっと並んでいる。
「えっ!? フォー辺境伯!? 何事ですか!?」
フォー辺境伯は、我がエトワール伯爵領の北側に領地を構える南部の有力貴族だ。
俺たちエトワール伯爵家が移転してきた時は、世話になった。
ただ、フォー辺境伯の爵位は『辺境伯』。辺境伯は上級貴族で、伯爵と同じかチョイ上くらいの爵位である。
気軽に『オーイ! 磯野! 野球しようぜ!』みたいに遊びにくるような立場ではないのだが……。
フォー辺境伯のニマッとした健康的な笑顔を見ると、悪気は百パーないとわかる。
南部流なのだろうが、フットワークが良すぎだろ!
フォー辺境伯は、ヒラリと騎竜から下りると俺をハグした。
バンバンと背中を叩く。
嬉しいけど、痛いから!
「いやな。ジロンドのヤツが、エトワール伯爵に人を送ると聞いたから、俺も連れてきたんだよ!」
ジロンド子爵と張り合ってるのか!?
ま、まあ、人が増えるのはありがたいからな。
俺はフォー辺境伯の後ろに立つ人たちを改めて観察した。
スキンヘッド。
ヒゲもじゃ。
顔に傷。
体に傷。
目がギラギラ。
荒くれ感が凄いな……。
ヤバイ!
後ろの方では、小突き合いが始まっている。
「どうだ! イイ面構えだろう! 厳選したぞ!」
フォー辺境伯は得意げに胸を反らす。
ああ……、ガラの悪いのを厳選したんですね……。
「あの、彼らをウチの住人に?」
「そうだ! 百人いるぞ!」
「……」
思いっきりガラの悪いのが百人かよ!
頭がキーンと痛くなってきた。
「それとこいつら八人は、手下として使ってくれ。貴族家を継げない、次男坊や三男坊だ!」
「「「「「「「「お世話になりやす!」」」」」」」」
「お、おう!」
荒くれに輪をかけた感じの極め道風の八人が俺に頭を下げる。
合計百八人……日本の除夜の鐘かよ! 煩悩の数と同じじゃないか!
フォー辺境伯家執事のウエストラルさんが、小声で俺に教えてくれる。
「突然で驚かれたでしょう? 当主が『ジロンド子爵には負けぬ!』と張り切ったのですよ」
やはりか!
いい年して何やってんだよ!
いかにもフォー辺境伯領らしい荒くれ者が百八人か……。
後ろの方では、フォー辺境伯領の荒くれとジロンド子爵領の若いのがモメている。
「テメー! どこのモンだ!」
「ジロンド子爵家の者だ!」
「ウチはフォーだ! この野郎!」
「ケンカなら買うぞ!」
「おお! イキるじゃねえか!」
俺は頭を抱えたくなった。
だが、住民が増えるのはありがたい。
来る者拒まず。
来た人間は使ってみせてナンボ。
領主の腕の見せどころだ。
俺は新住民たちに何をさせるか考えた。
パンパンと手を叩いて、全員の注目を集める。
「私がエトワール伯爵だ! みんな、よく来てくれた! 歓迎する! そして、早速、みんなに仕事があるぞ!」
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